「もし、お父さんやお母さんが突然入院したら……」

そんなことを、普段から考えている人は、そう多くないかもしれません。

親が元気に暮らしていると、医療のことや、これから先のことを聞くのは、なんとなく気が引けます。

「まだそんな話をする年齢じゃないよ」
「縁起でもないこと言わないで」

そう言われそうで、つい後回しにしてしまうこともありますよね。

けれど、いざというときになって初めて、

「お母さんは、どうしてほしかったんだろう」

と考えることになったら、家族も戸惑ってしまいます。

私は、親の終活は「死ぬ準備」だけではないと思っています。

むしろ、親が元気なうちに、「これからどう過ごしたい?」と話しておくことも、親の終活の大切な一歩なのではないでしょうか。

この記事では、50代の子世代が知っておきたい、親の医療についての向き合い方を考えていきます。

難しいことを一度に決める必要はありません。

読み終わったときに、

「終活の話をしなきゃ」ではなく、
「まずは、親に一つ聞いてみようかな」

そう思ってもらえたらと思います。

Table of Contents

第1章 親の終活で、なぜ医療について話しておく必要がある?

親の終活というと、財産や相続、実家の片づけ、お墓などを思い浮かべる方が多いかもしれません。

でも、50代の子世代が早めに考えておきたいことの一つが、親が病気になったとき、どんな医療やケアを望んでいるのかということです。

「まだ元気なのに、そんな話をする必要があるの?」

そう感じるのも無理はありません。私も親の終活を考えるようになってから、「元気なうちに聞いておいたほうがいい」と分かっていても、医療や最期の話は簡単には口にできないと感じています。

けれど、親が元気だからこそ話せることがあります。

医療について話しておくのは、親の「死ぬとき」を決めるためではありません。これからも親らしく生きてもらうために、どんなことを大切にしたいのかを知っておく準備なのだと思います。

親が元気なうちに、医療の希望を聞いておく意味

親の医療について話すなら、本人が自分の考えを言葉にできる元気なうちが一つのタイミングです。

なぜなら、病気や事故は、家族が心の準備をしてから起きるとは限らないからです。

厚生労働省も、もしものときに望む医療やケアについて前もって考え、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有しておく「人生会議(ACP)」という取り組みを紹介しています。大切にされているのは、家族の都合ではなく本人の意思です。

たとえば親が、

「できるだけ家で過ごしたい」

「痛いのはできるだけ避けたい」

「家族にはあまり負担をかけたくない」

と思っていたとしても、子どもが知らなければ、その思いをくみ取るのは難しくなります。

反対に、少しでも話したことがあれば、いざというときに、

「お母さん、前にこんなことを言っていたな」

と思い出す手がかりになります。

ここで大切なのは、今すぐ答えを出してもらうことでも、一度聞いた答えを守り続けてもらうことでもありません。厚生労働省のガイドラインも、本人の意思は変化しうるものとして、話し合いを繰り返すことの重要性を示しています。

だから最初は、親の「今の気持ち」を知るだけでもいいのです。

親が突然入院したら、家族が困るのはどんなこと?

親が突然入院すると、子どもは短時間のうちに、普段ほとんど意識していなかった情報を確認しなければならなくなります。

たとえば、

「いつもどこの病院に通っている?」

「何の薬を飲んでいる?」

「持病は?」

「お薬手帳はどこ?」

こうしたことを、あなたは今すぐ答えられるでしょうか。

親とは普段よく話していても、意外と知らないものです。

私自身、親の終活について考えるようになって感じたのは、親子だからといって、親のことを何でも知っているわけではないということでした。

日々の会話では、体調について「大丈夫?」と聞くことはあっても、病院や薬、もしものときの希望まで踏み込んで話す機会はそう多くありません。

けれど、何か起きてから初めて、

「聞いておけばよかった」

と思うのは、できれば避けたいものです。

だからといって、今から親の医療情報をすべて聞き出す必要はありません。

まず何を知っておけばいいのかは、次の章で具体的に整理します。大切なのは、「知らないことがある」と今のうちに気づくことです。

「延命治療」だけが親の医療について考えることではない

「親の終活と医療」と聞くと、延命治療をするか、しないかを決める話だと思うかもしれません。

でも、医療について親と話しておきたいことは、それだけではありません。

どこに通院しているのか。どんな薬を飲んでいるのか。病気になったらどこで過ごしたいのか。何を大切にしたいのか。

こうした日常に近い話も、親の医療について考える大切な一部です。

厚生労働省が示す人生の最終段階の医療・ケアでも、治療だけではなく、痛みや不快な症状への対応、精神面や社会面も含めた総合的な医療・ケアが示されています。

つまり、親に聞きたいのは、

「どんな治療を受けたい?」

という答えだけではありません。

その前に知りたいのは、

「これから、どんなふうに過ごしたい?」

という親の気持ちです。

治療について具体的な判断が必要になれば、医師などの専門家と相談することになります。子どもだけで医療の正解を決める必要はありません。

親の終活で医療について考えることは、親の最期を先回りして決めることではありません。親の終活の最初の一歩は、親が大切にしているものを知ることです。

そう考えると、少しだけ話しやすくなるのではないでしょうか。

この章のまとめ

親が元気なうちに医療について話しておくのは、「死の準備」を急がせるためではありません。

突然の病気や入院のときに家族が困らないため。そして何より、親自身がどんな医療や暮らしを望んでいるのかを知っておくためです。

すべてを一度に聞く必要も、今すぐ答えを決めてもらう必要もありません。

まずは、

「私、親の病院や薬のことをどのくらい知っているかな」

と考えてみるところからでも十分です。

次の章では、かかりつけ医や薬、お薬手帳など、親の医療について具体的に何を確認しておけばよいのかを、一つずつ整理していきます。

第2章 親の医療、まず何を確認すればいい?

