介護保険の住宅改修とは?対象工事・費用・申請方法を解説

介護保険の住宅改修とは、手すりの取付けや段差の解消などの工事に、介護保険から費用の一部が支給される制度です。上限は20万円で、自己負担は1〜3割。工事を始める前の申請が必要です。
※本記事には広告(PR)を含みます。


10年ほど前、子どもが小学校に入る時期に、わが家はリフォームをしました。当時は子育てに精いっぱいで、子どもが安全に過ごせること、家族が暮らしやすいことを第一に考えて家を整えたのです。

ところが年月がたつと、家に求めるものも変わってきます。こたつやラグは掃除がしにくく、洗濯機と干す場所が離れていることも負担になってきました。今は何とかできていても、この先も同じように暮らせるとは限りません。

そんなことを考えるうちに、親の家も気になり始めました。古い家には、部屋の間の段差や、今の暮らしに合わない造りが残っていることがあります。親の家のリフォームの話は出ていますが、いつ、どこを、どう直すかはまだ決まっていません。

親が今の家で暮らし続けるために、何を整えればよいのか。費用はどのくらいかかるのか。介護が必要になってから考えるのではなく、今のうちに知っておけることがあるはずです。

そこで知っておきたいのが、介護保険の住宅改修です。要支援・要介護の認定を受けた人が、手すりの取付けや段差の解消などの工事を行う場合に、費用の一部が支給されます。ただし、すべてのリフォームが対象になるわけではありません。

この記事では、次の内容をわかりやすく解説します。

  • 対象になる工事6種類
  • 上限20万円と自己負担
  • 申請の流れと必要書類
  • 50代の子が親の希望を確認するときの視点

制度を知ることと同じくらい大切にしたいのが、親自身の希望を聞くことです。親の住まいのこれからを家族で考えることは、親の終活を一緒に考える第一歩でもあります。

親は、これからも今の家で暮らしたいと思っているでしょうか。家の中で、不便に感じている場所はないでしょうか。

すぐにリフォームを決める必要はありません。まずは制度を知り、親の暮らしに目を向けることから始めてみませんか。

Table of Contents

第1章 介護保険の住宅改修とは?制度の仕組みと利用条件

この章では、介護保険の住宅改修の目的、利用できる人、一般的なリフォームとの違いを説明します。

親の家のリフォームに、介護保険は使えるのでしょうか。結論からいうと、使えるのは、要支援・要介護の認定を受けた人が、手すりの取付けや段差の解消など、決められた種類の工事を行う場合に限られます。制度の基本を押さえたうえで、対象工事や費用、申請方法を順番に見ていきましょう。

制度の目的と仕組み

介護保険の住宅改修は、要支援・要介護の認定を受けた人が、住み慣れた自宅でできるだけ自立した生活を続けられるよう、住まいの一部を小規模に整える制度です。手すりの取付けや段差の解消など、条件を満たす工事に対して、費用の一部が支給されます。

たとえば、次のような場面を想像してみてください。

  • 玄関の段差を越えるとき、足元が不安になってきた
  • 浴室で立ち上がるとき、つかまる場所がなくて困る
  • 廊下を歩くとき、壁や家具に手を添えて移動している
  • 和式トイレの立ち座りが、以前よりつらくなった

こうした困りごとに対し、本人の身体状況や日常生活に合わせて住まいを整えることが、住宅改修の目的です。大がかりな改築ではなく、日常の動作を支える小規模な工事が中心となります。

費用には、工事費の上限(支給限度基準額)として20万円が設けられています。ただし、20万円がそのまま支給されるわけではありません。支給されるのは、その工事費のうち原則9割(所得に応じて8割・7割)で、残りは自己負担です。たとえば工事費が20万円で自己負担が1割の場合、支給は18万円、自己負担は2万円になります。費用の詳しい仕組みは、第3章で解説します。

利用できる人

介護保険の住宅改修費を利用できるのは、原則として要支援1・2、または要介護1〜5の認定を受け、自宅で生活している人です。単に高齢であることや、家が古くなったことだけでは、介護保険の給付対象にはなりません。また、改修できるのは、介護保険の被保険者証に記載された住所の住宅です。

ここで気になるのが、「親はまだ元気だけれど、今から調べておいてもよいのだろうか」という点ではないでしょうか。調べるだけなら、認定を受けている必要はありません。むしろ、将来の備えとして制度の仕組みを知っておけば、必要になったときに相談先を探しやすくなります。

ただし、実際に住宅改修費を利用するには、原則として認定が必要です。まだ認定を受けていない親が、歩行や入浴などに不安を感じ始めているときは、地域包括支援センターや市区町村の介護保険担当窓口に相談してみましょう。

認定の申請中に工事を検討している場合は、取り扱いが自治体で異なります。認定の申請中でも事前申請や工事ができる自治体はありますが、支給は認定結果が出てからで、非該当の場合は支給されません。一方、着工日の時点で認定を受けていることを条件にする自治体もあります。工事を急ぐ事情があっても、自己判断で着工せず、必ず事前に自治体へ確認してください。

一般的なリフォームとの違い

介護保険の住宅改修と一般的なリフォームの違いは、工事の目的と、費用の支給対象になる条件にあります。一般的なリフォームは、快適性や設備の更新など幅広い目的で行います。一方、介護保険の住宅改修は、本人の日常生活の動作を助けるための工事のうち、国が定めた6種類に限って対象となります。新築や増築(新たに居室を設けるなど)は対象外です。

ただし、手すりを取り付ければ必ず対象になる、段差をなくせばどの工事でも支給される、というわけではありません。本人の身体状況や工事の必要性などを踏まえて、市区町村が判断します。

詳しい対象工事は、次の章で6種類に分けて解説します。

第1章のまとめ

介護保険の住宅改修は、要支援・要介護の認定を受けた人が、自宅でできるだけ自立した生活を続けられるよう、一定の工事費用の一部を支給する制度です。

利用には原則として認定が必要ですが、親がまだ元気なうちから制度を知り、住まいの不便な場所を確認しておくことはできます。

まずは、親の家の玄関、廊下、浴室、トイレなどを思い浮かべてみてください。親が毎日使う場所の中に、以前より不便になっているところはないでしょうか。

次の章では、介護保険の住宅改修で対象になる工事6種類を具体的に見ていきます。

第2章 介護保険の住宅改修で対象になる工事6種類

介護保険の住宅改修では、手すりの取付けや段差の解消など、厚生労働省が定める6種類の工事が支給の対象になります。

  1. 手すりの取付け
  2. 段差の解消
  3. 滑りの防止や移動の円滑化のための床・通路面の材料の変更
  4. 引き戸などへの扉の取替え
  5. 洋式便器などへの便器の取替え
  6. 1〜5に付帯して必要となる工事

ただし、同じ種類の工事でも、本人の身体状況や生活上の必要性、工事内容によって、対象になるかどうかが変わります。

親の家を見て、「ここを直せば、もっと安全に暮らせるのでは」と感じることはありませんか。

大切なのは、家全体を新しくすることではなく、親が毎日の生活で困っている動作を支えられるかどうかです。ここでは、対象になる6種類の工事と、対象外になりやすい工事を具体的に見ていきます。

①手すりの取付け

手すりの取付けは、転倒の予防や、移動・立ち座りといった動作の補助を目的とした工事です。設置場所は、廊下、トイレ、浴室、玄関、玄関から道路までの通路などが想定されています。

たとえば、次のような場面です。

  • 玄関で靴を履いたり、立ち上がったりするときに体を支えたい
  • 浴室で浴槽に出入りしたり、立ち座りをしたりするとき、つかまる場所がほしい
  • 廊下や、玄関から道路までの通路を移動するとき、体を支えられる場所が必要

