
【PR】本記事には広告(アフィリエイトリンク)が含まれています。
洗濯物のかごを抱えて、階段を上る。
以前は何とも思わなかったその動作が、いつからか「ふぅ」と一息つくものになりました。
「この家に、あと20年、30年住むのかな」
50代になって、ふとそんなことを考えるようになっています。
階段だけでなく、重い洗濯物を運ぶのも負担になってきました。小さな不便が、少しずつ見えてきます。
我が家は約10年前、40代のときに、義両親と義祖母との同居を決めたタイミングでリフォームをしました。段差をなくしたのは、高齢の義祖母の負担を減らし、まだ小さかった子どもたちを守るためです。
ところが10年たった今、その段差の少なさが、家族の介護の場面で役立っています。
一方で、「あれもやっておけばよかった」と思うこともあります。1階だけに入れた床暖房は想像以上に快適でしたが、いつの間にか、我が家の暮らしの中心は2階になっていました。
私には、同居という「きっかけ」がありました。でも、きっかけがなくても、子どもが成長して家族のかたちが変わる50代は、住まいを見直すのにちょうどいい時期ではないか。そう気づかせてくれたのが、1冊の本でした(感想は後半で紹介します)。
介護が必要になってから慌てて家を変えるのではなく、まだ元気に動けるうちに、これからの暮らしを考えて住まいを整える。10年後の暮らしは予測できないからこそ、大切なのは「正解」を当てることではなく、「この先もこの家で暮らすなら、今のうちに何を整えておきたいか」から考えることです。私はそれを、終活の1つだと考えています。
この記事では、「ここをリフォームすべき」という正解を並べるのではなく、これからの暮らしを起点に、住まいを考える方法をお伝えします。家の中を歩いて不便を見つけるところから、費用や補助金、そして「リフォームしない」という選択肢まで。
読み終えたら、すぐに業者へ見積もりを頼むのではなく、まず自分の家を見渡してみてください。
「私は、10年後もこの家で暮らしたいだろうか」
その問いから、始めてみましょう。
第1章 50代のリフォームはいつから?これからの住まいを考え始めるタイミング

50代でリフォームを考えるなら、「何歳になったら始める」というより、家族や自分の暮らしに変化を感じたときが1つのタイミングです。
私の場合は、約10年前、40代のときの義両親・義祖母との同居が「きっかけ」でした。でも、きっかけがなくても、子どもが成長して家族のかたちが変わる50代は、住まいを見直すのにちょうどいい時期だと考えています。
子育てが一段落し、これからの暮らしが少し見えてきたら、「この家にあと20年、30年住むのかな」と考えてみる。そこから、今の住まいに手を入れる必要があるかを判断していけば十分です。
子どもが成長すると、家の役割が変わる
50代のリフォームを考えるきっかけの1つが、子どもの成長です。
子どもが家を出たり、家にいる時間が減ったりすると、これまでとは違う住まい方が見えてきます。
子どもが小さいころは、家の中に「子どものための場所」が必要でした。個室、勉強する場所、家族が集まるリビング。洗濯物も食事も、子どもの生活を中心に家が動いていた家庭は多いでしょう。
ところが、子どもが高校生、大学生と成長すると、少しずつ事情が変わります。使わない子ども部屋が出てきたり、家族そろって食事をする機会が減ったり。以前は必要だった広さや間取りが、今の暮らしには合わなくなることもあります。
私の家でも、約10年前のリフォームのときに思い描いていた暮らしと、今の暮らしは同じではありません。当時は子どもたちや、義両親・義祖母との同居を中心に考えていましたが、今は家の中で必要とする場所や過ごし方が変わりました。
だからこそ、50代は「これから家をどう使うか」を考えるのにちょうどいい時期です。
今まで子どものために使っていた部屋を、どうするのか。
家で過ごす時間が増えたとき、どこで、誰と過ごしたいのか。
掃除や洗濯などの家事動線は、今の自分に合っているのか。
こうしたことを考えると、リフォームが必要な場所だけでなく、「今のままでもいい場所」も見えてきます。
子どもが成長したことは、家を小さくする合図ではありません。これからの暮らしに合わせて、家の役割を見直すタイミングです。
まだ元気な50代だからこそ、冷静に考えられる
50代でリフォームを考えるメリットは、まだ自分で家のことを決め、動ける時期だということです。
「階段が上れなくなったから」「お風呂に入るのが怖くなったから」と不便が大きくなってからではなく、今のうちに住まいを見直すことで、選択肢を持ったまま考えることができます。
国土交通省は「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」(2019年)で、高齢期を迎える前のできるだけ早い段階で、高齢期の住まいや住まい方を選ぶことが重要だとしています。このガイドラインは、50~64歳の「プレシニア」も主な対象にしています。
選択肢は改修だけではありません。建て替えや住み替えも含めて、自分の意向、心身や経済の状況、家族や住宅の状況などを考えて選ぶことが示されています。
また、改修は、介護が必要になって時間に余裕がない中で行うのではなく、気力・体力・お金にも余裕のある早い段階から検討することが望ましいとも述べられています。
ここで大切なのは、「高齢者になる前に介護仕様の家にする」という意味ではないことです。
むしろ、今の暮らしを少し快適にしながら、将来も無理なく暮らせる可能性を残しておく。
たとえば、今は問題なく上り下りできる階段でも、10年後、20年後にはどうでしょう。
今は何とも感じない浴室の寒さや、毎日の洗濯物を運ぶ距離はどうでしょうか。
私も50代になり、以前は気にならなかったことが少しずつ気になるようになりました。洗濯物を運ぶことも、その1つです。洗濯物の量そのものは以前より減っています。それでも、一度にまとめて運ぶと「重いな」と感じることが増えました。
家は変わっていなくても、そこに住む自分の体は少しずつ変わっている。
50代で住まいを考えるというのは、そんな変化に気づくことでもあります。
まだ元気だからこそ、「今すぐ工事が必要か」ではなく、「この先、どんなふうに暮らしたいか」から落ち着いて考えられるのです。
「老後のため」ではなく「これからの20年、30年」のために
50代のリフォームを「老後のため」とだけ考えると、少し気が重くなるかもしれません。そこで私は、「これからの20年、30年をどう暮らしたいか」という視点で考えることをおすすめします。
50代から先の暮らしは、まだまだ長く続きます。仕事を続ける人、働き方を変える人、趣味や旅行を楽しみたい人、家で過ごす時間が増える人。暮らし方はさまざまです。
つまり、50代のリフォームで考えたいことは、「高齢者になった自分のための家」だけではありません。
今から始まる新しい暮らしを、どんな家で送りたいのか。
その視点を持つと、リフォームの考え方も変わります。
「手すりを付けるべきか」と設備から考えるのではなく、自分の希望から住まいを考えられるようになるのです。
「階段をできるだけ使わずに生活できるようにしたい」
「冬の寒さを我慢せずに過ごしたい」
「掃除や洗濯をもう少し楽にしたい」
「子どもが独立したあとも、気持ちよく暮らしたい」
だから、「50代になったからリフォームしなければ」と焦る必要はありません。
まずは、これからの暮らしを想像してみる。そのうえで、今の家に足りないものがあるならリフォームを考える。反対に、今の家で十分なら、無理に手を入れなくてもいいのです。
50代のリフォームは、老後に備えて家をつくり替えることではなく、これからの人生に合わせて住まいを見直すこと。
そのスタート地点は、「工事」ではなく「暮らしを考えること」です。
この章のまとめ
50代のリフォームを考え始めるタイミングは、年齢だけで決まるものではありません。
子どもの成長によって家の役割が変わったとき。
以前は気にならなかった不便を感じるようになったとき。
そして、「この家にあと20年、30年住むのかな」と考えたとき。
そんな小さな変化が、住まいを見直すきっかけになります。
まだ元気な50代だからこそ、リフォームだけでなく、住み替えや建て替え、何もしないという選択肢まで含めて、落ち着いて考えられます。
次の章では、工事の話に入る前に、もう一歩だけ立ち止まります。
「これから、どんなふうに暮らしたいのか」
ここが決まらなければ、どこをリフォームするべきかも決まりません。
まずは家を変える前に、自分の暮らしを考えてみましょう。
第2章 50代のリフォーム前に考えたい、「これからどう暮らしたいか」

50代でリフォームを考えるなら、最初に決めたいのは「どこを工事するか」ではありません。
その前に考えたいのが、これから、どんな暮らしをしたいのかということです。
キッチンを新しくするのか、浴室を直すのか、階段に手すりを付けるのか。工事のことを先に考え始めると、どうしても「何を変えるか」に目が向きます。
でも、同じ50代でも、これからの暮らしは人によって違います。
子どもが独立して、一人もしくは大人だけの暮らしになる人もいれば、しばらくは家族と暮らす人もいる。仕事を続ける人、働き方を変える人、家で過ごす時間を増やしたい人もいるでしょう。
だからこそ、リフォームの正解は1つではありません。
まずは、今の家を変える前に、「この先、自分はどんなふうに暮らしたいのか」を考えてみます。
10年後、誰とどこで暮らしている?
50代のリフォームでは、10年後の自分と身近な人の暮らしを想像することが、住まいを考える出発点になります。
「10年後も、この家に住んでいたいか」「誰と暮らしていたいか」を考えると、必要なリフォームも少しずつ見えてきます。
10年後と聞くと、ずいぶん先のことに感じるかもしれません。けれど、今が50代なら、そのころは60代。仕事や子育てから少し離れて、自分の時間が増えているかもしれません。
子どもは、今と同じように家にいるでしょうか。
ひとりで、あるいはパートナーや家族と、どんなふうに暮らしているでしょうか。
親の介護など、家族との関わり方が変わっているでしょうか。
もちろん、10年後を正確に予測することはできません。だから、細かい未来を当てる必要はありません。
「子どもは独立しているだろう」
「仕事は今より減らして、家で過ごす時間を増やしたい」
「たぶん、家で一緒に過ごす人数は今より減っている」
その程度で十分です。
私自身、約10年前に家をリフォームしたときには、今の暮らしをここまで具体的に想像していませんでした。
当時は子どもたちもまだ成長途中で、家族みんなが使いやすいことを優先していました。
ところが10年たつと、子どもは成長し、家の使い方そのものが変わっています。
当時「これからずっとこう使う」と思っていた場所が、今ではあまり使われなくなっていることもあります。反対に、予想していなかった使い方をしている場所もあります。
この経験から、私は10年後の暮らしを完璧に予測する必要はないと感じています。
大切なのは、「これから自分の暮らしはどう変わりそうか」を一度考えてみることです。
そして、もし10年後も今の家に住んでいるとしたら――。
そのとき、今の間取りや設備は使いやすいでしょうか。
ここを考えると、リフォームの目的が「新しいキッチンにしたい」から「これからも家で気持ちよく暮らしたい」へ変わってきます。
今の家で「ちょっと不便」と感じることは?