親の医療について確認するとき、最初から「終活の話をしよう」と構える必要はありません。

まずは、かかりつけ医や薬、お薬手帳、緊急時の連絡先など、いざというときに家族が知っておきたい基本情報から確認していきましょう。

「親のことだから、だいたい分かっている」

そう思っていても、実際に聞かれてみると、意外と知らないことがあるものです。

私も親の終活について考えるようになってから、親子だからといって、親の健康や医療についてすべて知っているわけではないと感じるようになりました。

大切なのは、情報を完璧に集めることではありません。

「もし明日、親が病院に運ばれたら、私は何を知っていればいいだろう?」

そんな視点で、一つずつ確認してみることです。

かかりつけ医と通院している病院

まず確認したいのは、親が普段どこの病院に通っていて、誰に診てもらっているのかです。

急な体調不良や入院があったとき、普段の診療情報が分かると、家族が状況を把握しやすくなります。

たとえば、

  • かかりつけ医の名前
  • 病院・クリニックの名前
  • 診療科
  • 通院している頻度
  • 病院の連絡先

などです。

「お母さん、いつもどこの病院に行ってるんだっけ?」

このくらいの聞き方なら、「終活」という言葉を出さなくても自然です。

特に複数の病院に通っている親の場合は、どの病院で何を診てもらっているのかが分かるだけでも安心材料になります。

すべてを一覧にしようとせず、まずは「かかりつけ医は誰?」から始めても十分です。

持病・これまでの病歴

次に確認しておきたいのが、現在の持病と、これまでにかかった大きな病気です。

医療機関を受診するとき、過去の病気や現在の治療について伝える場面があるため、家族も基本的な情報を知っておくと役立ちます。

たとえば、

「血圧の薬を飲んでいる」

「糖尿病で定期的に通院している」

「以前、大きな手術を受けた」

などです。

ただ、病歴を子どもが細かく記録しておく必要があるわけではありません。

親に、

「今、病院では何を診てもらっているの?」

と聞いてみるだけでも、親の健康状態を知るきっかけになります。

ここで大切なのは、病気を管理することではなく、親自身がどんな健康状態なのかを子どもも知っておくことです。

現在飲んでいる薬とお薬手帳

親の医療について、ぜひ確認しておきたいのが現在飲んでいる薬と、お薬手帳の場所です。

複数の医療機関に通っている場合、それぞれの病院から薬が処方されていることもあります。

急な受診や入院の際には、普段どのような薬を使っているのかが重要な情報になることがあります。

まず確認したいのは、

「お薬手帳はどこにある?」

ということ。

さらに、

  • お薬手帳を一冊にまとめているか
  • 普段どこに置いているか
  • 薬をどこに保管しているか

も知っておくと安心です。

「薬の名前を全部覚えなければ」と考える必要はありません。

お薬手帳がどこにあるか分かるだけでも、一歩前進です。

なお、薬の内容や飲み方について疑問がある場合は、自己判断で変更せず、医師や薬剤師に確認することが大切です。

薬や食品などのアレルギー

薬や食品などのアレルギーがあるかどうかも、家族が知っておきたい情報の一つです。

特に薬のアレルギーについては、医療機関を受診するときに伝える必要がある場合があります。

「何かアレルギーってある?」

「この薬は飲めないって言ってたよね?」

そんなふうに、普段の会話の中で確認してみてもいいでしょう。

アレルギーだけでなく、過去に薬を飲んで具合が悪くなったことなどがあれば、親自身が医師や薬剤師に伝えられるようにしておくことも大切です。

ここも、子どもが医学的な判断をする場所ではありません。

「親にとって注意が必要なものがあるか」を知っておく。

その程度から始めれば十分です。

緊急時に連絡してほしい人

意外と忘れやすいのが、緊急時の連絡先です。

親に何かあったとき、「まず誰に連絡するのか」が分かっていると、家族も落ち着いて対応しやすくなります。

確認しておきたいのは、

  • 子どもの連絡先
  • きょうだいの連絡先
  • 親しい親族
  • かかりつけ医や医療機関
  • 必要に応じて、近くに住む人

などです。

特に、きょうだいが離れて暮らしている場合は、

「何かあったら最初に誰へ連絡する?」

というルールを家族で共有しておくと安心です。

親の医療情報を一人の子どもだけが抱え込むのではなく、家族の中で必要な情報を共有しておくことも、これから大切になってきます。

きょうだいとの役割分担については、後の章で詳しく取り上げます。

医療費や健康保険について知っておきたいこと

親の医療については、病気や薬だけでなく、医療費についても「どこに何があるか」を確認しておくと安心です。

たとえば健康保険の資格情報や、医療費に関する書類などがどこに保管されているのかを知っておくと、必要になったときに探し回らずに済みます。

医療費が高額になった場合には、一定の自己負担限度額を超えた分が支給される「高額療養費制度」があります。

ただし、年齢や所得、医療費の内容などによって自己負担限度額が異なるため、「高額療養費なら必ずこれだけ戻ってくる」と一律に考えないことが大切です。

制度の詳細は、加入している健康保険や厚生労働省などの公的情報で確認できます。

ここで確認したいのは、制度を今すべて理解することではありません。

「親がどの健康保険に加入しているのか」「医療費関係の書類はどこにあるのか」

を知っておくことから始めればいいのです。

介護が必要になったとき、どこで過ごしたいか

医療について考えていると、やがて避けて通れなくなるのが「介護が必要になったら、どこで過ごしたいか」という問題です。

親が病気になった場合、治療だけでなく、その後の生活をどうするのかを考える場面が出てくることがあります。

「できれば今の家で暮らしたい」

「家族に迷惑をかけるくらいなら施設に入りたい」

「できるだけ自分で生活したい」

親によって希望は違います。

ここで子どもが「こうしたほうがいい」と決める必要はありません。

まず、

「もし介護が必要になったら、どんなところで暮らしたい?」

と聞いてみる。

それだけでも、親が大切にしていることを知るきっかけになります。

なお、介護については医療とは別に考えるべき制度や選択肢も多いため、ここでは詳しく扱いません。親の終活全体を考える中で、少しずつ整理していけば大丈夫です。

親の医療について知っておきたいことチェックリスト

ここまで確認してきたことを、簡単に整理してみましょう。

親の医療チェックリスト

確認したいこと確認できた?
かかりつけ医・病院
診療科
持病・これまでの大きな病気
現在飲んでいる薬
お薬手帳の場所
薬や食品などのアレルギー
緊急時の連絡先
健康保険に関する情報
医療費関係の書類の場所
介護が必要になった場合の希望

ただし、このチェックリストを全部埋めることを目標にしなくて大丈夫です。

むしろ、最初から全部聞こうとすると、

「親に根掘り葉掘り聞くのは気が重い」

となってしまうかもしれません。

まずは一つ。

たとえば、

「そういえば、お薬手帳ってどこに置いてある?」

そんな何気ない一言からでもいいのです。

親の終活は、一日で完成させるものではありません。

今日一つ知り、また別の日に一つ聞く。

そんなふうに少しずつ親のことを知っていくほうが、親にとっても子どもにとっても無理がありません。

この章のまとめ

親の医療について、子どもが確認しておきたいのは、特別なことばかりではありません。

かかりつけ医、持病、薬、お薬手帳、アレルギー、緊急連絡先、医療費、そして介護が必要になったときの希望。

まずは、この中から一つ知るだけでも十分です。

「全部聞かなければ」と考える必要はありません。

私なら、最初の一歩として「お薬手帳、どこにある?」と聞いてみます。

それなら「終活」という言葉を使わなくても、自然に親の医療について話し始められるからです。

そして、医療について話す中で、親が「どんなふうに過ごしたいのか」という思いが見えてくることもあります。

次の章では、その中でも特に話しにくい、延命治療について親とどう話せばいいのかを考えていきます。

第3章 延命治療について、親とどう話せばいい?

「親の終活について考え始めたけれど、延命治療のことはどう聞けばいいのだろう」

そう迷う50代は少なくないと思います。

「延命治療を受けたい?」

いきなりそう聞かれたら、親も子どもも身構えてしまいますよね。

私も、親の終活について考えるようになってから、「聞いておいたほうがいい」と「聞きにくい」は別の問題なのだと感じています。

延命治療について話すときに大切なのは、最初から治療の結論を出すことではありません。

まずは、親がどんなことを大切にして生きたいと思っているのかを知ることから始めてみましょう。

「延命治療をどうする?」から始めなくてもいい

延命治療について親と話すとき、最初から「受ける・受けない」の二択にしなくても大丈夫です。

なぜなら、実際にどのような医療やケアが必要になるのかは、そのときの病状や本人の状態によって変わるからです。

たとえば、

「延命治療は受けたくない?」

と聞かれると、親は「死ぬときの話をされている」と感じるかもしれません。

それよりも、

「もし病気になったら、できるだけ家で過ごしたい?」

「入院することになったら、どんなことを大切にしたい?」

といった聞き方なら、少し話しやすくなるのではないでしょうか。

もちろん、これは「延命治療について聞かなくていい」という意味ではありません。

具体的な医療の選択が必要になったときには、医師から説明を受けたうえで考えることになります。

今の段階では、まず親の考え方を知るための会話を始める

それくらいに考えておくと、子どもの側の緊張も少し和らぐはずです。

「どんなふうに過ごしたい?」から聞いてみる

延命治療について話すなら、治療そのものよりも、「どんなふうに過ごしたいか」という親の希望から聞いてみる方法があります。

厚生労働省の人生会議(ACP)でも、もしものときにどのような医療やケアを望むかだけでなく、「自分が大切にしたいこと」や「望んでいる生き方」について考え、周囲と話し合うことが大切だとしています。

たとえば、

「もし長く入院することになったら、どんなことが一番気になる?」

「できるだけ自分で動けるうちは、自宅で過ごしたい?」

「家族にはどんなふうに関わってほしい?」

などです。

こうした質問なら、「延命治療」という言葉を使わなくても、親が大切にしているものが少しずつ見えてくるかもしれません。

もちろん、親からすぐに答えが返ってくるとは限りません。

「そんなこと考えたことない」

と言われることもあるでしょう。

それでも構いません。

そのときは、

「そうだよね。私もまだ考えたことなかった。なんとなく気になっただけ」

と終わらせてもいいのです。

一度の会話で結論を出す必要はありません。

親の希望を子どもが決めつけない

親の医療について考えるとき、もう一つ気をつけたいのが、子どもが「親はこう思っているはず」と決めつけないことです。

長く一緒に暮らしてきた親子ほど、「お母さんなら、きっとこうする」と思ってしまうことがあります。

でも、親が大切にしたいことと、子どもが「こうしてあげたい」と思うことは、同じとは限りません。

たとえば、

親は、

「できるだけ住み慣れた家にいたい」

と思っている。

一方で子どもは、

「一人で暮らすのは心配だから、施設のほうが安心」

と思っている。

どちらが正しい、という話ではありません。

だからこそ、まず本人に聞くことが大切です。

そして、親が「分からない」と答えたとしても、それを無理に決めさせる必要はありません。

「今は分からない」という気持ちも、その時点での親の答えの一つです。

親の希望を聞くことは、親の言う通りにすべてを実現する約束をすることでもありません。

「そう考えているんだね」と知るところから始めればいいのです。

具体的な医療の判断は、医療者と一緒に考える

延命治療について、子どもだけで医療の答えを出す必要はありません。

具体的な治療について判断するときは、病状や治療の効果、本人の状態などについて医療者から説明を受け、本人を中心に家族や医療・ケアチームで話し合うことが基本です。厚生労働省も、人生の最終段階における医療・ケアについて、本人による意思決定を基本とし、医療・ケアチームとの十分な話し合いを踏まえて方針を決めることが重要だとしています。