手すりは、取り付ける場所だけでなく、本人の身長や動作に合った高さ・形状を考えることも大切です。二段式、縦付け、横付けなど、動作に合うものを選びます。

なお、工事を伴わずに置いて使う手すりは、住宅改修の対象になりません。福祉用具貸与の対象になる場合があるため、どちらが適しているか、ケアマネジャーなどに相談して検討しましょう。

②段差の解消

段差の解消は、居室、廊下、トイレ、浴室、玄関などの各室間の床の段差や、玄関から道路までの通路の段差・傾斜をなくし、移動しやすくするための工事です。

具体的には、次のような工事が考えられます。

  • 部屋と廊下の間にある敷居を低くする
  • 浴室の床をかさ上げして、出入り口との段差を解消する
  • 玄関や屋外の通路にスロープや踏み台を設置する
  • 浴槽を、またぎやすいものに取り替える

小さな段差でも、足が上がりにくくなったり、歩行が不安定になったりすると、移動の負担になります。若い頃には気にならなかった場所が、年齢や身体状況の変化によって危険な場所になることもあります。

ただし、置くだけで使えるスロープや、浴室に置くすのこは、住宅改修ではなく福祉用具の制度が関係します。また、昇降機やリフト、段差解消機のように、動力で段差を解消する機器の設置も対象外です。工事が必要かどうかも含め、事前に確認することが大切です。

③床材・通路面の材料の変更

滑りにくくしたり、移動しやすくしたりするための床材・通路面の変更も、住宅改修の対象になります。本人が安全に歩けるよう、日常生活で使う床や通路の材料を変更する工事です。

たとえば、次のような工事が想定されています。

  • 畳敷きの居室を、板製床材やビニール系床材などに変更する
  • 浴室の床を滑りにくい材料に変更する
  • 屋外の通路を滑りにくい舗装材に変更する

ここで大切なのは、単に好みの床材に変えることではなく、本人の移動を安全にする必要性があるかどうかです。

床の張り替えを検討するときは、見た目や掃除のしやすさだけでなく、滑りやすさ、歩きやすさ、車いすなどを使う場合の移動のしやすさも考えましょう。

④引き戸などへの扉の取替え

開き戸を引き戸、折れ戸、アコーディオンカーテンなどに取り替える工事も、対象になります。扉の開閉に必要な動作を減らし、出入りや移動をしやすくすることが目的です。扉全体の取替えのほか、扉の撤去、ドアノブの変更、戸車の設置なども含まれます。

たとえば、次のようなケースです。

  • 開き戸を引き戸に変更して、出入りしやすくする
  • 扉の開閉が難しい場合に、ドアノブを使いやすいものに変更する
  • 扉の撤去や戸車の設置などにより、移動をしやすくする

開き戸は、開閉するときに体を後ろへ引いたり、扉の動きに合わせて立ち位置を変えたりする必要があります。歩行が不安定な人にとっては、それが負担になる場合もあります。

ただし、引き戸への取替えにあわせて自動ドアにする場合、動力部分の費用は対象外です。扉全体の取替えが必要なのか、部品の変更で対応できるのかも含めて、工事内容を検討しましょう。

⑤洋式便器などへの便器の取替え

和式便器から洋式便器への取替えなど、排泄時の立ち座りや姿勢の保持を助けるための工事も対象になります。既存の便器の位置や向きを変更する工事も含まれます。

たとえば、和式便器ではしゃがむ動作や立ち上がる動作が難しくなった場合、洋式便器に取り替えることで負担を軽減できることがあります。和式便器から、暖房便座や洗浄機能などが付いた洋式便座への取替えも含まれます。

一方、すでに洋式便器を使っていて、温水洗浄機能などを追加するだけの工事は、対象に含まれません。また、和式便器の上に置いて使う腰掛便座は、住宅改修ではなく福祉用具購入の制度が関係します。

古い家に多い、水洗ではない和式トイレを水洗の洋式便器に替える場合は注意が必要です。洋式便器への取替えは対象でも、水洗化にあたる部分の費用は対象外になります。

トイレの改修を考えるときは、便器の種類だけでなく、立ち座りのしやすさ、出入りのしやすさ、必要な介助スペースなども確認するとよいでしょう。

⑥付帯して必要となる工事

介護保険の住宅改修では、対象となる工事を行うために必要な付帯工事も、条件を満たせば支給対象になります。付帯工事とは、手すりの取付けや段差の解消などを実施するために、併せて必要となる工事のことです。

具体例としては、次のようなものがあります。

  • 手すりを取り付けるための壁の下地補強
  • 浴室の床のかさ上げに伴う給排水設備の工事
  • スロープの設置に伴う、転落や脱輪を防ぐための柵や立ち上がりの設置
  • 床材を変更するための下地の補修や根太の補強、通路面の材料を変更するための路盤の整備
  • 扉の取替えに伴う壁や柱の改修
  • 便器の取替えに伴う給排水設備の工事や床材の変更(水洗化にあたるものを除く)

ただし、住宅改修に付帯する工事であれば、何でも対象になるわけではありません。主となる工事との関係や必要性を踏まえ、対象になる範囲が判断されます。電気工事は対象外と明記している自治体の資料もあります。

見積書を受け取ったら、住宅改修の対象となる工事と、それ以外の工事が区別されているかを確認しましょう。判断に迷う場合は、工事前に自治体へ相談することが重要です。

対象外になりやすい工事

介護保険の住宅改修は、住まいを新しくしたり、快適性を高めたりするための一般的なリフォームを、幅広く支援する制度ではありません。本人の日常生活の動作を助けるための、定められた種類の工事が対象です。

たとえば、次のような工事は、住宅改修費の対象にならない、または一部しか対象にならない場合があります。

工事の例確認したいポイント
古くなったキッチンや浴室を全体的に新しくする設備の更新だけでは対象外。システムバスへの改修も、手すり、洗い場の床、出入り口の扉、浴槽のまたぎの緩和など、必要な部分に限られる
すでに洋式の便器に、温水洗浄機能だけを付けるすでに洋式便器の場合、機能の付加は対象に含まれない
非水洗の和式便器を水洗化する洋式便器への取替えは対象でも、水洗化の部分は対象外
自動ドア化、昇降機、リフト、段差解消機動力部分や、動力で段差を解消する機器の設置は対象外
据置型の手すりやスロープ、浴室内のすのこ工事を伴わないものは、福祉用具貸与・購入の制度が関係する
古くなった既存の手すりを付け替える老朽化が理由の付け替えは対象外とされている自治体がある
住宅の新築、新たに居室を設ける増築対象外。増築に伴う手すりや便器の取替えの部分のみ、対象になりうる
見た目をよくするための床の張り替え、部屋全体の改装滑り防止や移動の円滑化など、制度上の目的に合う必要がある

上記は代表例です。実際に対象になるかどうかは、本人の身体状況、工事の目的や内容、自治体の判断によって異なります。

また、住宅改修の対象となる工事と、通常のリフォームを同時に行う場合は、対象部分を分けて費用を計算します。見積書で内訳を確認しておきましょう。

「この工事は対象になるだろう」と自分たちだけで判断せず、ケアマネジャーや自治体の窓口に相談し、工事前に確認しておくと安心です。

第2章のまとめ

介護保険の住宅改修では、手すりの取付け、段差の解消、床材の変更、扉の取替え、便器の取替え、そしてそれらに付帯して必要となる工事の6種類が対象になります。

ただし、同じ種類の工事でも、本人の身体状況や生活上の必要性、工事内容によって、支給対象になるかどうかが変わります。

親の家を見て気になる場所があったら、まずは「どこを新しくするか」ではなく、「親がどの動作で困っているか」を確認してみましょう。

次の章では、住宅改修にかかる費用と、上限20万円の仕組み、自己負担額について具体的に解説します。

第3章 介護保険の住宅改修にかかる費用|上限20万円と自己負担

介護保険の住宅改修では、工事費20万円(税込)までが支給の対象で、その範囲内で費用の7〜9割が支給されます。自己負担は1〜3割です。ただし、20万円がそのまま支給されるわけではなく、本人の自己負担割合や工事内容によって、実際に受けられる給付額は変わります。