50代のリフォームで見直したいのは、大きな問題だけではありません。今は我慢できるけれど、毎日の生活で少し気になっている不便を拾うことが大切です。
「古くなったから交換する」「壊れたから直す」と考えがちですが、まだ壊れていない場所にも、暮らしにくさはあります。
たとえば、次のようなことです。
- 洗濯機から物干し場までが遠い
- 階段の上り下りが面倒になってきた
- 冬の浴室が寒い
- 掃除のしにくい場所がある
- キッチンで長時間立つのがつらい
- 収納の奥にあるものを取り出しにくい
- 夜、トイレまで行くのが少し不安
どれも、今すぐ工事が必要なほどではないかもしれません。
けれど、毎日の小さな不便は、何年も積み重なります。そして、50代の今は平気でも、60代、70代になったときには、その「ちょっと」が大きな負担になる可能性があります。
私自身が最近気になるようになったのは、洗濯物を運ぶことです。前の章でも書いたとおり、洗濯物の量は子どもが小さかったころより減っているのですが、毎日していた洗濯の回数を減らしました。その結果、一回の洗濯物の量は昔のままです。以前と同じ量を運ぶのですが、今は前よりも「重いな」と感じるようになりました。
10年前と同じ家なのに、家事の負担感が変わったのです。
家をリフォームするかどうかを考えるとき、「この家は古くなったか」だけを見る必要はありません。
「今の自分にとって、この家は使いやすいか」と考えてみる。この視点を持つと、見えてくるものが変わります。
ただし、ここですぐに「だからリフォームしなければ」と結論を出す必要はありません。
今感じている不便を一度書き出しておけば、それをもとに、後で「本当に工事が必要なのか」「別の方法で解決できるのか」を考えられます。
この段階では、解決策よりも、不便に気づくことが大切です。
これからも続けたい暮らしは?
50代のリフォームでは、「困っていること」だけでなく、これからも続けたい暮らしを守ることも考えてみましょう。
不便なところを直すことに意識が向きがちですが、これからの家を考えるなら、「何をなくしたいか」だけでなく「何を残したいか」も大切です。
たとえば、
「朝は家族と一緒に食卓を囲みたい」
「庭の手入れを続けたい」
「料理を楽しみたい」
「友人を家に招きたい」
「本を読んだり、好きなことをする場所がほしい」
「子どもが帰ってきたときには、泊まれる場所を残しておきたい」
人によって、家に求めるものは違います。そして、こうした「続けたいこと」が、リフォームの優先順位を決めるヒントになります。
私の場合、10年前のリフォームでは、子どもたちとの生活を中心に、「家族みんなが集まれる場所」を大切にしました。今は家族それぞれの生活時間が変わり、以前とは家の使い方が違います。
それでも、「家で気持ちよく過ごしたい」という部分は変わりません。
だから、これから家を考えるなら、「何を新しくするか」よりも先に、自分がこれからも大切にしたい時間は何かを考えてみましょう。
これは、リフォームの話であると同時に、これからの人生を考える話でもあります。私は、「これからどこで、どんなふうに暮らしたいか」を考えることも、終活の一部だと考えています。
まだ先のことだからと避けるのではなく、元気な今だからこそ、自分の希望を考えておく。
その希望を実現するために、今の家に手を入れる必要があるなら、リフォームを考える。逆に、今の家で十分なら、無理に工事をする必要はないと考えています。
「何を直すか」の前に、「何を大切にして暮らしたいか」。
ここが見えてくると、リフォームにかけるお金や手間についても、判断しやすくなります。
次の章では、こうした「これからの暮らし」を考えるときに意識したい、住まいの考え方を取り上げます。介護が必要になったときのためだけに家を変えるのではなく、できるだけ長く、自分で暮らせる家にしておくという視点です。
この章のまとめ
50代のリフォームは、工事する場所を決めるところから始めなくても大丈夫です。
まず考えたいのは、
「10年後、誰と、どこで、どんなふうに暮らしていたいか」
ということ。
そして、今の家の中にある「ちょっと不便」を見つけ、これからも続けたい暮らしを考えてみる。
これらのポイントを考えるだけでも、住まいに求めるものが少しずつ見えてきます。
未来を完璧に予測する必要はありません。10年前の私が今の暮らしを正確に想像できなかったように、10年後の自分を完全に予測することはできないからです。
それでも、「こういう暮らしは続けたい」という軸を持っていれば、その時々で住まいを選び直すことができます。
次の章では、その軸を支える住まいの考え方、「介護される家」ではなく「自分で暮らせる家」について考えます。
第3章 50代からのリフォームは「介護される家」より「自分で暮らせる家」を目指す

50代からのリフォームでは、最初から「介護される家」をつくる必要はありません。むしろ、できるだけ長く、自分で動き、自分らしく暮らせる家を目指すことが大切です。
「老後のために手すりを付ける」「車いすでも使えるようにする」と考えると、リフォームが急に遠い将来の話に感じられます。
でも、「転ばない」「無理をしない」「毎日の動作を少し楽にする」と考えれば、50代の今からできることは意外と身近にあります。
国土交通省の「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」(2019年)は、目指す住まいの姿として、
「長く健康に暮らせる住まい」
「自立して自分らしく暮らせる住まい」
「介護が必要になってからも暮らせる住まい」
「次世代に継承できる良質な住まい」の4つを挙げています。介護への備えは、そのうちの1つです。
「介護される家」ではなく「自分で暮らせる家」
50代のリフォームで考えたいのは、「介護が必要になったときにどうするか」だけではありません。介護が必要になる前から、自分で暮らし続けやすい家にしておくことが1つの考え方になります。
「高齢になったら、誰かに介助してもらうことになる」
そんな前提で住まいを考えると、手すりや車いす、介助スペースなどに目が向きます。
もちろん、将来それらが必要になる可能性はあります。ただ、そこだけを考えるのは少しもったいない。
その前に、「できるだけ自分で生活できる状態を長く保つには、今の家に何が必要だろう」と考えてみます。
たとえば、次のようなことです。
- 毎日使うトイレまでの動線が短い
- 階段を上り下りしなくても生活できる場所がある
- 浴室や脱衣所が寒すぎない
- 玄関で靴を履いたり脱いだりするときに、無理な姿勢を取らなくていい
こうした工夫は、介護が必要になってからだけ役立つものではありません。今の自分にとっても、暮らしやすさにつながります。
私自身、約10年前に家をリフォームしたとき、家の中の段差をなくしました。
当時は、同居することになった高齢の義祖母の負担を減らしたい、そして、まだ小さかった子どもたちにも安全な家にしたい、という気持ちからでした。「将来の介護のために」と、先を見据えていたわけではありません。
それから年月がたち、家族の介護が必要になったとき、その段差の少なさが思いがけず役立ちました。
介護を受ける家族にとっても、介助する側にとっても、家の中を移動しやすいことは大きな意味を持ちます。
「将来のため」と考えて用意したわけではないものが、後になって家族を助けてくれることがある。
この経験から、私は50代のリフォームを「介護仕様の家をつくること」ではなく、今の暮らしを少し楽にしながら、将来の選択肢も残しておくことと考えるようになりました。
転ばない、無理をしない、我慢しない
50代の住まいでは、大きなバリアフリー工事だけでなく、日常の中にある「無理」を減らすことが大切です。転倒しにくく、無理な動作を減らし、暑さや寒さを我慢しなくていい家は、今現在の暮らしにも役立ちます。
たとえば、階段。今は普通に上り下りできても、荷物を持っているときや、夜中に急いで移動するときには、少し怖いと感じることがあります。
浴室も同じです。「冬のお風呂は寒いけれど、まあこんなもの」と我慢している人もいるでしょう。
キッチンなら、長時間立ちっぱなしになること。洗濯なら、洗濯機から物干し場まで何度も往復すること。収納なら、高い場所や低い場所にあるものを無理な姿勢で出し入れすること。
こうした1つひとつは、小さなことです。けれど、家で暮らすというのは、その小さな動作を毎日何度も繰り返すことでもあります。
国土交通省のガイドラインは、住まいの改修で配慮すべき項目を8つに整理しています。「温熱環境」「外出のしやすさ」「トイレ・浴室の利用のしやすさ」「日常生活空間の合理化」「主要動線上のバリアフリー」「設備の導入・更新」などです。このうち「温熱環境」は、特に重要な項目とされています。

※国土交通省 「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」より
つまり、「段差をなくせばバリアフリー」という単純な話ではありません。
家の中で、毎日どんな動きをしているのか。そこに目を向けることが、50代のリフォームを考えるうえで大切になります。
だから、今は問題なくできることでも、「この動作を10年後も続けているかな」と一度考えてみる。
その視点があれば、今のうちに暮らし方を変えるだけで済むこともあります。
たとえば、次のようなことです。
- よく使うものを取り出しやすい場所へ移す
- 洗濯物を運ぶ距離を短くする
- 夜に使う照明を見直す
- 家具の配置を変えて、通り道を広くする
必ずしも、すぐに大がかりなリフォームが必要なわけではありません。
「リフォームしなければ解決できないこと」と「暮らし方を変えれば解決できること」を分けて考える。
それだけでも、住まいとの付き合い方が変わってきます。
今の快適さと、将来の安心を両立する
50代のリフォームでは、「将来のために今を我慢する」のではなく、今の快適さを高めながら、将来も暮らしやすい住まいをつくることを目指します。
「老後のため」と考えすぎると、今は必要のない設備まで先回りして付けたくなることがあります。反対に、今だけを考えると、数年後にまた工事が必要になる可能性もあります。
その間にあるのが、「今も使うし、将来も役立つ」という視点です。
たとえば、次のようなことです。
- 冬の寒さが気になる家なら、断熱を考える
- 階段や廊下が不安なら、今の生活で邪魔にならない形で手すりなどを検討する
- ドアの開閉が負担なら、将来的な使いやすさも考えて建具を見直す
こうした工夫は、「高齢者になったときのため」だけではありません。今の自分が快適に暮らすためにも意味があります。
ここで大切なのは、すべてを一度に整える必要はないということです。
家によって、築年数も間取りも予算も違います。戸建てなのかマンションなのかによっても、できることは変わります。だから、「50代ならここまでリフォームする」という一律の基準はありません。
私自身、10年前のリフォームで「やっておいてよかった」と感じることがある一方、「今ならこちらも考えたかった」と思うところがあります。
たとえば、1階に入れた床暖房です。
当時は家族が1階に集まって過ごすことを想定していたので、1階に床暖房を入れました。実際に使ってみると想像以上に快適で、私自身は床暖房のある1階の暖かさを気に入っています。
ところが、それから年月がたち、家族の生活スタイルが変わって、1階は両親世帯、私たち世帯は2階で過ごす時間が増えました。2階には床暖房を入れていないので、少し不便に思っています。
今振り返れば、「家族が今どこで過ごしているのか」まで考えておけばよかったと思います。
この経験からわかるのは、未来を完璧に予測することではなく、その時点での暮らしに合った選択をしながら、後から変えやすい余地を残しておくことの大切さです。
リフォームは、一度工事をすると、簡単にやり直せない部分もあります。
だからこそ、50代では、何でも先回りして固定するよりも、今の暮らしを快適にしながら、将来の変化にも対応しやすい住まいを考える。そのほうが、長い目で見たときに無理がありません。
この章のまとめ
50代からのリフォームは、介護が必要になったときのためだけに考えるものではありません。
目指したいのは、できるだけ長く、自分で動き、自分らしく暮らせる家です。
そのためには、次のような視点から、今の住まいを見直してみます。
- 転びにくい
- 無理な動作が少ない
- 暑さや寒さを我慢しない
- 毎日の家事がしやすい
- 将来、必要になったときにも対応しやすい
そして、すべてをリフォームする必要もありません。家具の配置を変えるだけで解決することもあれば、生活動線を見直すことで楽になることもあります。