そのため、子どもが、

「お母さんは延命治療を受けたくないと言っていたから、こうしてください」

と医療者に伝えるだけで、すべてが決まるわけではありません。

大切なのは、親が元気なときから、

「自分は何を大切にしたいのか」

を話しておくことです。

そして、実際に医療の判断が必要になったときには、そのときの状況を踏まえて医療者と一緒に考える。

子どもの役割は、親の代わりに医療の答えを出すことではなく、親が大切にしてきたことを支えること。

私は、そのくらいの距離感で考えておくのがいいと思います。

親の気持ちは変わってもいい

親の医療について一度話し合ったからといって、その答えをずっと変えてはいけないわけではありません。

むしろ、親の気持ちが変わることを前提にしておくことが大切です。

たとえば、元気なときには、

「できるだけ治療を受けたい」

と思っていた人が、病気になったり、体力が落ちたりしたことで、

「治療よりも家で穏やかに過ごしたい」

と考えるようになることもあります。

反対に、「できるだけ長く生きたい」と気持ちが変わることもあるでしょう。

厚生労働省も、人生会議では気持ちが変化することを前提に、何度でも繰り返し考え、話し合うことが大切だとしています。

だから、今聞いた親の言葉を「決定事項」として保管する必要はありません。

「お母さん、前にこう言っていたけど、今も同じ?」

そんなふうに、折に触れて話せれば十分です。

たとえば、親しい人の入院やテレビで見た病気の話、健康診断などをきっかけに、自然と話題になることもあります。

最初の会話は小さくていいのです。

「もしものとき、どうする?」

ではなく、

「これからも、どんなふうに過ごしたい?」

から始めてみる。

その答えを聞くこと自体が、親の終活について考える大切な一歩になります。

この章のまとめ

延命治療について親と話すとき、最初から「受けるか、受けないか」という結論を求めなくても大丈夫です。

まずは、

「どんなふうに過ごしたい?」

「何を大切にしたい?」

と聞いてみる。

親の希望は、子どもが決めるものではありません。そして、今日の希望が将来も同じとは限りません。

だからこそ、一度で答えを出そうとせず、その時々の親の気持ちを聞いていくことが大切です。

「延命治療について聞かなければ」と身構えるより、

「お父さんは、これからどんなふうに過ごしたいと思ってる?」

そんな何気ない会話から始めてもいいのではないでしょうか。

親の希望を聞くことは、親の人生を子どもが決めることではありません。

親が自分らしく生きるために、大切にしていることを知ること。

そのための会話だと考えれば、少しだけ切り出しやすくなるかもしれません。

次の章では、さらに一歩踏み込んで「認知症になったら、医療について本人の希望はどうなるのか」という、50代の子世代が今のうちに考えておきたい問題を取り上げます。

第4章 「認知症になったら」も、今のうちに考えておこう

「親はまだ元気だから、認知症のことはもう少し先でいい」

そう考えている人も多いのではないでしょうか。

けれど、親の終活を考えるなら、認知症になったときのことも、元気なうちに一度考えておきたいテーマです。

認知症になったからといって、すぐに本人が何も決められなくなるわけではありません。

ただ、症状が進むと、病気や治療について本人の意思を確認することが難しくなる場面も出てきます。

だからこそ大切なのは、「認知症になったらどうするか」を今から決めきることではなく、親が元気なうちに、どんなことを大切にしているのかを知っておくことです。

認知症になると「医療について」何が変わる?

認知症になると、病状によっては、医療や治療について本人の考えを確認することが難しくなる場合があります。

だからこそ、まだ自分の考えを話せるときに、親の価値観や希望を聞いておく意味があります。

たとえば、病気になって治療を受けることになったとします。

医師から治療について説明を受けたとき、本人が内容を理解し、自分の希望を伝えられるなら、基本的には本人の意思を中心に考えていくことになります。

一方、認知機能の低下によって、治療の内容を理解したり、自分の意思を伝えたりすることが難しくなる場合もあります。

ここで、「認知症になったら家族が全部決める」と単純に考えるのは適切ではありません。

その人の状態や場面によって対応は異なり、医療者と相談しながら考える必要があります。

だからこそ、元気なときに、

「病気になったとき、何を一番大事にしたい?」

「できるだけ今の暮らしを続けたい?」

といった話をしておくことが、将来の手がかりになります。

認知症への備えは、病気になった後のことだけを考えるのではなく、本人が自分の思いを伝えられる今を大切にすることでもあるのです。

本人の意思を確認できない場面で、家族が直面すること

親本人の意思を確認することが難しくなったとき、家族は「どうするのが親にとっていいのだろう」と迷うことがあります。

特に、突然の入院などでは、短い時間の中で治療について判断を求められることもあります。

たとえば、

「この治療について、どう考えていたのだろう?」

「本人なら、どこまで治療を望むだろう?」

「家に帰りたいと言っていたけれど、今の状態ではどうしたらいい?」

そんな迷いが生まれるかもしれません。

私たちは親のことをよく知っているつもりでも、病気になったときの医療についてまで話した経験はないということも多いものです。

私自身、親の終活について考える中で、「親が元気なうちに聞いておけば分かったことが、何も聞いていなければ、いざというときには想像するしかないのだ」と感じるようになりました。

これは、子どもに医療の判断を背負わせるという話ではありません。

親が何を大切にしているのかを知っていれば、医療者と相談するときにも、その思いを伝える手がかりになります。

反対に、何も知らなければ、子ども自身の「こうしてあげたい」という気持ちだけで考えてしまう可能性もあります。

だからこそ、今のうちに親の言葉を聞いておくことには意味があるのです。

だからこそ、判断できる今のうちに聞いておきたい

認知症になったときのために必要なのは、未来の答えを今すべて決めておくことではありません。

親が自分の考えを話せる今のうちに、「何を大切にしたいのか」を聞いておくことです。

たとえば、

「もし病気になったら、できるだけ自宅で過ごしたい?」

「家族には、どんなふうに支えてほしい?」

「治療について分からないことがあったら、誰に相談したい?」

こんな話から始めてもいいでしょう。

「認知症になったらどうする?」と正面から聞く必要もありません。

テレビや身近な人の話をきっかけに、

「こういう場合って、自分だったらどうしたいかなって考えるよね」

と話してみるのも一つの方法です。

ここで大切なのは、子どもが答えを誘導しないこと。

「お母さんなら絶対に家にいたいよね」

と決めつけるのではなく、

「どう思う?」

と余白を残して聞くことです。

親の答えが「分からない」でも構いません。

今は分からないということも含めて、親の気持ちを知ることが最初の一歩になります。

親の希望を「そのとき」まで残しておく方法

親の希望は、話して終わりにするのではなく、後から家族が思い出せる形にしておくことも大切です。

方法の一つが、エンディングノートなどに書いてもらうことです。

ただし、エンディングノートに書いてある内容が、将来の医療判断をそのまま決めるものとは限りません。

親の気持ちは変わることがありますし、実際の病状によって考えるべきことも変わります。

だから、

「このページに書いてあるから、絶対にこうする」

と固定するより、

「親は以前、こう話していた」

と振り返るための手がかりとして残しておく、と考えるといいでしょう。

たとえば、

  • どんな暮らしを続けたいか
  • 何を大切にしたいか
  • 誰に相談したいか
  • 家族にどんなことを伝えておきたいか

などです。

そして、一度書いたら終わりではありません。

誕生日や帰省したときなどに、

「前にこう言ってたけど、今も同じ?」

と話してみてもいいでしょう。

エンディングノートについては、別の記事で詳しく紹介しているので、親と話した内容を残しておきたい方は、そちらも参考にしてみてください。

関連記事:終活のエンディングノート、選び方・始め方は?50代からの入門ガイド

成年後見制度など、家族だけでは判断できない問題もある

認知症への備えを考えるとき、家族だけですべて解決できるわけではありません。

財産管理や契約などについて、判断能力が低下したときに本人を支える制度として、成年後見制度があります。この制度には、判断能力が低下したあとに家庭裁判所が後見人を選ぶ「法定後見」と、判断能力があるうちに本人があらかじめ将来の後見人を契約で決めておく「任意後見」(任意後見契約)の2種類があります。「元気なうちに備えておきたい」という場合は、後者の任意後見制度が該当します。

成年後見制度は、認知症などによって判断能力が十分でない人について、本人の権利や財産を守るための制度です。

ただし、成年後見制度があるから、家族が医療について何でも代わりに決められる、という意味ではありません。

本人の医療同意は法律上、成年後見人であっても代行できないとされています。

この部分は法律や医療に関わる専門的な問題も含むため、家族だけで「こういう場合はこうすればいい」と決めつけないほうが安全です。

必要になったときには、医療機関や地域包括支援センター、自治体などの相談窓口に確認することも選択肢になります。

また、成年後見制度について詳しく知りたい場合は、法務省の成年後見制度に関する情報を確認するのが確実です。

→ 当ブログでは、成年後見制度についての記事も現在準備中です

大切なのは、制度を今すべて覚えることではありません。
「家族だけで抱え込まなくていい問題もある」
と知っておくことです。

この章のまとめ

認知症になったときの医療について考えると、不安になるかもしれません。

でも、今から「そのときの正解」を決める必要はありません。

大切なのは、親が元気で、自分の気持ちを言葉にできる今だからこそ、

「どんなことを大切にして生きたい?」

と聞いてみることです。

その答えは、将来の医療や介護について考えるときの大切な手がかりになります。

そして、親の気持ちは変わってもいい。

一度決めたら終わりではなく、その時々でまた話せばいいのです。

だから、認知症の話をすることを「怖い未来を考えること」と捉えなくても大丈夫。

親が自分らしく過ごすために、今の気持ちを聞いておく。

それも、親の終活の一つなのだと思います。

そして、こうした「親の希望を聞いておく」という考え方には、実は名前があります。

人生会議(ACP)です。

次の章では、人生会議とは何なのか、親の終活とはどう違うのかを、できるだけ分かりやすく整理します。

第5章 「人生会議(ACP)」は親の終活とどう違う?

ここまで読んで、

「親の医療について、少し聞いてみたほうがいいのかもしれない」

と思った方もいるかもしれません。

でも、そこで気になるのが「人生会議」という言葉です。

人生会議(ACP)と聞くと、

「家族で集まって、延命治療について正式に話し合うもの?」

「終活とは別のもの?」

と、少し難しく感じるかもしれません。

実は、人生会議は特別な会議を開くことから始まるものではありません。

親がこれからどんなふうに生きたいのか、何を大切にしたいのかを考え、家族や信頼できる人、医療・ケアチームと話し合っておくこと。

それが人生会議(ACP)の基本的な考え方です。

人生会議(ACP)とは?

人生会議(ACP)とは、もしものときに備えて、本人が望む医療やケアについて前もって考え、家族などや医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取り組みです。

厚生労働省は、人生会議について「自分が何を大切にしたいか」を考え、それを周囲の人と話し合うことから始めるよう案内しています。

ここで大切なのは、「もしものときの治療方法を今すべて決めること」ではないという点です。

たとえば、

「できれば住み慣れた家で過ごしたい」

「家族と一緒に過ごす時間を大切にしたい」

「できるだけ苦痛を減らしてほしい」

「医師からきちんと説明を聞いて納得して決めたい」

など、人によって大切にしたいことは違います。

厚生労働省の人生会議ポータルでも、話し合う内容として「どのような治療を受けたいか」だけでなく、人生の最終段階をどこで過ごしたいか、誰と過ごしたいかなどが挙げられています。

つまり人生会議は、「どう死ぬか」だけを話すものではなく、「これからどう生きたいか」を考えることでもあるのです。

そう考えると、少し身構えずに済むのではないでしょうか。

親の終活と人生会議はどう違う?

