
親の終活が気になり始めた。
でも、何をどう聞けばいいのかわからない。
まして、
「終活のこと、誰か専門家に相談したほうがいいんじゃない?」
と思っても、
そもそも誰に相談すればいいの?
弁護士?
司法書士?
行政書士?
税理士?
それとも終活アドバイザー?
調べれば調べるほど、わからなくなってしまいます。
でも、親の終活で最初に必要なのは、いきなり専門家を探すことではありません。
まず、親がこれからどうしたいと思っているのかを知ること。
そのうえで、「これは自分たちだけでは判断できない」と感じたところを、適切な専門家に相談すればいいのです。
この記事では、50代の子世代が親の終活について考え始めたとき、
「誰に、何を相談すればいいのか」
を整理していきます。
第1章 親の終活、誰に相談すればいい?まず知っておきたいこと

「親の終活について、そろそろ考えたほうがいいのかな」
50代になると、そんなことを考える瞬間が増えてきます。
親はまだ元気。でも、70代、80代になった親を見ていると、「ずっとこのまま」というわけではないことも、少しずつ感じるようになります。
相続、遺言、介護、医療、実家、お墓……。
調べ始めると、いろいろな問題が出てきます。そして、こんな疑問にたどり着くのではないでしょうか。
「結局、親の終活は誰に相談すればいいの?」
先に結論を言うと、悩みの内容によって相談先は変わります。
何から始めればいいのか分からないなら自治体などの相談窓口、相続や遺言なら弁護士・司法書士・行政書士、相続税なら税理士、医療や介護なら地域包括支援センターなど、問題に合った窓口を選ぶことが基本です。
ただし、ここで一つ大切なことがあります。
親の終活は、最初から専門家を探すことから始めなくてもいいのです。
終活は一人の専門家ですべて解決するものではない
親の終活は、一人の「終活専門家」に相談すれば全部解決する、というものではありません。
なぜなら、終活には相続、税金、法律、医療、介護、不動産など、いくつもの分野が関わってくるからです。
たとえば、親が「この家をどうするか」と悩んでいるとします。
その中には、
- 親自身はこの家に住み続けたいのか
- 将来、誰かが住むのか
- 売却する可能性があるのか
- 相続したら誰が管理するのか
- 相続税はかかるのか
- 認知症などで判断が難しくなった場合はどうするのか
といった、別々の問題が含まれているかもしれません。
一つの悩みに見えても、必要になる専門知識は違います。
だからこそ、「終活について相談したい」と思ったときは、まず自分たちが何に困っているのかを整理することが大切です。
実際、法テラスも相続、遺言、成年後見などについて相談窓口を案内しており、「どこに相談したらいいか分からない」「法的な問題なのか分からない」という段階から利用できる案内窓口を設けています。
また、高齢者の医療・介護や生活上の困りごとなら、地域包括支援センターが相談の入口になります。厚生労働省は、地域包括支援センターは高齢者の総合相談や権利擁護などを担う、市町村が設置する身近な相談機関としています。
つまり、
「終活のことなら、この人」
と一人に決めるのではなく、
「この悩みなら、どこに相談すればいい?」
と考えるほうが、親の終活は進めやすくなります。
50代の子どもが最初に相談してもいい
「親の終活なんだから、親本人が相談するものなのでは?」
そう思うかもしれません。
でも、親の終活について気になった子どもが、まず情報を集めたり、相談窓口を調べたりすることはできます。
むしろ50代になると、親のことを心配しながらも、
「親にいきなり終活の話をするのは、ちょっと気が引ける……」
と感じる人も多いのではないでしょうか。
いきなり親を専門家のところへ連れて行こうとしなくても大丈夫です。
まず子ども自身が、
「親の終活では、どんなことを考えるの?」
「うちの場合、何が問題になりそう?」
「相談するとしたら、どんな専門家がいる?」
と調べてみる。
それだけでも、親との会話を始める準備になります。
たとえば、法律的な問題について「親に聞く前に、まず自分が知っておきたい」と思った場合には、法テラスのように、悩みに応じた相談窓口や制度を案内してくれる公的な窓口もあります。
ただし、ここで覚えておきたいのは、
「子どもが調べること」と「子どもの判断だけで親のことを決めること」は別
だということです。
親の財産やこれからの暮らしについて、子どもが「こうしたほうがいい」と先回りして決めるのではなく、まず親本人がどうしたいと思っているのかを知る。
そのための準備として、子どもが先に情報を集めておく。
私は、このくらいの距離感がちょうどいいと思っています。
まず「何に困っているのか」を整理する
親の終活について誰に相談するか迷ったら、専門家を探す前に「何が心配なのか」を3つくらい書き出してみるのがおすすめです。
たとえば、
「親が一人暮らしで、この先の生活が心配」
なら、介護や地域での支援について地域包括支援センターに相談することが考えられます。
「親の財産や相続が心配」
なら、相続や遺言について専門家に相談する準備をします。
「実家を将来どうするのか決まっていない」
なら、まず親の希望を聞いたうえで、不動産や相続など、必要な分野を整理していきます。
このように、「誰に相談するか」より先に「何を相談したいのか」を決めると、相談先が見えやすくなります。
神戸市では、何から始めればいいか分からない人を対象に、終活相談員と一緒に課題を整理し、必要に応じて弁護士・司法書士による専門相談につなぐ「こうべ終活相談窓口」を設けています。これは一つの自治体の例ですが、終活の悩みを最初から細かく分類できなくても、まず相談して整理するという方法があることが分かります。(神戸市公式ホームページ)
だから、
「相続なのか、介護なのか、自分でもよく分からない」
という状態でも、相談してはいけないわけではありません。
むしろ、何が問題なのか分からないからこそ、最初の相談先が必要なこともあります。
親の終活は「専門家探し」から始めなくてもいい
ここまで読むと、「じゃあ、結局どの専門家を探せばいいの?」と思うかもしれません。
私はそこを急がなくてもいいと思っています。
親の終活で最初に確認したいのは、専門家の名前ではなく、
「親はこれから、どうしたいと思っているのか」
だからです。
たとえば、実家について子どもが「将来は売ったほうがいい」と思っていても、親は「できるなら最後までここで暮らしたい」と考えているかもしれません。
介護についても、「施設に入れば安心」と子どもが思っていても、親は「できるだけ自宅で暮らしたい」と望んでいるかもしれません。
終活は、子どもが親の人生を整理してあげる作業ではありません。
親本人の希望を知り、その希望をかなえるために必要なところを家族や専門家が支えること。
私は、そこから始まるものだと思っています。
だから最初の一歩は、専門家を探すことではなく、
「お父さん、お母さんは、これからどんなふうに暮らしたいと思ってる?」
と聞いてみることでもいいのです。
すぐに答えが返ってこなくても構いません。
「そんなこと考えたことない」と言われても、それで終わりではありません。
親の終活について話すことは、亡くなった後のことだけを考えることではなく、今後の人生をどう過ごしたいのかを一緒に考えることでもあるからです。
この章のまとめ
親の終活を誰に相談するか迷ったら、まず覚えておきたいのは次の4つです。
- 終活は、一人の専門家ですべて解決するものではない
- 50代の子どもが先に情報を集め、相談先を調べてもいい
- 「誰に相談するか」の前に「何が心配なのか」を整理する
- 最初の一歩は、専門家探しではなく親の希望を聞くことでもいい
相続なら相続の専門家、医療や介護なら地域の相談窓口というように、問題が見えてくれば相談先も少しずつ見えてきます。
でも、その前に知っておきたいことがあります。
親の終活で、本当に最初に聞きたいのは「何を準備すればいい?」ではなく、「これからどうしたい?」なのかもしれません。
次の章では、実際に親の終活について、どんな悩みなら、誰に相談すればいいのかを、悩み別に整理していきます。
そして、その先にはもう一つ大切な準備があります。
専門家に相談する前に、親と話しておきたいことです。
「まだ何も起きていないから、聞くことなんてない」
そう思っている今だからこそ、聞けることもあります。
第2章 親の終活の相談先はどこ?悩み別に整理

「親の終活について相談したい」と思っても、最初に迷うのが「いったい誰に相談すればいいの?」ということではないでしょうか。
終活は、ひとつの専門家だけですべて解決できるものではありません。
悩みの内容によって、相談先を使い分けるのが基本です。
まずは、次の表を目安にしてみてください。
| 親の終活で気になっていること | 主な相談先 |
|---|---|
| 何から始めればいいかわからない | 自治体・終活相談窓口 |
| 遺言・相続について知りたい | 弁護士・司法書士・行政書士 |
| 相続税が心配 | 税理士 |
| 老後のお金・保険を見直したい | FP |
| 判断能力の低下や財産管理が心配 | 成年後見制度・家族信託に詳しい専門家 |
| 医療・介護について相談したい | 地域包括支援センター・社会福祉協議会 |
| 実家・空き家をどうするか悩んでいる | 自治体・不動産関連の相談窓口 |
大切なのは、「とにかく専門家を探さなければ」と焦らないことです。