それでも「ここは変えたほうがいい」と感じる場所があれば、そこがリフォームを検討する候補になります。
次の章では、実際に家の中を歩きながら、玄関、廊下、階段、トイレ、浴室、キッチンなど、どこを見ればいいのかを具体的に確認していきます。先ほど紹介した国土交通省の配慮項目も、チェックの手がかりになります。
まずは、家を「部屋」ではなく、自分が毎日歩いている「道」として見ることから始めます。
第4章 50代のリフォームはどこから? まずは家の中を歩いてチェックしよう

50代のリフォームを考え始めたら、最初にすることは業者に相談することでも、リフォーム費用を調べることでもありません。
まずは、自分の家を実際に歩いてみること。
家の中をいつものように歩きながら、「ここは少し不便だな」「10年後も、この動きができるかな」と見ていくと、リフォームを考えたい場所が少しずつ見えてきます。
前章でも挙げましたが、国土交通省の「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」は、住まいの改修で配慮したい項目を8つに整理しています。「温熱環境」「外出のしやすさ」「トイレ・浴室の利用しやすさ」「日常生活空間の合理化」「主要動線上のバリアフリー」「設備の導入・更新」「光・音・匂い・湿度など」「余剰空間の活用」です。
ただ、最初から8項目をすべて覚える必要はありません。もっと簡単に、自分の家を「毎日歩いている道」として見てみましょう。
玄関・廊下・階段
玄関・廊下・階段では、「毎日、安全に移動できているか」を確認します。今は問題なくても、荷物を持ったときや夜間など、少し不安を感じる場所がないかを見てみましょう。
玄関は、家に入るときと外へ出るときに必ず通る場所です。
靴を履いたり脱いだりするときに、無理な姿勢になっていないでしょうか。上がり框(あがりかまち)の段差は気にならないでしょうか。
廊下では、家具や物が通り道を狭くしていないかも確認します。
そして、意外と見落としやすいのが階段です。
今は普通に上り下りしていても、洗濯物や買い物袋を持っているとき、夜中に急いでいるときにはどうでしょう。手すりの位置や照明、足元の見え方なども、一度立ち止まって見てみます。
「今は大丈夫」だけでなく、「少し疲れている日でも無理なく歩けるか」。そんな目で見ると、普段は気づかなかったことが見えてきます。
トイレ
トイレでは、「夜でも無理なく行けるか」「立ったり座ったりしやすいか」を確認します。特に寝室からトイレまでの距離や、夜間の照明は一度見直したいポイントです。
50代になると、若いころには気にしなかったことが少しずつ変わってきます。夜中にトイレへ行くことも、その1つです。
寝室からトイレまでの距離は遠くないでしょうか。
廊下は暗くないでしょうか。
トイレの中で立ち上がるとき、壁や手すりなどにつかまりたくなる場所はないでしょうか。
今すぐ手すりが必要という意味ではありません。むしろ、「もし今より少し足腰が弱くなったら、このトイレはどうだろう」と想像してみることが大切です。
トイレは毎日何度も使う場所だからこそ、ほんの少しの使いにくさでも、長い目で見ると大きな負担になります。
国土交通省のガイドラインでも、寝室からトイレまで行きやすくすることが、配慮項目の1つに挙げられています。
トイレを見るときは、「きれいか、古いか」だけではなく、「毎日の動作が無理なくできるか」を見てみましょう。
浴室・洗面所
浴室・洗面所では、「寒さ」「濡れた床」「またぎ動作」など、毎日の小さな負担を確認します。特に冬の寒さや、浴室と脱衣所の温度差は、50代から意識しておきたいポイントです。
冬の夜、脱衣所に入った瞬間に「寒い」と感じることはありませんか。
浴室の床は滑りやすくないでしょうか。
浴槽をまたぐとき、足を高く上げる必要はないでしょうか。
洗面所では、洗濯機から物干し場までの距離や、洗濯物を置く場所も見てみます。洗濯物を運ぶ負担は、ここまでの章でも触れたとおりです。
浴室や洗面所は、毎日使う場所だからこそ、「今はできる」だけで判断せず、少し先の自分の動きも想像してみたいところです。
国土交通省のガイドラインでは、「トイレ・浴室の利用しやすさ」が独立した配慮項目になっています。トイレ、脱衣室、浴室の温熱とバリアフリーの両方から整えることがポイントです。
「寒いけれど我慢している」「少し使いにくいけれど慣れている」。そんな場所がないか、探してみましょう。
キッチン
キッチンでは、「立つ・かがむ・手を伸ばす・運ぶ」という動作に無理がないかを確認します。毎日使う場所だからこそ、少しの負担が積み重なっていないかを見ることが大切です。
シンクの前に立ったとき、長時間立ち続けるのがつらくないでしょうか。
よく使う鍋や食器が、高い場所や低い場所にありませんか。
冷蔵庫から食材を出して、シンク、コンロ、食卓まで運ぶ動線はどうでしょう。
50代になると、キッチンそのものの古さよりも、「使うたびに少し疲れる」という感覚が気になることがあります。
収納も同じです。奥にしまったものを取り出すために、毎回しゃがみ込んだり、背伸びをしたりしていないでしょうか。
こうした小さな動作は、一度なら気になりません。けれど、毎日繰り返すとなれば話は変わります。
キッチンを見るときは、「新しいシステムキッチンが必要か」ではなく、「今の自分は、ここでどんな動きをしているか」から見てみます。
それだけでも、収納の位置を変えるだけで解決できることが見つかるかもしれません。
リビング・寝室
リビング・寝室では、「これから家で過ごす時間が増えても、無理なく暮らせるか」を確認します。特に、子どもの独立などで家の使い方が変わった50代は、今の間取りが現在の暮らしに合っているかを見直すタイミングです。
子どもが成長すると、使わなくなった部屋が出てくることがあります。反対に、家族それぞれの生活時間が変わり、以前は使わなかった場所が生活の中心になることもあります。
私の家でも、約10年前のリフォームのときに考えていた使い方と、今よくいる場所は同じではありません。第3章で書いたとおり、我が家では、床暖房を入れた1階より、2階で過ごす時間が増えました。
この経験から、家を見るときには「部屋が何室あるか」だけではなく、「実際にどこで過ごしているか」を見ることが大切だと感じています。
リビングの家具は通り道を狭くしていないでしょうか。
寝室は、将来も使いやすい場所にあるでしょうか。
ほとんど使っていない部屋があるなら、その部屋をこれからどう使いたいでしょうか。
国土交通省のガイドラインでも、日常的な生活空間をコンパクトにまとめ、余った部屋は収納や趣味、交流などの別の使い方を工夫することが望ましいとされています。
すぐに間取りを変える必要はありません。まずは、今の暮らしと家の使われ方が合っているかを見てみます。
窓・断熱
窓・断熱では、「暑い・寒いを我慢していないか」を確認します。特に冬の窓際や脱衣所、廊下など、家の中で温度差を感じる場所を探してみましょう。
「冬はこの部屋だけ寒い」
「夏は2階が暑くて大変」
「窓の近くにいると冷える」
そんな場所はありませんか。
窓は、外の気温の影響を受けやすい場所です。窓際に立ってみると、部屋の中央とは違う寒さや暑さを感じることがあります。
国土交通省のガイドラインでは、「温熱環境」は8つの配慮項目の1つで、特に重要な項目に位置づけられています。開口部など住宅の断熱性を高めることや、部屋と廊下、トイレ、浴室などの温度差を減らすことなどが示されています。
ただし、ここでは「断熱リフォームをするべき」と結論を急がなくても大丈夫です。
まずは、家のどこで暑さや寒さを感じているのかを知ること。それが、次に何をするかを考える材料になります。
家を歩いて確認する10項目
ここまで見てきたように、50代のリフォームでは「古いところを探す」だけでは十分ではありません。今の自分が、毎日どんな動きをしているのかを確認することが大切です。
そこで、実際に家を一周しながら、次の10項目を見てみましょう。
| ✔ | チェックする場所・動作 | 見ておきたいこと |
|---|---|---|
| □ | ① 玄関 | 靴の脱ぎ履き、段差、照明、出入りのしやすさ |
| □ | ② 廊下 | 通り道の幅、物の置き方、暗い場所がないか |
| □ | ③ 階段 | 上り下り、手すり、足元の明るさ、荷物を持ったときの負担 |
| □ | ④ トイレ | 寝室からの距離、夜間の照明、立ち座りのしやすさ |
| □ | ⑤ 浴室 | 寒さ、床の滑りやすさ、浴槽のまたぎやすさ |
| □ | ⑥ 洗面・洗濯 | 洗濯物を運ぶ距離、収納、かがむ・持ち上げる動作 |
| □ | ⑦ キッチン | 立ち続ける負担、収納の高さ、家事動線 |
| □ | ⑧ リビング・寝室 | 家具の配置、通り道、これからの使い方 |
| □ | ⑨ 窓・室温 | 暑さ・寒さ、窓際の冷え、部屋ごとの温度差 |
| □ | ⑩ 使っていない部屋 | 今後の使い道、収納・趣味・寝室などへの活用 |
ダウンロードしてチェックできる一覧表も作成しました。よかったら活用してください。
ポイントは、「危ないところを探そう」と力を入れすぎないことです。いつものように歩いてみて、「ここ、ちょっと面倒だな」と感じたところに印をつけていけば十分です。
たとえば、次のような一言で構いません。
- 洗濯物を2階まで運ぶのが重い
- 夜、廊下が暗い
- 冬の脱衣所が寒い
- 使っていない部屋がある
この段階では、リフォームするかどうかまで決めなくても大丈夫です。むしろ、ここで工事まで決めてしまわないほうがいい。
「困っていること」と「こうなったらいいな」を一度分けて書き出しておくと、次にリフォームの優先順位を考えるときに役立ちます。
国土交通省のガイドラインは、8つの項目のうち、健康で快適な暮らしへの寄与度が大きく、早めの改修が重要な4つを「特に重要」としています。また、項目同士は関連しているので、1つに限らず広く検討することが望ましいとしています。
とはいえ、8つの項目は、すべてを工事するための一覧ではありません。自分の家を見るための手がかりとして使えば十分です。
だから、家を一周して何も気にならなかったとしても、それはそれで1つの答えです。反対に、いくつも気になる場所が見つかったなら、その中から「今すぐ困っていること」と「将来に備えて考えたいこと」を分けてみます。
ここまでできれば、50代のリフォームはもう始まっています。
工事を始めることが、リフォームのスタートではありません。自分の家を、自分のこれからの暮らしという視点で見直す。その小さな一歩が、住まいを整えるきっかけになります。
この章のまとめ
50代のリフォームは、いきなり業者に相談するところから始めなくても大丈夫です。
まずは、自分の家を実際に歩いてみる。玄関、廊下、階段、トイレ、浴室、洗面所、キッチン、リビング、寝室、窓。
普段何気なく使っている場所を、「今の自分にとって使いやすいか」「10年後も無理なく使えそうか」という視点で見てみます。国土交通省のガイドラインにある8つの配慮項目も、そのための手がかりになります。
そして、気になる場所が見つかったからといって、すぐにリフォームする必要はありません。家具を動かすだけでいいこともあります。収納場所を変えるだけで楽になることもあります。
それでも「ここは家そのものを変えたほうがいい」と感じたところがあれば、そこがリフォームを考える候補です。
次の章では、今回確認した中でも特に取り上げたい「暑さ・寒さ」と「段差」について、もう少し具体的に考えていきます。
50代のリフォームでは、見た目を新しくするだけでなく、これからも無理なく暮らせる住まいにすることが大切です。そのために、今の家で「我慢していること」を1つ見つけてみる。そこから、次の一歩を考えていきましょう。
第5章 50代から考えたい「高断熱」と「バリアフリー」|暑さ・寒さ・段差の備え

50代のリフォームでは、「将来、介護が必要になったらどうするか」だけでなく、今の自分がこれからも無理なく暮らせるかという視点が大切です。
そのために考えたいのが、「バリアフリー」と「温熱環境」です。
段差をなくす、手すりを付けるといったバリアフリーだけでなく、冬に寒すぎない、夏に暑すぎない、家の中で温度差が大きすぎないといったことも、これからの住まいを考えるうえで重要になります。
国土交通省の「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」でも、「温熱環境」と「主要動線上のバリアフリー」は、住まいの改修で配慮すべき項目として挙げられています。
では、50代の今から、どこまで考えればいいのでしょうか。
バリアフリーは「介護が必要な人」だけのものではない