親の終活と人生会議は重なる部分がありますが、同じものではありません。

簡単に言えば、終活は暮らしや財産、家族、葬儀など人生のさまざまな準備を考えること、人生会議はその中でも特に「これからの生き方や医療・ケア」を本人中心に考え、話し合う取り組みと捉えると分かりやすいでしょう。

たとえば親の終活では、

  • エンディングノート
  • 財産整理
  • 遺言書
  • 相続
  • 実家の整理
  • デジタル遺品
  • お墓や葬儀

など、さまざまなテーマが出てきます。

一方、人生会議で中心になるのは、

  • 何を大切にして生きたいか
  • どんな医療やケアを望むか
  • 誰に思いを伝えておきたいか
  • どこで過ごしたいか
  • 医療・ケアについて誰と相談したいか

といったことです。

ですから、

「終活を始めたら人生会議もしなければならない」

と考える必要はありません。

むしろ、親の終活について話す中で、

「そういえば、病気になったらどうしたい?」

という話が出てきたら、それも人生会議につながる一歩だと考えればいいのです。

大切なのは「何をしてほしいか」だけではない

人生会議では、「どんな治療を受けたいか」だけを聞けばいいわけではありません。

むしろその前に、「親は何を大切にしているのか」を知ることが大切です。

たとえば、同じ病気になったとしても、

「できるだけ長く生きたい」

という人もいれば、

「家族との時間を大切にしたい」

という人もいるでしょう。

「できるだけ自分のことは自分でしたい」という人もいれば、

「家族に迷惑をかけないことを優先したい」と考える人もいます。

だから、子どもが、

「お父さんは延命治療を受けたくないって言ってた」

という一つの答えだけを覚えておくのではなく、

「なぜ、そう思うのか」

まで聞けると、その人らしさが少し見えてきます。

たとえば、

「どうしてそう思うの?」

「一番大切にしたいことって何?」

と聞いてみる。

すると、

「家に帰れないくらいなら、無理な治療はしたくない」

という言葉が返ってくるかもしれません。

この「家に帰りたい」という思いが分かっていれば、将来、医療や介護について考えるときにも大切な手がかりになります。

人生会議は、親の「治療の希望」だけを集める作業ではありません。

親がどんな人生を大切にしてきたのかを知る時間でもあるのです。

本人の意思を基本に、家族や医療・ケアチームで考える

人生会議で最も大切にされるのは、本人の意思です。

厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」でも、本人による意思決定を基本とし、医療・ケアチームとの十分な話し合いを踏まえて方針を決めることが重要としています。

ここは、50代の子世代にとって特に大切なところです。

親が高齢になると、

「子どもが決めてあげたほうがいい」

「親のために、こちらで考えてあげないと」

と思うことがあるかもしれません。

もちろん、親を心配する気持ちは自然なものです。

でも、「親のために決めること」と「親の希望を聞くこと」は同じではありません。

たとえば、

親が「できれば自宅で過ごしたい」と話したとしても、子どもだけで「じゃあ自宅療養にしよう」と決めるわけではありません。

その時の病状や医療・介護の体制、家族の状況などを踏まえて、本人や家族、医療・ケアに関わる人たちと相談していくことになります。

だからこそ、子どもの役割は、

「親の代わりに答えを出す人」ではなく、「親が大切にしていることを知り、それを支える人」

と考えると分かりやすいでしょう。

これは、子ども側の負担を軽くする考え方でもあります。

「私が全部決めなければ」

と思わなくていいのです。

一度決めたら終わりではない

人生会議は、一度話し合って結論を出したら終わり、というものではありません。

人の気持ちは変わることがあるからこそ、何度でも話し合うことが大切です。

厚生労働省も、心身の状態によって意思は変化することがあるため、何度でも繰り返し考え、話し合うことを案内しています

たとえば、

60代のときには、

「できるだけ治療を受けたい」

と思っていた親が、80代になって、

「もう手術はしたくない」

と考えるようになることもあるでしょう。

逆に、

「家族に迷惑をかけたくない」

と思っていた人が、

「やっぱりできるだけ長く生きたい」

と思うこともあります。

どちらが正しいということではありません。

その時々の体調や経験、家族との関係によって、価値観が変わるのは自然なことです。

だからこそ、人生会議は「親の希望を一度聞いて、ノートに書いて終わり」ではありません。

誕生日、健康診断、病院への通院、身近な人の入院など、何かをきっかけに、

「前にこう言ってたけど、今も同じ?」

と話してみる。

それで十分です。

この章のまとめ

人生会議(ACP)は、親の終活とは少し違います。

終活が人生の後半に向けたさまざまな準備を考えるものだとすれば、人生会議は、本人が大切にしたいことや望む生き方、医療やケアについて考え、周囲と話し合い、共有していく取り組みです。

そして、ここで一番大切なのは、「正しい答えを出すこと」ではありません。

親本人の気持ちを知ること。

家族がその気持ちを共有すること。

必要になったときには、医療・ケアの専門家と一緒に考えること。

そして、気持ちが変わったら、また話し合うこと。

「人生会議をしなければ」と難しく考えなくても大丈夫です。

たとえば次に親と一緒にテレビを見ているとき、

「もし私だったらどうしたいかなって、最近ちょっと考えるんだよね。お母さんはどう?」

そんな一言から始めてもいい。

人生会議の第一歩は、会議室ではなく、親子の何気ない会話の中にあるのかもしれません。

次の章では、いよいよ実際の場面です。

「親に終活の話をしたら嫌がられそう」

「そんな縁起でもない話をするな、と言われそう」

そんなとき、どうすればいいのでしょうか。

次章では、親が医療や終活の話を嫌がったときの「切り出し方」を、具体的な会話例とともに考えていきます。

第6章 親が医療の話を嫌がったら、どうする?

