
親の家のリフォーム費用を誰が払うかに、すべての家庭に当てはまる正解はありません。親が払う、子どもが払う、きょうだいで分ける。どれも選択肢になります。
親の家が古くなり、リフォームを考え始めると、こんな不安が出てくるのではないでしょうか。
- 親の年金や貯蓄で払えるのだろうか
- 私が費用を出したほうがいいのだろうか
- きょうだいがいる場合、どう分担すればいいのだろう
親が元気に暮らしているからこそ、お金の話を切り出すタイミングに迷う人も多いでしょう。
私自身も、家族と暮らす住まいについて、年月とともに考え方が変わってきました。二世帯住宅で暮らし始めた当初は便利だと思っていたことが、暮らし方や年齢の変化によって、少しずつ負担に感じられるようになったのです。親の家も、設備が古くなったから新しくすればよい、という単純な話ではないと感じています。
この記事では、費用負担の選択肢、親名義の家に子どもが費用を出すときの贈与税の注意点、きょうだいで話し合うときのポイントを、国税庁などの公的資料を参照しながら整理します。税金に関する説明は一般的な内容で、令和8年10月時点の資料に基づいています。個別の判断は、税理士や税務署にご確認ください。
読み終えたら、まずは親の家の名義と、これから誰が住み続けるのかを確認してみましょう。
第1章 親の家のリフォーム費用は誰が払う?「一律の正解」はない

親が払う・子どもが払う・きょうだいで分ける、どれも選択肢になる
親の家のリフォーム費用には、どの家庭にも当てはまる一律の正解はありません。 親の希望や資金状況、これからの暮らしに合わせて考えることが大切です。
例えば、親が長年住んできた家の浴室を直したいと考えているとします。親に十分な資金があり、工事後も生活費や医療費を無理なく確保できるなら、親自身が負担する方法があります。親の年金や貯蓄だけでは難しい場合は、子どもが一部を援助する、きょうだいで分担するといった選択肢も考えられます。
ただし、子どもが費用を出せば解決するわけではありません。自分自身の老後資金や住宅ローン、子どもの教育費とのバランスも考える必要があります。きょうだいがいる場合は、誰がどの程度負担するのか、納得できる形を探ることも大切です。
私が大切だと考えるのは、「親のためだから、子どもが払えばいい」と最初から決めてしまわないことです。親を支えることと、自分の生活を犠牲にすることは同じではありません。無理なく続けられる方法を考えることも、家族を大切にすることの一つです。
決める前に整理したい「住む人・所有者・払う人」
家に住む人、家の所有者、工事費を払う人は、同じとは限りません。 この3者を分けて考えると、確認すべきことが整理しやすくなります。
例えば、親名義の家に親が住み、子どもがリフォーム費用を負担するケースがあります。親の暮らしを支えるために子どもが費用を出すことは、家族の選択肢の一つです。ただし、費用を出したからといって、家の名義が変わるわけではありません。工事の内容や資金の出し方によっては、税務上の確認が必要になることもあります。
反対に、将来は子どもが住む予定でも、今の時点では親が所有者である場合もあるでしょう。誰が住むのかという話と、誰が費用を出すのかという話は、分けて整理しておくことが大切です。
名義の確認方法や、決める前に整理したい項目は、第5章で詳しく説明します。
その工事は何のため? 修繕・設備更新・増築の違い
費用を考えるときは、どんな工事をするのかも整理しましょう。 壊れた部分を直す工事、古い設備を交換する工事、建物を広げる増築では、目的も内容も異なります。
| 工事の種類 | 具体例 | 費用を考えるときの視点 |
|---|---|---|
| 修繕 | 雨漏りの補修、傷んだ床の修理 | 建物を安全に使い続けるために必要か |
| 設備更新 | 給湯器、浴室、キッチンの交換 | 今の暮らしに合った設備か |
| バリアフリー改修 | 手すりの設置、段差の解消 | 日常の移動や動作を楽にできるか |
| 増築 | 部屋を増やす、床面積を広げる | 建築上の条件や所有関係、税務上の扱いを確認できているか |
バリアフリー改修は目的による分類のため、修繕や設備更新と重なることがあります。
特に、子どもが費用を負担して親名義の家を増築する場合は、一般的な修繕と同じように考えないことが大切です。国税庁には、その一例として質疑応答事例「父所有の家屋に子が増築した場合の贈与税の課税関係」があります。ただし、この事例をすべてのリフォームにそのまま当てはめることはできません。また、増築以外の工事なら税務上の確認が不要、という意味でもありません。詳しくは、第3章で説明します。