バリアフリーは、介護が必要になってから考えるものではありません。今の暮らしの中にある「ちょっとした無理」を減らすことも、バリアフリーの1つの考え方です。
「バリアフリー」と聞くと、車いすで生活できる広い廊下や、たくさんの手すりを思い浮かべる人もいるでしょう。もちろん、それらが必要になる場合もあります。でも、50代の今から考えるなら、もっと身近なところから始められます。
- 玄関で靴を履くときに、深くかがまなくてもいい
- 階段を上り下りするときに、つかまれる場所がある
- 夜、トイレへ行く廊下が暗くない
- 家具を少し移動させて、家の中を歩きやすくする
こうした工夫は、介護が必要になった人だけのためのものではありません。荷物を持っているとき、足元が少しふらつくとき、夜中に眠い状態で歩くとき、体調がすぐれないとき。普段なら何でもない動作が、少しだけ負担になる場面は誰にでもあります。
段差も、身近な例です。玄関の上がり框(あがりかまち)、浴室の出入り口、部屋と部屋の間の敷居など、家の中には小さな段差が意外とあります。毎日何度も通る場所だからこそ、つまずきやすさや、荷物を持っているときの不安を、一度確認してみましょう。
50代のうちに住まいを見直すメリットは、「まだ困っていないからこそ、自分で選べる」ことです。
必要になってから慌てて手すりを付けるのではなく、今の生活で邪魔にならない場所や、将来取り付けやすい場所を考えておく。国土交通省のガイドラインでも、高齢期に備えて早い段階から住まいや住まい方を選択し、必要に応じて改修することが望ましいとしています。
だからといって、「50代ならバリアフリーリフォームをしなければならない」という意味ではありません。
今の自分にとって、少し無理をしている場所はどこか。まず、そこを見つけることから始めれば十分です。
暑さ・寒さも住まいの問題
50代のリフォームでは、段差や手すりだけでなく、「家の中で暑さや寒さを我慢していないか」も見直したいポイントです。特に冬の浴室や脱衣所、廊下、窓際などは、リビングとの温度差を感じやすい場所です。
「冬の脱衣所は寒いけれど、短時間だから」
「トイレが寒いけれど、昔からこういうもの」
「夏の2階は暑いけれど、エアコンをつければいい」
そんなふうに、家の温度を我慢していないでしょうか。
私の家では、10年前のリフォームで1階に床暖房を入れました。想像以上に快適でしたが、今は家族の過ごす場所が変わり、2階にいる時間が増えていて、今になって2階にも床暖房を入れておけばよかったと思う時があります。「実際に暮らしている場所の快適さまで考えておけばよかった」と感じる点です。
国土交通省のガイドラインは、温熱環境の改修として、開口部など住宅の断熱性を高め、暖冷房設備を適切に設置すること、部屋と廊下・トイレ・浴室などの温度差を減らすこと、住まい全体の暖冷房ができるように間取りなどを工夫することを挙げています。1階だけを暖かくするのではなく、家の中でどこで過ごすかも含めて考える。そんな視点です。10年前の私は持っていませんでした。
「高断熱」とは、窓や壁、床、天井などの断熱性を高めて、室内の暖かさや涼しさを保ちやすくすることです。
とはいえ、「家の性能を高くしなければ」と大きな話にする前に、まずは自分の家のどこが寒いのか、どこが暑いのかを知ってみましょう。
- 窓の近くに立ったときに冷気を感じる
- 脱衣所だけ極端に寒い
- 2階だけ夏の暑さが厳しい
- 朝、寝室から出ると廊下が寒い
こうした実感は、リフォームを考えるうえで大切な材料になります。
国土交通省のガイドラインでも、温熱環境は8つの配慮項目の1つで、特に重要な項目として位置づけられています。
つまり、断熱は単に「光熱費を節約するため」の話ではありません。これから家で、どれだけ快適に過ごせるかという話でもあるのです。
「将来のため」と「今の快適さ」を両立する工事とは
50代のリフォームでは、「将来のために今を我慢する」のではなく、今も使えて、将来も役立つ工事を優先するという考え方が現実的です。
その優先順位を考えるときの、3つの視点があります。
① 今も使う
② 今も快適になる
③ 後から変更しやすい
たとえば、夜の廊下が暗いなら、照明を見直す。今すぐ効果があり、将来も役立ちます。窓の断熱改修は、今感じている冬の寒さや夏の暑さを軽くすることが目的になります。手すりは、現在の生活で使いやすい位置を考えながら、将来の身体の変化にも対応できるようにします。玄関での靴の脱ぎ履きが負担なら、座れる場所をつくる方法もあります。
設備を選ぶときも、「高齢者向けだから」という理由だけで選ぶのではなく、今の自分にとって使いやすいかを見ます。
一方で、「将来のためだから」と何でも先回りして工事しすぎないことも大切です。10年後の暮らしを正確に予測することはできないので、今すぐ必要なことと、将来必要になるかもしれないことを分けて考えます。例えば、手すりひとつについて考えてみましょう。とりあえず右側につけておくことにしても、右側が不自由になって左側につけておいたほうがよかった、ということがあります。そういう場合を想定すると、初めから手すりをつけてしまうより、手すりをつけることになっても対応できるよう壁を補強しておく方がいい場合もあります。
「老後のためのリフォーム」と考えると重くなりがちですが、これから長く暮らす家を、今のうちに整えるという発想に変わってくるでしょう。
すべてを一度に工事する必要もありません。家の状態や築年数、間取り、予算によって優先順位は変わります。
まずは「ここは今のうちに直したい」と思う場所に注目してみましょう。それから、工事をする場合と、暮らし方を変える場合の両方を比べてみる。この順番なら、必要以上にリフォームを急がずに済みます。
なお、断熱窓などの省エネリフォームには、2026年も国の支援制度があります。実際に工事を考える段階では、その年度の制度や対象条件、受付状況を確認することが大切です。制度については、この記事の後半で、補助金と相談先をまとめます。
この章のまとめ
50代からのリフォームで考えたいのは、「介護が必要になったときのための家」だけではありません。今の自分が無理なく暮らせて、その先の暮らしにもつながる家を考えることが大切です。
そのために、まず意識したいのは次の4つです。
- 転びにくく、移動しやすいこと
- 無理な姿勢や動作を減らすこと
- 暑さや寒さを我慢しないこと
- 今も将来も使いやすい設備を選ぶこと
バリアフリーも断熱も、「高齢者になったら必要なもの」と考えると、まだ先の話に感じます。でも、「今の暮らしを少し楽にするもの」と考えれば、50代から検討する理由が見えてきます。
未来の正解を当てる必要はありません。今の暮らしを少し良くしながら、将来の選択肢を残しておく。50代のリフォームでは、そのくらいの距離感がちょうどいいのだと思います。
次の章では、いよいよ気になる「お金」の話です。リフォーム費用と、これからの生活に残しておきたいお金のバランスについて、「どこにお金をかけるか」ではなく「これからの暮らしのために、何を優先するか」という視点で考えていきます。
第6章 50代のリフォーム費用はいくら? 老後資金とのバランスの考え方

50代でリフォームを考えるとき、気になるのが「いくらかかるのか」ということです。
実際のところ、リフォーム費用は工事する場所や住宅の状態によって大きく変わるため、「50代なら○万円」と1つの金額で考えることはできません。
参考として、国土交通省の令和7年度「住宅市場動向調査」を見てみます。2024年度(2024年4月~2025年3月)にリフォームを行った世帯(首都圏・中京圏・近畿圏の三大都市圏)のリフォーム資金は、平均170万円、中央値70万円でした。
ただし、この調査は50代だけを対象にしたものではありません。リフォーム実施世帯では、世帯主の年齢が「60歳以上」の世帯が最も多くなっています。しかも、リフォームにはトイレだけを交換するような小規模な工事から、住宅全体に手を入れる工事まで含まれます。
だから、この数字を見て「50代のリフォームには170万円必要」と考えるのは適切ではありません。
50代だからこそ考えたいのは、いくら使えるかだけではなく、これからの暮らしにいくら残しておきたいかということです。
すべてを一度にリフォームしなくていい
50代のリフォームは、家全体を一度に新しくする必要はありません。「今、困っている場所」から優先順位をつけて、必要なところだけ手を入れる方法があります。
前の章で家の中を歩いてみると、気になる場所がいくつか見つかったのではないでしょうか。
- 浴室が寒い
- 洗濯物を運ぶのが大変
- 階段が少し気になる
- 窓際が暑い、寒い
- キッチンの収納が使いにくい
家を見直してみると、あれもこれも直したくなることがあります。でも、そこで一度立ち止まります。すべてを直そうとすると、当然ながら費用も大きくなります。
たとえば、「浴室の寒さがつらい」という場合。浴室だけを改修するのか、脱衣所も含めて考えるのか、窓や断熱まで手を入れるのか。同じ「浴室が寒い」という悩みでも、工事の範囲によって費用は変わります。
だから、最初から「家をリフォームする」と考えるより、「私は、どの不便を解決したいのか」と考えるほうが、必要な工事を絞りやすくなります。
平均170万円に対して中央値が70万円と、リフォーム費用には大きな幅があります。平均値だけでは、実際の工事規模をイメージしにくいということです。
「ここだけは直したい」という場所が決まれば、次はその工事にいくらかかるのかを調べればいい。それなら、必要以上に大きなリフォームを考えずに済みます。
「今やること」と「10年後でもいいこと」を分ける
50代のリフォームでは、今すぐ必要な工事と、将来でも間に合う工事を分けて考えることが大切です。10年後の暮らしを完璧に予測できないからこそ、今の生活に必要なものから優先します。
たとえば、今すでに浴室の寒さが気になっているなら、今の暮らしにも関係する問題です。一方、「10年後には手すりが必要になるかもしれない」という程度なら、今すぐ工事をするのではなく、取り付けやすい環境だけ整えておくという方法もあります。
前の章でも書いたように、50代のリフォームは「将来のために何でも先回りする」ことが目的ではありません。
- 今も使う
- 今も快適になる
- 後から変更しやすい
そんな工事を優先すると、使ったお金にも納得しやすくなります。
だからこそ、今必要なものを選びながら、後から変えられる余地を残すことも大切だと感じています。
| 今やること | 将来でも検討できること |
|---|---|
| 今すでに困っている場所の改善 | 今は困っていない設備の追加 |
| 毎日使う場所の安全性・快適性を高める | 将来必要になるかもしれない設備 |
| 暑さ・寒さなど現在の負担を減らす | 家族構成が変わってからの間取り変更 |
| 今の暮らしに合った収納や動線の改善 | 使い方が決まっていない部屋の大規模改修 |
もちろん、住宅の状態によって優先順位は変わります。築年数が古く、耐震性や雨漏りなど、先延ばしにできない問題がある場合は、快適性より先に確認すべきことがあります。反対に、今の家に大きな問題がなければ、急いで大規模なリフォームをする必要はありません。
「今やるべきこと」と「まだ決めなくていいこと」を分ける。
これだけでも、リフォームに対する気持ちはかなり整理されます。
リフォーム費用と老後資金を一緒に考える
50代のリフォームでは、工事費だけでなく、リフォームしたあとに残るお金まで含めて考えることが大切です。
50代は、まだ働いている人が多い一方で、子どもの教育費、住宅ローン、親のこと、そして自分たちのこれからのお金も気になり始める時期です。「家を快適にしたい」という気持ちはあっても、家にお金をかけすぎて、その後の生活が苦しくなってしまえば本末転倒です。
だから私は、リフォーム費用を考えるときに、「この工事はいくらかかる?」だけでなく、「このお金を使ったあと、私はどんな暮らしをしたい?」と考えることをおすすめします。
たとえば、300万円のリフォームをするとします。300万円という金額だけを見ると、大きいと感じるでしょう。でも、その工事によって毎日の負担が減り、10年、20年と住み続けることができるなら、その意味は変わります。反対に、見た目を新しくしたいという理由だけで大きな費用をかけ、その後の生活費や、やりたいことを我慢することになれば、別の選択肢も考えたほうがいい。
リフォームは、「家にいくらかけられるか」だけで決めるものではありません。
国土交通省の令和7年度調査では、リフォーム実施世帯(三大都市圏)のリフォーム資金は平均170万円で、そのうち自己資金は平均143万円、自己資金比率は84.2%でした。リフォーム資金の8割強は、手元のお金でまかなっているということです。