今の自分たちの悩みがどこにあるのかがわかれば、相談先も少しずつ見えてきます。
何から始めればいいかわからない→自治体・終活相談窓口
「そもそも終活って、何から始めればいいの?」という段階なら、まずは自治体の相談窓口を探してみる方法があります。
自治体によっては、終活についての相談窓口を設けていたり、必要に応じて専門家につないだりしています。
第1章でも挙げたように、神戸市では「何から始めればいいかわからない」といった終活の相談を受け、専門的な助言が必要な場合には弁護士や司法書士などへの相談につなぐ仕組みがあります。
いきなり「遺言書を作らなければ」「家族信託を考えなければ」と考えるより、まず全体像を整理するための入口として利用するのもよいでしょう。
「何が問題なのかも、まだよくわからない」なら、最初の相談先は自治体。
そんな考え方を持っておくと、相談先探しで迷いにくくなります。
遺言・相続→弁護士・司法書士・行政書士
遺言や相続について具体的に考えたい場合は、弁護士・司法書士・行政書士などが相談先になります。
ただし、それぞれ扱う業務には違いがあります。
たとえば、相続人同士で争いになっている、遺産分割でもめているといった法律上の争いなら弁護士、相続登記など不動産の名義変更なら司法書士、遺言書などの書類作成を中心に相談したい場合は行政書士が候補になります。
「相続のことだから、とりあえず誰か一人に相談すれば全部わかる」と考えるより、自分たちの困りごとに合った専門家を選ぶことが大切です。
法テラスでも、相続・遺言といった相談を法的トラブルの一つとして案内を受けられます。
もし「相続って何から考えればいいの?」という段階なら、まずは当ブログの【終活と相続は何から始める?】という記事から、必要なところだけ読んでみてください。
相続税→税理士
「親の財産を相続したら、税金はいくらかかるんだろう」と気になったら、税理士が相談先になります。
相続税は、単純に「親の財産が○万円あれば必ずかかる」というものではありません。財産の内容や債務、基礎控除などを踏まえて判断する必要があります。
国税庁も相続税について、申告の要否や計算方法、申告手続きなどを案内しています。
特に、土地や家などの不動産、預貯金、生命保険など複数の財産がある場合は、「うちは相続税とは関係ない」と自己判断しないほうが安心です。
相続税について具体的に判断したいときは、税理士へ。
「相続税がかかるのか知りたい」という最初の相談から始めることもできます。
老後のお金・保険→FP
「親の老後のお金は足りるのかな」「保険に入りすぎていないかな」といったお金の不安なら、FP(ファイナンシャル・プランナー)が相談先の候補になります。
FPは、家計や資産、保険、老後の生活設計など、お金に関する悩みを整理する専門家です。
たとえば、毎月の生活費や預貯金、年金、保険などを一緒に整理して、「この先どのくらいのお金が必要なのか」を考えるときに役立ちます。
FPを選ぶ際には、資格の種類だけでなく、得意分野や相談実績、相談料も確認しておくと安全です。
ただし、税務や法律の判断が必要になった場合には、税理士や弁護士など別の専門家への相談が必要になることもあります。
判断能力の低下や財産管理が心配→成年後見制度や家族信託を専門家に相談
「親が将来、自分で財産を管理できなくなったらどうしよう」と感じているなら、成年後見制度や家族信託などについて専門家に相談する方法があります。
成年後見制度は、判断能力が十分でない人の権利や財産を守るための制度です。家族信託は、財産管理の方法の一つとして検討されることがあります。
ただし、どちらが親の家庭に合っているのかは、家族構成や財産、親本人の希望などによって変わります。
「家族信託がいいらしい」「成年後見は大変らしい」とネットの情報だけで決めるのではなく、必要になった段階で専門家に相談しながら考えるほうが安心です。
医療・介護→地域包括支援センター・社会福祉協議会
親の介護や生活、医療についての不安なら、まず地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。
地域包括支援センターは、市町村が設置する高齢者の総合相談の窓口で、介護だけでなく、保健・医療・福祉や権利擁護など幅広い相談に対応しています。
「まだ介護が必要と決まったわけではないけれど、最近ちょっと親の生活が心配」という段階でも、相談先の一つになります。
社会福祉協議会も、地域によって高齢者や家族の生活に関する相談・支援を行っています。
介護の問題は、家族だけで抱え込まなくてもいい。
そう覚えておけば、きっと気持ちが楽になることでしょう。
実家・空き家→自治体・不動産関連の相談窓口
「親が住まなくなった実家をどうする?」という問題も、終活では避けて通れません。
実家を売るのか、誰かが住むのか、賃貸にするのか、それとも別の方法を考えるのか。選択肢によって相談先も変わります。
まずは自治体の空き家相談窓口などで、地域の制度や支援策を確認してみてください。
売却や賃貸など具体的な不動産取引を考える段階になったら、不動産会社などに相談することになります。
ただ、実家については「家族がどうしたいか」だけでなく、親本人がその家をどうしたいと思っているのかも大切です。
実家問題については、別の記事で詳しくまとめていますので、「親の家をどうするか」で悩んでいる方は、そちらも参考にしてみてください。

相談先別に費用はどのくらい?ざっくり知っておきたい相場
相談費用は、専門家の種類だけで一律に決まっているわけではありません。無料相談がある一方で、時間制の相談料や、実際に手続きを依頼した場合の費用が別にかかることもあります。
たとえば兵庫県弁護士会の法律相談では、30分5,000円台という料金設定が見られます。一方、FPの相談料は、1時間単位、月額制、年間契約などさまざまで、相談内容によって別途費用がかかる場合もあります。
司法書士についても、報酬は各司法書士が定める仕組みになっているため、依頼する前に料金や算定方法を確認することが大切です。
そのため、「○○士なら○万円」と覚えるより、
①相談料はいくらか
②無料なのはどこまでか
③依頼した場合はいくらか
④追加料金が発生するケースは何か
を確認するほうが現実的です。
そして、もう一つ覚えておきたいのが、「無料相談=必ず安心」ではないということ。
無料相談は、最初の疑問を整理したり、専門家との相性を確かめたりする入口として便利です。
だからこそ、無料か有料かだけで決めず、「こちらの話をきちんと聞いてくれるか」「必要以上に契約を急がせないか」「費用について説明があるか」なども見ておきたいところです。
※この記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の法律・税務・医療・介護については、専門家や公的相談窓口へご相談ください。
この章のまとめ
親の終活で「誰に相談すればいい?」と迷ったら、まずは悩みを分けて考えてみると、相談先が見えやすくなります。
何から始めればいいかわからないなら自治体、相続なら法律・登記・書類など内容に応じた専門家、相続税なら税理士、お金ならFP、介護や生活の不安なら地域包括支援センター。
全部を一度に解決しようとしなくても大丈夫です。
「親のことで、今ちょっと気になっているのは何だろう?」
まずそこから考えてみる。
それだけでも、親の終活は少し身近なものになります。
そして、相談先を探す前にもう一つ大切なのが、親本人が何を望んでいるのかを知ることです。
次の章では、専門家に相談する前に、親とどんなことを話しておけばいいのかを考えていきます。
第3章 専門家に相談する前に、親と話しておきたい5つのこと

親の終活について誰に相談するかを考える前に、親本人がこれからどうしたいと思っているのかを知ることは大切です。
子どもが先回りして準備を進めることが、必ずしも親の望む終活になるとは限りません。
専門家に相談する前に、親とどんな話をしておくとよいのか。5つのポイントを順番に見ていきます。
①これからどんな暮らしをしたいか
最初に聞いてみたいのは、「これからどう暮らしたい?」ということです。
終活は、人生の終わりだけを考えるものではありません。これからの暮らしをどうしたいのかを考えることも、その大切な一部です。
たとえば、
「今の家にずっと住みたい」
「できるだけ自宅で暮らしたい」
「施設に入るなら、こんなところがいい」
「趣味を続けながら暮らしたい」
など、親の希望は人によって違います。
子どもから見ると「この家はもう管理が大変そう」と思っていても、親にとっては長年暮らしてきた大切な場所かもしれません。
だからこそ、子どもにとっての“安心”と、親にとっての“安心”は同じとは限らないと私は思っています。
まずは「何を整理するか」ではなく、「どんなふうに暮らしたいか」から。
そこがわかると、その後に必要な準備も見えやすくなります。
②医療・介護についてどう考えているか
医療や介護についても、元気なうちに親の考えを少し聞いておくと安心です。
病気や介護が必要になったとき、本人の意思を確認することが難しくなる場合があるからです。
「もし介護が必要になったら、どこで暮らしたい?」
「できれば自宅で過ごしたい?」
「病院や施設について、何か希望はある?」
こんな話からでも十分です。
ここで大切なのは、まだ元気な親に「介護になったらどうする?」と答えを迫ることではありません。
