
はじめに
「書かなきゃ」と思いながら、なかなか書けない——そんな方へ
「エンディングノート、そろそろ書いておこうかな」——そう思いながら、結局そのままになっていませんか?あなたはこんな経験ありませんか?ノートだけ買って、表紙を開いたまま机の引き出しにしまい込んでしまった、なんてことが。
実は私自身が、その一人でした。
きっかけは、50代に差しかかり、相続や親の財産把握が少しずつ身近になってきたことでした。「自分にもしものことがあったとき、子どもたちに同じ苦労をさせたくない」——そう感じてエンディングノートを書いたほうがいいのではと重い腰を上げたのです。
しかしいざ書こうとすると手が止まってしまいました。
財産の項目を見れば「正確な金額がわからない」と悩み、医療の希望を見れば「まだ決められない」と先延ばしにしてしまう。完璧に埋めようとすればするほど、かえって書けなくなって、いくんですよね。
正直、最初は「自分にはまだ関係ない」と思っていました。でも、あるできごとをきっかけに、エンディングノートに対する考え方がガラッと変わったのです。
詳しくは4章でお話ししますが、家族の身に起きたあるトラブルから「これは死後のためだけのものじゃない、今のための備えでもあるんだ」と気づかされました。
この記事では、エンディングノートの基本から、実際に何をどう書けばいいのか、そして私自身が試行錯誤しながら書き進めた体験談まで、できるだけ具体的にお伝えしていきます。「書かなきゃ」というプレッシャーではなく、「これなら今日から始められそう」と思ってもらえたら、これほど嬉しいことはありません。
それでは早速、エンディングノートとは何か、終活全体との関係から見ていきましょう。
エンディングノートとは?終活との関係をわかりやすく解説

私は「エンディングノート」という言葉を知っていても、ちゃんと中身を理解していたわけではありませんでした。
同じように、遺言書とどう使い分ければいいのか――そんなふうに混乱した経験がある方も多いのではないでしょうか。
この章では、エンディングノートの役割と、似たような言葉との違いを整理していきます。
エンディングノートの役割と目的
エンディングノートとは、ひとことで言うと「家族への引き継ぎ書」であり、「最後の手紙」のようなものです。
なぜそう言えるかというと、エンディングノートには自分が亡くなったあと、あるいは判断力が低下したときに、家族が困らないよう必要な情報をまとめておく役割があるからなんです。
銀行口座のありか、保険の契約内容、医療や介護への希望、葬儀の形式――こうした情報が一冊にまとまっていれば、家族は手続きや判断のたびに右往左往せずにすみます。
私が知人から聞いた話なのですが、ある方が突然倒れて入院した際、家族はかかりつけ医も常用薬もわからず、病院窓口で何度も「ちょっと確認します」と席を外す羽目になったそうです。本人に確認したくても意識がない、家族も把握していない――この「わからない」が積み重なると、ただでさえ動揺している家族にさらに負担をかけてしまうんですよね。
ここで誤解しやすいのが、「エンディングノートを書けば法的な効力がある」と思い込んでしまうことです。実際にはエンディングノートに法的効力(法律で定められた強制力)はありません。「財産は長男にすべて渡す」と書いても、それだけで実現するわけではないのです。それでも、家族の混乱を防ぐという意味では、法的効力の有無を超えた価値があると私は思っています。
つまりエンディングノートは、「決める」ためのものではなく「伝える」ためのものだと考えると、肩の力が抜けるのではないでしょうか。
遺言書・終活ノート・生前整理ノートとの違いを整理
エンディングノートについて調べていくと「遺言書」「終活ノート」「生前整理ノート」という言葉を見かけます。私も最初は「結局何が違うの?」と頭が混乱しました。
この4つの違いを整理してみましょう。
法律で厳格にルールが決められているのは「遺言書」(政府広報オンライン「遺言書の解説記事」参照) のみです。それ以外(エンディングノート、終活ノート、生前整理ノート)はすべて公的な区別のない「雑記帳(メモ)」の位置づけになります。
| 種類 | 法的効力 | 主な目的 |
| 遺言書 | あり | 財産分配を確実に実現する |
| エンディングノート | なし | 家族への情報・想いの引き継ぎ |
| 終活ノート | なし | 自分自身の思考整理・計画立案 |
| 生前整理ノート | なし | 物の整理・片付けの記録 |
エンディングノートと終活ノート、生前整理ノートの区別についてですが、この3つについては名前は違っても厳密な定義はなく、目的や掲載項目を見て選べば問題ありません。
あえて区別するなら「終活ノート」はどちらかというと自分との対話に近いノートで、「これからどう生きたいか」「やり残したことは何か」を考えるためのものとなっているのが一般的です。
一方「生前整理ノート」は片付けに連動した記録ノートで、何をどこに保管しているか、何を処分すべきかをまとめます。
エンディングノートは、家族への「伝達」という役割が最も強く出ているのが特徴です。基本情報から財産リスト、医療や介護の希望、葬儀やお墓の希望まで、幅広い項目が網羅的に設計されている市販品が多く、最初の一冊として選ぶならエンディングノートが総合的でわかりやすいと思います。
ただ、業界全体で統一された定義はないため、出版社によっては「終活ノート」という名前でも中身はエンディングノートとほぼ同じといったこともあるので、自分の一冊として選ぶ場合は中身を確認してから購入することをおすすめします。
重要なのは、遺言書とエンディングノートは区別して考えるということです。
法的な強制力を持たせたい部分(財産分配など)は遺言書、想いや経緯を自由に書き残したい部分はエンディングノート――この使い分けさえ理解しておけば、もう迷うことはないでしょう。
いつから書き始めるべきか?