見積もりを取る前に、「何のために直すのか」を整理することから始めましょう。
次の章では、親が払う・子どもが払う・きょうだいで分ける、それぞれの考え方を見ていきます。
第2章 親が払う?子が払う?費用負担の3つのパターン

親の家のリフォーム費用の負担には、親のお金で払う、子どもが援助する、きょうだいで分担するという3つの方法が考えられます。どれが正解という決まりはなく、親の経済状況や今後の暮らし、子ども自身の家計に合わせて決めることが大切です。
| 負担の方法 | 向いているケース | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 親のお金で払う | 親に預貯金の余裕があり、支払い後も生活費・医療費・介護費を確保できる | 老後の生活費まで削らないか |
| 子どもが援助する | 親の資金だけでは足りず、子どもの家計に余裕がある | 自分の老後資金・住宅ローン・教育費、税務上の確認 |
| きょうだいで分担する | 1人の負担が大きくなりすぎる、全員が関わりたい | 目的・総額・負担額を事前に共有できているか |
安全に暮らせるよう家を整えたい一方で、「工事費は誰が出すのだろう」「自分が負担しても大丈夫だろうか」と迷う人もいるでしょう。最初から誰がいくら払うかを決める必要はありません。まずは、それぞれの立場から無理のない方法を考えてみましょう。
親のお金で払う場合|老後の生活費を残せるか確認する
親に十分な預貯金があり、工事後も生活に必要なお金を確保できるなら、親自身が負担する方法が考えられます。 大切なのは、工事費を払えるかどうかだけでなく、払ったあとも親が安心して暮らせるかという視点です。
たとえば、古くなった給湯器の交換や浴室の改修を検討する場合、見積もり金額だけで判断するのは早計です。今後の食費や光熱費に加えて、病気になったときの医療費、介護が必要になったときの費用も考えておく必要があります。
親の年金や貯蓄の額を、子どもが詳しく知らない家庭もあるでしょう。いきなり預貯金の額を尋ねるのではなく、「これからも安心して暮らせるように、家の修理にどのくらいお金をかけるか、一緒に考えてみない?」と声をかける方法があります。
親が自分のお金で払うことを希望していても、老後の生活費まで削って工事をする必要はありません。一方で、子どもが心配するあまり、親が自分のお金を使うことを一方的に止めるのも避けたいところです。親の希望と経済状況を確認しながら、工事にかける金額を考えましょう。
子どもが払う場合|自分の老後資金・住宅ローン・教育費とのバランスを見る
子どもが費用を負担することも選択肢の一つですが、親のための支出であっても、自分の老後資金や住宅ローン、教育費を圧迫しない範囲で考えることが欠かせません。 50代は、親の暮らしが気になる一方で、自分自身の将来も具体的に考え始める時期です。
仮に、親の家の浴室の改修に100万円の見積もりが出たとします。子どもが全額を負担する以外にも、一部を援助する、工事の範囲を見直す、必要な工事から段階的に進めるといった方法があります。費用をかける前に、本当に必要な工事と優先順位を整理しましょう。
また、親の家のために出すお金でも、お金の出し方や工事の内容によっては、贈与税などの税務上の確認が必要になることがあります。詳しくは次の章で解説します。費用を出すと決める前に、自分の家計と親の希望の両方を整理しておきましょう。
きょうだいで分担する場合|均等に分けることだけが公平ではない
きょうだいがいる場合は、費用を分担する方法もありますが、全員が同じ金額を出すことだけが公平とは限りません。 親との距離や経済状況、日常の支援の負担など、それぞれの事情を踏まえて話し合うことが大切です。
たとえば、きょうだい3人で改修費用を負担する場合、3等分にする方法があります。それぞれの家計に合わせて金額を変える方法や、親の近くで日常的に支援している人と、遠方に住む人とで負担の仕方を変える方法も考えられます。
ただし、日々の支援の負担は、リフォーム費用の分担だけでは埋め合わせにくいものです。お金の話と日常の支援の話を分けて、何を誰が担っているのかを確認しましょう。
話し合いをしないまま一人が費用を出すと、あとから「なぜ相談してくれなかったのか」「自分だけ負担が少なくて申し訳ない」と、気持ちのすれ違いが生じることがあります。工事の目的、総額、各自の負担額は、事前に共有しておくと安心です。具体的な分担方法や、相続を見据えて気をつけたい点は、後の章で詳しく取り上げます。
次の章では、親名義の家を子どもがリフォームする場合の贈与税について、国税庁の資料をもとに確認します。
第3章 親名義の家を子どもがリフォームすると贈与税はかかる?