親が大切にしていることを、子どもが少し知っておく。
それだけでも、いざというときに家族が判断するときの手がかりになります。
医療や介護については、家族だけで答えを出す必要もありません。必要になれば、地域包括支援センターなどの公的な相談先を頼ることもできます。
判断能力が低下した場合の備えについては前の章で紹介した成年後見制度も参考になります。
③財産や重要書類をどう管理しているか
財産については、金額を聞き出すことよりも、「必要な情報がどこにあるのか」を知っておくことから始めてもいいと思います。
預貯金の通帳、保険、年金関係の書類、不動産の権利関係、印鑑など、親しか把握していないものがないでしょうか。
「全部見せて」と言われると、親も身構えてしまうかもしれません。
それなら、
「もし何かあったとき、どこを見たらいいかだけ教えて」
という聞き方もあります。
財産の整理は、相続や税金にも関係するため、必要になれば専門家に相談することになります。
ただ、その前段階として家族が「何がどこにあるのか」を把握しておくと、後で慌てずに済みます。
私自身、親のことを考えるとき、「知っているつもり」と「実際に家族で共有していること」は違うのだと感じます。
財産の額だけではなく、情報の置き場所を知っていることも、親の終活では大切な準備です。
この「情報の置き場所を知っておく」ことが、実は家族で終活を進めるときに一番効いてきます。
④実家やお墓をどうしたいか
実家やお墓についても、親が元気なうちに一度は希望を聞いておきたいところです。
「家は将来どうしたい?」
「お墓は今のままがいい?」
「もし誰も住まなくなったら、どうしてほしい?」
こうした話は、子どもからすると少し切り出しにくいものです。
でも、親が亡くなった後に初めて考えるのと、親が元気なうちに希望を聞いておくのとでは、家族の負担が大きく違ってくることがあります。
特に実家は、不動産としての価値だけでなく、親にとって思い出の詰まった場所でもあります。
「売ったほうがいい」「残すべき」と子どもが先に決めるのではなく、まず親の気持ちを聞く。
そのうえで、家族だけでは判断が難しいところを自治体や不動産の専門家などに相談する。
この順番を私は大切にしたいと思っています。
⑤家族に何を伝えておきたいか
最後に聞いておきたいのは、「家族に何を伝えておきたい?」ということです。
これは財産や手続きだけの話ではありません。
たとえば、
「自分が大切にしているものは何か」
「誰に何を託したいか」
「葬儀はどうしたいか」
「家族に伝えておきたいことはあるか」
そんなことも含まれます。
エンディングノートを書くことも、その思いを整理する方法の一つです。
けれど、最初から「エンディングノートを書いて」と渡さなくてもいい。
「お母さんは、これからどうしたい?」
「もしものとき、私たちに知っておいてほしいことってある?」
そんなところから始めてもいいのではないでしょうか。
親の終活は、子どもが代わりに人生設計を描くものではありません。
親の人生について、親本人の言葉を聞いておく時間。
私は、そこに終活の大きな意味があると思っています。

この章のまとめ
親の終活について「誰に相談するか」を考える前に、まず知っておきたいのは親本人の希望です。
これからどんな暮らしをしたいのか。
医療や介護をどう考えているのか。
大切な情報はどこにあるのか。
実家やお墓をどうしたいのか。
そして、家族に何を伝えておきたいのか。
全部を一度に聞く必要はありません。
「終活について話し合おう」と大げさに構えなくても、日常の会話の中で一つだけ聞いてみることから始められます。
親の終活は、子どもが全部背負うものではありません。
親の希望を知り、家族で共有し、必要なところでは公的機関や専門家を頼る。
そのための最初の一歩は、もしかすると専門家への相談ではなく、
「お母さんは、これからどうしたい?」
「お父さんは、何か希望ある?」
と聞いてみることなのかもしれません。
第4章 親が終活を嫌がるとき、無理に専門家とつなげなくてもいい

親の終活について調べ始めると、「早めに専門家へ相談したほうがいい」と思うかもしれません。
でも、親が「そんなこと、まだ考えなくていい」「終活なんて縁起でもない」と嫌がるなら、無理に専門家につなげる必要はありません。
むしろ、親の気持ちを置き去りにして話を進めると、「自分の人生を勝手に決められた」と感じさせてしまうこともあります。
大切なのは、終活を「親のために子どもが進めるもの」にしないこと。
親本人が話してみようと思えるところから、少しずつ始めていけばいいのです。
「終活しよう」ではなく「希望を聞かせて」
親に終活の話をするときは、「終活しよう」と誘うより、「これからどうしたい?」と聞くほうが話しやすいことがあります。
「終活」という言葉には、どうしても「死」や「老い」を連想する人もいるからです。
たとえば、
「この先もずっと今の家に住みたい?」
「旅行に行くなら、どこへ行きたい?」
「これからやってみたいことってある?」
こんな話なら、終活を意識していない親でも答えやすいかもしれません。
大切なのは、子どもが知りたいことを聞き出すことではなく、親の希望を知ること。
「終活」という言葉を使わなくても、親のこれからを考える会話は始められます。
ここで一つ、覚えておきたいことがあります。
「もし寝たきりになったら」「亡くなった後はどうする」というふうに「もしものとき」を起点に聞かれると、人はどうしても身構えてしまいます。一方で「これからどうしたい?」という聞き方は、過去や現状の延長線上にある前向きな問いなので、答える側の負担が小さくなります。
同じ「これからのことを知りたい」という目的でも、聞き方一つで、親が答えやすいかどうかは変わってくるのです。
財産の話から入らない
親の終活で一番切り出しにくいことの一つが、お金や財産の話ではないでしょうか。
「預金はいくらあるの?」
「家はどうするの?」
「相続のこと、考えてる?」
いきなりこう聞かれたら、親からすると「財産を狙われているのでは」と感じてしまうかもしれません。
もちろん、相続や財産整理は終活の大切なテーマです。
ただ、最初の会話ではなく、親子の関係を保ちながら少しずつ話題を広げていくほうが自然だと思います。
たとえば、親が「最近、病院に行くのが大変になった」と話したことをきっかけに、暮らしやこれからの希望について話す。
そんな日常の会話から始まることもあります。
財産を確認することより、まず親が話しやすい空気をつくる。
そこを急がないことが、結果的に大切な話につながることもあります。
一度に全部聞こうとしない
親の終活は、一日で全部聞き終える必要はありません。
住まい、医療、介護、財産、お墓、葬儀……。
考えることがたくさんあるからこそ、一度に全部聞こうとすると、親も子どもも疲れてしまいます。
今日は「これからも今の家に住みたい?」だけ。
次に会ったときは「病院や介護について何か希望ある?」だけ。
そんなふうに、一つずつ話していけば十分です。
「今日は終活について話し合おう」と時間を決めるより、食事をしながら出てきた話を大切にする。そんな向き合い方もあります。
親の人生は、チェックリストを埋めれば終わるものではありません。
話せたことを一つずつ積み重ねる。
それくらいのペースでも、親の希望を知ることはできます。
親が拒否したら、いったん引いてもいい
親が終活の話を嫌がったら、いったん引いても大丈夫です。
その場で説得して「わかった」と言わせても、本当に親が納得しているとは限りません。
「まだそんなこと考えたくない」
「私が死ぬのを待っているみたいで嫌」
そんな気持ちがあるのかもしれません。
私たち子どもは、親に何かあったとき困らないようにと思って、つい先回りしたくなります。
でも、その「心配」が親にとっては「急かされている」と感じられることもあります。
だから、一度話して嫌がられたからといって、「もう終活の話はできない」と決めなくてもいい。
時間を置いて、別の話題から自然に触れる機会を待つという選択肢もあります。
親が今は話したくないという意思も、親本人の大切な意思です。
それを尊重することも、親の終活を考えるうえで大切なことだと思います。
終活は「人生の終わりを準備すること」だけではありません。親が大切にしていることを知り、これからやりたいことを聞き、その希望を家族が少しずつ理解していく。そんな時間も、十分に終活なのだと思います。
この章のまとめ
親が終活を嫌がるとき、無理に専門家とつなげたり、話し合いを進めたりする必要はありません。
「終活しよう」ではなく、「これからどうしたい?」。
財産の話からではなく、日々の暮らしの話から。
一度に全部ではなく、一つずつ。
そして、親が「今は話したくない」と言うなら、いったん待つ。
親の終活を考えていると、子どもの側は「早く準備しなければ」と焦ってしまいがちです。
でも、親の人生なのだから、親のペースがあっていい。
まずは今日、親との何気ない会話の中で、
「これから、どんなふうに暮らしたい?」
と聞いてみる。
もし今日、嫌がられたり、はぐらかされたりしても、それでいいのです。
一度で聞き出せなかったことは、また今度でいい。
親の終活は、そうやって少しずつ、時間をかけて進めていくものなのだと思います。
第5章 家族で相談するからこそ見えてくること|私の失敗から学んだ親の終活

親の終活について調べていると、「誰に相談するか」が気になります。