「いつから書けばいいの?」というのは、本当によく聞かれる質問なんですよね。
結論から言うと、年齢に決まりはなく、「気持ちの準備ができたとき」がベストなタイミングです。
とはいえ実際には、50代から意識し始める人が多いのも事実です。なぜこの年代なのかというと、親の介護や見送りを経験する時期と重なることが多いからなんです。親の入院手続きや葬儀の準備に追われる中で、「自分にもしものことがあったとき、子どもたちに同じ苦労をさせたくない」と感じる――この実感が、エンディングノートに向き合うきっかけになりやすいわけです。
私の場合は親の問題とは関係なくエンディングノートの必要性を感じました。ただ、だれにでも起こりそうなことなので紹介します。
家族が外出先でトラブルに見舞われたとき、必要な情報がどこにあるかわからず一時的に身動きが取れなくなった出来事があったのです。そのとき「情報をまとめておくことの大切さ」を痛感しました。
これは終末期の話に限りません。日常のふとしたトラブルでも「情報がまとまっていないと困る」場面はいくらでもあるのです。
だからこそ、「まだ早い」「縁起でもない」と先延ばしにする必要はありません。20代や30代で書き始める方もいますし、逆に70代になってから初めて手に取る方もいます。大事なのは年齢ではなく、「今、整理しておこうかな」と思った瞬間に動いてみることなのです。
次の章では、実際にエンディングノートへ何を書けばいいのか、10項目に分けて具体的に見ていきます。
エンディングノートに書く10項目——何をどう書けばいい?

「結局、何から書けばいいの?」
これがエンディングノートに向き合うとき、誰もがぶつかる最初の壁だと思います。実は項目数自体はそれほど多くなく、大きく6つのカテゴリーに分けて考えるとぐっと書きやすくなるんです。
ここでは、私自身が書いてみて「これは特に重要だった」と感じた項目を中心に、具体的な書き方まで踏み込んで紹介していきます。
自分自身の基本情報・緊急連絡先
最初に書くべきなのは、自分自身の基本情報です。
理由はシンプルで、もしものときに家族や医療機関が一番すぐ必要とするのが、この「あなたが誰か」という情報だからなんです。
具体的には、氏名・生年月日・血液型・かかりつけ医・常用薬・アレルギー情報などが基本セットになります。
私が実際に書いてみて気づいたのは、家族でも「血液型は知っているけど、かかりつけの病院までは知らない」というケースが意外と多いということでした。緊急搬送のとき、病院窓口で家族が「えーっと…」と詰まってしまう場面、想像するだけで気の毒ですよね。
書く項目としては、以下のようなものを押さえておくと安心です。
- 氏名・生年月日・本籍地
- 血液型・持病・アレルギー
- かかりつけ医療機関名と連絡先
- 常用している薬の名前
- 緊急連絡先(家族・親族)
ここは一番書きやすい項目なので、まずはここから手をつけてみるのがおすすめです。
財産・資産情報(金額は不要)
次に大事なのが財産・資産情報ですが、ここで多くの人が誤解しているポイントがあります。それは「金額まで正確に書かなければいけない」という思い込みなんです。
実際には、預貯金や株式、不動産といった財産の「ありか」さえわかれば十分です。金融機関名・支店名・証券会社名・不動産の所在地など、家族が「どこに何があるか」を把握できればそれで役割は果たせます。金額は日々変動するものなので、無理に書き込む必要はありません。
ここで絶対に避けてほしいのが、暗証番号やキャッシュカードのパスワードを直接書き込むことです。なぜかというと、エンディングノートは紛失や盗難のリスクがあるものだからなんです。万が一誰かの目に触れたとき、口座から不正に引き出されてしまう危険性もゼロではありません。
書くべきは「どこに何があるか」、書いてはいけないのは「どうやって開けるか」――この線引きさえ意識しておけば、安全に財産情報を残せるはずです。
デジタル遺産・パスワード・SNS情報
ここは個人的に、一番強く伝えたい項目です。スマホやSNS、各種アプリのID・パスワードをどう残しておくか、という話になります。
なぜここまで重要だと感じているかというと、私の妹が新幹線で実際に経験したトラブルがきっかけでした。
妹の話になりますが、彼女が新幹線を降りて駅で立ち止まり、これからの予定を確認するためスマホを取り出そうとした瞬間、車内に置き忘れてきたことに気づいたそうです。新幹線はそのまま終着駅に向かって走り去ってしまい、妹は何もできず立ち尽くすしかありませんでした。
不幸中の幸いだったのは、一緒にいた家族がすぐに遠隔ロック(離れた場所からスマホを操作できなくする機能)をかけられたことです。これで悪用される心配はひとまず防げました。ただ、そこからが問題でした。誰かに連絡を取ろうにも、友人の電話番号も、各種アプリのログイン情報も、すべてがスマホの中にしか存在していなかったのです。紙のメモも、控えも、どこにもない。完全にお手上げ状態でした。特に友人への連絡が一番困ったそうです。最近は電話ではなくLINEなどのアプリで連絡する人が多く、スマートフォンがない状態ではお手上げだったとのこと。そうなるとMessengerやInstagram、Xなどで連絡できないかと考えるのですが、その時にログインするパスワードがわからないため、そこで止まってしまったということでした。