ただし、これもリフォーム実施世帯全体の調査結果です。50代の人が同じ金額を用意すればいい、という意味ではありません。むしろ、この数字から考えたいのは、自己資金でリフォームする人が多いからこそ、手元のお金とのバランスが大切だということです。
たとえば、これから必要になるお金を一度書き出してみます。
- 日々の生活費
- 住宅の維持費
- 子どもの教育や独立にかかる費用
- 車などの買い替え
- 親のことに必要になる可能性がある費用
- 自分たちの医療や介護に備えるお金
- 旅行や趣味など、これからやりたいこと
そのうえで、「この家にあと20年、30年住むなら、どこにお金をかけたいか」を考える。すると、リフォーム費用を単独で考えるよりも、判断しやすくなります。
たとえば、「浴室の改修にはお金をかけたい。でも、まだ使えるキッチンは今のままでいい」という判断になるかもしれません。あるいは、「大規模なリフォームをするより、今は必要な場所だけ直して、残りのお金はこれからの生活に残したい」という選択もあります。
どちらが正解ということではありません。家の状態も、収入も、貯蓄も、これからやりたいことも、人によって違うからです。
だから、50代のリフォームで大切なのは、「いくら使ったか」ではなく、「これからの暮らしに納得できるお金の使い方だったか」です。
これは、終活という視点ともつながります。自分がこれからどこで暮らし、何にお金を使い、どんな生活を続けたいのかを考えることも、自分の未来を整える1つの作業です。リフォーム費用を考えることは、単なる家の出費を計算することではなく、「これからの人生で、何を大切にしたいか」の優先順位を考える機会でもあります。
なお、ここで書いているのは一般的な考え方です。実際の資金計画は、家計の状況によって異なります。必要に応じて、ファイナンシャルプランナーなどの専門家にも相談してください。
この章のまとめ
50代のリフォーム費用には、「50代なら○万円」という決まった答えはありません。国土交通省の調査(三大都市圏)の平均170万円や中央値70万円も、50代に限らない、工事規模もさまざまな世帯全体の結果です。
大切なのは、次の3つを分けて考えることです。
- ① 今、困っていること
- ② 10年後でも間に合うこと
- ③ リフォーム後も残しておきたいお金
すべてを一度に工事する必要はありません。今の暮らしを少し楽にする工事から始める方法もあります。反対に、大きなリフォームをすることで、この先20年、30年を快適に暮らせるなら、それも1つの選択です。
そして、もう1点忘れたくないのが、「リフォームしない」という選択肢もあるということ。家の状態やこれからの暮らしを考えた結果、今の家には手を入れず、住み替えや建て替えを考える場合もあります。
まずは今日、家の中を歩いて見つけた「ここは直したい」という場所を、1つだけメモしてみる。その1つが、リフォームにいくらかけるかを考える最初の材料になります。
次の章では、リフォームをすると決めたときに気になる「補助金は使えるのか」「どこに相談すればいいのか」を整理します。補助金があるから工事をするのではなく、必要な工事を考えたうえで、使える制度があるかを確認する。そんな順番で考えていきましょう。
第7章 50代のリフォームで使える補助金と相談先【2026年版】

「リフォームには補助金が使える」と聞くと、少し気持ちが軽くなるかもしれません。
ただし、補助金は「50代だからもらえる」というものではありません。工事の内容や住宅の条件、制度の対象になる製品などによって、利用できるかどうかが決まります。
だからこそ、順番が大切です。
これまでの章で考えてきたように、まずは「この家でこれからどう暮らしたいか」「今の家のどこを整えたいか」を考える。そのうえで、必要な工事に使える制度がないかを確認する。
ここでは、2026年の制度を中心に、50代のリフォームで知っておきたい補助制度と、見積もりを取る前に相談できる場所を整理します。なお、この章の内容は2026年10月時点の情報です。
省エネリフォームの補助制度
2026年のリフォームでまず確認したいのが、国の「住宅省エネ2026キャンペーン」です。窓などの開口部の断熱と高効率給湯器を中心に、幅広い工事が補助の対象になっています。
リフォームで確認したい主な事業は、次の3つです。
| 制度 | 主な対象 | 補助上限など | 主な条件 |
|---|---|---|---|
| みらいエコ住宅2026事業 | 断熱改修など幅広い省エネリフォーム | 住宅の新築時期とリフォーム内容に応じて40万~100万円 | 平成28年(2016年)以前に新築された住宅。断熱改修などの必須工事が必要。合計補助額が5万円未満の場合は申請できない |
| 先進的窓リノベ2026事業 | 内窓設置、ガラス交換、外窓交換など | 1戸あたり100万円 | ガラス交換・内窓設置・外窓交換のいずれかが必要(ドア交換のみは申請不可) |
| 給湯省エネ2026事業 | 高効率給湯器の設置 | 戸建住宅は2台まで | — |
いずれも、細かな対象条件があります。2025年11月28日以降に着手した工事が対象です。
ここで50代の人に知っておいてほしいのは、2026年の住宅省エネキャンペーンのリフォームは、子育て世帯に限らず、すべての世帯が対象になっていることです。築20~30年の持ち家なら、みらいエコ住宅2026事業の「平成28年以前に新築された住宅」の条件にも当てはまる可能性があります。
たとえば、
- 冬の脱衣所が寒い
- 夏になると2階が暑すぎる
- 窓の近くにいると冷気を感じる
- 古い給湯器をそろそろ交換したい
- 将来もこの家で暮らすなら、今のうちに断熱しておきたい
そんな「暮らしの不便」があるなら、単に新しい設備に交換するのではなく、省エネリフォームとして対象になるかを確認する価値があります。
ただし、補助金には期限と予算の上限があります。交付申請の予約は遅くとも2026年11月16日まで、交付申請は遅くとも2026年12月31日までです。しかも、予算の上限に達した時点で受付が終了します。予算に対する申請額の割合は、公式サイトで毎日公表されています。
また、補助金の申請は、自分で行うことはできません。登録された「住宅省エネ支援事業者」(工事の施工者)が手続きを行います。
つまり、「補助金があるらしいから、工事が終わってから調べよう」では遅くなる可能性があります。
リフォームを考え始めた段階で、補助制度の対象になる工事なのか、申請をしてくれる事業者なのかを確認する。
このくらいの意識で十分です。
バリアフリーに関する制度
バリアフリーリフォームについては、介護保険の住宅改修費という制度があります。ただし、これは50代なら誰でも利用できる制度ではなく、要支援・要介護認定を受けている人が対象です。
対象となる住宅改修には、たとえば次のようなものがあります。
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 滑りにくく、移動しやすくするための床材の変更
- 引き戸などへの扉の取り替え
- 洋式便器などへの便器の取り替え
住宅改修費の支給限度基準額は20万円です。このうち、所得に応じて7~9割が介護保険から支給され、1~3割が自己負担になります。
ここで注意したいのが、「将来、介護が必要になるかもしれないから、今のうちに介護保険を使ってリフォームしておこう」とはならないことです。
介護保険の住宅改修は、現在の身体状況や介護の必要性に応じて利用する制度だからです。
また、工事の前に、ケアマネジャーが作成する「住宅改修が必要な理由書」などを添えて、自治体へ事前申請をする必要があります。自治体の確認が出る前に工事を始めると、支給の対象外になります。工事内容を決める前に、ケアマネジャーや自治体の介護保険窓口へ相談することが大切です。
一方で、国の省エネ補助にも、手すりの設置や段差解消といったバリアフリー改修への補助があります。ただし、これは断熱改修などの必須工事とあわせて行う場合に限られ、手すりだけ、段差解消だけでは補助の対象になりません。
50代のリフォームを考えるときに、バリアフリーの視点を持っておくことには意味があります。
この記事の前半でお伝えしたように、段差をなくしたり、移動しやすい動線をつくったりすることは、「介護される家」にするためだけではありません。今の自分が無理なく暮らせることも大切です。
たとえば、玄関の上がり框の段差が少し気になる。洗面所の床が濡れると滑りやすい。夜中にトイレへ行くとき、廊下が暗い。
まだ介護が必要でなくても、「この小さな不便は10年後も大丈夫だろうか」と考えることはできます。
そして、実際に介護が必要になったときには、その時点の制度を改めて確認すればいい。
50代の今は、介護保険を使うことよりも、「将来も自分で暮らしやすい家か」という視点で住まいを見ておくことが大切です。
見積もりを取る前に確認したいこと
リフォームの見積もりを取る前に、「何のために工事するのか」を自分の中で整理しておくことが大切です。要望が曖昧なまま見積もりを取ると、金額だけを比較することになり、本当に必要な工事か判断しにくくなります。
たとえば、家の中を歩いたときに、
「洗濯機から物干し場までが遠くて大変」
ということに気づいたとします。
そこで、いきなり「洗面所をリフォームしよう」と決める必要はありません。
「洗濯の負担を減らしたい」という目的から考えれば、洗濯機の位置を変える、物干し場を近くする、乾燥機を導入するなど、いくつかの方法があります。
見積もりを依頼するときも、「洗面所をきれいにしたい」だけではなく、「洗濯にかかる移動を減らしたい」と伝えたほうが、自分の暮らしに合った提案を受けやすくなります。
見積もりは、可能であれば複数の事業者から取って比べると、内容の違いが見えやすくなります。また、見積書を受け取ったら、金額だけでなく、次の点を確認します。
- 工事する場所
- 工事の範囲
- 使用する設備や材料
- 数量
- 単価
- 工事費
- 追加工事が発生した場合の扱い
公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」では、契約前の見積書を建築士の相談員が確認する「リフォーム見積チェックサービス」を、無料で行っています。電話で回答するサービスで、申し込みから回答まで日数がかかることがあるため、契約を急ぐ前に早めに申し込むと安心です。
そして、「安い見積もりを探す」のではなく、「自分が望んでいる暮らしが、見積もりに反映されているかを見る」ことが大切です。
リフォームは、金額が安ければ正解というものではありません。必要のない工事まで含まれていないか。逆に、必要な工事が抜けていないか。見積書は、単なる「値段表」ではなく、自分の希望が工事内容に翻訳されているかを確認するためのものです。
どこに相談する?相談先の選び方
リフォームの相談先は1つではありません。「何を相談したいのか」によって、窓口を使い分けると安心です。
| 知りたいこと | 相談先 |
|---|---|
| 省エネリフォームの補助制度 | 住宅省エネ2026キャンペーン公式サイト、住宅省エネ支援事業者 |
| 自治体独自の補助制度 | 市区町村・都道府県の窓口 |
| 介護保険の住宅改修 | 市区町村の介護保険窓口、ケアマネジャーなど |
| 見積書の内容がよくわからない | 住まいるダイヤル |
| 契約や事業者とのトラブル | 住まいるダイヤル、消費者ホットライン188 |
自治体によっては、国とは別に住宅リフォームへの補助制度を設けている場合があります。国土交通省も、地方公共団体が行う住宅リフォームの支援制度を確認できるページを案内しています。ただし、国費が充当されている制度は、住宅省エネ2026キャンペーンの各事業と併用できません。制度は地域によって異なるため、最終的には住んでいる自治体への確認が必要です。
また、住宅省エネ2026キャンペーンの公式サイトでは、補助金の利用を相談できる「住宅省エネ支援事業者」を検索できます。
ただし、ここは少し注意が必要です。
「住宅省エネ支援事業者に登録されている=国が優良業者として認定している」という意味ではありません。
登録事業者であることは、補助制度を利用するうえでの確認材料の1つ。そこから先は、工事内容の説明がわかりやすいか、質問にきちんと答えてくれるか、見積書が明確かなど、自分自身の目で確かめることが必要です。
もし訪問してきた業者から突然「今なら補助金が使える」「今日契約すれば安くする」と言われたら、急いで決める必要はありません。補助金にはそれぞれ条件があります。「補助金が使える」という言葉だけでなく、どの制度の、どの工事が対象なのかまで確認しましょう。