親の終活について話そうとすると、

「まだそんなこと考えなくていい」

「縁起でもないこと言わないで」

そんなふうに言われることがあります。

せっかく勇気を出して話したのに、親に嫌な顔をされたら、こちらも「もう聞かないほうがいいのかな」と思ってしまいますよね。

でも、親が嫌がったからといって、親が終活をしたくないとは限りません。

「死」を連想することに抵抗があるのかもしれない。

子どもに心配をかけたくないのかもしれない。

あるいは、「自分のことを子どもに決められる」と感じたのかもしれません。

私たち50代の子世代にできるのは、親を説得して終活を進めることではなく、親が話しやすい入口を探すことなのではないでしょうか。

「まだ元気だから」と言われたら

「まだ元気だから」という言葉が返ってきたら、無理に反論しないほうが話は続きやすくなります。

元気だからこそ、今のうちに聞いておきたい。そんなふうに考え方を変えてみます。

たとえば、

言ってしまいがちな言葉

「元気なうちに聞いておかないと、あとで困るよ」

これだと、親には「自分が弱っていくことを前提にされている」と聞こえるかもしれません。

こんな言い方ならどうでしょう。

「うん、元気なのは分かってるよ。だから、今のうちにお母さんの考えを聞いておきたいなと思って」

「終活しよう」と迫るのではなく、元気な今だから聞きたいと伝えるのです。

親が「まだ早い」と思っているなら、その気持ちも否定しなくていいでしょう。

「そうだよね。今日は決めなくてもいいから、ちょっと聞いてみたかっただけ」

それだけで会話が途切れずに済むことがあります。

「縁起でもない」と言われたら

「縁起でもない」と言われたら、正しさで押し返すより、親の抵抗感を受け止めるほうがいいでしょう。

終活という言葉そのものが、「死」や「病気」を連想させる場合があります。

たとえば、

「そんな縁起でもない話、しなくていい」

と言われたとします。

ここで、

「でも、何かあってからじゃ遅いよ」

と返すと、話が「親を説得する時間」になってしまいます。

それより、

「そうだよね。私もこういう話をするのはちょっと嫌なんだ」

と、一度受け止める。

そのうえで、

「でも、もしものときにお母さんが困らないように、知っておきたいことが少しあるんだ」

と伝えてみる方法があります。

「死ぬ準備をしてほしい」のではなく「あなたのことを知っておきたい」という気持ちを伝えるのです。

親にとっては、この違いが意外と大きいかもしれません。

「いざとなったらあなた(子ども)に任せる」と言われたら

「そんなことは子どもに任せる」と言われたときは、親の代わりに全部決めようとせず、まず「親の希望を知りたい」と伝えてみましょう。

親としては、

「子どもに任せればいい」

というつもりで言っているのかもしれません。

でも、子どもの側からすると、

「いやいや、親のことを勝手には決められないよ」

となりますよね。

そんなときは、

「私たちに任せてくれるのはありがたいよ。でも、何も分からないまま決めるのは難しいから、希望だけ教えてくれる?」

と聞いてみる。

たとえば、

「病院のことは、誰に連絡してほしい?」

「もし入院したら、家族には何をしてほしい?」

など、答えやすいことから始めるのも一つです。

「全部任せる」という親の言葉の中にも、「本当に大事なことは自分で決めたい」という気持ちが隠れていることがあります。

だからこそ、「任せて」と言われたときほど、親の考えを聞いておきたいものです。

怒られたり、話題を変えられたりしたら

親が怒ったり話題を変えたりしたら、その日はそこで終わっても大丈夫です。

会話がうまくいかなかったからといって、失敗ではありません。

たとえば、

「そんな話、今しなくてもいい!」

と強く言われたら、

「ごめんね。ちょっと気になっただけ。また今度ね」

と引いていいのです。

ここで大切なのは、一度の会話で成功させようとしないこと

親にとっては、「終活の話をされた」という経験そのものが残ります。

次に帰省したとき、テレビで病院の話が出たとき、知人の入院の話を聞いたとき。

そうしたタイミングで、また少し話せるかもしれません。

親子の会話は、会議のように一回で結論を出す必要はないのです。

「終活」という言葉を使わずに話す方法

「ここまでは、親がどう反応したときにどう対応するかを見てきました。ここからは、そもそも身構えさせない話し方の工夫を紹介します。

親が「終活」という言葉を嫌がるなら、無理に使う必要はありません。

「終活について話したい」と言う代わりに、具体的な一つのことを聞いてみるほうが自然です。

たとえば、

「いつも行ってる病院って、○○病院だよね?」

「もし救急車を呼ぶことになったら、誰に連絡したらいい?」

これなら、「終活の話を始めます」という重さがありません。

第2章で紹介したような医療情報を確認することも、親の終活の大切な一歩です。

「終活」という大きなテーマを一気に話すのではなく、暮らしの中の小さな確認から始める

そのほうが、親も構えずに答えられるかもしれません。

日常会話から医療の話につなげる

医療の話は、改まった場を作らなくても始められます。

むしろ、日常の何気ない会話のほうが自然なこともあります。

たとえば、テレビで入院している人の話が出たとき。

「入院って大変だよね。お母さんは入院したことある?」

そこから、

「もし入院するなら、やっぱり家の近くがいい?」

と話を広げていく。

あるいは、自分が病院に行ったとき、

「今日病院に行ってきたんだけど、薬って結構増えるよね。お母さんは今、何種類くらい飲んでるの?」

という入り方もあります。

だから、「ちゃんと時間を作って話さなければ」と構えなくてもいいのです。

親子の普段の会話の中に、話すきっかけは意外とあります。

一度で全部を聞こうとしない

親の医療について知りたいことがたくさんあっても、最初から全部聞く必要はありません。

むしろ、一度にたくさん質問すると、親にとっては「終活の聞き取り調査」のようになってしまいます。

私なら、最初は一つだけにします。

たとえば、

「お薬手帳ってどこにある?」

それだけでいい。

次の機会に、

「いつもどこの病院に行ってるの?」

と聞いてみる。

そして、少しずつ、

「もしものときはどうしたい?」

という話へ近づいていけばいいのです。

「今日は一つ聞けた」なら、それで十分。

親の終活は、子どもがチェックリストを埋める作業ではありません。

親の言葉を、一つずつ知っていく時間だと考えてみてください。

「教えて」ではなく「聞かせて」と伝える

私が特に大切だと思うのが、「教えて」よりも「聞かせて」という言葉です。

「教えて」と言われると、親によっては「正しい答えを求められている」と感じるかもしれません。

一方、

「お母さんはどう思ってるのか、聞かせてほしい」

なら、正解を出す必要がありません。

たとえば、

「延命治療は受けたい?」

と質問する代わりに、

「もし病気になったら、どんなふうに過ごしたいと思う?」

と聞いてみる。

あるいは、

「お父さんが大事にしていることって、何なのか聞かせてほしいな」

でもいいでしょう。

親の答えが、自分の考えと違っていても構いません。

「それは違うよ」と訂正するのではなく、

「そう考えてるんだね」

と受け止める。

親の終活で子どもが最初にすることは、答えを出すことではなく、親の言葉を聞くこと。

私はそう考えています。

会話に困ったときの「言い換え」集

最後に、実際の会話で使いやすい言い換えをまとめました。

言ってしまいがちな言葉親が受け取りやすい言葉
「終活、そろそろ始めたら?」「これからのこと、少し聞かせてほしいな」
「延命治療はどうする?」「病気になったら、どんなふうに過ごしたい?」
「何かあったら困るから教えて」「もしものときに困らないよう、希望を聞いておきたい」
「まだ元気だけど、今のうちにやらないと」「元気な今だからこそ、聞いておきたいことがあるんだ」
「財産のこと、ちゃんと整理して」「大事にしているものや、残しておきたいものってある?」
「お母さんのためだから」「私が後で迷わないように、聞かせてほしい」
「私たちに任せるって言われても困るよ」「任せてくれるのはありがたいけど、希望だけ教えてもらえる?」
「ちゃんとエンディングノートを書いて」「こういうノートがあるんだけど、一緒に見てみない?」

どの言葉にも共通しているのは、「親を動かそう」としないことです。

「こうしてほしい」ではなく、

「どう思っている?」

「何を大切にしたい?」

「聞かせてほしい」

という姿勢に変えてみる。

それだけで、同じ内容でも会話の空気は変わるかもしれません。

この章のまとめ

親の終活や医療の話を切り出すとき、最初からうまくいかなくても大丈夫です。

親が「まだ元気だから」「縁起でもない」と言ったら、そこで説得しなくてもいい。

怒られたら、その日は引いてもいい。

また別の日に、別の話題から始めればいいのです。

大切なのは、「親に終活をしてもらう」ことではありません。

「私はあなたのことを知っておきたい」

「もしものときに、あなたの気持ちを大切にしたい」

その気持ちを伝えることではないでしょうか。

そして、最初から医療や延命治療について深く話せなくても、

「お薬手帳ってどこにある?」

という一言から始めることもできます。

今日、一つだけ聞けたら、それで十分です。

親との終活の話は、何かを決めるためだけの時間ではありません。

今まで知らなかった親の思いや、親が大切にしてきたものを知る時間にもなるのです。

次の章では、親との会話が始まったあとに、もう一つ大切になることを考えます。

親の医療について知ったことを、きょうだいでどう共有するのか。

遠方に住んでいるきょうだいがいる場合はどうするのか。

そして、「親の希望」と「子どもが望むこと」をどう分けて考えるのか。

50代になると、親のことを一人で背負うのではなく、家族で考えることも必要になってきます。

第7章 親の医療を、きょうだいでどう共有する?