とりあえず緊急で連絡する必要がある人は家族を通しておこない、自分のスマートフォンは終着駅から駅員さんを通して自宅に着払いで返送してもらえることになったそうです。ただ、手元にスマートフォンが届くまで不便な生活を強いられたとのことでした。
この一件があってから、私は「パスワードは紙にも残しておくべきだ」と強く感じるようになりました。具体的には、以下のような情報を控えておくと安心です。
- スマホ本体のロック解除方法(直接の数字ではなく保管場所を記すなど)
- よく使うアプリのID
- SNSアカウント名と死後の希望(削除・追悼アカウント化など)
- サブスクリプションサービスの一覧と解約方法
サブスクは特に見落としがちです。自動更新のままだと、本人が亡くなったあとも料金が引き落とされ続けてしまうケースがあります。
エンディングノートというと「死後の備え」というイメージが強いかもしれませんが、妹のケースのように、生きている今のトラブルでも紙の記録が命綱になる場面があるのです。これは死後のためだけでなく、「今を守るための備え」でもあると私は考えています。
医療・介護の希望
続いては、医療・介護に関する希望です。これは特に、自分の意思が伝えられなくなったときのための項目になります。
具体的には、延命治療を望むかどうか、希望する介護施設のタイプ、誰に介護を任せたいかといった内容を書いておきます。
延命治療の判断は、原則として本人にしかできないとされているんです。家族が代わりに希望を伝えることはできても、最終的な意思決定までは代理できません。だからこそ、判断力があるうちに自分の言葉で残しておく意味があるんですよね。
ここで近年広がっているのが「人生会議」(ACP:Advance Care Planning、将来の医療やケアについて家族や医療者と話し合っておくプロセス)(厚生労働省推奨)という考え方です。エンディングノートに書いて終わりではなく、実際に家族と話し合っておくことで、いざというときの実効性がぐっと高まります。厚生労働省が令和4年度に行った調査では、人生の最終段階における医療・ケアについて考えたことがある人は全体の51.9%にとどまっているそうです。つまり半数近くの人が、まだこのテーマに向き合えていないということなのです。
書いて終わりにせず、家族との会話のきっかけにする――それがこの項目を活かす一番の方法だと思います。
葬儀・お墓の希望
葬儀やお墓についての希望も、ぜひ具体的に書いておいてほしい項目です。
なぜ「具体的に」が大事なのかというと、抽象的な希望だけでは家族がかえって混乱してしまうのです。たとえば「葬儀は小規模でいい」とだけ書かれていても、家族からすると「小規模ってどのくらい?誰を呼べばいいの?」と判断に迷ってしまいますよね。
葬儀の形式には、家族葬(親族や親しい友人のみで行う小規模な葬儀)、直葬(通夜や告別式を行わず火葬のみで済ませる形式)、一般葬、社葬などいくつかの選択肢があります。希望する形式に加えて、呼んでほしい人のリストや、おおよその予算感まで書いておくと、家族はずいぶん動きやすくなるはずです。
お墓についても同様で、納骨先が決まっているかどうかで書く内容が変わってきます。すでに墓地がある場合はその場所を、まだ決まっていない場合、散骨や樹木葬といった希望があれば書き添えておくといいでしょう。
家族を迷わせないための具体性――これがこの項目における一番のポイントだと感じています。
ペット・連絡先一覧・家族へのメッセージ
最後に紹介したいのが、ペット・連絡先一覧・家族へのメッセージという、少し性質の違う3つの項目です。
ペットを飼っている方は、引き取り先の候補や、性格・健康状態・かかりつけの動物病院などを書いておくと、残されたペットが新しい環境でも安心しやすくなります。自分の死後に託したい人がいる場合は、可能な範囲でその人と普段からペットを交えて交流しておくと、言葉の通じないペットの不安を減らせます。
連絡先一覧は、訃報を伝えるべき相手のリストです。親族はもちろん、友人や仕事関係者まで、氏名・連絡先・関係性をまとめておきましょう。今の時代、電話番号やメールアドレスだけでは連絡が取れないケースも増えているので、LINEのアカウント名やグループ名まで書いておくと家族が探す手間がぐっと減ります。
そして最後に、家族へのメッセージです。正直、ここを書くのが一番照れくさいんですよね。でも、ふだん面と向かって言えない感謝の言葉こそ、文字にして残す価値があると思うんです。形式ばらなくていいので、「ありがとう」のひと言だけでも構いません。
ここまで6つのカテゴリーを見てきましたが、すべてを完璧に埋める必要はありません。次の章では、実際にどんなノートを選べばいいのか、市販品から100均、無料配布のものまで具体的に比較していきます。
エンディングノートの選び方——市販・無料・100均、何が違う?