親の家に手すりを取り付けたり、段差を解消したりするとなると、気になるのはやはり費用です。

「少し直すだけでも、まとまったお金が必要なのでは」「介護保険を使えば、どこまで負担を減らせるのだろう」と不安に感じる人もいるでしょう。

住宅改修を考えるときは、工事費用だけでなく、制度で支給される金額と自己負担額を分けて理解しておくことが大切です。ここでは、上限20万円の仕組みから、複数回の利用、再び利用できるケース、支払い方法、自治体独自の助成まで整理します。

支給限度基準額と負担割合

介護保険の住宅改修では、工事費20万円までが支給対象となり、そのうち原則9割(所得に応じて8割・7割)が支給されます。自己負担割合は、介護保険負担割合証に記載された1割・2割・3割のいずれかです。

給付額は、対象となる工事費の総額と20万円を比べて少ないほうの額に、給付の割合をかけて計算します。たとえば、対象工事費が15万円で自己負担割合が1割なら、支給額は13万5,000円、自己負担額は1万5,000円です。

対象工事費が20万円だった場合の自己負担額は、次のようになります。

自己負担割合介護保険からの支給額自己負担額
1割18万円2万円
2割16万円4万円
3割14万円6万円

この表は、工事費20万円の全額が支給対象になる場合の計算例です。対象外の工事が含まれる場合は、自己負担額が増えることがあります。20万円を超えた部分は全額自己負担です。介護保険の対象工事と通常のリフォームを一緒に行う場合も、どの工事が支給対象になるかを確認しておきましょう。

なお、介護保険料の滞納があると、給付が差し止められたり、給付の割合が7割に引き下げられたりすることがあります。これは住宅改修費にも適用されるため、心配な場合は自治体に確認してください。

20万円を複数回に分けて使う方法

20万円は、ひとりにつき生涯の限度額です。一度の工事で使い切る必要はなく、残額があれば複数回に分けて利用できます。必要な場所を優先して改修し、後から別の場所を整えることもできます。

たとえば、自己負担割合が1割で、最初に対象工事を10万円分行った場合を考えてみましょう。

  • 1回目:手すりの取付けなど、対象工事10万円分
  • 2回目:後日、別の場所の段差解消など、対象工事10万円分

この場合、対象となる工事費の合計は20万円です。自己負担額の合計は2万円、支給額の合計は18万円となります。

ただし、工事のたびに必要な手続きを確認する必要があります。工事を始める前の申請が原則なので、2回目の工事も、着工前にケアマネジャーや自治体へ相談しましょう。

また、限度額は被保険者ごとに管理されます。父母それぞれが認定を受けていれば、それぞれに20万円の枠があります。ただし、同じ住宅で同時に改修する場合は、範囲が重ならないように申請する必要があります。たとえば、共用の居室の床材を変更するときは、どちらか一方のみが申請します。

最初から家全体を直そうとすると、費用も工事内容の検討も大きくなります。まずは本人が困っている場所から考え、必要に応じて段階的に整える方法もあります。

再び利用できるケース

20万円は生涯の限度額ですが、一定の条件を満たすと、改めて20万円まで利用できる例外があります。主なケースは、介護の必要性が大きく高まった場合と、転居した場合です。

介護の必要性が大きく高まった場合

初回の工事の着工日と比べて、追加の工事の着工日の介護度が3段階以上高くなった場合、再び20万円まで利用できます。介護度は、次の6段階で比べます。

  • 第一段階:要支援1
  • 第二段階:要支援2・要介護1
  • 第三段階:要介護2
  • 第四段階:要介護3
  • 第五段階:要介護4
  • 第六段階:要介護5

具体的な組み合わせは、次のとおりです(自治体の資料の例)。

初回の着工日の介護度再び20万円まで利用できる介護度
要支援1要介護3・4・5
要支援2要介護4・5
要介護1要介護4・5
要介護2要介護5

初回の着工日の介護度が要介護3以上の場合は、この例外には当てはまりません。この例外が適用されると、以前の工事で残額があっても、改めて20万円までが利用できるようになります。ただし、適用は原則として同一の被保険者につき1回です。

転居した場合

転居した場合は、以前の住宅での支給状況に関係なく、転居先の住宅について20万円まで利用できます。親が住み替えをした場合も同じです。ただし、以前に住んでいた住宅に再び転居したときは、その住宅の以前の支給状況が復活します。

このように、再利用には細かな条件があります。「以前に使ったから、もう利用できない」と決めつけず、再び改修が必要になったときは自治体に確認しましょう。

償還払いと受領委任払い

介護保険の住宅改修費には、主に償還払いと受領委任払いという2つの支払い方法があります。違いは、工事費をいったん全額支払う必要があるかどうかです。どちらの方式でも、工事前の申請が必要です。

支払い方法工事費の支払い方確認したいこと
償還払いいったん工事費の全額を支払い、後から給付分の払い戻しを受ける一時的にまとまった資金が必要
受領委任払い利用者は自己負担分を支払い、給付分は自治体から施工業者へ支払われる自治体が対応しているか、施工業者が利用できるか

償還払いでは、工事費が20万円で自己負担割合が1割の場合、まず20万円を支払い、申請・審査を経て18万円の支給を受けるのが基本です。工事後の申請から支給までの期間は自治体によって異なるため、確認しておきましょう。

一方、受領委任払いを利用できれば、条件を満たす工事について自己負担分だけを施工業者に支払う方法を選べる場合があります。ただし、すべての自治体や施工業者が対応しているわけではありません。

工事費を一時的に全額支払うのが難しい場合は、見積もりを取る段階で支払い方法も相談しておくと、資金計画を立てやすくなります。

自治体の独自助成を確認する方法

介護保険の住宅改修費とは別に、自治体が独自の住宅改修助成制度を設けている場合があります。名称は「住宅設備等改造事業」「住宅改造助成」など、自治体ごとに異なります。対象者や対象工事、所得などの条件も自治体によって異なり、すべての人が利用できるわけではありません。

確認するときは、親が住んでいる市区町村の公式サイトで、次のような言葉を検索してみましょう。

  • 「住宅改修 助成 高齢者」
  • 「高齢者 住宅改造 助成」
  • 「バリアフリー 改修 補助金」
  • 「介護保険 住宅改修 市区町村名」

介護保険の住宅改修費と自治体独自の助成を併用できるかどうかも、制度ごとに確認が必要です。併用する場合の相談先を案内している自治体もあります。同じ工事に対して重複して助成を受けられない場合もあるため、併用を前提に工事契約を進めないようにしましょう。

また、自治体の制度は年度によって受付期間や予算、対象条件が変わることがあります。インターネットの古い記事だけで判断せず、最新の公式案内や担当窓口で確認することが大切です。

親の家の改修を考えるとき、費用の全額を家族だけで負担する前に、介護保険と自治体独自の制度を調べておくと、選択肢を整理しやすくなります。

第3章のまとめ

介護保険の住宅改修では、工事費20万円(税込)までが支給対象となり、自己負担割合に応じて費用の一部が支給されます。20万円は生涯の限度額ですが、残額があれば複数回に分けて利用でき、介護度が3段階以上高くなった場合や転居した場合は、改めて利用できます。

支払い方法には償還払いと受領委任払いがあり、自治体によっては独自の助成制度も設けられています。工事費だけで判断せず、利用できる制度や支払い方法を確認しておくことが大切です。

次の章では、実際に介護保険の住宅改修を利用するための申請手順と必要書類を、順番に解説します。

第4章 介護保険の住宅改修を申請する流れと必要書類

介護保険の住宅改修を利用するには、原則として工事を始める前に市区町村へ申請し、確認を受けてから着工する必要があります。工事が終わってから申請すればよいわけではなく、手順を知らずに工事を進めると、給付を受けられない場合があります。