訪問販売で契約した場合は、契約から8日以内ならクーリング・オフができます。契約や事業者とのやりとりで困ったときは、全国共通の消費者ホットライン「188」で、最寄りの消費生活相談窓口につながります。
そして、わからないまま契約しないこと。
「こんなことを聞いていいのかな」と思うくらいの段階で相談しても構いません。むしろ、契約してから悩むより、その前に第三者へ確認するほうが安心です。
この章のまとめ
50代のリフォームで使える補助制度はあります。
2026年は、窓の断熱改修や高効率給湯器、断熱改修などを対象とした「住宅省エネ2026キャンペーン」が実施されています。ただし、予約の受付は遅くとも11月16日まで、予算の上限に達した時点で終了します。また、介護が必要になった場合には、条件を満たせば介護保険の住宅改修を利用できます。
ただ、ここで忘れたくないのは、
「補助金があるからリフォームする」のではなく、「必要なリフォームだから、使える制度を探す」
という順番です。
補助金は、暮らしを考えるきっかけにはなっても、リフォームの目的にはなりません。
ここまで読んできたあなたなら、もう「50代だから、どこをリフォームすればいいの?」とだけ考える必要はありません。
- まず、自分の家で気になっていることを1つ挙げてみる
- その工事は、本当にこれからの暮らしに必要なのか
- 必要なら、補助制度は使えるのか
- 見積もりの内容は、自分が望んでいる暮らしと合っているのか
この順番で考えていけば大丈夫です。
そして次の章では、もう一歩踏み込んで考えます。
「リフォームする」ことだけが、住まいを整える方法なのでしょうか。
ときには、リフォームしないという選択もあります。
第8章 50代のリフォームで後悔しないために「リフォームしない」という選択も

ここまで、これからの暮らしを考え、家の中を歩き、必要な工事や費用、補助制度について見てきました。
でも、ここで一度立ち止まって考えたいことがあります。
「本当にリフォームする必要があるのだろうか」
50代のリフォームを考えるとき、私はこの問いも大切だと思っています。
家は、古くなったから新しくするものとは限りません。これからの自分の暮らしに必要なものを残し、必要のないものは変えない。場合によっては、リフォーム以外の方法を選ぶ。そんな考え方があってもいいのです。
「新しくする」ことが目的になっていない?
50代のリフォームで大切なのは、「家を新しくすること」ではなく「これからの暮らしを整えること」です。見た目や設備の新しさだけを追いかけると、工事そのものが目的になってしまいます。
たとえば、子どもが独立して部屋が1つ空いたとします。壁紙を張り替えて、床をきれいにして、収納を増やして……。もちろん、それで気持ちよく暮らせるなら意味のあるリフォームです。
でも、その部屋をこれから誰が、どのくらい使うのでしょうか。
「せっかくの空き部屋だから、きれいにしておこう」という理由だけなら、少し立ち止まってもいい。
10年後、その部屋を物置として使っているかもしれません。親が遊びに来たときの部屋になっているかもしれない。自分が1階で暮らすようになり、別の使い方をしている可能性もあります。
未来は、今の予想どおりには進みません。約10年前のリフォームでも、私はそのことを実感しました。当時の私は、未来を正確に予測してリフォームしたわけではありません。そのときの暮らしを考えて選んだことが、10年後には別の意味を持っていたのです。
だからこそ、50代のリフォームでは「将来の正解」を当てようとしなくていい。
今の暮らしを少し楽にしながら、将来の選択肢も狭めない。
そのくらいの視点で考えるほうが、無理がありません。
見た目より、毎日使う場所を優先する
50代のリフォームでは、見た目をきれいにすることより、毎日使う場所の小さな不便を減らすことを優先すると、暮らしの変化を実感しやすくなります。
もちろん、キッチンを新しくしたい、壁紙を変えたい、好みの床材にしたいという希望も大切です。家は毎日過ごす場所ですから、「好きな空間にしたい」という気持ちを後回しにする必要はありません。
ただ、予算に限りがあるなら、私はまず毎日使う場所から考えます。
たとえば、次のようなことです。
- 洗濯物を運ぶ距離が長い
- 階段の上り下りが負担になってきた
- 夜のトイレまでの廊下が暗い
- 浴室の出入りがしにくい
- 冬になると脱衣所が寒い
- 高い場所の収納が使いにくい
こうした不便は、毎日積み重なります。
だから、リフォームを考えるときは、「この家のどこが古いか」ではなく、「この家で今の私がどこに負担を感じているか」を見る。
これは、50代だからこそできる家の見直しでもあります。まだ元気に動けるからこそ、「今は困っていないけれど、10年後はどうだろう」と少し先まで考えられるからです。
リフォーム・建て替え・住み替えを比べる
家を整える方法は、リフォームだけではありません。建て替えや住み替えも含めて比べると、「自分にとって何が必要なのか」が見えやすくなります。
たとえば、築年数が古くても、構造や立地に問題がなく、気になる場所だけ直せば快適に暮らせるなら、リフォームが向いています。一方で、家全体に大きな修繕が必要だったり、間取りそのものが今の暮らしに合わなかったりするなら、建て替えを検討する余地があります。
さらに、「この家にあと20年、30年住みたいのか」というところから考えると、住み替えという選択肢も出てきます。
たとえば、
「階段が気になるから、将来は1階だけで暮らせるようにしたい」
と考えたとします。今の家をリフォームして1階中心の暮らしをつくる方法もあります。でも、駅や病院、買い物施設の近くにあるマンションへ住み替えることで、その問題がもっと根本的に解決する場合もあります。
どちらが正解という話ではありません。大切なのは、
「どんな家にしたいか」より先に、「これからどんなふうに暮らしたいか」を考えること。
ここまでの章で考えてきた順番が、ここでも役に立ちます。
- 「10年後もこの家に住みたい」なら、今の家をどう整えるか
- 「この家に住み続けたい気持ちはあるけれど、階段は心配」なら、1階で暮らせる方法を考える
- 「家そのものより、立地のほうが気になってきた」なら、住み替えも選択肢に入れる
家に自分を合わせるのではなく、これからの暮らしに家を合わせる。その視点で考えると、リフォームだけに答えを求めなくてもよくなります。
「リフォームしない」という選択もある
「リフォームしない」という選択も、立派な住まいの整え方です。今の家で大きな不便がなく、必要な部分だけを修繕しながら暮らせるなら、無理に工事をする必要はありません。
50代になると、「そろそろ老後に備えなくては」という気持ちが出てきます。すると、手すりをつけたほうがいい、浴室を変えたほうがいい、キッチンも新しくしたほうがいい、断熱もしたほうがいい。そんなふうに、「やったほうがいいこと」がどんどん増えていきます。
でも、全部を一度にやろうとすると、かなりの金額になります。前の章でも費用について考えましたが、リフォームにお金を使えば、その分だけ手元に残るお金は減ります。50代は、これからの住まいだけでなく、教育費、親のこと、自分たちの老後など、さまざまなことを考える時期でもあります。
だから私は、「リフォームしない=何もしない」ではないと考えています。
- 今は大きな問題のない浴室なら、掃除や点検をしながら使い続ける
- 洗濯の移動が少し大変なら、まずは物干し場所や家事動線を変えられないか考える
- 階段が気になり始めたなら、今すぐ大規模工事をするのではなく、照明や手すりなど、小さな改善から考える
リフォームをするかどうかを決める前に、「今の家で、何ができれば私はこの先も暮らせるだろう?」と考えてみる。すると、「大きな工事をしなくてもできること」が見つかる場合があります。
そして、それでも必要だと感じた工事だけをリフォームする。この順番なら、後悔も少なくなります。
信頼できる業者を選ぶポイント
リフォーム業者を選ぶときは、価格だけでなく、「こちらの話を聞いてくれるか」「工事の必要性を説明できるか」を見ることが大切です。
特に50代のリフォームでは、家全体を大きく変える必要がないケースもあります。それなのに、「今のうちに全部やっておいたほうがいいですよ」と次々に工事を勧められたら、少し立ち止まりましょう。
消費者庁も、必要のない工事を次々と勧める悪質な住宅リフォームの勧誘に、注意を呼びかけています。突然訪問してきた事業者の勧誘は、その場で契約せず、複数の事業者から見積もりを取って比べることが大切です。訪問販売でのクーリング・オフや相談窓口については、前の章でまとめたとおりです。
私なら、業者と話すときに次のような点を確認します。
① こちらの話を最初に聞いてくれるか
「キッチンを新しくしたい」と言ったときに、すぐ商品を勧めるのではなく、「なぜ変えたいのですか」と聞いてくれる業者は話しやすいものです。
② 必要のない工事についても説明してくれるか
「ここは今のままで大丈夫です」と言ってくれるかどうかも、私は大切だと考えます。
③ 見積もりの内容がわかりやすいか
何にいくらかかるのかがわからない見積書は、後から比較しにくくなります。
④ 質問にきちんと答えてくれるか
「この工事をしなかったらどうなりますか?」「10年後を考えた場合、今やる必要がありますか?」こうした質問に、理由を含めて答えてくれるかを見ます。
⑤ 一度持ち帰って考える時間をくれるか
大きなお金が動くリフォームで、即決を迫られる必要はありません。
家を大切にしたいと思う気持ちにつけ込まれないこと。
それも、50代から住まいを考えるうえで大切なことです。
この章のまとめ
50代のリフォームで後悔しないためには、「何を新しくするか」だけを考えないことが大切です。
まず考えたいのは、
「私は、この先どんなふうに暮らしたいのか」
ということ。
その答えによっては、リフォームが必要になるかもしれません。建て替えのほうが合うかもしれない。住み替えたほうが暮らしやすいかもしれない。あるいは、今の家を大きく変えずに、必要なところだけ整えながら暮らすという選択もあります。
どれを選んでも間違いではありません。
未来を完璧に予測する必要はありません。その時々で、自分や家族に必要なことを考える。そして、できるところから家を整えていく。
それも、50代から始める終活の1つなのではないでしょうか。
次の章では、私が実際に読んだ一冊の本をきっかけに、「高齢になってからの家」ではなく、これから20年、30年を暮らす家について、もう一度考えてみます。
第9章 『高齢化対策リフォーム入門』を読んで考えたこと もっと知りたい人へ

50代のリフォームについて調べていると、「老後に備えてバリアフリーに」「断熱性を高めて快適に」といった情報をよく目にします。
私自身も、これまでの章で書いてきたように、段差や寒さ、家事動線などは気になっていました。
そんなときに読んだのが、ちきりんさんの『Vol.4 高齢化対策リフォーム入門』です。2021年に出版されたKindle本で、著者のちきりんさんが、高齢の母のために実家の一戸建ての水回りをリフォームし、50代で自分のマンションをフルリフォームした経験をもとにまとめています。
私はVoicyという音声配信サービスの放送をきっかけにこの本を知り、Kindle Unlimitedの会員なので、追加料金なしで読むことができました。(提供状況は時期によって変わるので、詳細はAmazonで確認してください)
この本を読んで、私は「高齢になったときのために家を変える」という考え方だけではなく、介護する側の負担を減らすことや、自分でできることを増やすために家を整えるという視点を強く意識するようになりました。
そして読み終えたあと、気になったのは自分の家だけではありませんでした。
「そういえば実家はどうだろう」
そんなふうに、自分の親の家にも目が向くようになったのです。
私がこの本を読んで、特に気になったこと
この本を読んで私が特に参考になったのは、「高齢者が暮らしやすい家」だけでなく、介護する人の負担を減らし、自分でできることを増やすために住まいを考えるという視点です。
目次を見ると、予防、介護者の負担の軽減、自分でできることを増やすことが、章として並んでいます。そのあとに、トイレ、浴室、洗面台、キッチン、高断熱とバリアフリーなど、毎日の生活に欠かせない場所の話が続きます。
私はこれまで、リフォームといえば「自分が快適に暮らすためのもの」という意識が強くありました。もちろん、それは大切です。
- 寒いから断熱する
- 段差が危ないからなくす
- 使いにくいから設備を変える
これまでも、そんなふうに考えてきました。特に、ヒートショックの心配を減らすためにも、家の中の温度差を小さくすることは大切だと考えていたのです。