いざ書こうと思っても、「どのノートを選べばいいの?」で立ち止まってしまう方は多いのではないでしょうか。実は市販品・無料配布・100均と、選択肢は意外とたくさんあって、それぞれに向き不向きがあります。ここでは私が実際に手に取って比較した内容をもとに、それぞれの特徴を整理していきます。
市販のエンディングノートの特徴と価格帯
まず一つ目の選択肢が、書店や通販で購入できる市販のエンディングノートです。
価格帯としては1,000円から2,000円程度のものが多く、専門家監修のものや、デザイン性の高いものまでラインナップが豊富にそろっています。なぜこの価格帯になるかというと、項目数が多く、ページ構成や紙質にもこだわって作られているからなのです。
具体的には、基本情報・財産・医療介護・葬儀・お墓・相続・メッセージといった項目に加えて、自分史を振り返るページや、写真を貼り込めるページが用意されている商品もあります。1冊で終活に必要な要素をほぼ網羅できるのが市販品の強みだと思います。
「とにかく漏れなく書きたい」「長く使える1冊が欲しい」という方には、最初から市販品を選ぶのも十分アリな選択肢です。相続の時だけに限らず、いざという時に困らないよう網羅されたエンディングノートとしては、コクヨのエンディングノートがおすすめです。
無料で手に入るエンディングノート
二つ目の選択肢は、無料で手に入るエンディングノートです。これを知らない方、案外多いんですよね。
代表的なのが自治体の窓口で配布されているものです。市区町村の役所や地域包括支援センターで、住民向けにエンディングノートのテンプレートを無料配布しているケースがあります。地域によって配布状況は異なるので、お住まいの自治体に問い合わせてみるといいかもしれません。
もう一つ、私がおすすめしたいのが法務省と日本司法書士会連合会が共同で作成した「エンディングノート」です。これはPDFで無料公開されていて、誰でもダウンロードして印刷できます。延命治療や尊厳死についての意思確認欄、葬儀や財産に関する項目まで、行政・専門機関による信頼性の高い構成になっているのが特徴です。
相続登記(不動産の名義変更手続き)に関するコラムも収録されていて、相続をきちんと考えたい方には心強い内容だと感じました。
お金をかけずに本格的な内容を試したいなら、こうした公的な無料配布物から始めてみるのも良い手だと思います。
100均のエンディングノートの実力
三つ目が、ダイソーやセリアといった100円ショップで手に入るエンディングノートです。私自身、最初に手に取ったのがこのタイプでした。
ダイソーでは「もしもノート」というシリーズが展開されていて、じぶんノート・おかねノート・けんこうノート・うちの子(ペット)ノートなど、テーマごとに冊子が分かれているのが特徴です。1冊110円(税込)で、すべて揃えても550円程度。さらに「もしもに備えるエンディングノート」という総合タイプも別に販売されていて、こちらはFPサテライト株式会社が監修した本格的な内容で、基本情報から銀行口座、保険・年金、医療・介護、葬儀・お墓、相続、ペット、連絡先まで1冊でカバーできます。
一方セリアの「もしもに備える情報ノート」は、基本情報・資産記録・医療介護の希望・葬儀の希望・メッセージといった項目をコンパクトにまとめたタイプです。こちらに関しては使用感をまとめたサイトが多く出ているので、気になる方は検索してみてもよいでしょう。
ただダイソーのシリーズに比べると項目数はやや少なめです。その分シンプルで書き込みやすいというメリットはあります。透明カバー付きで、別売りの「パスワード管理ノート」を内ポケットに差し込んで一緒に保管できるのも便利なポイントです。
私が実際に「もしもノート」を使ってみて感じたのは、「必要ないかな」と思う項目があっても、無理に埋めようとしなくていいということでした。書けそうなところから書けばいいし、空欄があってもいい――そう考えると、気負わずに手が動くんですよね。物足りなくなったら、市販品に切り替えればいいだけの話です。
「とりあえず始めてみたい」という方にとって、100均のエンディングノートは最初の一冊として十分すぎるくらいの役割を果たしてくれると思います。
デジタル(アプリ)タイプのメリット・デメリット
最後に紹介するのが、スマートフォンやパソコンで作成するデジタルタイプのエンディングノートです。
メリットとして大きいのは、修正のしやすさとバックアップが取れる点です。紙のノートだと書き間違えたときに消すのが面倒だったり、見た目が乱雑になったりしますが、デジタルなら何度でも気軽に書き直せます。クラウド上にデータを保存できるサービスを選べば、火災や水害でノートそのものが消失するリスクも避けられますよね。
一方でデメリットもあります。アプリやサービスを提供する会社が事業を終了してしまうと、それまで書きためたデータにアクセスできなくなる可能性があります。これは紙にはないリスクで、私はここが一番気になるポイントでした。
対処法としては、デジタルで作成した内容のうち、特に重要な部分(緊急連絡先や医療の希望など)だけは紙にも控えておくという方法がおすすめです。デジタルと紙を併用することで、片方が使えなくなってももう片方が残るという安心感が生まれます。
ここまで4つの選択肢を見てきましたが、どれが正解ということはなく、自分が「これなら続けられそう」と思えるものを選ぶのが一番だと感じています。
次の章では、私が実際にエンディングノートを書いてみて感じたことについて、もう少し具体的にお話ししていきます。
【体験談】私がエンディングノートを書いてみてわかったこと——100均スタートで十分だった理由

ここまで書き方や選び方をお伝えしてきましたが、正直「理屈はわかったけど、実際どうなの?」と思っている方もいるのではないでしょうか。
この章では、私自身が実際にエンディングノートを書いてみて感じたことを、包み隠さずお話ししていきます。
ダイソーの「もしもノート」で始めてみた——気楽さがちょうどよかった
私が最初に手に取ったのは、前章でも紹介したダイソーの「もしもノート」でした。