「親の家に手すりを付けたいけれど、誰に相談すればいいの?」
「工事業者を先に探しても大丈夫?」
と迷う人もいるでしょう。

まず相談するのは、ケアマネジャーなどです。見積書が申請書類の一つになるため、施工業者への見積もり依頼は申請の前に行います。ただし、着工は自治体の確認を受けてからです。

申請の流れをあらかじめ知っておけば、親の家の改修が必要になったときも、落ち着いて準備を進められます。ここでは、相談から工事後の支給申請まで、順番に説明します。

ケアマネジャー等への相談から工事後の申請まで

介護保険の住宅改修は、ケアマネジャーなどに相談し、工事前の申請を済ませてから着工するのが基本です。工事が終わった後にも、費用や完成状況を確認するための書類を提出します。

全体の流れは、次のとおりです。

STEP 1|ケアマネジャー等に相談する
本人が困っている動作や場所を伝え、住宅改修が必要かどうかを検討します。担当のケアマネジャーがいない場合は、地域包括支援センターや市区町村の窓口に相談しましょう。

STEP 2|工事内容を検討し、見積もりを取る
本人の身体状況や生活動線に合わせて工事内容を決め、施工業者に見積書や図面などを用意してもらいます。見積もりは、複数の事業者から取ることが勧められています。

STEP 3|市区町村へ工事前の申請をする
支給申請書、住宅改修が必要な理由書、見積書、完成予定の状態がわかる写真や図面などを提出します。必要書類や審査方法は自治体によって異なります。

STEP 4|自治体の確認後に工事を始める
市区町村が申請内容を確認し、結果が通知されてから着工します。申請した工事内容を変更したい場合は、着工前に必ず自治体へ連絡してください。連絡なしに変更すると、給付の対象にならないことがあります。

STEP 5|工事完了後、領収書などを提出して支給を受ける
領収書、工事費の内訳書、改修前後の写真など、自治体が指定する書類を提出します。審査を経て、償還払いまたは受領委任払いの方法で給付が行われます。

特に気をつけたいのは、施工業者と工事内容を決めたからといって、すぐに着工してよいわけではないことです。

自治体による事前確認が必要になるため、契約や着工の日程を決める前に、申請の手順を確認しておきましょう。確認にかかる日数も自治体によって異なる可能性があるため、スケジュールは相談の段階で確認しておくと安心です。

申請に必要な書類

介護保険の住宅改修では、工事前と工事後に、それぞれ必要な書類を提出します。書類は自治体によって名称や様式、追加資料が異なるため、住んでいる市区町村の最新の案内を確認することが必要です。

一般的には、次のような書類を用意します。

タイミング主な書類目的
工事前住宅改修費支給申請書申請者と工事内容を届け出る(事前申請として提出)
工事前住宅改修が必要な理由書本人の身体状況や生活上の必要性を説明する
工事前工事費の見積書工事内容と費用を確認する
工事前完成予定の状態がわかるもの(日付入りの改修前の写真、間取り図・平面図など)工事予定箇所と改修前の状態を確認する
工事後領収書実際に支払った費用を確認する
工事後工事費内訳書費用の内訳を確認する
工事後改修前後の写真(箇所ごと、撮影日がわかるもの)申請した内容どおりに工事されたか確認する

支給申請書は、工事前の申請の際に提出します。工事後に領収書などを加えて提出することで、正式な支給申請になります。

住宅改修が必要な理由書は、原則としてケアマネジャーなどが作成します。ケアマネジャーのほか、地域包括支援センターの担当職員、作業療法士、福祉住環境コーディネーター検定2級以上の資格を持つ人などが作成できます。本人の身体状況、日常生活での移動経路、住まいの状況などを踏まえ、なぜその工事が必要なのかを説明する書類です。作成に自己負担がかからない自治体もあります。

見積書は、宛名、日付、金額、事業者名など、記載する内容や形式を自治体が決めていることがあります。施工業者に依頼する前に、自治体の案内を確認しておくとスムーズです。

また、住宅の所有者が本人以外の場合は、所有者の承諾書が必要になります。提出のタイミングは自治体によって異なり、工事前の申請の時点で求める自治体もあります。

書類をすべて自分たちだけで準備する必要はありません。ケアマネジャーや施工業者と役割を確認しながら進めると、必要なものを整理しやすくなります。

認定申請中の場合の注意点

要支援・要介護の認定を受ける前に改修を考えている場合、取り扱いは自治体によって異なります。

認定申請中でも事前申請や工事ができ、支給は認定結果が出てからになる自治体があります。一方で、着工日の時点で認定を受けていることを条件にする自治体もあります。申請を急ぐ理由の記入や、非該当だった場合に工事費の全額を自費で支払うことへの承諾書を求める自治体もあります。

どの場合も共通する注意点は、認定結果が非該当だった場合に、住宅改修費が支給されないことです。工事費は全額自己負担になります。すでに認定を受けている場合も、認定の有効期間が切れていないかを確認しておきましょう。

親が入院中の場合も、似た注意点があります。退院が決まっていれば、入院中に事前申請ができる自治体もありますが、支給は退院後です。退院できなかった場合は、支給されません。また、一時帰宅のための改修は対象外です。

まだ認定申請をしていない場合も含め、工事を急ぐ事情があるときは、まず自治体に相談してください。自己判断で工事を始めることは避けましょう。

住宅の名義や住所を確認する

介護保険の住宅改修の対象は、被保険者証に記載された住所の住宅で、本人が実際に生活している住宅です。住宅の所有者が本人以外でも、所有者の承諾など必要な条件を満たせば、利用できる場合があります。親名義の家、子ども名義の家、賃貸住宅などでは、事前に確認しておきたい点があります。

たとえば、親が子ども名義の家に住んでいる場合や、賃貸住宅で手すりを取り付けたい場合は、所有者の承諾書が必要になります。公営住宅の場合は、管理者の承認を得たことがわかる書類を求める自治体もあります。

また、一時的に身を寄せている住宅や、一時帰宅のための改修は、対象外とされています。親が子どもの家に一時的に滞在している場合や、転居を予定している場合などは、利用条件や手続きについて、自治体への確認が必要です。

親の家を改修する話が出たら、工事内容だけでなく、住宅の名義、被保険者証に記載された住所、実際の居住状況も確認しておくと、申請時の行き違いを防ぎやすくなります。

第4章のまとめ

介護保険の住宅改修は、ケアマネジャーなどへの相談から始まり、見積もり、工事前の申請、自治体の確認、工事、工事後の支給申請という順番で進めます。

必要書類や認定申請中・入院中の取り扱い、住宅所有者の承諾などには個別の条件があるため、自治体の案内を確認することが大切です。

親の家の改修を考えているなら、まずは「どこを直すか」だけでなく、誰に相談すればよいか、申請に何が必要かを整理するところから始めてみましょう。

次の章では、申請前に知っておきたい注意点を取り上げます。工事内容を変更した場合や、対象になるか迷った場合の対応についても確認していきます。

第5章 申請前に知っておきたい注意点

介護保険の住宅改修は、対象となる工事であっても、手順を間違えると支給を受けられないことがあります。特に気をつけたいのは、工事を始める前に申請すること、そして工事内容を変更するときに自治体へ確認することです。

親の歩行や入浴に不安があると、「できるだけ早く手すりを付けたい」と考えるのは自然なことです。一方で、急いで工事を進めた結果、介護保険の対象外になってしまっては、費用の負担も大きくなります。

ここでは、申請前に押さえておきたい3つの注意点を整理します。

工事前の申請が原則必要

介護保険の住宅改修は、原則として工事を始める前に市区町村へ申請し、審査を受けてから着工する制度です。自治体の案内には、申請せずに行った工事は給付の対象にならないと明記されているものもあります。