親と医療について話せるようになったら、次に考えておきたいのがきょうだいとの情報共有です。

親の希望を一人だけが知っている状態では、いざというときに、

「そんな話、聞いていない」

「お母さんはそんなこと言ってなかった」

と、きょうだい同士で認識が食い違うことがあります。

目指したいのは、「親の希望を知っている人がいる」ことではなく、「親の希望を家族で共有できている」状態です。

全部をきっちり決める必要はありません。

まずは、親から聞いたことを、必要な範囲できょうだいにも伝えるところから始めてみましょう。

親の希望を、きょうだいで共有しておく

親から医療について聞いたことは、一人で抱え込まず、きょうだいにも共有しておくと安心です。

なぜなら、同じ親を見ていても、きょうだいそれぞれが持っている情報や、親から聞いている話は意外と違うからです。

たとえば、

「親のことだから、きょうだいも同じように知っているだろう」

と思ってしまいがちです。

でも、考えてみれば、親がそれぞれの子どもにまったく同じ話をしているとは限りません。

長女には健康の話をするけれど、長男にはお金の話をする。

近くに住む子には病院のことを話すけれど、遠くに住む子には心配させまいと何も言わない。私自身もそんなことがありました。

「この前、お母さんと病院のことを話したんだけど、こう言ってたよ」

くらいの共有でいいのです。

ここで大切なのは、

「私が聞いたから、これが親の最終決定」

と扱わないこと。

「今のところ、こんなふうに話していたよ」

と共有しておく。

それだけでも、将来きょうだいで話し合うときの大きな違いになります。

遠方に住んでいるきょうだいがいる場合

きょうだいが遠方に住んでいる場合ほど、親の医療情報を意識して共有しておきたいものです。

親の近くに住んでいる人と、年に数回しか会わない人とでは、どうしても持っている情報に差が出るからです。

たとえば、近くに住むきょうだいは、

「最近、通院回数が増えた」

「薬が変わった」

「少し歩くのが大変そう」

といった変化に気づきやすいでしょう。

一方、遠方に住んでいると、電話ではいつも通り元気に話しているため、

「そんなに悪かったなんて知らなかった」

となることもあります。

これは、遠方に住むきょうだいが無関心だからではありません。

距離があれば、見えないことが増えるのは当然です。

だからこそ、

「今日病院に付き添ったよ。特に大きな変化はなかった」

「薬が一つ変わったみたい」

など、短い連絡でも共有しておく。

家族LINEなどを使えば、電話をかけるほどではない情報も残しやすくなります。

遠方にいるきょうだいには、現地でできることが少ない代わりに、連絡や情報整理をお願いするという分担も考えられます。

距離が違えば、できることも違います。

全員が同じことをするのではなく、それぞれができる形で関わるほうが現実的です。

誰が親の連絡役になるか決めておく

親に何かあったとき、誰が中心になって連絡を受けるのかは、あらかじめ家族で話しておくと安心です。

役割が曖昧なままだと、病院からの連絡やきょうだいへの報告が、一人に集中することがあります。

たとえば、

  • 病院からの連絡を受ける人
  • きょうだいへ情報を伝える人
  • 親の近くで動ける人
  • 書類などを確認する人

を、状況に応じて分けてもいいでしょう。

もちろん、今すぐ正式な「担当者」を決める必要はありません。

まず、

「何かあったら、最初は誰に連絡する?」

と確認するだけでも違います。

親本人にも、

「病院から連絡するとしたら、最初は誰がいい?」

と聞いておくといいでしょう。

ここでも、子どもの都合だけで決めず、親の希望を確認しておくことが大切です。

また、一人のきょうだいだけがすべてを背負う形は、長く続くほど負担になりやすいものです。

「連絡役になった人=全部やる人」ではありません。

情報を集める役、現地で動く役、離れた場所から手続きを調べる役。

そんなふうに考えると、少し分担しやすくなります。

「親の希望」と「子どもの希望」は分けて考える

親の医療を家族で考えるとき、特に意識したいのが、親の希望と子どもの希望を混ぜないことです。

親を心配するからこそ、子ども側にも「こうしてほしい」という気持ちが生まれます。

たとえば親が、

「できれば家で暮らしたい」

と言っている。

でも、子どもは、

「一人暮らしは心配。施設に入ったほうが安心なのに」

と思っている。

これは、どちらかが間違っているわけではありません。

親には親の人生があり、子どもには子どもの生活や不安があります。

だからまず、

親は何を望んでいるのか。

そして、

家族には実際に何ができるのか。

この二つを分けて考える必要があります。

たとえば、きょうだいで話すときにも、

「お母さんは家にいたいと言っていた」

と、

「私は施設のほうが安心だと思う」

を混ぜない。

「親の希望」と「自分の意見」を分けて言葉にするだけでも、話し合いは整理しやすくなります。

親の希望を聞くことは、家族がその希望を必ずそのまま実現する約束をすることではありません。

まず知る。

そのうえで、現実的にどう支えられるかを考える。

この順番が大切なのだと思います。

話し合ったことを、きょうだいで共有する方法

親と話した内容は、後から確認できる形で残しておくと、きょうだい間の「言った・聞いていない」を減らしやすくなります。

ただし、立派な書類を作る必要はありません。

たとえば、

家族LINEに残す。

「今日、お母さんと話したら、できれば今の家で長く暮らしたいって言ってたよ」

共有メモを作る。

  • かかりつけ医
  • お薬手帳の場所
  • 緊急連絡先
  • 親が話していた希望

などを簡単にまとめておく。

エンディングノートに書いてもらう。

親本人が書けるなら、家族が聞き取った情報よりも本人の言葉として残しやすくなります。

ただ、一つ注意したいことがあります。

情報を残すときは、

「母は絶対に○○を希望」

と断定するより、

「2026年○月に話したときは、○○したいと話していた」

と、いつの時点の気持ちなのかが分かる形にしておくほうがいいでしょう。

親の気持ちは変わる可能性があるからです。

厚生労働省も、本人の意思は心身の状態に応じて変化し得るため、繰り返し話し合い、内容を共有することを重視しています。

私は、この「日付を入れて残す」という方法は、親の希望を固定しすぎないためにも役立つと思います。

そして何より、

親の終活について一番よく知っている人を一人つくるのではなく、必要な家族が同じ情報を見られる状態にしておく。

それを目指したいところです。

家族だけで親の医療方針を決めない

親の医療については、きょうだいだけで「こうしよう」と結論を出すものではありません。

基本になるのは本人の意思であり、具体的な医療やケアについては、病状などを踏まえて医療・ケアチームと話し合いながら考えていきます。

厚生労働省のガイドラインでも、人生の最終段階における医療・ケアは、本人による意思決定を基本として、医療・ケアチームとの十分な話し合いを踏まえて方針を決めることが重要とされています。

また、本人が自分の意思を伝えられない場合でも、

「長女がこう言っているから決定」

という単純な仕組みではありません。

本人の意思を家族等が推定できる場合には、その推定意思を尊重し、本人にとって何が最善かを考えることが示されています。

つまり、「お母さんなら、きっとこう考えていたはず」という、これまでの会話や日々の様子から想像できる気持ちも、大切な手がかりとして扱われるということです。はっきりと聞いた言葉が残っていなくても、家族が知っている親の人柄や価値観が、無駄になるわけではありません。

家族の中で意見がまとまらない場合などには、必要に応じて複数の専門家を交えた検討も想定されています。

「これで合っているのかわからない」と感じたときに、家族だけで抱え込まなくていい仕組みがあるのです。

きょうだいがしておきたいのは、

「親の代わりに医療を決める準備」ではなく、「親が大切にしてきたことを、必要なときに伝えられる準備」

なのです。

そう考えると、

「私たちが重大な決断をしなければ」

という重さも、少し軽くなるのではないでしょうか。

この章のまとめ

親の医療について話せるようになったら、その内容を一人で抱え込まず、きょうだいにも少しずつ共有しておきましょう。

大切なのは、きょうだい全員が同じ考えになることではありません。

「親は今、こう考えている」

という情報を共有しておくことです。

遠方に住んでいれば、できることは違います。

親の近くで動ける人もいれば、離れた場所から連絡や情報整理を担える人もいるでしょう。

そして、

「親はこうしたい」

「私はこうしたほうが安心だと思う」

という二つの気持ちも、分けて考えてみる。

それだけでも、きょうだいの話し合いは少し変わるはずです。

親の終活で目指したいのは、誰か一人だけが親の希望を知っている状態ではありません。

必要な家族が、

「お父さんは、こういうことを大事にしたいと言っていたよね」

と同じところから話し合える状態です。

次にきょうだいと連絡を取る機会があったら、

「そういえば、お母さんの病院のことって、どこまで知ってる?」

と聞いてみてもいいかもしれません。

それも、親をみんなで支えるための小さな一歩です。

次の章では、医療についての会話を入口に、エンディングノートや財産、実家、相続など、親の終活全体へどう広げていけばいいのかを考えていきます。

第8章 医療の話から、親の終活全体へ広げるには?

親と医療について話せたら、「次は終活を全部やらなくては」と考えなくても大丈夫です。

むしろ、ここで一気に財産、相続、実家、遺言……と話を広げると、親も子どもも疲れてしまいます。

医療について話せたことを一つのきっかけにして、親がこれからどんなふうに暮らしたいのかを、少しずつ考えていけばいいのです。

厚生労働省が紹介する「人生会議(ACP)」も、もしものときの医療やケアについて、家族や医療・ケアチームと前もって考え、話し合い、共有する取り組みです。気持ちは変わってよく、何度でも話し合うことが大切だとしています

つまり、終活も「一度に終わらせるもの」と考えなくていい。

医療の話を入口に、親との会話を少しずつ広げていきましょう。

医療について話せたら、介護についても考えてみる

医療について話せたら、次に考えやすいのが「介護」です。

「病気になったらどうする?」だけでなく「もし一人で生活するのが難しくなったら、どんなふうに暮らしたい?」という視点を加えてみましょう。

たとえば、

  • できるだけ自宅で暮らしたい
  • 家族の近くで暮らしたい
  • 介護サービスを利用したい
  • 状況によっては施設も考えたい
  • 最期まで自分の家で過ごしたい