結論から言うと、これが思いのほか書きやすかったんです。理由は、項目がテーマごとに分かれていて、「全部を一気に埋めなきゃ」というプレッシャーがなかったからなんですよね。
実際にページをめくっていくと、「これは今の自分には必要ないかな」と感じる項目もいくつかありました。たとえば私の「お気に入り」。決まっていくレストランもないし、お取り寄せもショップ、ブランドもないため、ほぼ関係がありません。でも、それでいいんだと気づいたんです。書かなくていい項目は飛ばせばいいし、書けそうなところから手をつければいい——そう思った瞬間、すっと手が動き始めました。
正直、最初は「110円のノートで終活なんてちゃんとできるのかな」と半信半疑でした。でも書き進めるうちに、「物足りなくなったらそのとき市販品やお気に入りを探してアップデートすればいい」と考えるようになりました。完成形を最初から目指さなくていい——この発想の転換があってから、ずいぶん気が楽になったんですよね。
また、状況によって書いた内容が変わることもあります。そのタイミングでノートもアップデートすればいいので、気楽に初めて見ることをおすすめします。
「完璧に書かなければ」という思い込みが一番の敵
エンディングノートを書き始めても、途中で挫折してしまう人がいます。その多くは「すべての項目を正しく、完璧に埋めなければ」と思い込んでいるのでは、と感じています。
私自身、最初のうちはそうでした。医療・介護の希望や亡くなった後のことについての項目を見て「まだ決められない」とペンを置いていたのです。でも、あるとき気づきました。エンディングノートは一度書いたら終わりではなく、何度でも書き直していいものなのですよね。
空白のページがあってもいいし、迷っている項目は「検討中」と書いておくだけでも十分です。
あなたはこんな経験がありませんか?完璧を目指すあまり、最初の一歩すら踏み出せなくなる——これ、エンディングノートに限らずよくあることだと思います。
私がおすすめしたいのは、まず「自分の名前と緊急連絡先」だけ書いてみることです。たったこれだけでも、何も書いていない状態とは大違いです。一項目ずつ、思いついたときに少しずつ埋めていく——このくらいの軽さで十分だと、私は実感しています。
妹の新幹線スマホ紛失事件で学んだこと——パスワードは紙にも残すべき理由
第2章でも紹介したのですが、私の妹のエピソードがエンディングノートに対する私の考え方を大きく変えるきっかけになりました。
誰かに連絡を取ろうとしたとき、友人の電話番号も、各種アプリのログインIDも、すべてがスマ-トフォンの中にしか存在していないという状況は、滅多にありません。けれども、充電ができなかったりスマートフォン自体がなかったりすると途端に何もできなくなってしまうのです。
セキュリティの面で問題があるかもしれませんが、自分のためにも「パスワードや連絡先は紙にも残しておくのがよい」と強く感じました。いざとなったら他のデバイスからもアクセスできる状況にしておくのが安全です。そのためにはパスワード管理が必要であり、エンディングノートのような備忘録が活用できると実感を持って理解したできごとでした。
「死後のための準備」ではなく「今を守るツール」という発想の転換
妹の一件があってから、私のエンディングノートに対するイメージが変わりました。
それまでは「死後に家族が困らないため」という側面ばかりを意識していたのです。でも実際には、生きている間の「もしも」、つまり今日や明日にも起こりうるトラブルに対しても、エンディングノートは力を発揮します。
スマホを紛失した、財布を落とした、急に入院することになった——そんな場面で、紙に書かれた情報があるだけで、家族はずいぶん動きやすくなるはずですし、自分も助かる場合が多いと感じます。
私たちは今、スマートフォン一台にあらゆる情報を預けて生活しています。連絡先も、パスワードも、予定も、すべてがスマートフォンの中。便利な反面、それがなくなった瞬間に何もできなくなるという危うさがあります。だからこそ、紙に書いておくというアナログな手段に、改めて価値があるのです。
エンディングノートは「人生の終わり」のためだけのものではなく、「今この瞬間を守るための備え」でもある——私はそう捉え直すようになりました。死を意識した重たいテーマというより、日常のリスク管理の延長として向き合うと、ずっと取り組みやすくなるのではないでしょうか。
次の章では、こうした体験を踏まえつつ、実際にエンディングノートをどう書き進めていけばいいのか、具体的な手順とコツをお伝えしていきます。
エンディングノートの書き方ガイド——手順とコツを徹底解説

ここまで「何を書くか」「どのノートを選ぶか」「実際にどう感じたか」をお伝えしてきました。この章では、実践的な「進め方」にフォーカスして、今日から動けるレベルまで具体的にお話ししていきます。書き始める前にちょっとしたコツを知っておくだけで、続けやすさがぐっと変わります。
まず「書ける項目」から始めてOK——順番は自由でいい
エンディングノートには目次や項目順がついていることが多いのですが、その順番どおりに書く必要はまったくありません。
なぜなら、エンディングノートは試験の答案用紙ではなく、自分の情報を整理するための道具だからです。1ページ目から順に埋めようとすると、答えにくい項目で詰まってしまい、そこで手が止まってしまうことがよくあります。
たとえば財産の項目で悩んでいるなら、いったん飛ばして連絡先のページに進んでもいいですし、医療の希望がまだ決められないなら、先に家族へのメッセージから書き始めても構いません。書ける項目、書きたいと思った項目から手をつける——これだけで驚くほど筆が進みます。
「順番どおりに完成させなきゃ」という思い込みを手放すこと、これがエンディングノートを最後まで続けるための一番のコツだと、私は考えています。
手書き vs デジタル、どちらが続けやすいか
「紙とデジタル、結局どっちがいいの?」というのは、よく聞かれる質問です。結論を言うと、どちらにも違った強みがあるので、自分の性格やライフスタイルに合わせて選ぶのが正解です。