親の家のリフォーム費用を子どもが負担するとき、気になるのが贈与税です。ただ、すべてのケースで同じ扱いになるわけではなく、工事の内容、家の所有関係、費用負担の方法によって、確認すべき点が変わります。「親の家を直すだけだから大丈夫」と決めつけず、事前に確認することが大切です。
この章では、国税庁の公表資料をもとに、確認しておきたいポイントを整理します。なお、以下は一般的な情報であり、個別の工事に対する税務判断を確定するものではありません。
まず確認|その工事は「増築」か、「修繕・設備更新」か
贈与税を考えるときは、まず工事の内容を区別します。 今回参照する国税庁の事例は「増築」についてのもので、修繕や設備交換にそのまま当てはめることはできません。工事の種類は、第2章の表で確認できます。
増築では、費用を出した人と、建物を所有する人が分かれることがあります。ただ、増築部分がどのように扱われるかは個別の事情によって変わるため、ここでは断定しません。
修繕や設備更新についても、増築の事例だけを根拠に「贈与税がかかる」「かからない」と言い切ることはできません。工事の名称だけで決まるものではないので、見積書や工事内容をもとに、具体的に確認することが出発点です。
国税庁の事例で分かること・分からないこと
国税庁の質疑応答事例「父所有の家屋に子が増築した場合の贈与税の課税関係」を見てみましょう。
分かること:増築費用を負担した子どもへ、建物の持分を時価で譲渡する事例
この事例は、次のようなケースです。
- 父親名義の木造2階建住宅に、子どもが1,000万円をかけて増築した(旧家屋の時価は1,000万円)。
- 増築部分を旧家屋と区分して登記することが難しい。
- そこで、旧家屋の持分2分の1を父親から子どもへ時価で譲渡し、その代金を、子どもが負担した増築費用のうち父親が負担すべき500万円と相殺して、増築後の名義を父子それぞれ2分の1にする。
- 敷地は父親の所有で、子どもは無償で使う。
この方法について、国税庁は「贈与税の課税関係は生じません」と回答しています。
ただし、子どもが増築費用を出しただけで非課税になる、という話ではありません。持分を時価で譲渡するなど、具体的な条件のもとでの回答です。国税庁も、この事例は事実関係を前提とした一般的な回答で、具体的な取引では異なる課税関係が生じることがあると注記しています。
分からないこと:通常のリフォームや、持分を変えない場合
この事例だけでは、次のようなケースの結論は分かりません。
- 子どもが親名義の家の浴室やキッチンを改修した場合
- 子どもが修繕費を負担しても、建物の持分を変更しない場合
- 設備を交換したり、段差を解消したりした場合
これらについて、増築の事例をそのまま当てはめて、贈与税がかかる、あるいはかからないと断定することはできません。
なお、民法第242条は「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する」と定めています。建物に取り付けたものの所有関係を考えるときに関わる条文ですが、これだけで個別のリフォーム費用に関する贈与税の結論が決まるわけではありません。
注意:持分を移転すると、所得税の問題も生じることがある
この事例では、父親から子どもへ建物の持分を譲渡する点について、注が付いています。親子間の譲渡であるため、居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例などは適用できない、というものです。
贈与税だけを見て持分を変更する方法を選ぶのは、危険です。譲渡所得(所得税)や登記の費用、将来の相続への影響も含めて確認する必要があります。
「年110万円まで」「生活費の非課税」だけで判断しない
「年間110万円までなら贈与税はかからない」「親子間の生活費なら非課税」という説明を見かけることがあります。しかし、これらだけで、リフォーム費用に贈与税がかかるかどうかを判断することはできません。国税庁の資料で、それぞれの内容を確認してみましょう。
生活費の非課税は、必要な都度、直接使うことが基本
国税庁のNo.4405「贈与税がかからない場合」には、扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものには贈与税がかからないとあります。生活費は、通常の日常生活に必要な費用で、治療費や養育費なども含まれます。