など、人によって希望は違います。

ここで大切なのは、「親をどこで介護するか」を今すぐ決めることではありません。

親がどんな暮らしを大切にしているのかを知ることです。

「もし介護が必要になったら、どうしたい?」

と聞くのが難しければ、

「もし足腰が弱くなったら、今の家に住み続けたい?」

くらいから始めてもいいでしょう。

医療と介護は関係していますが、同じものではありません。

だからこそ、医療について話せたタイミングで、暮らしについても少しだけ話しておく。

その程度で十分です。

エンディングノートに親の希望を残す

親から聞いたことを、忘れないように残しておく方法の一つがエンディングノートです。

エンディングノートは、財産だけを書くものではありません。

医療や介護についての希望、家族へのメッセージ、連絡先など、自分のこれからについて考えたことを書き残すためにも使えます。

たとえば今回の記事で話した、

「できれば自宅で過ごしたい」

「この病院に通っている」

「お薬手帳はここにある」

といった情報を残しておくこともできます。

ただし、エンディングノートを書いたからといって、すべてが法的に決まるわけではありません。

特に医療や介護については、本人の状態やその時々の気持ちによって変わることがあります。

だからエンディングノートも、

「一度書いたら変更してはいけないもの」ではありません。

書いた日付を残しておけば、

「このときは、こう考えていたんだね」

と後から確認することもできます。

まだエンディングノートを用意していないなら、いきなり一冊を書き上げなくてもいい。

まずは、親が話してくれたことを一つメモする。

それだけでも十分なスタートです。

財産・相続・遺言については別に整理する

医療について話せたからといって、その勢いで財産や相続まで全部聞こうとする必要はありません。

医療の話と、お金の話は分けて考えるほうが、親にとっても話しやすい場合があります。

たとえば、

「病院のことを確認したから、次は財産を全部見せて」

と言われたら、親としては少し身構えてしまうかもしれません。

財産については、

  • 預貯金
  • 不動産
  • 保険
  • 株式などの金融資産
  • 借入金
  • 相続に関係する財産

など、確認する内容も変わってきます。

また、遺言書はエンディングノートとは役割が異なります。

遺言書は、死後の財産の処分などについて法的な効果を持つもので、法務省も自筆証書遺言書を法務局で保管する制度を案内しています。

ですから、

エンディングノート=気持ちや情報を整理するもの

遺言書=法律上の効力を持たせるためのもの

と、まず大きく分けて考えると分かりやすいでしょう。

相続や遺言については、この記事ですべて説明しようとせず、必要になった段階で詳しい記事を読んでもらう形にします。

「親の終活、相続まで考えるなら何から始めればいい?」

と感じたら、こちらの記事へ進んでください。

終活と相続は何から始める?50代の子世代が親と話しておきたい準備と進め方

また、

「遺言書って、エンディングノートとは違うの?」

と思った方は、こちらの記事も参考になります。

終活で遺言書は必要?50代の子世代が親と後悔なく話し合うための始め方

財産をどう分けるかが相続、それを書面に残すのが遺言書です。

実家やデジタル遺品についても少しずつ考える

終活を考えていると、やがて「家や物をどうするか」という問題にも目が向いてきます。

親が長く暮らしてきた家には、家具、衣類、写真、食器、趣味の品など、たくさんの物が残っているでしょう。

でも、ここでも「今すぐ片づけよう」と言わないことが大切です。

親にとって、家の中の物は単なる「不用品」ではありません。

子どもの成長を記録した写真だったり、亡くなった家族からもらった物だったり、長年使ってきた思い出の品だったりします。

私たち子世代には価値が分からないものでも、親にとっては大切な物かもしれません。

だから、

「この家、全部片づけたほうがいいよ」

ではなく、

「これからも残しておきたいものって、どれ?」

と聞くほうが、親の気持ちに近づきやすいと思います。

そして、もう一つ忘れたくないのがデジタル遺品です。

スマートフォンの中には、写真や連絡先だけでなく、ネット銀行、通販サイト、サブスクリプション、SNSなど、本人しか分からない情報が入っていることがあります。

これも、いきなりパスワードを聞き出すのではなく、

「スマホの中で、もしものときに家族が分からなくて困りそうなものってある?」

くらいから話してみてもいいでしょう。

親のスマホ、このままで大丈夫?終活で考えたいデジタル遺品の整理と家族が困らない準備

実家の整理についても、医療や介護と同じで、一気に終わらせる必要はありません。

「何を残したいのか」を親に聞くことから始めるほうが、片づけそのものより大切な場合があります。

親の終活は、一度に全部終わらせなくていい

ここまで読むと、

「結局、親に聞くことがたくさんあるな」

と思ったかもしれません。

でも、全部を一度に聞く必要はありません。

むしろ、私は一度に全部聞こうとしないほうがいいと思っています。

親の終活には、

医療 → 介護 → エンディングノート → 財産 → 遺言 → 実家 → デジタル遺品 → きょうだい → 相続

というように、いくつものテーマがあります。

ただ、これは「この順番ですべて終わらせる」という手順ではありません。

親子で話しやすいところから、一つずつ進めればいいのです。


親の終活を見渡せる「終活マップ」

今回の記事をここまで読んでくださった方のために、親の終活全体を一枚にまとめてみました。

ただし、これは「上から順番にやるチェックリスト」ではありません。親子で話しやすいところから始めるための地図です。

たとえば、今回のように医療について話したことをきっかけに、

「そういえば、介護が必要になったらどうしたい?」

と聞いてみる。

そこで親がエンディングノートに興味を持ったら、一緒に探してみる。

財産の話はまだ難しそうなら、後回しにする。

それでいいのです。

終活は、全部を早く終わらせる競争ではありません。

親が自分のこれからについて考え、子どもがその思いを知る時間でもあります。

だから、今日一つ話せたなら、それで十分です。

この章のまとめ

医療について親と話せたら、それをきっかけに終活全体へ少しずつ視野を広げていきましょう。

ただし、財産も相続も実家も、全部を一度に聞く必要はありません。

まずは、

「お母さんは、これからどんなふうに暮らしたい?」

という問いから始めてもいい。

その答えの中に、介護の希望が見えてくるかもしれません。

エンディングノートを書いてみようという気持ちになるかもしれません。

あるいは、

「家の中のこの写真だけは残しておきたい」

と、親の大切なものを知るきっかけになるかもしれません。

終活は、物や財産を整理する作業だけではありません。

親が何を大切にして生きてきたのかを、子どもが知っていく時間でもある。

私は、そこに親の終活を考える意味があると思っています。

そして、ここまで読んだ今、

「そういえば、うちの親はどう思っているんだろう?」

と少しでも思ったなら、それだけで十分です。

次に親と電話をしたとき、あるいは一緒に食事をするときに、

「もし介護が必要になったら、どんなふうに暮らしたい?」

と、ほんの一言聞いてみる。

終活を始めるという大きな宣言は、まだいりません。

親の「これから」を一つ聞いてみる。

そこから、親子の終活が始まることもあるのです。

第9章 今日からできる「親の医療の終活」3ステップ

ここまで読んで、「親の医療について、何か聞いておいたほうがいいのは分かった。でも、実際には何から始めればいいんだろう」と感じているかもしれません。

大丈夫です。親の終活は、一度に全部を進める必要はありません。

むしろ、最初から「終活の話をしよう」と構えると、親も子も身構えてしまいます。

私なら、まずは医療に関する小さな確認を一つだけ始めます。

厚生労働省も、人生会議(ACP)について「前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取り組み」としています。つまり、大切なのは一度ですべてを決めることではなく、話し合いを重ねていくことです。


STEP1|まず「かかりつけ医」を聞いてみる

最初の一歩は、「どこの病院に行っているの?」と聞くことです。

延命治療や介護の話よりも、ずっと聞きやすいですよね。

たとえば、こんなふうに始められます。

「そういえば、お母さんって今、どこの病院に通ってるんだっけ?」

「もし急に病院に行くことになったら、どこに連絡すればいいのかな?」

「今度そっちに行ったとき、病院の名前だけ教えてもらってもいい?」

ここで知っておきたいのは、病院名だけではありません。

かかりつけ医の名前、診療科、通院している病院、定期的に受診しているかなど、分かる範囲で十分です。

親が一人暮らしだったり、子どもが遠方に住んでいたりすると、突然の入院のときに「どこの病院に行っていたのか分からない」ということが起こり得ます。

だからといって、親の医療情報を子どもがすべて管理する必要はありません。

まずは、

「親がどこで医療を受けているのかを、子どもも知っている」

という状態をつくる。

それだけでも、大きな一歩です。


STEP2|「お薬手帳はどこにある?」と確認する

次に聞いておきたいのが、お薬手帳の場所です。

「何の薬を飲んでいるの?」と詳しく聞くより、「お薬手帳、どこに置いてある?」と場所を確認するほうが自然です。

たとえば、

「この前、お薬手帳って見せてもらったっけ?」

「もし急に病院に行くことになったら、お薬手帳はどこにある?」

「私が知らないと困ることもあるから、置いてある場所だけ教えておいて」

こんな聞き方なら、親もそれほど構えないかもしれません。

ポイントは、薬の内容を子どもが覚えることではなく、「必要な情報にたどり着ける状態」にしておくことです。

お薬手帳には、現在使っている薬だけでなく、薬の使用履歴などが記録されます。

だからこそ、「どこにあるか」を知っておくことには意味があります。

ただし、ここでも親のプライバシーは大切です。

「見せて」と迫るのではなく、

「もしものときに、どこにあるかだけ知っておきたい」

という伝え方でもいいでしょう。

ここまでなら、「終活」という言葉を一度も使わずに話せます。

そして、それで十分です。


STEP3|「もしものとき、どうしてほしい?」と聞いてみる

STEP1とSTEP2で少し話せたら、最後にほんの少しだけ踏み込んでみます。

「もしものとき、どうしてほしいと思っている?」

この問いは、延命治療の具体的な選択を迫る質問ではありません。

親が何を大切にしているのかを知るための入口です。

たとえば、

「もし入院したら、できるだけ家に帰りたい?」

「病院で過ごすのと、家で過ごすのだったら、どっちがいい?」

「もし自分で話せない状態になったら、誰に自分の気持ちを伝えてほしい?」

こんなところからでも構いません。

ここで大切なのは、子どもが答えを決めないことです。

親の希望は、病気や体の状態、生活環境によって変わることがあります。

厚生労働省も人生会議について、本人が大切にしたいことや望む生き方、もしものときの医療やケアについて考え、家族や医療・ケアチームと話し合うことを示しています。また、気持ちは変わるため、その都度、何度でも話し合うことが大切だとしています。

だから、

「今の親の気持ちを聞いておく」

くらいに考えていいのです。

「お父さんはこう言っていたから、絶対こうする」と固定するためではありません。

「そういうふうに考えているんだね」と、お互いに知っておくための会話です。


全部できなくても、一つできれば十分

ここまで読んで、チェックリストのように感じた人もいるかもしれません。

でも、全部できなくても大丈夫です。

かかりつけ医を聞けた。

お薬手帳の場所が分かった。

「もしものときはどうしたい?」と聞けた。

そのどれか一つでもできたなら、親の終活はもう動き始めています。

「完璧に準備すること」より「親のことを少し知ること」。この章で伝えたかったのは、それだけです。

医療の話は、介護やエンディングノートなど、次の会話へのきっかけにもなります。その先については、次の章であらためて広げていきます。


この章のまとめ

親の医療について、最初から難しい話をする必要はありません。

まずは、

① かかりつけ医を聞く
② お薬手帳の場所を確認する
③ 「もしものとき、どうしてほしい?」と聞いてみる

この3つからで十分です。

そして、もし今日できそうなものが一つあるなら、STEP1の「どこの病院に通っているの?」から始めてみてください。

夕食のときでも、電話をしたときでも構いません。

「そういえば、お母さんって今どこの病院に通ってるんだっけ?」

「最近調子崩してない?どこか病院のお世話になっている?」

こうした会話が、いつか大切な場面で、親の思いを思い出す手がかりになるかもしれません。

「終活を始めよう」と言わなくてもいい。

まずは、親のことを一つ知る。

それが、50代の私たちが今日からできる、親の終活の小さな一歩なのだと思います。

関連記事:
親の終活は何から始めればいい?
→ まず全体像を知りたい方は「終活は何から始める?」の記事も参考にしてください。


第10章 FAQ|親の終活と医療でよくある質問

ここまで読んでいただくと、「親の終活で医療について何を聞けばいいのか」「どう話せばいいのか」が、少しずつ見えてきたのではないでしょうか。

ここでは、本文でお伝えした内容を、よくある質問に沿って簡潔に整理します。

FAQのために新しい情報を加えるのではなく、これまでの内容をもう一度確認するための章です。

「全部できているかな」と振り返るつもりで、気になる質問から読んでみてください。


親の終活で医療について何を聞けばいい?