たとえば、親が浴室で転びそうになり、急いで手すりを取り付けたとします。手すり自体は対象となる工事でも、事前申請をせずに工事を済ませると、介護保険からの支給が認められない可能性があります。

急ぎたいときこそ、工事業者に直接依頼する前に、ケアマネジャーや市区町村の介護保険担当窓口へ相談することが大切です。親がまだ認定を受けていない場合や、認定の申請中である場合も、自己判断で工事を進めず、利用できる手順を確認しましょう。

なお、国の資料には、やむを得ない事情がある場合に限り、工事の完了後に申請できるという例外が示されています。ただし、どのような事情が当てはまるかは、自治体に確認が必要です。「急いでいたから」という理由だけで、工事後の申請を前提にするのは避けましょう。

「危ないから、まず直そう」と思う場面ほど、制度の手順を忘れがちです。転倒の危険が高いときは、安全の確保を優先しつつ、工事を伴わない福祉用具の利用など、応急的な方法がないかをケアマネジャーに相談してみましょう。あえて自費で先に工事をする場合は、介護保険の給付は受けられない前提で判断する必要があります。

工事内容を変更するときの対応

申請した工事内容を変更したい場合は、工事を進める前に、ケアマネジャーや市区町村へ相談することが重要です。改修箇所や設置位置など、事前申請の内容と変わる場合は、工事を行う前に連絡するよう案内している自治体があります。連絡がないまま変更工事を行うと、給付の対象として認められないことがあります。

たとえば、当初は廊下に手すりを付ける予定だったものの、業者と現地を確認した結果、玄関にも手すりが必要だとわかった場合です。あるいは、工事を始めてから、予定していた位置では使いにくいことに気づくケースもあるでしょう。

このようなときは、現場の判断だけで工事内容を変えず、変更が必要になった理由を整理して、担当者や自治体に確認します。

変更を減らすには、申請の前に、本人(または家族)、施工業者、ケアマネジャーが一緒に現地を確認し、改修箇所や位置、日程、費用を打ち合わせておくことが有効です。自治体の案内にも、このような打ち合わせを行う流れが示されています。

親の安全を考えると、使いやすい形に整えたいものです。ただし、「対象になる工事だから、変更しても問題ない」とは限りません。当初の申請内容と違いが生じたら、まず相談する。この順番を覚えておくと安心です。

また、工事の日程が大きく遅れる場合も、相談が必要です。審査後、一定の期間内に着工するよう求める自治体があり、期間を過ぎると申請のやり直しが必要になることがあります。

対象になるか迷ったときの相談先

介護保険の住宅改修で対象になるか迷ったときは、担当のケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村の介護保険担当窓口に相談できます。工事の種類だけでなく、本人の身体状況や生活動線、住宅の状態を踏まえて判断する必要があるためです。

たとえば、次のような疑問は、工事を依頼する前に確認しておきたい内容です。

  • 玄関の段差を解消したいが、介護保険の対象になるのか
  • 浴室の手すりを付けたいが、どこに設置すればよいのか
  • 親はまだ要支援・要介護の認定を受けていないが、今から準備できることはあるのか
  • 住宅の名義が親本人ではないが、制度を利用できるのか

介護サービスを利用している親なら、まず担当のケアマネジャーに相談すると話を進めやすくなります。まだ担当者がいない場合は、地域包括支援センターが相談先の一つです。地域包括支援センターは、高齢者の暮らしや介護に関する相談を受ける公的な窓口で、住宅改修が必要な理由を説明する書類の作成にも関わることができます。

なお、制度の基本的な条件が同じでも、申請書類や事前確認の手順などは自治体によって異なる場合があります。国の制度説明だけで判断せず、実際に工事をする住宅がある市区町村の案内を確認することが欠かせません。

第5章のまとめ

介護保険の住宅改修では、工事の内容だけでなく、申請の手順を守ることも大切です。

  • 工事を始める前に申請し、自治体の案内に従って進める
  • 工事内容を変更するときや、日程が遅れるときは、事前に相談する
  • 対象になるか迷ったら、ケアマネジャーや地域包括支援センターなどに確認する

親の家を安全に整えたいと思っても、制度の条件や手順がわからなければ、何から始めるべきか迷うものです。まずは相談先を知っておくだけでも、いざというときの備えになります。

次の章では、制度の手順を確認したうえで、50代の子が親の住宅改修を考えるときに確認しておきたいことを取り上げます。工事を決める前に、親自身がどのように暮らしたいのかを聞くことから始めてみましょう。それは、親の暮らしのこれからを一緒に考える、終活の第一歩でもあります。

第6章 親の住宅改修を考えるとき、50代の子が確認したいこと

親の家の古さや暮らしにくさが気になり始めたら、介護保険の住宅改修を調べるだけでなく、親がこれからどのように暮らしたいのかを確認することも大切です。家を直すことが最善とは限らず、本人の希望や家族の状況によって、必要な対応は変わります。

50代になると、自分の家でも「この先も今の間取りで暮らせるだろうか」と考える機会が増えてきます。親の家についても、段差や階段、浴室の使いにくさなどが目に入るようになるのではないでしょうか。

ただ、子どもが不便だと感じる場所と、親が困っている場所は同じとは限りません。よかれと思ってリフォームを勧めても、親にとっては今の暮らしを変えたくないという気持ちがある場合もあります。

親の暮らしの希望を聞くことは、親の終活を家族で考えることにもつながります。ここでは、工事を決める前に、50代の子が確認しておきたい4つのことを整理します。

①親は今の家で暮らし続けたいか

住宅改修を考えるときは、まず親が今の家で暮らし続けたいと考えているかを確認しましょう。住まいを整える目的は、工事をすること自体ではなく、本人が望む暮らしを続けられるようにすることだからです。介護保険の住宅改修も、住み慣れた自宅で自立した生活を続けられるよう、住まいを小規模に整えるための制度です。

住み慣れた家には、長年の思い出や愛着があります。多少不便なところがあっても、近所の人とのつながりや、使い慣れた家具に囲まれた生活を大切にしている人もいるでしょう。

一方で、親自身が「階段の上り下りがつらくなった」「浴室で転びそうになった」と感じ、住まいを変えたいと考えていることもあります。

親が今の家での暮らしを望んでいても、以前と同じように生活できるとは限りません。反対に、子どもが心配していても、親はまだ不便を感じていない場合もあります。

聞くときは、答えを決めさせようとせず、次のように尋ねてみるとよいでしょう。

  • 「これからも、この家で暮らしたい?」
  • 「この先、住まいについて考えていることはある?」
  • 「今の家で、続けたいことや大事にしていることは何?」

その場で答えが出なくても、かまいません。親の答えが、住宅改修を考える出発点になります。

②不便や不安を感じている場所はどこか

親の住宅改修を検討するときは、家の中で本人が不便や不安を感じている場所を具体的に確認することが大切です。困っている場所がわかると、手すりの設置や段差の解消など、必要な対策を考えやすくなります。

親の家を訪ねたとき、次のような様子が気になったことはありませんか。

  • 玄関の段差を上がるとき、壁や家具に手をついている
  • 廊下や階段を歩くとき、足元を慎重に確かめている
  • 浴室の出入りや浴槽をまたぐ動作に苦労している
  • トイレから立ち上がるとき、手をつく場所を探している
  • 洗濯物を干すために、家の中や外を何度も移動している

こうした様子は、住まいの安全性や使いやすさを考えるきっかけになります。ただし、見た目だけで危険だと判断せず、本人がどう感じているかも確かめたいところです。

たとえば、玄関に手すりを付けることを考えていても、親が実際に困っているのは、靴を履くときの姿勢かもしれません。浴室についても、出入りより浴槽から立ち上がる動作に不安がある場合があります。

「どこが危ない?」と聞くと、親が責められているように感じることもあります。そんなときは、「家の中で、最近不便だと感じることはない?」と尋ねると、日々の暮らしについて話しやすくなります。