手書きの最大の魅力は、温かみと人柄が伝わることです。「誰かに残す」という視点を考えた場合、特にその魅力は大きな効果があります。字の癖や、書き込みのテンポ、ところどころに残る走り書きのメモまで、その人らしさがにじみ出るんですよね。家族が読んだとき、「これは確かに本人が書いたものだ」という実感とともに、想いが伝わりやすいという声もよく聞きます。
一方デジタルは、更新のしやすさが圧倒的な強みです。書き間違えてもすぐに直せますし、クラウド上に保存しておけば、災害や紛失でデータが消えてしまうリスクも避けられます。スマホやパソコンで隙間時間に少しずつ書き足せる気軽さも魅力的ですよね。
どちらか一方に絞らなくてもいいのです。重要な項目だけ紙にも残しておく、という併用スタイルも十分ありです。
定期的な見直しのタイミングの決め方
エンディングノートは一度書いたら終わり、というものではありません。むしろ、書いたあとの「見直し」こそが本番だと言ってもいいくらいです。
なぜ見直しが必要かというと、財産の状況も、医療や介護の希望も、家族構成も、時間とともに変化していくものだからです。数年前に書いた内容が、今の自分の状況と食い違っていたら、せっかくのノートが逆に家族を混乱させてしまいかねません。
見直しのタイミングとしておすすめなのが、誕生日や年末年始といった、自分にとって区切りのいい日です。1年に一度、決まった時期に開いて読み返す習慣をつけておくと、自然と更新が続けられます。それ以外にも、引っ越しや転職、家族構成の変化といったライフイベントがあったときは、そのタイミングで内容を見直すといいですよ。
「いつか直そう」ではなく、あらかじめ見直す日を決めておくこと——これが何年も続けるためのコツです。
「存在と保管場所」を必ず家族に伝える
最後にお伝えしたいのが、書き終えたあとの大事なひと手間です。それは、ノートの存在と保管場所を家族に伝えておくことです。
どれだけ丁寧に書き込んでも、いざというときに誰にも見つけてもらえなければ、その努力は意味を成しません。せっかくの情報も、発見されなければ「ないもの」と同じです。
保管場所を選ぶときは、紛失や盗難のリスクにも気を配る必要があります。財産や医療の希望、パスワードの保管場所など、デリケートな個人情報が詰まっているノートなので、誰でも目につく場所に無造作に置いておくのは避けたいところです。具体的には、以下のような場所が候補になります。
- 鍵付きの引き出しや金庫
- 家族だけが知っているクローゼットの収納スペース
- 信頼できる家族にだけ保管場所を口頭で伝える
保管場所を決めたら、家族の誰か一人にでもいいので「ここに置いてあるよ」とひと言伝えておく——これだけで、ノートは本当の意味で「機能する」のです。
ここまで、書き始め方から続け方、保管の仕方まで一通りお話ししてきました。次の章では、エンディングノートだけではカバーしきれない部分、つまり終活全体の中でこのノートがどんな位置づけになるのかを見ていきます。
エンディングノートと「終活の全体像」——ノートはあくまで入口

ここまでエンディングノートの書き方や続け方をお伝えしてきましたが、実は「これさえ書けば終活はOK」というわけではありません。
あなたはこんな疑問を持ったことありませんか?
「エンディングノートだけで本当に十分なの?」
この章では、エンディングノートが終活全体の中でどんな位置づけにあるのか、少し俯瞰した視点でお話しします。
エンディングノートだけでは足りないケースとは
結論から言うと、エンディングノートだけではカバーしきれない場面が存在します。
理由は、これまでの章でも触れてきたとおり、エンディングノートには法的効力がないからです(1-1参照)。財産分配について「長男に多めに渡したい」と書いても、それを実現する力はノート自体にはありません。確実に意思を反映させたいなら、遺言書という法的な文書が別途必要になります。
もう一つ見落とされがちなのが、認知症などで判断能力が低下した場合への備えです。
ここで知っておきたいのが「任意後見契約」(本人の判断能力があるうちに、将来の財産管理や生活上の手続きを任せたい人をあらかじめ決めておく契約)という制度です。これは公正証書(公証人が作成する法的効力の強い書類)で結ぶ必要があり、家庭裁判所が任意後見監督人(契約内容が適切に実行されているかチェックする第三者)を選任した時点から効力が発生します。
つまり、「もし認知症になったら銀行手続きや施設入所の契約は誰がしてくれるんだろう」という不安に対しては、エンディングノートではなく、こうした法的な仕組みで備えておく必要があるということなのです。
終活の全体像——エンディングノートをどこに位置づけるか
ではエンディングノートは終活の中でどんな役割を果たしているのでしょうか。
私は「全体の地図」だと考えています。
終活には大きく分けて、見守り(日常的な安否確認や生活支援)、財産管理(判断能力低下時の資産の取り扱い)、医療・介護の意思表示(延命治療や施設入所の希望)、死後事務(葬儀や各種手続きの実行)という流れがあります。それぞれの段階で必要になる契約や書類は異なります。
たとえば見守り契約は元気なうちから家族や専門家に定期連絡をお願いする取り決め、財産管理は先ほどの任意後見契約や家族信託(財産の管理を信頼できる家族に託す仕組み)、死後事務委任契約は葬儀や役所への届け出を生前に第三者へ依頼しておく契約です。エンディングノート自体にこれらを実行する力はありませんが、「自分がどう備えたいか」を最初に整理し、必要な専門家や制度につなげるきっかけになる点で、まさに地図のような役割を担っているのです。
つまり、エンディングノートを書く作業そのものが、自分にとって本当に必要な備えは何かを見極める第一歩になるのです。
遺言書との賢い使い分け
最後に、もっとも混同されやすい遺言書との関係をあらためて整理しておきます。
考え方としてシンプルなのは「想いはエンディングノートに、法的な意思は遺言書に」という使い分けです。
なぜこの分け方が機能するかというと、それぞれが担う役割がまったく違うからです。エンディングノートは家族への感謝のメッセージや、医療・葬儀への希望を自由に書ける場所。一方、遺言書は財産分配について確実に効力を持たせるための法的文書です。