でも、私自身の経験を振り返ってみると、専門家を探すことより先に、家族の中で情報や考えを共有しておくことが大切だったと感じています。
ここでは、私が親の終活について家族と関わる中で経験したことを書きます。
【体験談】姉妹が家族信託のために司法書士を探してくれた
以前、姉妹が家族信託を取り入れようと動いてくれたことがありました。
家族信託とは、簡単に言えば、財産を持っている人が、信頼できる家族などに財産の管理や運用を託す仕組みの一つです。
姉妹は、そのために司法書士さんを探してくれました。
当時の私はというと、家族信託はおろか、相続や終活について、それほど必要性を感じていませんでした。
けれども、
「姉妹が動いてくれているなら、それでいいかな」
そんなふうに思っていました。
自分から積極的に調べることもせず、姉妹に任せきりにしてしまっていたのです。
今振り返っても、そのときの私は「家族信託が必要かどうか」を自分の問題として考えられていなかったのだと思います。
だからといって、姉妹が動いてくれたことが悪かったわけではありません。
むしろ、親のことを考えて動いてくれたことには感謝しています。
ただ、その後のことを考えると、私は一つ大事なことを見落としていました。
【失敗談】家族で十分に情報共有しないまま、専門家探しが先に進んでしまった
私の失敗は、専門家選びそのものではなく、専門家を探す前に、家族信託で何を解決したいのかを家族で十分に共有していなかったことでした。
家族信託を取り入れることで、私たち親子のどんな問題が解消されるのか。
どんな困りごとに対応してくれるのか。
実際に困ったとき、専門家とはどのようにやり取りするのか。
そうしたことを家族みんなで確認しないまま、話が先に進んでいきました。
その結果、紹介してもらった司法書士さんと、どんな話をして、どこまで進んでいるのか、窓口となった姉妹以外には、すぐにわからない状態になってしまいました。
これは、誰かが悪いわけではありません。
司法書士さんは専門家として必要な仕事をしてくださいます。
でも、専門家として適切に仕事をしてもらうことと、家族みんなにとって連絡や相談がしやすい状況をつくることは、別の問題です。
当時の私は、そこまで考えられていませんでした。
「専門家が見つかった。それなら大丈夫」
どこかで、そう思っていたのだと思います。
メールやLINEを使って情報共有に努めましたが、それでも家族の間には温度差が生まれました。
同じ情報を共有していても、必要性を強く感じる人と、まだそこまで実感できていない人では、受け止め方が違います。
この経験から私は、「誰に相談するか」の前に、「家族の中で何を共有しているか」を確認する必要があると感じました。
「誰に相談するか」の前に、家族で共有しておけばよかったこと
専門家を探す前に、家族でいくつか確認しておけば、もっとスムーズだったと思います。
まず知っておきたかったのは、親本人が何を望んでいるのか。
そして、「なぜ家族信託を検討しているのか」という理由です。
「将来の財産管理が心配だから」なのか。
「実家をどうするか考えているから」なのか。
「親が一人で管理することが難しくなったときに備えたいから」なのか。
目的がわかれば、家族が確認することも、専門家に質問することも変わってきます。
さらに、
- 実家について誰がどこまで把握しているか
- 重要な書類がどこにあるか
- 普段、親と連絡を取っているのは誰か
- 専門家との連絡役を誰にするか
- きょうだいに何を共有するか
こうしたことも、先に話しておきたかったことです。
これは、きょうだいが多い家庭だけの話ではありません。
一人っ子でも、遠方に住んでいても、親と頻繁に連絡を取れる人がいなくても同じです。
「誰がやるか」を決める前に、「何を知っているか」を家族で確認する。
それだけでも、親の終活の進め方は変わってくると思います。
家族みんなで動くと、ひとりでは気づけない情報が見えてくる
親だけ、子どもだけ、ではなく、家族みんなが関わることで、一人では気づかなかったことが見えてくることがあります。
私自身、それを実感した出来事がありました。
親の財産を整理しようとしたとき、姉妹から「実家の駐車場スペースが空いているのがもったいない」という話が出ました。
親にとっては、そのスペースは遠方に住む家族が実家に来たときに使う場所。
だから、「そのまま空けておけばいい」というのが親の考えでした。
ところが、家族で話しているうちに、
「普段使っていない期間だけ、駐車場として貸し出すこともできるのでは?」
というアイデアが出てきました。
その後は、親に代わって子どもたちで運営することになり、結果的に新しい収入をつくるきっかけにもなりました。
私一人で実家の財産を見ていたら、「空いている駐車場」という事実だけで終わっていたかもしれません。
姉妹と一緒に考えたからこそ、
「こんな使い方もできるんだ」
と気づけたのだと思います。
もちろん、親には親の考えがあります。
「空いているから活用すればいい」と子どもが勝手に決めるのではなく、親がその場所をどう考えているのかを確認することも必要でした。
家族で話すことは、問題を見つけるだけではなく、思いがけない可能性を見つけることにもつながる。
これは、私が実際に経験して感じたことです。
そして、家族それぞれが持っている情報や視点は、同じではありません。
ある人は親から聞いていることを知っている。
別の人は実家のことを知っている。
また別の人は、財産や書類について気になっている。
一人だけで進めていたら、その情報がつながらないままになってしまいます。
だから家族の誰かが動いてくれているときほど、
「任せておけばいい」と思わないことが大切
なのだと学びました。
任せることと、関心を持たないことは違います。
専門家に相談する前に、家族もある程度の知識を持っておく
この経験から、専門家に任せることはもちろん大切だけれど、相談する側も最低限の知識を持っていたほうがいいと感じました。
たとえば、
「相続って何?」
「家族信託って、どんな仕組み?」
「遺言書があると何が変わるの?」
こうしたことをまったく知らないまま相談するのと、少し調べてから相談するのでは、質問できることが変わってきます。
もちろん、法律や税金などの専門的な判断を家族だけでする必要はありません。
わからないところを専門家に確認するために相談するのです。
だからこそ、
「ここまでは家族でわかった」
「ここから先がわからない」
という状態で相談できると、話も整理しやすくなります。
あのとき、家族信託についてもう少し知っていれば、オンラインで話を聞く機会があったときも、もっと自分事として聞けたはず、と反省しています。
専門家に丸投げするのではなく、家族が考えるための材料を持って相談する。
これは、私自身の経験から感じたことです。
相続や遺言、家族信託などについて詳しく知りたい方は、それぞれのテーマについて書いた関連記事も参考にしてみてください。
すべてを理解してから専門家に相談する必要はありません。
「この部分だけ、もう少し知っておきたい」
そんなところから調べれば十分です。
家族で学ぶための材料として、このブログを使ってもらえたら
このブログでは、親の終活について考え始めた50代の方に向けて、相続、エンディングノート、デジタル遺品、医療、介護、実家などについて書いてきました。
私自身も、最初から全部知っていたわけではありません。
むしろ、親のことを考えながら、「これはどういうことなんだろう」と一つずつ調べてきました。
だから、読者の方にも全部を覚えてほしいとは思っていません。
「これ、うちの家にも関係ありそう」
そう思ったテーマがあれば、その記事を一つ読んでみる。
もし家族と話せそうなら、一緒に読んでみる。
それだけでも、専門家に相談するときの会話は変わってくるはずです。
たとえば相続が気になったら相続について。
親のスマホやネット上の情報が気になったらデジタル遺品について。
エンディングノートが気になったら、何を書くものなのかを知ってみる。
知識を増やすことが目的ではなく、家族で話すきっかけとして使ってもらえたら。
それが、このブログを続けている私の思いです。
この章のまとめ
私自身の経験からわかったのは、親の終活では「誰に相談するか」だけでなく、その前に家族で何を共有し、どう役割を分けるかが大切だということです。
姉妹が家族信託を考えて動いてくれたことは、とてもありがたいことでした。
一方で、家族信託で何を解決したいのか、専門家とどのようにやり取りするのかなどを十分に共有しないまま進めたことで、家族の中に情報の偏りが生まれました。
遠方に住むきょうだいがいる家庭ほど、窓口を誰か一人に任せきりにせず、役割と情報共有のルールを先に決めておくことが、後々の負担を減らしてくれます。
実家の駐車場についても、一人で見ていたら「空いている場所」で終わっていたかもしれません。
でも、家族で話したことで、新しい使い方が見つかり、結果として新しい収入につながりました。
もちろん、すべての家庭で同じようにできるわけではありません。
大切なのは、同じ結論を出すことではなく、それぞれが持っている情報や考えを持ち寄ることなのだと思います。
「誰かがやってくれているから大丈夫」ではなく、「私は何を知っているんだろう」と一度考えてみる。
任せることと、関心を持たないことは違う。私が今回の経験から学んだのは、そのことでした。
第6章 遠方の実家・きょうだいがいる場合はどうする?