気になる場所がわかったら、いつ、どのような動作で困るのかを一緒に確認してみましょう。なお、こうした困りごとの中には、介護保険の住宅改修の対象になるものと、ならないもの(洗濯の動線を変える工事など)があります。具体的な状況がわかれば、住宅改修で対応できるのか、別の工夫が必要なのかを相談しやすくなります。

③親の希望と家族の心配を整理する

親の住宅改修では、親本人の希望と、子どもが感じている心配を分けて整理することが重要です。家族の安全への思いは大切ですが、親の意向を確かめないまま工事を進めると、本人が望んでいない住まいの変更につながることがあります。

たとえば、子どもは転倒を心配して廊下に手すりを付けたいと考えていても、親は「今のところ困っていない」「壁に手すりがあると掃除しにくい」と感じているかもしれません。

反対に、親は浴室の出入りに不安を感じていても、子どもにはそのことを伝えていない場合があります。心配をかけたくない、年を取ったと思われたくない。そうした気持ちから、困りごとを口にしない人もいるでしょう。

このようなときは、親の希望と家族の心配を、次のように分けて考えると整理しやすくなります。

確認すること具体例
親が望んでいることできるだけ今の家で暮らしたい
親が困っていること浴槽をまたぐときに不安がある
家族が心配していること転倒してけがをしないか心配
一緒に考えたいこと浴室の使い方や手すりの設置を相談する

この表は、家族で話し合うための整理方法の一例です。必ずしも全員の意見をすぐに一致させる必要はありません。

親の家について、リフォームの話が出ても、具体的な時期や内容が決まっていないことは珍しくありません。だからこそ、最初から工事内容や費用を決めようとするのではなく、まずはそれぞれが何を気にしているのかを知ることが大切です。

親の希望を聞くことと、家族が心配を伝えること。その両方ができて初めて、納得できる住まいの整え方を考えやすくなります。

④家族ができる支援を考える

親の住宅改修を考えるとき、子どもができる支援は、工事費を負担したり業者を探したりすることだけではありません。親の困りごとを聞き、必要な情報を一緒に整理し、相談先につなぐことも大切な支援です。

親が高齢になると、住宅改修の制度を自分で調べたり、複数の業者に相談したりすることが負担になる場合があります。とはいえ、子どもがすべてを引き受ける必要はありません。

たとえば、次のような関わり方があります。

  • 親が不便に感じている場所を一緒に確認する
  • 介護保険の住宅改修について、自治体の案内を調べる
  • 必要に応じて、ケアマネジャーや地域包括支援センターへの相談に付き添う
  • きょうだいがいる場合は、親の希望や今後の進め方を共有する
  • 費用を誰がどのように負担するか、きょうだいで話し合っておく
  • 工事を急ぐ必要があるのか、少しずつ検討できるのかを整理する

遠方に住んでいる場合は、頻繁に実家へ通えないこともあるでしょう。その場合でも、電話で親の困りごとを聞いたり、自治体の相談窓口を調べたりすることはできます。

また、住宅改修だけで解決できるとは限りません。福祉用具の利用や介護サービス、生活動線の見直しなど、別の方法が適している場合もあります。具体的な選択肢については、専門職と相談しながら検討していきましょう。

大切なのは、子どもが親の暮らしを一方的に決めることではなく、親が自分の希望を伝えられるように支えることです。

親のこれからを考えるのは、決して簡単なことではありません。心配だからこそ早く対策したくなる一方で、本人の気持ちを尊重したいという思いもあるはずです。

第6章のまとめ

親の住宅改修を考えるときは、工事の内容や費用を調べる前に、本人の希望と困りごとを確認することが大切です。

  • 親は今の家で暮らし続けたいと考えているか
  • 家の中で不便や不安を感じている場所はどこか
  • 親の希望と、家族が心配していることは何か
  • 家族が無理なくできる支援は何か

次の章では、住宅改修だけに絞らず、親がこれからも安心して暮らすための住まい方の選択肢を考えます。

第7章 住宅改修だけでなく、これからの住まい方も考える

親の家の古さや暮らしにくさが気になったとき、住宅改修だけが解決策とは限りません。今の家を整える方法に加えて、福祉用具の利用や介護サービス、将来の住み替えなども含めて考えることが大切です。

介護保険の住宅改修を調べていると、「手すりを付ければ安心できるだろうか」「段差をなくせば、これからも暮らせるだろうか」と考える場面があるでしょう。

けれども、家の中の不便さは、建物の構造だけで決まるわけではありません。親の身体の状態や日々の過ごし方、家族がどのくらい支援できるかによっても、必要な対策は変わります。

家そのものが変わらなくても、暮らす人の年齢や生活が変われば、使いやすさの基準も変わります。親の住まいについても、今ある不便を直すだけでなく、これから先、どのように暮らしていきたいのかを考えてみましょう。

改修以外の選択肢も検討する

親の暮らしに不安があるときは、介護保険の住宅改修だけでなく、福祉用具の利用や介護サービス、住まい方そのものの見直しも選択肢になります。必要な対策は、困っている動作や身体の状態、家族の支援体制によって異なるためです。

たとえば、親が玄関の段差を上がりにくくなった場合、手すりの設置や段差の解消が役立つことがあります。一方、歩行器などの福祉用具を使うことで移動しやすくなる場合もあります。手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえは、介護保険の福祉用具貸与の対象種目です。工事を伴わないため、住宅改修とは別の制度として検討できます。

浴室での動作に不安があるなら、住宅改修だけでなく、入浴方法や介護サービスの利用を検討する方法もあります。入浴用いすや浴槽用手すりなどの入浴補助用具は、福祉用具購入の対象種目です。家の中を整えることと、日常生活を支える用具やサービスを組み合わせる考え方です。

さらに、家の構造上、必要な改修が難しい場合や、階段の上り下りが大きな負担になっている場合には、生活する階を変える、別の住まいへの転居を検討するなど、長期的な視点も必要になります。

ただし、住み替えは本人の気持ちや費用、地域とのつながりにも関わる大きな選択です。家族の心配だけで結論を出さず、親が何を大切にしているのかを確認しながら考えていきたいところです。

選択肢を整理するときは、次の3つの視点が役立ちます。

考える視点確認したいこと
今の家を整える手すりや段差解消などで、不便を減らせるか
暮らし方を工夫する福祉用具や介護サービスで、動作の負担を減らせるか
将来の住まいを考える今の家で暮らし続けることが難しくなった場合、どんな選択肢があるか

ここで大切なのは、最初から一つに決めないことです。住宅改修で解決できることもあれば、別の方法を組み合わせたほうが暮らしやすくなることもあります。

家全体のリフォームを何から考えればよいか知りたい方は、【実家リフォームは何から?】の記事も参考にしてください。

親の家についても、今すぐ大がかりな工事を決める必要はありません。まずは、何に困っているのかを整理し、どの方法なら本人が無理なく暮らせるのかを考えることから始めましょう。

【広告】介護保険の対象にならないリフォームも考えているなら
介護保険の住宅改修で対象になるのは、手すりの取付けや段差の解消など、制度で定められた工事です。浴室や洗面所の全面的な改装など、対象にならない工事を含めて家を見直したい場合は、一般的なリフォームとして検討することになります。
なお、介護保険の住宅改修を使う予定の工事は、業者を決める前に、ケアマネジャーや市区町村へ相談してください。工事前の申請や自治体の確認が必要なため、手順を先に確認しておく必要があります。また、比較サービスで見つけた事業者が、住宅改修の手続きに対応しているかどうかは、別に確認が必要です。

介護保険の対象外の工事も含めて、複数の会社の見積もりを比べたいときは、見積もり比較サービスを使う方法もあります。「リフォーム比較プロ」は、複数のリフォーム会社への見積もり依頼をサポートするサービスです。依頼できる住宅の条件や対応エリアは、公式サイトで確認してください。
→リフォームを安心に安く|リフォーム比較プロ
※このリンクは広告を含みます。

ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する

住宅改修や介護サービスについて迷ったときは、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談できます。家の状態だけでなく、本人の身体状況や生活上の困りごとを踏まえて、必要な支援を検討するためです。

すでに要介護の認定を受け、介護サービスを利用している親なら、まず担当のケアマネジャーに相談するとよいでしょう。住宅改修を検討していることや、家の中で困っている動作を伝えると、今後の進め方を整理しやすくなります。要支援の認定を受けている親の場合は、地域包括支援センターが、介護予防サービスの計画づくりなどを担っています。

一方、親がまだ認定を受けておらず、相談先がわからない場合も、地域包括支援センターが窓口の一つです。地域包括支援センターは、市町村が設置している高齢者の総合的な相談窓口です。介護予防の相談をはじめ、高齢者に関するさまざまな相談を受け、必要なサービスにつなぐ役割を担っています。要介護認定を受けていなくても、高齢者本人とその家族であれば相談できます。

たとえば、次のような段階でも相談できます。

  • 親は元気だが、家の段差や階段が気になり始めた
  • 浴室やトイレでの動作が以前より大変そうに見える
  • 介護保険の住宅改修を利用できるか知りたい
  • 住宅改修以外に、どんな支援があるのか知りたい

相談する段階で、工事内容や利用するサービスが決まっている必要はありません。「親が今の家で暮らし続けられるか心配」「どこから考えればよいかわからない」という状態でも、困っていることを伝えるところから始められます。

相談先は、親が住んでいる市区町村の高齢者福祉担当課か、最寄りの地域包括支援センターです。市区町村の公式サイトで、担当や連絡先を確認するとよいでしょう。

親が遠方に住んでいる場合も、地域包括支援センターは、本人だけでなく家族からの相談を受けています。子どもから連絡できるかどうか、窓口に確認してみてください。離れて暮らしているからといって、何もできないわけではありません。

また、介護保険の住宅改修には、対象となる工事や申請手順などの条件があります。相談先で確認した内容をもとに、自治体の公式案内も確認しておくと、制度の利用に向けて準備を進めやすくなります。

親の住まいを考えることは、単に家を直すかどうかを決めることではありません。これからもどんな暮らしを続けたいのか、そのために何が必要なのかを、親と一緒に整理する機会でもあります。それは、親の終活を考えることにもつながります。

第7章のまとめ

住宅改修だけで解決しようとせず、福祉用具や介護サービス、将来の住み替えも含めて考えることで、親に合った選択肢を見つけやすくなります。

  • 住宅改修で解決できることと、別の支援が必要なことを整理する
  • 親が大切にしている暮らしや、これからの希望を確認する
  • 迷ったときは、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する

家の不便さに気づいても、すぐに答えを出す必要はありません。まずは親の困りごとを聞き、必要に応じて相談先につなぐことが、これからの暮らしを考える一歩になります。

親の介護や終活について話し始めるきっかけを探している方は、「親の終活の切り出し方」の記事も参考にしながら、家族で話せる機会をつくってみてください。

次は、介護保険の住宅改修でよくある質問を取り上げます。

第8章 介護保険の住宅改修でよくある質問

介護保険の住宅改修について調べていると、「20万円は一度に使い切るの?」「親名義の家でなくても利用できる?」など、細かな疑問が出てくるものです。

制度の基本を知っていても、実際に親の家を改修するとなると、判断に迷う場面は少なくありません。ここでは、介護保険の住宅改修について、よくある8つの質問に答えます。

なお、支給の条件や必要書類、手続きの詳細は自治体によって異なる場合があります。実際に工事を検討するときは、親が住んでいる市区町村の案内も確認しましょう。

介護保険の住宅改修は20万円を何回かに分けて使えますか?

はい、支給限度基準額の20万円は、複数回に分けて利用できます。20万円は、ひとりにつき生涯の限度額です。1回の工事で使い切る必要はなく、支給対象となる工事費の累計が限度額に達するまで、残額を利用できます。

たとえば、最初に手すりの設置に8万円を使った場合、支給限度基準額の残りは12万円です。後日、段差の解消などが必要になったときに、条件を満たせば残額を利用できます。

ただし、20万円は受け取れる給付金の額ではなく、支給対象となる住宅改修費の上限です。実際に支給される額は、本人の自己負担割合などによって変わります。

また、2回目以降の工事でも、原則として工事前の申請が必要です。残額があるからといって、先に工事を始めないよう注意しましょう。詳しくは、第3章「介護保険の住宅改修にかかる費用」で解説しています。

要介護度が上がったら、住宅改修費を再び利用できますか?

要介護度が上がった場合、条件を満たせば、改めて20万円まで利用できることがあります。ただし、要介護度が一段階上がるたびに利用枠がリセットされるわけではありません。

再び利用できるのは、初回の工事の着工日と比べて、追加の工事の着工日の介護度が3段階以上高くなった場合です。介護度は、要支援1を第一段階、要支援2・要介護1を第二段階、要介護2を第三段階というように数えます。たとえば、初回の工事の着工日が要介護1で、追加の工事の着工日に要介護4になっていれば、当てはまります。この仕組みが使えるのは、原則として同一の被保険者につき1回です。

また、転居した場合も、転居先の住宅について新たに限度額が設定されます。ただし、以前に住んでいた住宅に戻ったときは、その住宅の以前の支給状況が復活します。

再び利用できる条件には、細かな決まりがあります。親の身体状況が変わり、以前の住宅改修だけでは対応できなくなったときは、担当のケアマネジャーや市区町村に確認しましょう。詳しくは、第3章でも解説しています。

玄関から道路までの通路も住宅改修の対象になりますか?

はい、玄関から道路までの通路も、日常生活で必要な移動経路であれば、対象になる場合があります。手すりの設置場所や、段差を解消する場所として、玄関から道路までの通路が挙げられています。

たとえば、敷地内の通路の段差をなくしたり、滑りにくい舗装材に変更したりする工事が、条件を満たせば対象となります。玄関アプローチなど、屋外であっても、日常生活の動線として必要と判断されれば、手すりなどを設置できます。

ただし、本人の移動に必要な工事かどうかは、個別に判断されます。また、公道など敷地の外にある部分については、対象になるかどうかを自治体に確認してください。

「庭から門までの通路を歩きやすくしたい」「玄関前のアプローチの段差が気になる」といった場合は、工事を決める前に、改修したい場所の写真を用意したり状況を説明できるよう準備したりして自治体に相談しましょう。

賃貸住宅でも介護保険の住宅改修を利用できますか?

賃貸住宅でも、利用できる場合があります。賃貸住宅の場合は、住宅の所有者(大家)の承諾書が必要になります。自治体の申請書類にも、賃貸住宅向けの承諾書の様式が用意されています。

たとえば、賃貸住宅の浴室に手すりを取り付けたい場合、壁に穴を開ける工事が必要になることがあります。本人や家族だけで工事を決めず、まずは大家や管理会社に相談することが大切です。退去時の原状回復については、賃貸借契約の内容も確認しておきましょう。

また、賃貸住宅や分譲マンションの廊下などの共用部分は、支給の対象外としている自治体があります。公営住宅の場合は、管理者の承認を得たことがわかる書類を求める自治体もあります。

賃貸住宅だから利用できない、というわけではありませんが、希望する工事が対象になるかは個別に確認します。介護保険の手続きと並行して、住宅所有者の承諾や契約上の条件も確認しておきましょう。

親以外の名義の家でも住宅改修費は支給されますか?