公正証書遺言を作成する場合、公証役場での手続きが必要になり、財産額に応じた手数料が発生します。一方エンディングノートは費用面のハードルがほぼありません(前章で紹介した100均ノートなら110円から)。この性質の違いを理解した上で、「財産については遺言書できっちり定め、それ以外の想いはエンディングノートに自由に書く」という形にしておくと、両方の良さを活かせます。
私自身、両方を用意しておくことで「法的な備えと、心の備え、両方済んでいる」という安心感が生まれるのではないかと感じています。エンディングノートだけで完結させようとせず、必要に応じて遺言書や任意後見契約といった専門的な制度も視野に入れておく——それが終活を無理なく進めるコツです。
ここまで、エンディングノートと終活全体のつながりについてお話ししてきました。
次の章では、ご自身ではなく、ご家族にエンディングノートを書いてもらいたいときの、声のかけ方についてお伝えしていきます。
親にエンディングノートを書いてもらいたいとき——子世代の声のかけ方

ここまでは自分自身がエンディングノートを書く前提でお話ししてきましたが、実は「自分よりも親に書いてほしい」という悩みを持つ方も少なくありません。
高齢の親を見ていて「もしものとき、どうするんだろう」と不安に感じたことはありませんか?
この章では、親世代にエンディングノートを書いてもらうための、現実的な声のかけ方をお伝えしていきます。
「縁起でもない」と拒否される——よくある反応と心理
親にエンディングノートの話を持ちかけると、思いのほか強い拒否反応が返ってくることがあります。
なぜこんな反応になるかというと、親世代にとって「死」や「もしものこと」を話題にすること自体が、まだまだタブー視されているからなんです。「縁起でもない」「まだそんな歳じゃない」という言葉の裏には、子どもに心配をかけたくない気持ちや、老いを直視したくない心理が隠れていることが多いんですよね。
正直、私自身も切り出し方に悩みました。いきなり「エンディングノート書いてみたら?」と言うと、まるで「もう先が長くないと思われている」ように受け取られかねないからです。良かれと思って提案したことが、かえって親を傷つけてしまうリスクがあるわけなんですよね。
ここで大事なのは、無理強いをしないことです。一度断られたからといって諦める必要はなく、タイミングや伝え方を変えてみることで、少しずつ気持ちが変わっていくケースも多いと感じています。
子世代が先に自分のノートを書いてみせる作戦
親に直接勧める前に試してほしいのが、自分自身が先にエンディングノートを書いてみる、という方法です。
これが効果的な理由は、「あなたに書いてほしい」という一方的な提案より、「私もこれを書いているんだけど」という自然な共有のほうが、親の警戒心をぐっと下げられるからなんです。4章でお話しした私自身の100均ノート体験(4-1参照)も、まさにこの考え方から始まったものでした。
実際にやってみると、「これ何を書いているの?」と親のほうから興味を示してくれることも珍しくありません。子どもが楽しそうに、あるいは気負わずに書いている姿を見ることで、「自分もやってみようかな」という気持ちが自然に芽生えるんですよね。
「親に書いてほしい」と思ったら、まず自分のノートを開いて見せる——これが一番遠回りに見えて、実は一番近道だと私は感じています。
家族が集まるタイミングを活かした自然な切り出し方
エンディングノートの話題は、いきなり面と向かって切り出すよりも、自然な流れの中で触れるほうがうまくいきやすいものです。
理由は、構えた状態で話を持ちかけられると、親も身構えてしまうからです。お盆や正月、法事など、家族が集まる機会には、自然と「もしものとき」の話題が出やすい空気が生まれます。たとえば親戚の誰かが入院した、近所の方が亡くなったといったニュースが出たタイミングなら、「うちも一応、何か書いておいたほうがいいのかもね」という流れに持っていきやすいですよね。
テレビや雑誌でエンディングノートの特集が組まれているのを一緒に見ながら、「最近こういうのが話題らしいよ」と軽く話題に出すのも一つの方法です。狙って切り出すというより、すでにある会話の流れに乗せる感覚のほうが、親も構えずに耳を傾けてくれます。
「いつ言おう」と身構えるより、日常の会話の延長線上で触れてみるくらいの軽さが、結果的に一番伝わりやすいのではないでしょうか。
エンディングノートを「プレゼント」として渡す
最後に紹介したいのが、エンディングノートそのものをプレゼントとして渡す方法です。
これがなぜ有効かというと、「書いて」と言葉で伝えるより、ノートという「モノ」を手渡すほうが、行動のきっかけになりやすいからです。誕生日や敬老の日、母の日・父の日といった節目に、さりげなく渡してみるのもいいでしょう。
3章で紹介したダイソーの「もしもノート」(3-3参照)のように、110円という手頃な価格のものなら、気負わせずに渡せるのも利点です。
渡すときの言葉選びも大切で、「死んだときのために」ではなく、「もしものときに私たちが困らないように、ちょっと書いておいてくれると安心だな」というニュアンスで伝えると、受け取る側の抵抗感がやわらぎます。あくまで「自分たちのため」というより「家族みんなで安心するため」という伝え方のほうが、すんなり受け入れてもらいやすいのではないでしょうか。
プレゼントというかたちなら、「強制された」という感覚を持たれにくく、親自身のペースで書き進めてもらいやすくなります。
ここまで、親世代へのアプローチ方法についてお話ししてきました。次の章では、エンディングノートに関してよく寄せられる質問に、Q&A形式でまとめてお答えしていきます。
よくある質問(Q&A)

ここまで長い道のりでしたが、最後にエンディングノートについてよく寄せられる疑問を、Q&A形式でまとめて整理しておきます。これまでの章でお話しした内容と重なる部分もありますが、「結局どうなの?」をサクッと確認したいときの早見表として使ってもらえたら嬉しいです。
Q1. エンディングノートに書いた内容は法的効力がありますか?