まずは、かかりつけ医や通院先、持病、飲んでいる薬、お薬手帳の場所、アレルギー、緊急時の連絡先など、基本的な医療情報から確認しておくと安心です。

ただし、最初から全部聞く必要はありません。

「お薬手帳ってどこに置いてある?」など、日常の会話から一つずつ確認していけば大丈夫です。

詳しくは、第2章の「親の医療について、まず何を確認すればいい?」でチェックリストと一緒に整理しています。


延命治療について親に聞くべき?

「延命治療をする?しない?」と、いきなり結論を聞く必要はありません。

大切なのは、治療方法を子どもが決めることではなく、親がどんなことを大切にしているのかを知っておくことです。

たとえば、

「もし病気になったとき、どんなふうに過ごしたいと思う?」

こんな聞き方なら、延命治療そのものではなく、親の希望や価値観から話を始められます。

具体的な治療については、医療者から説明を受けながら考えることも大切です。

詳しくは第3章の「延命治療について、親とどう話せばいい?」で紹介しています。


親が認知症になったら、医療の希望はどうなる?

認知症などによって、本人が自分の希望を伝えたり判断したりすることが難しくなる場面があります。

だからこそ、本人が自分の考えを話せる今のうちに、「どう過ごしたいか」を聞いておく意味があります。

ただ、一度聞いたから終わりではありません。

親の気持ちが変わることもありますし、状況によって考え方が変わることもあります。

第4章では、認知症になる前に親の希望を聞いておく意味について詳しく説明しています。


人生会議(ACP)と終活は違う?

人生会議(ACP)は、終活と同じものではありません。

終活には、財産や遺言、実家など、さまざまな準備があります。一方、人生会議は、これからどのように過ごしたいか、医療やケアについて本人の意思をもとに考え、話し合っていく取り組みです。

つまり、親の終活の中で「これからどう生きたいか」「どんな医療やケアを望むか」を考えるきっかけの一つとして、人生会議という考え方があります。

詳しくは第5章で紹介しています。


親が終活や医療の話を嫌がったらどうする?

一度で話を終わらせようとしないことが大切です。

「まだ元気だから」「縁起でもない」と言われたら、そこで無理に話を続ける必要はありません。

また、必ずしも「終活」という言葉を使う必要もありません。

「もしものとき、どうしてほしい?」ではなく、日常会話の中で「これからどんなふうに過ごしたい?」と聞いてみる方法もあります。

親に話を聞くことは、親を説得することではありません。

「教えて」ではなく、「聞かせて」という気持ちで向き合うこと。

それが、この章で一番伝えたかったことです。

親との会話については、第6章で会話例とともに詳しく紹介しています。


親の医療情報を子どもが管理してもいい?

医療機関によっては、本人以外への説明や情報開示に制限がある場合もあります。ただし、かかりつけ医や薬、緊急連絡先といった基本情報を家族があらかじめ把握しておくこと自体は、本人の同意のもとで進める分には問題ありません。

大切なのは、「子どもが管理する」というより、「もしものときに、必要な情報にたどり着ける状態にしておく」という考え方です。

たとえば、

かかりつけ医や通院先

お薬手帳の場所

緊急時の連絡先

こうした情報は、親自身に聞いて、置き場所や連絡先を知っておくだけでも十分です。子どもがすべてを預かったり、書類を管理したりする必要はありません。

また、情報を知っているのが子どものうち一人だけという状態は、いざというときに他のきょうだいが状況を把握できず、行き違いの原因になることもあります。管理は本人の意思を尊重しながら、必要な範囲で家族が共有できる状態にしておくと安心です。

きょうだいでの共有方法については、第7章で詳しく紹介しています。


この章のまとめ

親の終活と医療について考えるとき、

「全部聞いておかなければ」

と思ってしまうかもしれません。

でも、この記事でお伝えしてきたのは、親の医療について完璧な答えを出すことではありません。

まずは親の希望を知ること。

そして、その希望を家族だけで決めつけず、必要に応じて医療・ケアの関係者とも話し合っていくことです。

もし今、

「そういえば、母はどこの病院に通っているんだろう」

「お薬手帳はどこにあるのかな」

「父は、もし病気になったらどうしたいんだろう」

そんなことが一つでも頭に浮かんだなら、それで十分です。

次に親と会ったとき、その一つを聞いてみる。

それが、この長い記事を読んでくださったあなたにできる、最初の一歩なのだと思います。


第11章 まとめ|親の医療について、まず一つ聞いてみよう

親の終活について調べ始めると、医療、介護、財産、遺言、実家、相続……。

考えなければならないことが、次々に出てきます。

「こんなにあるのなら、早く始めなければ」

そう焦ってしまう人もいるかもしれません。

でも、親の終活は、一度に全部終わらせる必要はありません。


終活を始めようと言わなくてもいい

親に「そろそろ終活を始めたほうがいいよ」と伝えることが、必ずしも最初の一歩ではありません。

むしろ、「終活」という言葉を出した途端に、親が身構えてしまうこともあります。

「まだそんな年じゃない」

「縁起でもないことを言わないで」

そんな反応が返ってくると、子どもの側も「やっぱり聞かないほうがよかったのかな」と思ってしまいますよね。

でも、親の終活で本当に大切なのは、終活という言葉を使うことではありません。

親がこれからどう過ごしたいと思っているのか。

病気になったとき、どんなことを大切にしたいのか。

困ったとき、誰に相談してほしいと思っているのか。

そうしたことを、少しずつ知っていくことです。

だから、最初から「終活の話をしよう」と構えなくても大丈夫です。

たとえば、親の通院の話をしているときに、

「そういえば、いつもどこの病院に行ってるの?」

と聞いてみる。

薬の話になったら、

「お薬手帳ってどこに置いてあるの?」

と尋ねてみる。

それだけでも、親の医療について知るきっかけになります。

そして、そこから少しずつ「これから」の話につながることもあります。


まずは親の「どうしたい?」を聞いてみる

親の医療について考えるとき、子どもが答えを決める必要はありません。

大切なのは、親が何を望んでいるのかを知ることです。

「延命治療はどうする?」

といきなり聞くのではなく、

「もし病気になったら、どんなふうに過ごしたい?」

と聞いてみる。

あるいは、

「これから先、できるだけ続けたいことってある?」

そんな何気ない問いかけから始めてもいいでしょう。

親がすぐに答えられなくても構いません。

「そんなこと考えたことないな」と言われたら、それも一つの答えです。

その日はそこで終わってもいい。

また別の日に、違う話題から始めればいいのです。

親の気持ちは変わるかもしれません。

家族の状況も、病気や介護の状況も変わります。

だからこそ、終活は「一度決めたら終わり」のものではなく、その時々の気持ちを確認しながら続けていくものと考えておくと、子どもの側も少し楽になります。


私自身も、「もっと早く聞いておけば」と思うことがあります

親のことを心配しているからこそ、子どもは「ちゃんと聞いておかなければ」と考えます。

でも、実際には、親子だからこそ聞きにくいこともあります。

私も、親のことを考えるようになってから、

「もっと自然に聞けていたらよかったのに」

と思うことがあります。

終活について学んでいくと、財産や相続など「準備しなければならないこと」に目が向きがちです。

けれど、その前にあるのは、一人の親が、これからどう生きたいと思っているのかを知ることなのではないでしょうか。

だから私は、終活を「親に準備してもらうもの」と考えるより、

親の話を聞く時間をつくること

から始めてもいいと思っています。


親の終活は、「もしもの準備」だけではない

医療について話すことは、病気や死を考えることでもあります。

だから、どうしても重たく感じるかもしれません。

でも、その先にあるのは、

「できれば自宅で過ごしたい」

「最期まで好きなことを続けたい」

「家族に迷惑をかけたくない」

「できるだけ痛みを少なくしたい」

といった、親が大切にしている暮らしや価値観です。

それを知ることができれば、親の終活は「死への準備」だけではなくなります。

これからの人生を、親自身がどう過ごしたいのか。

そのことを親子で考える時間にもなります。

だから私は、終活を怖いものとして遠ざけるのではなく、大切な人と向き合うための時間の一つとして考えてみてもいいのではないかと思います。


おわりに

親が元気でいてくれると、

「まだ聞かなくても大丈夫」

と思ってしまいます。

私たち50代の子世代にとって、それはごく自然なことです。

けれど、「元気な今」だからこそ聞けることもあります。

いきなり「終活しよう」と言わなくてもいい。

エンディングノートを用意しなくてもいい。

家族会議を開かなくてもいい。

まずは、親の隣に座ったときに、

「これから、どんなふうに過ごしたい?」

と、一つ聞いてみる。

答えが返ってきても、返ってこなくても、その時間には意味があります。

そして、もし今日聞くのが難しければ、次に親と話すときでも構いません。

「終活を始めよう」と言わなくてもいい。
まずは、親の「どうしたい?」を一つ聞いてみる。
それが、親の終活の最初の一歩です。

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