でも、この本を読んで、「介護する人が介護しやすい家か」という視点が、自分にはほとんどなかったことに気づきました。
この視点は、私自身の経験とも重なりました。前の章で書いたように、わが家では約10年前に家の中の段差をなくしていて、それが思いがけず役に立っています。
最近になって、入浴サービスを受ける家族のために、介護サービスのスタッフが浴室からホースを引いて、家族の部屋で入浴の介助をしてくれたことがあります。段差が少なかったのでホースを引き込みやすかったこと、水回りと介護を受ける義祖母の部屋が近かったことなどが、介護をスムーズにしていたと感じました。
最初から介護のために準備していたわけではないけれど、結果的にやっておいてよかったのです。この本を読んで、その経験を改めて思い出しました。
そして、もう1つ気になったのが洗面所でした。
10年前にリフォームをしている今の私の家では、現時点で大きなリフォームをしなくても暮らせそうです。けれど、実家で暮らす自分の高齢の親のことを考えると、洗面所の配置や使い勝手については、もう少し考えておきたい。
洗面台の高さや水栓の使いやすさ、洗面所とほかの水回りとの位置関係。今は普通に使えていても、体の動きが変わったときには、その「普通」が変わります。
「今、使えるか」だけではなく、「体が思うように動かなくなったときにも使えるか」。そんな視点で家を見ると、同じ洗面所でも見えてくるものが違います。
私にとって、この本を読んだ一番の収穫は、設備の知識が増えたことだけではありませんでした。
「住む人」だけでなく、「その人を支える人」からも家を見るようになったこと。そして、自分の家だけでなく、親の家にも目を向けるきっかけになりました。
もし50代のリフォームを考えているなら、自分の家を見直す材料として、そして親の家について考えるきっかけとして、この本を一度読んでみるのもいいでしょう。
「老後の家」より「これから20年、30年の家」と考えてみる
この本を読んで、私は「老後の家」という言葉についても考えるようになりました。
50代の今から「老後のための家」をつくろうとすると、どこか遠い未来の話に感じてしまいます。でも、「これから20年、30年、この家でどう暮らす?」と考えると、話は変わります。
10年後なら、まだ60代です。20年後には70代、30年後には80代になっています。その間には、仕事を辞める、子どもが独立する、家族やパートナーとの暮らし方が変わる、親の介護が必要になるなど、さまざまな変化が起こるでしょう。
だから、50代のリフォームで「30年後の正解」を決める必要はありません。
これまでの章でも書いてきたように、10年前の私には、今の家族の暮らし方を正確に想像できませんでした。家は、暮らしに合わせて意味が変わっていく。この経験があるからこそ、私は「老後に備えて完璧な家をつくる」という考え方には少し距離を置いています。
今の暮らしを大切にしながら、少し先の自分が困らないように整えておく。そして、暮らしが変わったら、そのときにまた考える。それでいいのです。
この本は、高齢化への備えについて、「一番の目的は予防」という考え方を出発点に、自分でできることを増やすことや、水回り、断熱、バリアフリーといった具体的な住まいのあり方へ話を広げています。
だから私は、50代のリフォームを、「老後のためのリフォーム」ではなく、「これからの20年、30年を自分らしく暮らすためのリフォーム」と考えるほうが、今の自分にもなじむと感じています。
そして、この考え方なら「今すぐ大規模な工事をしなくてはいけない」という焦りもなくなります。
今日できることは、家の中を歩いてみること。10年後も使いやすいか、少し先の自分に問いかけてみること。必要なところが見つかったら、そのときに1つずつ考えればいいのです。
本を読む時間がない人へ~Voicyで聞いてみる
本を読んでみたいけれど、まとまった時間が取れないという人には、著者のVoicyを入り口にする方法もあります。
ちきりんさんは2026年9月30日に、「Voice of ちきりん」で「高齢化対策リフォーム入門本のご紹介」という配信をしています。配信のタイトルに「宣伝」と付いているとおり、本の宣伝のための放送ですが、高齢化対策を考えるよいきっかけになるかと思います。本の内容を知る入り口として、まず音声で聞いてみるのもいいでしょう。
→ Voice of ちきりん「高齢化対策リフォーム入門本のご紹介」(Voicy)
私自身、本を読むときには「全部覚えよう」とは考えません。1つでも、「これは自分の家で考えてみよう」と思えることが見つかれば十分です。
たとえば、今日のあなたなら、
- 「洗面所って、10年後も今のままで使えるかな」
- 「親の家の浴室は大丈夫かな」
でもいい。本を読むことが目的ではありません。本をきっかけに、自分や家族の暮らしについて考えること。そこに、この本を読む意味があると私は感じています。
【PR】私が読んだ本
『Vol.4 高齢化対策リフォーム入門』(ちきりん・著/Kindle版・2021年)
[Amazonで本の詳細を見る]
※Amazonのアソシエイトとして、当ブログ「家族と考える終活ノート」は適格販売により収入を得ています。
この章のまとめ
『高齢化対策リフォーム入門』を読んで、私が改めて考えたのは、「高齢になったときのために家を変える」ということだけではありませんでした。
住まいには、いくつもの役割があります。
- 病気やけがを予防する
- 自分でできることを増やす
- 介護する人の負担を減らす
- 今の暮らしも快適にする
50代になると、自分のこれからだけでなく、親のこれからも同時に考える時期になります。もしかすると、家を見直すことは、自分の老後を考えるだけの作業ではないのかもしれません。
自分と家族が、これからどんなふうに暮らしたいのかを考えること。それもまた、住まいを整える意味なのだと思います。
次の章では、ここからもう一歩進んで「住まいを整えることも終活なのではないか」という視点から、50代のリフォームを考えてみます。
第10章 住まいを整えるのも終活 50代のリフォームは「自分のための終活」

ここまで、50代のリフォームについて考えてきました。
- いつ始めるか
- これからどんな暮らしをしたいか
- 家の中のどこを見直すか
- 費用や補助金をどう考えるか
- そして、リフォームしないという選択肢もあること
こうして考えてみると、最初に思っていた「家を直す」という話から、少し違うところまで来たように感じます。
それは、「私はこれから、どんなふうに暮らしたいのか」という問いです。
私は、この問いも終活の1つだと考えるようになりました。
終活は「人生の終わり」の準備だけではない
「終活」という言葉には、相続やお葬式、エンディングノートなど、「人生の終わりに向けた準備」というイメージがあります。けれど、私は50代になって、終活をもう少し広く考えるようになりました。
- これからの人生をどう過ごしたいのか
- 何を大切にしたいのか
- そのために、今の自分にできる準備は何か
そう考えると、終活は人生の最後だけに必要なものではありません。
50代なら、まだ先のことだと感じる人も多いでしょう。終活について書いている私自身も、以前は、自分の住まいを終活と結びつけて考えたことはありませんでした。
けれど、家族の変化や自分自身の変化を感じる中で、少しずつ「これから」を考える場面が増えてきました。その1つが、住まいです。
家は毎日使う場所だからこそ、これからの暮らしを考えるときに、とても身近なテーマになります。
「終活を始めよう」と構える必要はありません。まずは、今の暮らしをこの先も続けたいのかと考えてみる。それだけでも、終活の入り口になります。
これからどこで、どう暮らしたいかを考える
50代の終活でまず考えたいのは、「何を残すか」だけではなく、「これからどう暮らすか」です。
その答えは、人によって違います。今の家に長く住みたい人もいれば、子どもの独立をきっかけに住み替えたい人もいる。同居家族が減って、ひとりや二人の暮らしになったら、もっと小さな家で暮らしたいと考える人もいるでしょう。
私自身も、今の家にあと何年住むのかを考えるようになりました。
そこで大切なのは、「今の家をどうするか」を先に決めないことです。先に考えるのは、
「私は、これからどんな暮らしがしたい?」
ということ。その答えによって、リフォームするのか、住み替えるのか、今は何もしないのかが変わってきます。
たとえば、「この家でできるだけ長く暮らしたい」と思うなら、今のうちに気になるところを少しずつ整えていく。一方で、「子どもが独立したら、もっとコンパクトに暮らしたい」と思うなら、大きなリフォームを急がないという選択もあります。
つまり、リフォームは目的ではなく、これからの暮らしを実現するための1つの手段です。
ここが、私が今回の記事を書きながら一番大切だと感じたところです。
家を整えることは、自分の未来を整えること
家を整えることは、単に古くなった設備を新しくすることではありません。自分がこれからどんな暮らしをしたいのかを考え、その暮らしに合わせて住まいを選んでいくことです。
たとえば、次のような小さな「気になる」があります。
- 玄関の段差が気になる
- 洗濯物を運ぶのが負担になってきた
- 冬の浴室が寒い
- 使っていない部屋が増えた
これらは、単なる家の不具合ではありません。今の自分の暮らしと、家のつくりが少しずつ合わなくなってきたサインでもあります。
だからこそ、50代のリフォームを考えるときには、「どこを新しくするか」だけでなく、「この家で、これからどんな生活をしたいか」から考えてみる。その結果、リフォームする場所が見つかることもあります。反対に、「今は何もしなくていい」とわかることもあります。
どちらも前進です。
私にとって、住まいを考えることが「自分のための終活」だと思えるようになったのは、将来に備えて家を完璧に整えることが目的ではないからです。自分のこれからを、自分で考えてみる。そのために家を見直す。これが、私の考える「終活としてのリフォーム」です。
それなら、50代の今から始めても早すぎることはありません。
住まいは、いつか「この家をこの先どうするか」を考えることにもつながっていきます。住み続けるのか、住み替えるのか、家族に引き継ぐのか。早いうちに自分の暮らし方を考えておくことは、のちの相続や家族の話し合いの土台にもなります。相続や終活の最初の一歩については、こちらの記事でまとめています。
→ 終活は何から始める?親の相続と自分の終活を考える50代へ
そして、考えてみると、終活は家だけの話でもありません。
- 仕事をどうするか
- これから誰と暮らすか
- 何を大切にして過ごすか
- どんな場所で、どんな毎日を送りたいか
そうしたことを少しずつ考えていく中に、住まいの問題もあります。
だから私は、50代のリフォームを「老後のための準備」とだけ捉えたくありません。これからの人生を自分らしく暮らすために、今の自分が住まいを見直す。それも、終活の1つです。
もし「終活」という言葉にまだ少し抵抗があるなら、無理にそう呼ばなくてもいいでしょう。まずは、「この先、私はどんな暮らしをしたい?」と、自分に問いかけてみる。その答えを考えるところから始めればいいのです。
この章のまとめ
50代のリフォームについて考えてきましたが、最後に残ったのは「どこをリフォームするか」という答えではありません。
「これから、どう暮らしたいか」
という問いでした。
リフォームは、その答えを実現するための1つの方法です。だから、今すぐ工事をする必要はありません。
- 家を歩いてみて、気になるところを見つける
- 自分のこれからを少し考えてみる
- そして、必要になったら住まいを整える
それで十分です。
私は、こうした小さな選択を重ねていくことも、50代からの終活なのだと思っています。人生の終わりを考えるのではなく、これからの人生をどう暮らしたいかを考える。そう考えると、「終活」は少し身近なものになります。
そして、自分の暮らしについて考え始めると、次にこんな疑問も出てくるでしょう。
- 「50代でリフォームするのは早くない?」
- 「本当に今、工事する必要がある?」
- 「リフォームより住み替えたほうがいいのでは?」
ここからは、50代のリフォームについて、読者が迷いやすい疑問をQ&Aで整理していきます。
Q&A 50代のリフォームでよくある疑問

ここまで読んで、「考え方はわかったけれど、実際にはどうすればいい?」と感じた人もいるでしょう。
50代のリフォームには、「まだ早いのでは?」「お金をかけすぎでは?」という迷いもつきものです。ここでは、よくある疑問を1つずつ整理します。
50代でリフォームするのは早い?