ありません。1章でもお話ししたとおり、エンディングノートはあくまで「想いの引き継ぎ」のためのものです。財産分配など確実に実現したい希望があるなら、遺言書を別途用意する必要があります。
Q2. 財産の金額はどこまで書くべき?
金額そのものは書かなくて大丈夫です。預貯金や保険、不動産は日々評価額が変動するものなので、書いても古い情報になってしまいます。口座のある金融機関名や保険の担当会社名など、「どこに何があるか」という在りかさえわかれば、家族は十分動けます。
Q3. パスワードや暗証番号を書いても大丈夫?
直接書き込むのはおすすめしません。ノート自体に紛失や盗難のリスクがあるからです。私が4章でお話しした妹のスマホ紛失の一件のように、パスワードを「どこかに記録しておく」こと自体はとても大事なのですが、エンディングノート本体には保管場所だけを書き、パスワードそのものは別紙に控えて封筒に入れる、といった工夫をするのが安全です。
Q4. 100均のノートと市販品、どちらがいい?
正直なところ、どちらが優れているという話ではなく、まず書き始める気持ちのほうがずっと大事です。私自身、ダイソーの「もしもノート」(110円)から始めましたが、それで何の不自由もありませんでした。書き進めてみて項目が足りないと感じたら、そのとき市販品にアップデートすればよいでしょう。
Q5. 書き終わったエンディングノートはどこに保管する?
鍵付きの引き出しや金庫など、セキュリティのある場所がおすすめです。財産やパスワードの保管場所といったデリケートな情報が詰まっているので、誰でも見られる場所は避けたいところです。そして何より大切なのが、保管場所を家族の誰かにひと言伝えておくこと。これを忘れると、せっかく書いたノートが「発見されない」という事態になりかねません。
Q6. デジタル(アプリ)で作ったエンディングノートは安全ですか?
便利な反面、サービスを提供する会社が事業を終了してしまうとデータにアクセスできなくなるリスクがあります。私はこの点が一番気になっていて、特に重要な項目(緊急連絡先や医療の希望など)だけは紙にも控えておくスタイルをおすすめしています。
Q7. 一度書いたら書き直せない?
何度でも書き直せます。むしろ財産状況や家族構成は時間とともに変わるものなので、定期的な見直しを前提に考えるほうが現実的です。誕生日や年末年始など、自分にとって区切りのいいタイミングで読み返す習慣をつけておくといいですよ。
Q8. 独身・おひとりさまでも書いた方がいい?
むしろ必要性が高いと言えます。配偶者や子どもがいる場合と違って、誰に連絡すればいいのかが家族の中で自然に共有されにくいからです。友人、かかりつけの専門家、行政の窓口など、「もしものとき誰に連絡してほしいか」を具体的に書いておくことが、おひとりさまにとっては特に重要になります。
Q9. エンディングノートは家族に見せたほうがいい?
必ずすべてを見せる必要はありません。ただ、エンディングノートの存在と保管場所だけは、家族の誰かに伝えておくことをおすすめします。せっかく書いても、誰にも見つけてもらえなければ役に立たないからです。内容についても、医療や介護の希望、緊急連絡先など、家族に知っておいてほしい項目は、一度話し合っておくと安心です。一方で、家族へのメッセージや自分だけの思いなど、今は見せたくない部分があっても構いません。エンディングノートは「すべて公開しなければならないもの」ではなく、自分が伝えたい範囲を自由に決められるノートです。「全部見せるか、全部隠すか」ではなく、「必要な情報だけ共有する」という考え方で十分だと私は思っています。
【まとめ】「完璧でなくていい」——まず一項目、今日書いてみよう

ここまで、エンディングノートの基本から書き方、選び方、そして私自身の体験まで一通りお話ししてきました。正直、書く前は私も「ちゃんと全部埋めなきゃ」と気負っていたんです。でも実際は、110円のダイソーのノートで、必要ない項目は飛ばして、書けるところから少しずつ進めるだけで十分でした。
妹のスマホ紛失の一件があってから、エンディングノートは「死んだときのため」だけでなく「今のもしも」にも役立つものなんだと実感しています。そう考えると、ちょっと気が楽になりませんか?
完璧を目指さなくていいんです。今日、自分の名前と緊急連絡先だけでも書いてみる——その一歩が、未来のあなたと、あなたの家族をきっと助けてくれるはずです。