ただし、非課税になるのは、生活費や教育費として必要な都度、直接充てるものに限られます。生活費の名目でもらったお金を、預金にしたり、不動産などの買入資金に充てたりした場合は、贈与税がかかります。
では、親の家のリフォーム費用は生活費に当たるのでしょうか。工事内容と費用負担の方法を具体的に示して、確認することが必要です。
年110万円の基礎控除も、リフォーム費用だけを切り離して考えない
国税庁のNo.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」によると、暦年課税では、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の価額を合計し、そこから基礎控除額110万円を差し引いて税額を計算します。
つまり、110万円はリフォーム費用だけの非課税枠ではありません。ほかに贈与を受けていれば、それも合わせて考える必要があります。また、そもそもその支出が贈与に当たるのかなど、個別の事情の確認も欠かせません。工事費が110万円以下なら必ず贈与税がかからない、と単純に考えるのも避けましょう。
「110万円以内に収めよう」と工事費を調整する前に、費用負担の実態と税務上の扱いを確認することが大切です。
名義や持分を変える前に|節税策として安易に選ばない
贈与税が心配だからといって、親の家の名義や持分を変更する方法を、安易な節税策として選ぶべきではありません。名義や持分を変えると、贈与税だけでなく、譲渡所得(所得税)や登記など、別の問題も関わってくるためです。
また、親の家の所有権を子どもに移すことは、将来の相続や家族との関係にも影響します。親がその家に住み続ける予定なのか、きょうだいがいるのかなども含めて、考えなければなりません。
私が大切だと考えるのは、税金を減らすことだけを目的にするのではなく、親が安心して暮らせることと、家族が納得できることの両方を考えることです。工事の契約や支払い、名義の変更を進める前に、税理士や司法書士などの専門家に相談し、必要な手続きと費用を確認しておきましょう。
相談前に準備するもの・相談先
贈与税が気になる場合は、工事の契約や支払いを進める前に、税理士や税務署に具体的な状況を伝えて確認する方法があります。国税に関する相談窓口は、国税庁の「税についての相談窓口」で確認できます。
相談のときは、次の資料をそろえておくと、状況を説明しやすくなります。
- 登記事項証明書:建物や土地の所有者、持分を確認するため
- 工事の見積書、工事請負契約書:工事の種類、費用、契約者を確認するため
- 費用負担のメモ:親と子のどちらが、いくら支払う予定かを整理するため
- 資金の出所が分かる資料:預貯金や振込など、支払いの実態を説明するため
相談先は、確認したい内容によって異なります。
| 確認したいこと | 主な相談先 |
|---|---|
| 贈与税や譲渡所得の扱い | 税理士、税務署 |
| 建物の持分や所有権の変更 | 司法書士 |
| 工事内容や見積もり | リフォーム会社、建築士など |
まだリフォームを決めていない段階でも、準備はできます。まずは、親の家の登記上の所有者を確認し、どんな工事を予定しているのかを整理するところから始めましょう。
次の章では、費用をきょうだいで分担するときの注意点を見ていきます。
第4章 きょうだいで分担するときの注意点

親の家のリフォーム費用をきょうだいで分担するなら、誰がいくら払うかを決める前に、工事の目的と、それぞれの役割を共有することが大切です。 費用を均等に分けても、工事への考え方や、親を支える負担感が違えば、後から不満が生まれることがあります。
たとえば、親の家の水回りが古くなったとします。近くに住むきょうだいは、毎日の使いにくさを実感していても、遠方に住むきょうだいには、急ぐ必要性が伝わっていないかもしれません。リフォーム費用の分担は、単なる金額の問題ではなく、家族が親のこれからをどう支えるかを考える機会でもあります。
費用を分ける前に、工事の目的を共有する