親本人が住んでいる家であれば、親以外の人が所有する住宅でも、条件を満たせば住宅改修費の支給対象になります。ただし、住宅の所有者が本人以外の場合は、所有者の承諾書が必要です。

たとえば、親が子ども名義の家に住んでいる場合や、配偶者名義の住宅に暮らしている場合などが考えられます。名義が親本人でないという理由だけで、利用できないわけではありません。

自治体によっては、所有者が亡くなった配偶者のままになっている場合に、相続権のある人の承諾を求めることがあります。名義の確認は、早めにしておくと安心です。

一方、対象となるのは、被保険者証に記載された住所の住宅で、本人が実際に生活している住宅です。親が住んでいない別の家を改修する場合は、対象になりません。

家の名義が複雑な場合や、親と子の共有名義になっている場合は、申請前に自治体へ相談しておきましょう。

住宅改修の工事費は全額を先に支払う必要がありますか?

原則的な「償還払い」では、いったん工事費の全額を支払い、その後に介護保険から給付を受けます。ただし、自治体が受領委任払いを認めている場合は、最初から自己負担分だけを支払えることがあります。どちらの方式でも、工事前の申請が必要です。

たとえば、支給対象となる工事費が20万円で、自己負担割合が1割の場合、償還払いでは原則として20万円を先に支払い、後から18万円の給付を受ける仕組みです。

一方、受領委任払いを利用できる場合は、工事費20万円のうち自己負担分の2万円を支払い、残りの給付分は自治体から施工業者へ支払われる仕組みになります。

ただし、受領委任払いを利用できるかどうかは、自治体の制度や施工業者の対応などによって異なります。また、介護保険の対象外となる工事費や、支給限度額を超えた費用は別途自己負担です。

工事を依頼する前に、支払い方法と一時的に必要となる金額を確認しておきましょう。費用の詳しい仕組みは、第3章「介護保険の住宅改修にかかる費用」でも解説しています。

手すりの設置なら、どのような工事でも対象になりますか?

手すりの設置であっても、すべての工事が介護保険の住宅改修の対象になるわけではありません。設置場所は、廊下、トイレ、浴室、玄関、玄関から道路までの通路などが想定されており、本人の身体状況や生活動線に照らして必要な工事であることが条件です。

たとえば、次のようなものは、住宅改修の対象外です。

  • 取付けに工事を伴わない、置くだけの手すり(福祉用具貸与の対象になる場合があります)
  • 浴槽のふちに取り付ける浴槽用手すり(福祉用具購入の対象種目です)
  • 古くなった既存の手すりの付け替え(老朽化が理由の場合)

歩行時に身体を支えるために廊下へ手すりを設置する工事は、条件を満たせば対象になる場合があります。本人がどのような動作で困っているのか、設置によって安全性や移動のしやすさが改善するのかを確認することが重要です。

「手すりだから対象になる」と自己判断せず、ケアマネジャーなどと必要性を整理し、工事前に自治体へ確認しましょう。

要支援・要介護の認定を受けていなくても利用できますか?

介護保険の住宅改修費は、原則として要支援・要介護の認定を受けている人が対象です。年齢が高いことや、家に段差があることだけでは、住宅改修費の支給対象にはなりません。

まだ認定を受けていない親でも、将来に備えて制度を調べたり、家の中の不便な場所を確認したりすることはできます。歩行や入浴に不安が出ている場合は、介護保険の認定申請や相談先について調べておくとよいでしょう。

自治体によっては、認定申請中でも事前申請や工事ができ、支給は認定結果が出てからになる場合があります。一方で、着工日の時点で認定を受けていることを条件にする自治体もあります。認定結果が非該当だった場合は、住宅改修費が支給されず、工事費が全額自己負担になります。工事前に、必ず自治体へ確認してください。

親がまだ元気な段階なら、今すぐ工事を決めなくても大丈夫です。まずは本人が暮らしにくさを感じていないかを聞き、必要になったときに相談できる窓口を知っておくことから始めましょう。

第8章のまとめ

介護保険の住宅改修には、工事費の上限や対象工事だけでなく、住宅の名義や支払い方法など、事前に確認しておきたい条件があります。

  • 20万円は、ひとりにつき生涯の限度額で、複数回に分けて利用できる
  • 介護度が3段階以上上がった場合や転居した場合は、再び利用できるが、条件がある
  • 屋外通路や賃貸住宅、本人以外の名義の家は、個別の確認が必要
  • 支払い方法は償還払いと受領委任払いがあり、自治体などによって対応が異なる
  • 手すりの設置でも、工事を伴わないものや老朽化による付け替えなどは対象外
  • 原則として要支援・要介護の認定が必要

制度を知っておくと、親の家をどう整えるか考えるときに、選択肢を整理しやすくなります。ただし、制度の条件を調べることだけが目的ではありません。

親が今の家でどのように暮らしたいのか。その希望を聞くことも、これからの住まいを考える大切な準備です。

まとめ|住まいを整えることも、親のこれからを考える終活

介護保険の住宅改修は、親が住み慣れた家でできるだけ安全に暮らし続けるための選択肢の一つです。対象となる工事や費用、申請の手順を知っておくことで、必要になったときに落ち着いて対応しやすくなります。

この記事では、介護保険の住宅改修について、対象工事や費用、申請方法、親の住まいを考えるときに大切にしたいことを紹介してきました。最後に、知っておきたいポイントを振り返ります。

介護保険の住宅改修で知っておきたい3つのポイント

介護保険の住宅改修を検討するときは、対象となる工事・費用の上限・工事前の申請という3つのポイントを押さえておきましょう。

  • 対象工事:手すりの取付け、段差の解消、床材などの変更、扉の取替え、便器の取替え、それらに付帯する工事の6種類が、制度で定められています。
  • 費用:工事費20万円までが支給の対象で、自己負担は1〜3割です。実際の給付額は、自己負担割合や工事内容によって異なります。
  • 申請方法:原則として工事前に市区町村へ申請し、必要な確認を受けてから着工します。

ただし、希望する工事が必ず対象になるわけではありません。利用には、原則として要支援・要介護の認定が必要です。本人の身体状況や工事の必要性、自治体の手続きなどを、ケアマネジャーや地域包括支援センター、市区町村の窓口に確認しながら進めましょう。

制度について詳しく知りたい場合は、厚生労働省の公式情報や、親が住んでいる市区町村の案内を確認してください。この記事で参考にした資料は、記事の最後にまとめています。

家全体のリフォームを何から考えればよいかは、【実家リフォームは何から?】の記事で解説しています。

今日できることは、親の暮らしに目を向けること

親の住宅改修を考えるとき、最初から工事の内容や費用を決める必要はありません。まずは、親が家の中で不便に感じていることを一つ聞いてみる。それが、これからの住まいを考える第一歩です。

子どもから見れば直したほうがよいと思う場所があっても、親自身は別のことに困っているかもしれません。だからこそ、家族の心配だけで判断するのではなく、本人の話を聞くことから始めたいものです。

今日、親と話す機会があったら、こんなふうに尋ねてみてはいかがでしょうか。

「家の中で、最近不便だと感じることはない?」

その答えが、すぐにリフォームにつながらなくても大丈夫です。親が今の家でどのように暮らしたいのかを知ることができれば、それだけでも意味があります。

住まいを整えることは、単に段差をなくしたり、手すりを付けたりすることではありません。これからの暮らしを考え、本人の希望を家族で共有していくことです。

終活という言葉を聞くと、財産の整理や相続、葬儀の準備を思い浮かべる人もいるでしょう。しかし、これからもどんな場所で、どのように暮らしたいのかを考えることも、終活の大切な一部です。

親のこれからを考えることは、自分自身のこれからを見つめることにもつながります。

大きな決断を急ぐ必要はありません。まずは親の暮らしに目を向け、一つ話を聞いてみることから始めてみましょう。

出典一覧

〈参考にした公的資料(2026年10月17日確認)〉

厚生労働省

自治体・公的機関


※本記事は、2026年10月17日時点の公的資料をもとに作成しています。制度の内容は改正や自治体によって異なるため、最新の情報や詳しい手続きは、親が住んでいる市区町村にご確認ください。

Xでフォローしよう

おすすめの記事