50代だから早い、ということはありません。大切なのは年齢ではなく、これからもその家で暮らしたいかどうかです。
50代は、まだ元気に動ける一方で、これから先の暮らしを具体的に考え始める時期でもあります。たとえば、「この家にあと20年は住みたい」と考えているなら、今のうちに気になるところを整える意味があります。
一方で、子どもの独立後は住み替えたい、家を手放す可能性が高いという場合は、大きなリフォームを急がないほうがいいこともあります。
「50代だからリフォームする」のではなく、「これからの暮らしに、この家が合っているか」を考える。それが、始めるタイミングを決める基準になります。
もしまだ迷っているなら、第2章「これからどう暮らしたいか?」の問いに戻ってみるのもいいでしょう。
老後のために、どこまでバリアフリーにする?
50代で家全体を「高齢者仕様」にする必要はありません。今の暮らしで負担になっている場所と、将来も使い続けたい場所から考えるのが現実的です。
バリアフリーというと、手すりをたくさん付けたり、車いすで生活できるようにしたりすることを想像するかもしれません。でも、最初からそこまで考える必要はありません。
- 玄関の段差
- 廊下の通りやすさ
- 夜中に使うトイレ
- 浴室への出入り
- 洗濯物を運ぶ動線
こうした「毎日使う場所」を見ていくと、自分にとって必要なことが見えてきます。
私の家でも、約10年前に段差をなくしたことが、のちに家族の介護の場面で思いがけず役立ちました。だから私は、50代のバリアフリーを「老後に備えて全部やっておくもの」ではなく、今の生活を少し楽にしながら、将来にも役立つように整えるものと考えています。
また、今回紹介した「高齢化対策リフォーム入門」も、具体的にどんな点に配慮すればよいかポイントがまとめられており、とても参考になります。
なお、介護保険の住宅改修には、手すりの取り付けや段差の解消などが対象となる制度があります。ただし、要支援・要介護認定などの条件があり、50代だから利用できるという制度ではありません。
リフォーム費用はいくらくらい?
「50代のリフォーム費用はいくら」と1つの金額で考えることはできません。工事の規模によって大きく変わるため、平均額は参考程度に見るのが適切です。
国土交通省の令和7年度「住宅市場動向調査」では、2024年度にリフォームを行った世帯(首都圏・中京圏・近畿圏の三大都市圏)のリフォーム資金は、平均170万円、中央値70万円でした。これは50代に限定した数字ではなく、世帯主が60歳以上の世帯が最も多い、部分的な工事から比較的大きな工事まで含んだ調査結果です。
平均と中央値に大きな差があることからも、「リフォームする人はみんな170万円くらい使っている」と考えるのは適切ではありません。たとえば、窓だけを変える場合と、水回りをまとめて改修する場合では、必要な費用がまったく違います。
だからこそ、前の章でも書いたように、最初に「いくら使えるか」だけを決めるのではなく、
- 今、困っていることは何か
- それを解決するために、どこまで必要か
という順番で考えることが大切です。
老後資金を大きく使ってまで大規模なリフォームをする必要があるかどうかは、慎重に考えたいところです。「今やる工事」と「まだ先でいい工事」を分けるだけでも、予算は考えやすくなります。
補助金は使える?
使える可能性はありますが、「50代だからもらえる」という補助金ではありません。工事の内容や住宅の条件、申請時期などを確認する必要があります。
2026年10月時点で、国の「住宅省エネ2026キャンペーン」が実施されています。リフォームについては、
- みらいエコ住宅2026事業
- 先進的窓リノベ2026事業
- 給湯省エネ2026事業
などがあり、省エネ性能を高めるリフォームなどが対象になります。このうち、みらいエコ住宅2026事業は、平成28年(2016年)以前に新築された住宅が対象です。
ただし、対象となる工事や製品、申請条件は制度ごとに異なります。また、予約は遅くとも2026年11月16日まで、交付申請は遅くとも2026年12月31日までで、予算の上限に達した時点で受付が終了します。
住宅省エネ2026キャンペーンでは、リフォームの交付申請を、登録された住宅省エネ支援事業者(施工者など)が行う仕組みになっています。自分で工事費を払ったあと、誰でも自由に申請できる制度ではありません。
そのため、「補助金が使えるから、この工事をしよう」と考えるのではなく、「必要な工事を考える」→「対象になる補助制度があるか確認する」という順番がおすすめです。
補助制度は年度によって内容や受付期間が変わります。実際にリフォームを決める段階では、その時点の公式情報を確認しましょう。
リフォームと建て替え、どちらがいい?
どちらが正解ということではありません。「これからも今の場所で暮らしたいか」と「今の家をどこまで直せるか」を基準に比べます。
リフォームのよさは、今の家を生かしながら必要な部分を整えられることです。一方、間取りそのものを大きく変えたい場合や、建物の状態によっては、建て替えのほうが合うこともあります。
特に古い住宅では、見た目だけでは判断できない部分があります。耐震性や構造、断熱性能などを確認したうえで、リフォームで対応できるのか、それとも建て替えまで含めて考えるのかを判断する必要があります。
国土交通省の「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」も、高齢期の住まいの選択肢は改修だけではなく、建て替えや住み替えもあるとしています。自分の意向や心身・経済の状況、住宅の状況などを考えて選ぶことが示されています。
だから、最初から「リフォーム」と決めてしまう必要はありません。
- 「この家をあと何年使いたいのか」
- 「今の家のどこまでを残したいのか」
を考えたうえで、リフォームと建て替えを比べればいいのです。
リフォームせず、住み替えたほうがいい?
場合によっては、住み替えのほうが暮らしやすくなることもあります。住み替えも、50代のリフォームを考えるときの大切な選択肢です。
「せっかく持ち家があるのだから、直して住み続けなければ」と考える必要はありません。たとえば、
- 階段が多く、将来の生活動線を変えにくい
- 家が広すぎて、ひとりや二人では管理が負担になっている
- 買い物や病院、公共交通機関から遠い
- 今後住みたい場所が別にある
という場合には、家をリフォームするより、住み替えのほうが暮らしやすくなることがあります。
反対に、
- 「この地域が好き」
- 「庭を残したい」
- 「長く暮らしてきた家に愛着がある」
という気持ちが強いなら、今の家を整えて住み続ける選択にも意味があります。
ここで大切なのは、「持ち家だから住み続ける」という理由だけで判断しないことです。リフォーム、建て替え、住み替え。どれを選ぶかではなく、その先にどんな暮らしをしたいのか。そこから逆算して考えると、自分に合った選択が見えてきます。
もし「リフォームか住み替えか」で迷っているなら、第8章の「リフォームしないという選択」も、もう一度読み返してみてください。
この章のまとめ
50代のリフォームには、「この年齢ならこうする」という正解はありません。
- 早すぎるかどうかも
- どこまでバリアフリーにするかも
- いくらかけるかも
- リフォーム、建て替え、住み替えのどれを選ぶかも
家の状態と、これからの暮らしによって答えは変わります。だからこそ、焦って工事を決める必要はありません。
この記事でここまで考えてきたことを、一度自分の家に当てはめてみてください。
「私は、この家でこれからどんなふうに暮らしたい?」
その答えが見えてくれば、必要な工事も、かけられる費用も、そして「何もしない」という選択も、少しずつ判断しやすくなります。
そして最後に残るのは、「リフォームするかどうか」ではありません。自分は、これからどんな暮らしを選びたいのか。
最後に、難しいことをもう一度考え直すのではなく、今日できる小さな一歩に落とし込みます。まずは、あなたの家を歩いてみるところから始めてみましょう。
まとめ 今日、自分の家を歩いて「10年後も暮らせる?」と考えてみよう

50代のリフォームで大切なのは、「どこを直すか」の前に、「これからどう暮らしたいか」を考えることでした。
この記事でお伝えしてきたことを、3つにまとめます。
- 介護が必要になってから慌てて変えるのではなく、元気なうちに整える。 目指すのは「介護される家」ではなく、「自分で暮らせる家」
- すべてを一度に変えなくていい。 「今やること」と「まだ決めなくていいこと」を分けて、費用と、これからのお金のバランスを考える
- リフォームしない、建て替える、住み替える。どれも選択肢。 補助金があるから工事をするのではなく、必要な工事から考える
そして、住まいを整えることは、これからの暮らしを自分で考えること。私は、それも終活の1つだと思っています。
今日の小さな一歩
難しいことは、今日は決めなくて大丈夫です。
- 家の中を、いつものように一周歩いてみる
- 「ここ、ちょっと面倒だな」と感じた場所を、1つだけメモする
- 「10年後も、ここで暮らせるかな」と、自分に聞いてみる
チェックリストも活用してみてください。
→ [10項目チェックリスト(PDF)をダウンロード]
自分の家を見直してみると、今度は親の家が気になってきます。
『高齢化対策リフォーム入門』を読んだとき、私も、自分の家のあとに実家のことが頭に浮かびました。
「そういえば、親の家はどうだろう。階段は大丈夫かな。お風呂は寒くないかな。でも、親にリフォームの話をしたら『まだそんな年じゃない』と言われそう……」
その気持ちも、よくわかります。でも、親が元気なうちだからこそ、できることがあります。親の家も、「これからも暮らせる家」に整えていく。そのための考え方と、親への切り出し方を、次の記事でお伝えします。
→ [次の記事:親の家のリフォーム(現在準備中・10月15日公開予定)]