最初に、誰のための、何のための工事なのかを共有しましょう。 同じ工事でも、必要だと考える理由が違えば、費用を負担することへの納得感も変わります。
たとえば、浴室の改修について、きょうだいの間でこんな意見が出ることがあります。
- 「古くなっているから、そろそろ新しくしたい」
- 「今のところ使えているので、急がなくてもよいのでは」
- 「滑りやすい床や段差を直すことを優先したい」
どの意見にも理由があります。設備を新しくすることと、安全に暮らせるようにすることでは、工事の優先順位も変わります。住まいの使いやすさは、年齢や暮らし方によって変わるため、見た目の古さだけでなく、親が毎日の動作で困っていることを確認すると、必要な工事を考えやすくなります。
あわせて、次の2点も共有しておきましょう。
- 親自身がその工事を望んでいるか
- 親はこれからもその家に住み続ける予定か
工事の目的を共有したうえで見積もりを取り、必要な工事と希望する工事を整理する。そこまでできれば、費用を話し合う土台が整います。
お金を出す人と、親の家の対応をする人を分けて考える
費用を負担する人と、親の家の対応を担う人は、同じである必要はありません。 遠方に住むきょうだいも、現地に行かなくても参加できます。
親の家が遠いと、業者との打ち合わせや工事中の立ち会いなどが、近くに住む人に集中しがちです。役割は、たとえば次のように分けられます。
| 役割 | 分担の例 |
|---|---|
| 現地での対応 | 工事会社との打ち合わせ、工事中の確認 |
| 情報の共有 | 見積書や工事前後の写真の共有、きょうだいへの報告 |
| 費用面の対応 | それぞれの家計に応じた費用負担 |
| 親との話し合い | 親の希望の確認、工事内容の相談 |
見積もりの確認は、オンラインの通話で一緒に行う方法もあります。これはあくまで一例なので、できることを話し合って決めましょう。
近くに住む人が時間や労力を多く使っているなら、その負担も家族で共有しておきたいところです。反対に、遠方に住んでいるからといって、親の家のことに関われないわけではありません。費用の金額だけで公平さを判断せず、それぞれが担える役割を確認しておくと、「自分ばかり負担している」という不満を防ぎやすくなります。
費用負担と将来の相続を混同しない
親の家のリフォーム費用を多く負担しても、その金額に応じて将来の相続分が自動的に増えるわけではありません。 費用の分担と相続は別の問題として考え、必要に応じて専門家に確認しましょう。
たとえば、きょうだいの一人が改修費用として200万円を負担し、ほかのきょうだいは出さなかったとします。この場合も、200万円を負担したという事実だけで、相続のときに同額を優先的に受け取れると決まるわけではありません。
相続に関わる制度として、「寄与分」と「特別受益」があります。裁判所の案内では、次のように説明されています。
- 寄与分:被相続人の財産の維持または増加に特別の貢献をした相続人の相続分を増やす制度
- 特別受益:被相続人から遺贈や多額の生前贈与を受けた相続人の、その利益を相続分の計算に反映する制度
特別受益は、親から受けた利益についての制度です。子どもが親の家に費用を出す場合は向きが逆なので、主に問題になるのは寄与分です。ただし、寄与分が認められるには、親族として通常期待される程度を超えた貢献が必要とされています。親の家のリフォーム費用を出したからといって、必ず認められるわけではありません。具体的な事情によって判断が変わります。
「自分が多く払ったのだから、相続のときに調整してもらえるはず」と考えていると、きょうだいの間で認識が食い違うおそれがあります。相続での扱いも考えておきたい場合は、費用を負担する前に、弁護士などの専門家に相談しておくと安心です。
親の家をきっかけに、きょうだいの相続についても整理したい方は、
関連記事「親の終活で兄弟がもめないために|50代からできること」もご覧ください。
誰がいくら払ったかを記録に残す
誰が、いつ、いくら支払ったのかは、記録に残しておきましょう。 口約束だけでは、時間がたつにつれて、負担額や約束の内容について認識が食い違うことがあります。