親の終活を考えるとき、「実家が遠いから、なかなか動けない」「近い人に任せるしかない」と感じる人もいると思います。
でも、遠方に住んでいてもできることはありますし、きょうだいがいるなら協力することができます。
大切なのは、全員が同じことをすることではなく、それぞれの状況に合わせて関わり方を決めることです。
遠方に住んでいてもできること
実家から離れて暮らしていても、親の終活に関われることはたくさんあります。
現地に行かなければ何もできない、というわけではありません。
たとえば、親との電話やLINEで近況を聞いたり、必要な情報を整理したり、自治体や専門家について調べたりすること。
書類をスキャンして共有したり、オンラインで家族会議をしたりする方法もあります。
家族と離れて暮らしていると、「近くにいる人に任せるしかない」と思ってしまいがちです。
でも、遠方にいるからこそできる役割もあります。
現地で動く人と、離れた場所で調べたり整理したりする人。
そんなふうに役割を分ければ、距離があっても親の終活に関わることはできます。
きょうだいで役割を分ける
きょうだいがいる場合は、「誰が全部やるか」ではなく、「誰が何を担当するか」と考えると負担を分けやすくなります。
たとえば、
- 親との日常的な連絡をする人
- 実家の状況を確認する人
- 書類を整理する人
- 専門家や自治体について調べる人
- 家族への連絡をまとめる人
というように、できることを分けられます。
もちろん、仕事や家庭の事情によって、同じようには動けません。
だから「長男だから」「実家に近いから」と決めつけるのではなく、それぞれの生活を考えながら決めることが大切です。
たとえば、実家の近くに住んでいる人が親の病院への付き添いを担当し、遠方に住む人が書類の整理や情報収集を担当する。
そんな分担でも十分です。
公平とは、全員が同じ量をすることではなく、それぞれが無理なく関われる形をつくること。
そんな考え方でいいのです。
「一番近くにいる人」に負担を集中させない
親の近くに住んでいる人は、どうしても親の用事を引き受ける機会が増えます。
病院への付き添い、実家の確認、郵便物の整理、役所への相談など、現地でしかできないこともあるからです。
でも、それが当たり前になってしまうと、一人に負担が集中してしまいます。
「近くに住んでいるからお願いね」
という一言だけで終わらせず、
「何をお願いしているのか」
「どこまでならできるのか」
を家族で確認しておくと、負担の偏りにも気づきやすくなります。
逆に、遠方に住む人が「現地に行けないから何もできない」と思い込む必要もありません。
交通費を負担する、調べものをする、連絡を担当するなど、離れていてもできることがあります。
近くにいる人だけが頑張る仕組みにしないこと。
それは親のためだけでなく、きょうだいの関係を守るためにも大切なことだと思います。
情報共有の方法を決めておく
きょうだいで親の終活を考えるなら、情報をどこで共有するかを決めておくと、行き違いを減らしやすくなります。
電話だけで伝えると、「言った・言わない」になってしまうこともあります。
そこで、きょうだいのグループLINEを作ったり、共有フォルダを利用したりして、必要な情報を残しておく方法があります。
たとえば、
「親と話したこと」
「病院や介護についての連絡」
「専門家に相談した内容」
「実家について気になったこと」
など、あとから確認できるようにしておくと便利です。
ただし、何でも共有すればいいわけではありません。
親のプライバシーにも関わる情報があるため、何を誰に共有するのかは、親の意思や家族の状況を考えて決めることも必要です。
第5章で書いた私自身の経験でも、メールやLINEで情報共有をしても、家族の間に温度差は生まれました。
だからこそ、「連絡手段を作れば終わり」ではなく、必要なときに話し合うことも大切です。
きょうだいがいなくても、一人で抱え込まなくていい
一人っ子の場合、「親のことは自分が全部やらなければ」と思ってしまうかもしれません。
でも、一人っ子だからといって、親の終活を一人で背負う必要はありません。
自治体の相談窓口、地域包括支援センター、弁護士、司法書士、税理士など、内容に応じて頼れる場所があります。
親族の中に相談できる人がいる場合は、その人に話を聞いてもらうこともできます。
また、きょうだいがいても、遠方に住んでいたり、関係が疎遠だったり、仕事や家庭の事情で頼れなかったりすることもあります。
つまり、問題は「きょうだいが何人いるか」ではありません。
自分一人で抱え込まず、必要なところで外部の力を借りられるかどうか。
そう考えると、少し気持ちが楽になるのではないでしょうか。
親の希望と家族の都合を混同しない
親の終活を進めるとき、意外と難しいのが「親が望んでいること」と「家族にとって都合がいいこと」を分けて考えることです。
たとえば、子どもからすると、
「実家を売ったほうが管理が楽」
「施設に入ってくれたほうが安心」
と思うことがあるかもしれません。
でも、親にとっては、
「できるだけ今の家で暮らしたい」
「まだ自分で決めたい」
という思いがあるかもしれません。
もちろん、親の希望だけですべてを決められるとは限りません。
費用や介護、家族の生活など、現実的な問題もあります。
だからこそ、まずは「親はどうしたいのか」を確認し、そのうえで家族にできること、難しいことを分けて考える。
親の希望を尊重することと、家族が無理をしないこと。その両方を考えていいのです。
実家のことは、まず親の希望を確認する
実家の整理や売却などを考えるときも、最初に確認したいのは親の気持ちです。
「この家をどうしたい?」
「この先もここに住みたい?」
「もし住まなくなったら、どうしてほしい?」
そんなところから話を始めてもいいでしょう。
第5章で紹介した私の家でも、実家の駐車場スペースについて、親と子どもでは見方が違いました。
親にとっては、遠方の家族が来たときに使うための場所。
一方、子どもから見ると、普段使っていない期間を活用できる可能性がありました。
そこで家族で考えたことで、駐車場として貸し出すという方法につながりました。
この経験から私が感じたのは、親の希望を聞いたうえで家族が一緒に考えると、どちらか一方を諦めなくてもいい方法が見つかることがあるということです。
もちろん、すべての家庭で同じような方法が見つかるわけではありません。
実家を残すのか、売却するのか、誰かが住むのか。
答えを急ぐのではなく、まず親の希望を知る。
そのうえで必要なら、自治体や不動産の専門家などに相談する。
それが、実家について考えるときの一つの順番になります。
この章のまとめ
遠方に住んでいても、きょうだいがいなくても、親の終活を進める方法はあります。
きょうだいがいるなら、近くにいる人だけに負担を集中させず、それぞれの状況に合わせて役割を分ける。
遠方なら、現地で動く人を支える役割もあります。
一人っ子なら、公的な相談窓口や専門家を頼っていい。
そして何より、家族の都合だけで親のこれからを決めないこと。
親の希望を確認し、そのうえで家族にできることを考える。
その過程で、自分たちだけでは難しいことが出てきたら、専門家に相談すればいいのです。
親の終活を考えると、
「私がなんとかしなければ」
と思ってしまうことがあります。
でも、本当に必要なのは、すべてを自分で解決することではありません。
一人で抱え込まない仕組みを、少しずつつくっていくこと。
それだけでも、親のこれからに向き合う負担は変わってくるでしょう。
第7章 専門家に相談するときの選び方|確認したい5つのこと

親の終活について専門家に相談するとき、資格だけを見て決めるのはおすすめできません。
大切なのは、その専門家が「自分たちの困りごと」に合っているかどうかです。
同じ「相続の相談」でも、遺言を作りたいのか、相続人同士の話し合いが必要なのか、相続税が心配なのかで、相談先は変わります。
第2章で紹介したように、まず悩みを整理したうえで、次の5つを確認してみましょう。
①どんな資格を持っているか
最初に確認したいのは、どんな資格を持つ専門家なのかということです。
弁護士、司法書士、行政書士、税理士など、それぞれ専門とする分野が違います。
たとえば相続税について具体的な税務相談をするなら税理士が候補になりますし、遺言や相続に関する書類作成、登記などでは別の専門家が関わります。
ここで大切なのは、
「有名な資格を持っているから安心」
と考えて終わらないこと。
資格は、その人に相談できる内容を判断するための最初の手がかりです。
相談したい内容と、その資格の専門分野が合っているかを確認するところから始めます。