裁判所の案内でも、特別受益や寄与の主張には、具体的な内容を示す資料が必要で、資料がないと話合いの席で取り上げられないことがあるとされています。相続の話合いが原則として相続人同士で行われることを考えると、当時の記録は、後から事実を確認する手がかりになります。
最低限、次の情報をまとめておくとよいでしょう。
- 工事の契約者:誰がリフォーム会社と契約したか
- 工事の内容と総額:何を直し、いくらかかったか
- 各自の負担額:親と各きょうだいが、それぞれいくら負担したか
- 支払いの記録:振込明細や領収書など
- 家族間の取り決め:負担額や支払い方法について、どう合意したか
きょうだい間で合意した場合は、簡単な覚書にして残す方法もあります。誰がいくら負担するのか、立て替えたお金を返す約束があるのかなど、重要な点を具体的に書いておくと、後から確認しやすくなります。
ただし、覚書を作ったからといって、将来の相続や税務の問題がすべて解決するわけではありません。相続分の調整や返済、贈与に関わる取り決めをする場合は、内容に応じて専門家に確認しましょう。
専門家を選ぶ目安の一例は以下の通りです。
・もめ事・法的交渉がある場合: 弁護士
・不動産の名義変更や相続放棄がメインの場合: 司法書士
・税金計算や申告・生前贈与の税務リスクが気になる場合: 税理士
記録を残すのは、家族を疑うためではありません。お互いの記憶だけに頼らず、後から誰も困らないようにするための備えです。
次の章では、費用を決める前に確認したい3つのことを整理します。
第5章 費用を決める前に確認したい3つのこと

親の家のリフォーム費用を誰が払うか決める前に、確認しておきたいことが3つあります。
土地と建物の名義、これからの住み方、そして親と子それぞれの家計です。
費用の分担を先に決めてしまうと、工事を進める段階で「名義が違っていた」「そこまで大きな工事は必要なかった」「負担が家計を圧迫してしまう」といった問題が生じることがあります。リフォーム会社に見積もりを依頼したり、きょうだいと費用を相談したりする前に、次のチェックリストで確認しましょう。
① 親の家の土地と建物の名義を確認する
最初に確認したいのは、土地と建物が誰の名義になっているかです。 土地と建物の所有者が同じとは限らず、親だけの名義なのか、きょうだいなどとの共有なのかによって、確認すべきことが変わります。
たとえば、土地は父親名義でも、建物は母親名義というケースがあります。また、親が住んでいる家でも、名義が祖父母のままになっていることがあります。こうした場合、費用の分担や工事の進め方について、所有者や共有者の意向も確認しておく必要があります。
確認するときは、次の項目を整理します。
- 土地の所有者は誰か
- 建物の所有者は誰か
- 共有名義の場合、誰がどの持分を持っているか
- 相続が発生している場合、名義変更の手続きが済んでいるか
登記の内容は、法務局で取得できる登記事項証明書で確認できます。法務省のページから、登記事項証明書の請求(法務局)にたどれ、オンラインでの請求もできます。
なお、相続登記は令和6年(2024年)4月1日から義務化されています。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があり、正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料が科されることがあります。令和6年4月1日より前の相続も対象で、その場合の期限は令和9年3月31日までとされています。遺産分割がまとまらないときの簡易な方法として、「相続人申告登記」という制度もあります。詳しくは、法務省の「相続登記の申請義務化特設ページ」で確認してください。
名義がはっきりしない場合や、相続登記が済んでいない場合は、費用負担を決める前に司法書士などの専門家に相談すると安心です。
② これから誰がどのくらい住み続けるのか
リフォームの内容と費用は、これから誰がその家に住み、どのくらい住み続けるのかによって変わります。 今の暮らしに必要な工事と、将来を見据えて必要になる工事は、必ずしも同じではありません。
たとえば、親が今後も長く一人で暮らす予定なら、日常の移動を楽にする工事や、浴室・トイレの安全性を高める工事が候補になります。一方、将来の同居や、親の住み替えの可能性があるなら、今の工事を必要最小限にするのか、将来を見据えて範囲を広げるのかを考える必要があります。