資格についてよくわからない場合は、各専門職の公式団体などで業務内容や登録情報を確認する方法もあります。
②自分たちの悩みに対応できる専門家か
第2章では、悩みの種類に応じてどの資格の専門家に相談すればいいのかを紹介しました。ここではもう一歩進んで、同じ資格の中でも、その人自身が自分たちの悩みに対応しているかを見極める話です。
たとえば、「親の相続について相談したい」と思っていても、実際には「実家の名義がどうなっているのかわからない」「遺言書を作りたい」「きょうだいの間でもめそう」「相続税が心配」など、悩みはそれぞれ違います。
同じ資格を持つ専門家でも、得意な分野や普段扱っている案件は一人ひとり異なります。
そのため、相談前に自分たちの状況を簡単に整理しておくと、専門家との話が進めやすくなります。
最初からきれいにまとめようとしなくても大丈夫です。
「親が高齢になってきて、実家と財産のことが心配」
「何から手をつけたらいいのかわからない」
それくらいでも十分、相談の入口になります。
そして、専門家のホームページなどで、自分たちと似た相談を扱っているかを確認します。
「この資格の人」ではなく、「この悩みに対応できる人」を探す。
これが、専門家選びで一番大切な視点です。
③どこまで対応してくれるのか
専門家に相談するときは、「相談したら全部やってくれる」と思わないことも大切です。
相談だけなのか、書類作成まで依頼できるのか、手続きまで任せられるのか。
また、自分の専門分野を超える問題が出てきた場合に、ほかの専門家につないでもらえるのかも確認しておきたいところです。
たとえば、相続について相談している途中で、税金の問題が出てくることもあります。
その場合、最初に相談した専門家だけですべて完結するとは限りません。
第5章で書いた私自身の経験でも、「専門家が見つかったから安心」ではなく、誰が窓口になり、どこまでを専門家にお願いするのかを家族で共有しておくことが大切だと感じました。
相談前に、
「相談だけしたいのか」
「手続きをお願いしたいのか」
「継続してサポートしてほしいのか」
を家族で考えておくと、契約後の行き違いを防ぎやすくなります。
④費用や契約内容を事前に確認する(契約をせかされていないか)
専門家に依頼するときは、料金だけでなく、何に対していくらかかるのかを確認することが重要です。
「初回相談は無料」と書かれていても、その後に正式に依頼する場合は別料金ということがあります。
また、基本料金だけでなく、実費や追加の手続き費用が発生する場合もあります。
だからこそ、
「相談料はいくらですか?」
「依頼すると総額でどのくらいになりますか?」
「追加料金が発生するのはどんな場合ですか?」
と、最初に確認しておくと安心です。
見積書や契約書を渡されたら、わからない言葉をそのままにせず、説明を聞いてから判断する。
安いか高いかだけでなく、「何をしてもらうための費用なのか」を見ることが大切です。
もう一つ、費用と合わせて見ておきたいのが、契約を急かされていないかということです。
「今日中に決めてください」
「今契約すれば割引になります」
というように、その場での契約を強く勧められたら、一度持ち帰って考える時間をもらってもいいのです。
親の終活は、判断を急ぐ場面が少ないテーマではありません。だからこそ、契約を急がせない専門家かどうかは、費用と同じくらい大切な確認ポイントになります。
無料相談を利用する場合も同じです。
無料だから安心なのではなく、自分たちが納得して相談や契約を進められるかを確認するための入口として利用します。
⑤他の専門家と連携できるか
親の終活では、一人の専門家だけでは解決できない問題もあります。
相続なら法律、不動産、税金など、複数の分野が関係することがあるからです。
そのため、必要に応じて弁護士、司法書士、税理士などと連携できる専門家かどうかも、選ぶときのポイントになります。
たとえば、最初に相談した専門家から、
「ここから先は税理士に確認したほうがいいですね」
「この手続きは司法書士の分野です」
と適切につないでもらえるなら、家族にとっても相談の負担が減ります。
もちろん、すべての専門家が他の専門家を紹介できるとは限りません。
だからこそ、初回の相談時に、
「税務や登記など、別の専門分野が必要になった場合はどうなりますか?」
と聞いてみるのも一つです。
一人ですべて解決してくれる人を探すのではなく、必要なときに適切な専門家につながれること。
それも、親の終活の相談先を選ぶうえで大切な条件です。
この章のまとめ
親の終活について専門家に相談するときは、「資格があるから大丈夫」と考えるだけでは足りません。
確認したいのは、
- どんな資格を持っているか
- 自分たちの悩みに対応できるか
- どこまで対応してくれるのか
- 費用や契約内容が明確か、契約をせかされていないか
- 必要に応じて他の専門家と連携できるか
という5つです。
そして、もう一つ忘れたくないのが、専門家を選ぶことも家族の終活の一部だということです。
誰か一人が探して、家族はあとから知らされる。
それよりも、
「今、何に困っているのか」
「何を専門家に相談したいのか」
を家族で確認してから探したほうが、相談先を選びやすくなります。
もちろん、家族全員の意見を完全に一致させる必要はありません。
わからないことがあっても大丈夫です。
「この問題は誰に相談すればいいんだろう?」
そこから専門家に聞いてみることも、立派な一歩です。
そして、法律・税務・医療・介護など、専門的な判断が必要なことは、家族だけで結論を出そうとせず、公的な相談窓口や適切な専門家につなげていきましょう。
第8章 無料相談と有料相談、どちらを選べばいい?

「親の終活について相談したい。でも、相談料が高かったらどうしよう」
そんな不安から、相談すること自体をためらってしまう人もいるでしょう。
結論からいうと、最初から有料相談を選ぶ必要はありません。
まずは自治体などの無料相談で、「何を相談すればいいのか」を整理する方法があります。そのうえで、個別の手続きや継続的なサポートが必要になったら、有料の専門家に相談する。
この順番で考えると気持ちがラクになると思っています。
自治体の無料相談を利用する
親の終活で何から相談すればいいかわからないなら、まず自治体の相談窓口を利用する方法があります。
自治体には、終活全般について相談できる窓口や、高齢者・介護・福祉に関する相談窓口があります。地域によっては、弁護士や司法書士などによる専門相談につないでもらえる場合もあります。
たとえば神戸市では、「こうべ終活相談窓口」が設けられており、終活の始め方やエンディングシート、終活情報登録制度などについて相談できます。必要に応じて、弁護士・司法書士による専門相談につなぐ仕組みもあります。
こうした窓口のよいところは、「まだ問題がはっきりしていない段階」でも相談しやすいことです。
「親が高齢になってきたけれど、何から始めたらいいかわからない」
「相続の話をしたほうがいいのはわかるけれど、まだ具体的な問題はない」
このくらいの状態でも大丈夫です。
終活というと「遺言」「相続」「財産整理」のような具体的な問題が起きてから専門家に相談するものだと考えがちです。
でも、実際にはその手前に、「何を考えておけばいいのか」を一緒に整理してくれる相談先があります。
まだ何も起きていない50代だからこそ、無料相談を入口にする。
これは、親の終活を始めるときの現実的な選択肢です。
専門家の初回相談を利用する
悩みがある程度はっきりしているなら、専門家の初回相談を利用する方法もあります。
たとえば、
- 遺言書を作りたい
- 親の土地や家について相談したい
- 相続で家族がもめないか心配
- 相続税について知りたい
- 成年後見制度について詳しく聞きたい
というように、相談したいテーマが具体的なら、その分野を扱う専門家に直接聞くほうが話が早い場合があります。
ここで大切なのは、「初回相談」と「依頼」は別だと考えることです。
相談したからといって、その場で手続きを依頼する必要はありません。
まずは、
「今の家族の状況なら、何を準備すればいいのか」
「すぐに手続きが必要なのか」
「まだ親子で話し合う段階なのか」
を確認する。
それだけでも、次に何をすればいいのかが見えてきます。
法律に関する相談では、法テラスなど無料相談を利用できる制度もあります。ただし、無料法律相談には収入や資産などの利用条件があり、相談時間や回数にも決まりがあります。
だからこそ、「無料か有料か」だけではなく、今の自分たちに必要な相談なのかで判断することが大切です。
有料相談にはどんなメリットがある?
有料相談のメリットは、料金を払うことで「自分たちのケースについて詳しく相談する時間」を確保しやすいことです。
無料相談は、制度の概要を知ったり、問題を整理したりする入口として役立ちます。
一方で、
「親の財産が複雑」
「きょうだいの間で考え方が違う」
「家や土地が複数ある」
「遺言書を具体的に作りたい」
など、家族ごとの事情を踏まえた対応が必要になると、個別に専門家へ依頼する場面が出てきます。
たとえば、「相続について知りたい」という相談でも、
「何を準備すればいいか知りたい」のか、
「遺言書を作りたい」のか、
「相続税がかかるのか知りたい」のか、
「きょうだい間でもめそうなので相談したい」のかで、必要な専門家や対応は変わります。
有料相談は、「お金を払って答えを買う」というより、自分たちの事情に合わせて問題を整理し、次の行動を決めるための時間を買うと考えるとわかりやすいでしょう。
ただし、すべての終活に有料相談が必要なわけではありません。
親の希望を聞いたり、エンディングノートを書いたり、家族で話し合ったりすることは、専門家に依頼しなくても始められます。
無料か有料か、だけで判断しない
無料相談は便利ですが、「無料だからお得」と決めつける必要はありません。
無料相談には、相談時間や対応範囲が限られている場合があります。また、相談しただけでは手続きまで進めてもらえるわけではありません。
反対に、有料だから必ず自分たちに合った相談になるとも限りません。
ここは、無料・有料という金額だけで判断しないことが大切です。
「この相談で、今の自分の疑問がどこまで解決するのか」
を基準にするとわかりやすくなります。
たとえば、まだ「親の終活って何から始めればいいの?」という段階なら、自治体などの無料相談で十分な場合があります。
一方で、「親が遺言書を作りたいと言っている」「不動産の名義について具体的に確認したい」という段階なら、専門家への相談を検討する。
このように、悩みの具体性に合わせて相談先と費用を変えると、必要以上にお金をかけずに済みます。
有料相談ならではの確認ポイント
契約前に確認しておきたい基本的な項目(相談料、対応範囲、追加料金、契約を急かされていないかなど)は、第7章で紹介した通りです。
有料相談を利用するときは、それに加えて次の2点も見ておくと安心です。
相談時間や回数に上限はあるか
「1回○分まで」「○回まで無料」というように、時間や回数に上限が設定されている場合があります。事前に確認しておくと、相談中に時間切れで話しきれなかった、ということを防ぎやすくなります。
キャンセル料はかかるのか
予約後に都合が悪くなった場合、キャンセル料が発生する事務所とそうでない事務所があります。特に親の体調に合わせて予定を変更する可能性がある場合は、あらかじめ確認しておくと安心です。
「相談してみたら、思っていたより費用がかかった」
という事態を避けるためにも、契約前に料金と業務範囲を確認しておきましょう。
そして、もう一つ大切なのが、親本人の意思です。
子どもが「この専門家にお願いしよう」と思っても、親が納得していなければ、終活は長続きしません。
まずは、
「こういう相談窓口があるみたい。一度話を聞いてみる?」
くらいから始めてもいい。
相談すること自体が目的ではありません。
親がこれからどう生きたいのかを知り、その希望を家族でどう支えていくかを考えることが、終活の本当の目的だからです。
この章のまとめ
無料相談と有料相談は、どちらが正解というものではありません。
まだ悩みが漠然としているなら自治体などの無料相談を入口にする。
問題が具体的になり、個別の手続きや専門的な判断が必要になったら、有料の専門家への相談を考える。
この順番なら、「お金がかかるから相談できない」と最初から諦めなくて済みます。
そして、終活で一番大切なのは、相談にお金をかけることではありません。
親が何を望んでいるのかを知ることです。
もし、まだ親と終活の話をしたことがないなら、専門家を探す前に、
「これから、どんなふうに暮らしたい?」
と聞いてみる。
そこから始めても、決して遅くありません。
関連記事の「親の終活の切り出し方」では、いきなり財産や相続の話をするのではなく、親を傷つけずに話を始める方法を紹介しています。相談先を探す前に、まず親の言葉を聞いてみたい方は、そちらも参考にしてみてください。
第9章 相談するか迷ったら、まず今日できること

ここまで読んで、「親の終活について相談したほうがいいのはわかった。でも、まだ相談するほどのことでもない気がする」と感じていませんか?
そんなときは、無理に専門家を探さなくても大丈夫です。
親の終活は、相談先を決めるところから始めなくてもいい。
まずは、自分と親の中にある「気になっていること」を一つ見つける。
それだけでも、十分な第一歩です。
親に一つだけ質問する
親の終活を始めるなら、まず親に一つだけ質問してみるのがおすすめです。
いきなり「遺言はどうする?」「財産を整理しておいて」と切り出す必要はありません。
終活という言葉を出すことさえ、親によっては抵抗があります。
そんなときは、もっと日常に近い質問でいいのです。
たとえば、
「これから、どんなふうに暮らしたい?」
「病院に行くとき、私たちに知っておいてほしいことはある?」
「この家は、これからどうしていきたい?」
「お葬式って、どんなのがいい?」
この中から、親が話しやすそうなものを一つ選びます。
私なら、最初は「これからどんなふうに暮らしたい?」と聞きます。
相続やお金の話ではなく、親自身のこれからの希望を聞くところから始められるからです。
親の答えがすぐに出なくても構いません。
「まだ考えてないわ」
「そんな先のこと、わからない」
それも一つの答えです。
大切なのは、一度で終活のすべてを聞き出すことではありません。
親の話を聞くきっかけをつくること。
それだけで、親の終活は少しずつ動き始めます。
自分が心配していることを3つ書き出す
親の終活について頭の中がごちゃごちゃしているなら、心配していることを3つだけ書き出してみましょう。
「何となく不安」という状態を、具体的な言葉にするだけで、必要な相談先が見えやすくなります。
たとえば、
- 親の家を将来どうするのか心配
- 相続でもめないか心配
- 親が病気になったときの希望を知らない
という具合です。
ここで重要なのは、「親が困ること」ではなく、「私が心配していること」から書くことです。
私自身も、親のことになると「あれも考えなければ」「これも確認しなければ」と、必要以上に問題を大きく考えてしまいます。
でも、一つずつ書き出してみると、
「今すぐ専門家に相談する問題なのか」
「まず親に聞けばいいことなのか」
「家族で話し合えばいいことなのか」
が分かれてきます。
たとえば、「相続が心配」と書いたとしても、すぐに相続手続きを始める必要があるとは限りません。
まずは、親が何を大切にしているのかを知る。
そのうえで必要になったら専門家に相談する。
不安を3つに分解するだけで、「今やること」が見えてきます。
家族に一度共有してみる
親の終活について自分だけで考え続けるより、家族に一度共有するほうが前に進みやすくなります。
きょうだいがいるなら、まずは「こんなことが気になっている」と伝えるだけでも十分です。
たとえば、
「最近、親のこれからのことが少し気になってる」
「実家のこと、みんなはどう考えてる?」
「親が元気なうちに、一度希望を聞いておいたほうがいいかな」
この程度の話から始められます。
ここで、家族全員の意見をまとめようとしなくて大丈夫です。
「私はこう思っている」と共有するだけでも、他の家族が考えるきっかけになります。
以前、家族で親のことについて動いた際、私は「姉妹が動いてくれているなら、それでいいかな」と任せていた部分があります。
ところが後になって、家族の中で「何を目的に動いているのか」「どこまで話が進んでいるのか」の共有が十分ではなかったことに気づきました。
任せることと、関心を持たないことは、別の話だったのです。
この経験から、私は「誰に相談するか」の前に、家族の中で何を共有しておくのかを決めておくことが大切だと感じています。
だからこそ、最初から家族会議を開く必要はありません。
まず一言、話題にしてみる。
それだけでも十分なスタートです。
必要なら相談先を一つだけ調べてみる
親の終活について具体的な心配があるなら、相談先を一つだけ調べてみましょう。
ポイントは、いきなり専門家を決めないことです。
たとえば、
「何から始めればいいかわからない」
→自治体の終活相談窓口
「介護や暮らしが心配」
→地域包括支援センター
「遺言や相続について詳しく知りたい」
→弁護士・司法書士・行政書士など
「相続税が気になる」
→税理士
というように、まずは自分の心配と相談先を大まかにつなげます。
ここまでなら、実際に依頼する必要もありません。
相談窓口の場所や相談方法を調べて、
「こういうところがあるんだ」
と知っておくだけでもいいのです。
私は、この「一つだけ調べる」というくらいの軽さが、終活では大切だと考えています。
全部調べようとすると、情報が多すぎて動けなくなるからです。
今日できるのは、一つ。
それで十分です。
この章のまとめ
親の終活について「誰に相談すればいいの?」と迷っているなら、今日すぐに専門家を決める必要はありません。
まずは、
①親に一つ質問する
②自分の心配を3つ書く
③家族に一度共有する
④必要なら相談先を一つ調べる
この4つの中から、一つだけ始めればいいのです。
終活というと、遺言や相続、財産整理など、少し重たいことを思い浮かべます。
でも、その入口はもっと小さくていい。
親とテレビを見ながらでもいい。
電話で話しているときでもいい。
ふとしたタイミングで、
「これから、どんなふうに暮らしたい?」
と聞いてみる。
その一言から、今まで知らなかった親の気持ちが見えてくることがあります。
本当に大事なのは「終活=親の人生を子どもが整理する作業」にしないことではないでしょうか。
親がこれからどう生きたいのかを知り、家族がそれを一緒に考えていく時間にすること。
だから、今日できることは大きな準備ではなくていい。
「今度、親に一つだけ聞いてみる」
そこから始めてみませんか。
FAQ|親の終活は誰に相談する?

ここまで読んで、「相談先はわかったけれど、こんな場合はどうしたらいい?」と感じた方もいるでしょう。
ここでは、本文の要点をまとめつつ、親の終活を実際に進めるときに出てきやすい疑問にもお答えします。
Q1 親の終活は誰に相談すればいいですか?
親の終活は、何に困っているのかによって相談先を変えるのが基本です。
まだ悩みが漠然としているなら自治体の終活相談窓口、相続や遺言なら弁護士・司法書士・行政書士、相続税なら税理士、介護や高齢者の暮らしなら地域包括支援センターなどが相談先になります。
「親の終活について相談したいけれど、何を相談すればいいのかもわからない」という段階なら、最初から専門家を決める必要はありません。
まずは公的な相談窓口で状況を整理し、必要な専門家につないでもらう方法もあります。
大切なのは、親の終活の相談先を先に決めることではなく、今何が気になっているのかを整理することです。
Q2 親を連れて行かなくても、子どもだけで専門家に相談してもいいですか?
はい。親本人がまだ相談に行く段階ではない場合、子どもだけで相談することはできます。
「親にどう話せばいいかわからない」「まず自分が情報を知りたい」という目的でも、子どもだけで相談できる窓口があります。
ただし、子どもから相談できても、親本人の意思を無視して手続きを進められるわけではありません。
たとえば、
「親が遺言書を作りたいと言っているけれど、何から始めればいい?」
「親の家について、今のうちに確認しておくことは?」
というように、まず子どもが情報を集める目的で相談する方法があります。
一方、遺言書の作成など、本人の意思確認が必要な手続きでは、最終的に親本人の関与が必要になります。
だから、子どもだけの相談は「親の代わりに決めるため」ではなく、親に話す前に子どもが正しい情報を整理するためと考えるとわかりやすいでしょう。親を説得して相談に連れて行くことより、先に自分が情報を知っておく。それも、親の終活を支える一つの方法です。
Q3 親が終活を嫌がる場合はどうすればいいですか?
親が終活を嫌がるなら、無理に終活を始めなくても大丈夫です。
「終活」という言葉そのものに抵抗がある親もいます。
その場合は、「遺言を書いて」「財産を教えて」といった話から始めるのではなく、
「これからどんなふうに暮らしたい?」
「病院に行くとき、私たちに知っておいてほしいことはある?」
など、これからの生活について聞く方法があります。
また、一度聞いて嫌がられたからといって、親子の会話をそこで終わらせる必要もありません。
時間を置いて、別の話題から自然に話すこともできます。
親が「今は話したくない」と言うことも、親自身の大切な意思です。
親の終活は、子どもが急いで完成させるものではありません。
Q4 終活相談は無料でできますか?
はい。自治体などの公的な相談窓口では、無料で相談できる場合があります。
また、法律相談についても、一定の条件を満たす人を対象に法テラスの無料法律相談などを利用できる場合があります。
ただし、「終活相談なら必ず無料」というわけではありません。
相談窓口によって、対象者・相談内容・時間・回数などの条件が異なります。
また、無料相談で情報を得ることと、専門家に書類作成や手続きを依頼することは別です。
「まず話を聞いてみたい」という段階なら無料相談を入口にし、具体的な手続きが必要になったら有料依頼を検討する。
このように段階を分けると、相談費用への不安も小さくなります。
Q5 相続については誰に相談すればいいですか?
相続の相談先は、何を知りたいのかによって変わります。
たとえば、遺言や相続人同士の争いなど法律上の問題なら弁護士、相続登記など不動産の名義変更なら司法書士、相続税についてなら税理士が主な相談先です。
「相続について相談したい」という一言でも、実際には内容がかなり違います。
たとえば、
「親が亡くなった後、家をどうするか」
「遺言書を作ったほうがいいのか」
「相続税がかかるのか」
では、必要な専門知識が変わります。
だからこそ、専門家を探す前に、
「私は相続の何が心配なのか?」
を一度言葉にしてみることが大切です。
相続についてさらに詳しく知りたい方は、関連記事の「終活と相続」をあわせて参考うにしてください。
Q6 遠方に住んでいても親の終活を進められますか?
はい。親と離れて暮らしていても、できることはたくさんあります。
たとえば、自治体や専門家の相談先を調べたり、必要な情報を整理したり、きょうだいとオンラインで共有したりすることです。
ただし、遠方にいる子どもがすべてを決めるのではなく、親本人の希望を確認することが大切です。
「実家をどうするか」
「介護が必要になったらどうしたいか」
「どこで暮らしたいか」
こうしたことは、距離に関係なく親に聞けます。
むしろ、頻繁に会えないからこそ、電話やオンラインで少しずつ話しておくことが役立ちます。
遠くに住んでいることと、親の終活に関われないことは同じではありません。
Q7 相談すると費用はどのくらいかかりますか?
終活相談の費用は、相談内容や専門家、依頼する業務によって大きく異なります。
「相談料」だけでなく、遺言書の作成、相続手続き、不動産の名義変更などを依頼すると、それぞれ費用が発生する場合があります。
そのため、「専門家に相談すると○万円」と一つの金額で考えるのは適切ではありません。
たとえば、最初は相談だけで済む場合もあれば、相談した結果、書類作成や手続きまで専門家に依頼することもあります。
有料相談を利用するときは、
「相談だけならいくらか」
「依頼するといくらか」
「追加料金が発生するのはどんな場合か」
を分けて確認すると安心です。
金額だけで判断せず、「どこまでお願いするのか」を確認することがポイントです。
Q8 親が認知症になってからでは遅いですか?
「認知症になったら、すべての終活ができなくなる」ということではありません。
ただし、判断能力が低下すると、本人の意思確認が必要な法律行為などについて、希望どおりに進めることが難しくなる場合があります。
たとえば、財産管理や契約などについて、本人が内容を理解して判断することが難しくなると、成年後見制度の利用を検討する場面があります(成年後見制度は、認知症などによって判断能力が十分でない人を法律的に支援する制度です)。
だからこそ、元気なうちに、
「お金の管理はどうしたい?」
「介護が必要になったらどうしたい?」
「大切な書類はどこにある?」
など、本人の希望を聞いておく意味があります。
ただし、認知症の症状があるからといって、親の意思を最初から聞かなくてよいわけではありません。
その時点で本人がどこまで判断できるのかを踏まえながら、医療・福祉・法律の専門家に相談することが大切です。
Q9 親を連れて行かなくても、子どもだけで相談できますか?
はい。「親にどう話せばいいかわからない」「まず自分が情報を知りたい」という目的なら、子どもだけで相談できる窓口があります。
特に最初の段階では、親を連れて行くことよりも、子ども自身が正しい情報を知ることが役立つ場合があります。
たとえば、
「親が終活を嫌がっている」
「家族で何を確認すればいいかわからない」
「専門家に相談したほうがいい状態なのか知りたい」
といった相談です。
ただし、相談内容によっては親本人の意思確認が必要になります。
そのため、最初の相談では「親がいないと何もできない」と考えず、まず子どもが相談して、必要になった段階で親につなぐという進め方も選べます。
親を説得して相談に連れて行くことより、先に自分が情報を知っておく。
それも、親の終活を支える一つの方法です。
以上、よくある質問をまとめました。もし「うちの場合はどうだろう」と迷うことがあれば、まず今日、親に一つだけ聞いてみることから始めてみてください。
まとめ 親の終活は、今日の小さな会話から

弁護士? 司法書士? 行政書士? 税理士? それとも終活アドバイザー?
この記事は、そんなふうに「調べれば調べるほど、わからなくなってしまう」というところから始まりました。
ここまで読んでいただいて、あらためてお伝えしたいのは、次の3つです。
相談先は、悩みの内容によって変わること。何から始めればいいかわからないなら自治体、相続や遺言なら弁護士・司法書士・行政書士、相続税なら税理士、判断能力や財産管理が心配なら成年後見制度や家族信託、医療・介護なら地域包括支援センターというように、まず自分たちの悩みを整理すれば、相談先は自然と見えてきます。
専門家を探す前に、親の希望を聞いておきたいこと。財産や手続きの話は、それが決まってから考えても遅くありません。まずは「これからどんなふうに暮らしたい?」から。
そして、家族みんなで関わることに意味があること。私自身、姉妹に任せきりにしてしまったことで、家族の中に情報の偏りが生まれた経験があります。誰か一人に任せきりにせず、家族で少しずつ共有していく。それだけで、親の終活の進め方は変わってきます。
親の終活は、子どもが一人で背負うものでも、子どもが先回りして完成させるものでもありません。
親が大切にしていることを知り、家族でできることを考え、それでも難しいところは、公的な窓口や専門家に頼る。
その積み重ねでいいのだと思います。
今日、まず一つだけ
この記事を読み終えて、「じゃあ、何をすればいいんだろう」と思ったら、難しく考えなくて大丈夫です。
親に、こう聞いてみることから始めてみてください。
「これから、どんなふうに暮らしたい?」
それだけで、十分です。
すぐに答えが返ってこなくても、それも一つの答えです。
まずは今日、そのきっかけを一つつくること。
そこから、親の終活は少しずつ動き始めます。
もう少し深く知りたい方へ
このブログでは、
など、親の終活にまつわるテーマについて、一つずつ記事にしています。
「うちの家にも関係ありそう」と思ったテーマがあれば、ぜひそちらもあわせて読んでみてください。家族で話すきっかけとして使っていただけたら嬉しいです。
また、相続について、専門家ではなく子ども世代の目線でもう少しじっくり読みたい方には、私が書いたKindle本『相続ってまだ先のこと?~資格も知識もないアラフィフが家族と向き合った実家の話』は、相続について、専門家ではなく子ども世代の目線で物語を楽しみながらもう少しじっくり読むことができます。この記事と同じように、専門家としてではなく、親の終活に向き合う一人の子世代の物語です。気になった方は、あわせてのぞいてみてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
この記事が、あなたと親の会話が始まる、小さなきっかけになれば嬉しいです。
