確認したいのは、次の3点です。
- 親は今後もその家に住み続けたいと考えているか
- 誰がどの部屋を使い、どのような暮らしを続けたいのか
- 今すぐ必要な工事と、将来に備えて検討したい工事は何か
設備の古さだけでなく、毎日の生活で困っていることに目を向けると、必要な工事が見えてきます。親の希望の聞き方は、第8章で説明します。
③ 親の生活費と子どもの家計、両方から予算を考える
予算は、親が払える金額だけでなく、子どもが援助する場合の家計への影響も踏まえて決めましょう。 親の生活が苦しくなるほどお金を使うことも、子ども自身の老後資金を削ってまで負担することも、避けたいところです。
親の年金や預貯金で工事費をまかなえるとしても、その後の生活費や医療費、介護が必要になったときの支出まで考える必要があります。一方、子どもにも、住宅ローンや教育費、自分自身の老後資金など、確保しておきたいお金があります。親を支えたい気持ちがあっても、家計に無理が生じる金額を引き受ける必要はありません。
予算は、次のように整理してみましょう。
| 確認すること | 考えたいポイント |
|---|---|
| 親が負担できる金額 | 工事後も生活費や医療費などを確保できるか |
| 子どもが援助できる金額 | 自分の生活費や老後資金に無理が生じないか |
| 工事に必要な金額 | 安全性や生活の維持に必要な工事を優先できるか |
| ほかの支援制度 | 介護保険や自治体の補助制度を利用できるか |
最初から、工事費の全額を誰かが負担すると決めないことも大切です。工事の範囲を見直したり、利用できる制度を調べたりすることで、負担を抑えられる場合があります。介護保険の住宅改修や自治体の補助制度は、対象となる工事や申請条件がそれぞれ異なるので、工事の契約や着工の前に、担当窓口で確認しましょう。
予算を整理したら、親と子のどちらがいくら負担するか、きょうだいにも協力を求めるかを検討します。費用の分担の考え方は、第4章も参考にしてください。
3つすべてを一度に片づける必要はありません。まずは、①の名義の確認から始めましょう。
次の章では、費用の負担を抑えるために確認したい、介護保険や自治体の補助制度を見ていきます。
第6章 親の家のリフォーム費用を抑える方法|補助金・介護保険・税制を確認する

親の家のリフォーム費用を抑えるには、介護保険の住宅改修、補助金、税制優遇を確認する方法があります。ただし、すべてのリフォームに使える制度があるわけではなく、工事内容や住宅の所有者、居住者などによって対象が異なります。制度の内容は変わることがあるため、この章は令和8年(2026年)10月時点の公的資料に基づいています。
制度を調べずに工事を決めると、使えたはずの支援を受けられなかったり、申請のタイミングを逃したりすることがあります。見積もりを取る段階で、利用できる制度がないか確認しておきましょう。
介護保険の住宅改修が使えるケース
介護保険の住宅改修は、要支援・要介護の認定を受けた人が、自宅で安全に暮らすための小規模な改修を行う場合に使える制度です。 一般的なリフォーム全体が対象になるわけではありません。
対象となる工事は、国が定めた次の6種類です。
- 手すりの取付け
- 段差の解消
- 滑りの防止や移動の円滑化のための、床や通路面の材料の変更
- 引き戸などへの扉の取替え
- 洋式便器などへの便器の取替え
- 上記に付帯して必要になる工事
支給限度基準額は、要介護度にかかわらず原則20万円です。そのうち費用の7〜9割が支給され、自己負担は1〜3割です(負担割合は、負担割合証で確認します)。20万円を超えた分は全額自己負担になります。この20万円は原則として一生を通じた枠ですが、要介護度が3段階上がったときや、転居したときには、再度設定されます。
たとえば、親が要介護認定を受けていて、玄関の段差や浴室の出入りに困っているなら、対象になる工事がないか確認する価値があります。一方、古くなったキッチンを新しくする工事など、設備の更新を目的としたリフォームは、対象の種類に含まれていません。
原則として、工事の前に市区町村への申請が必要です。契約や着工を急ぐ前に、ケアマネジャーや自治体の介護保険担当窓口に相談しましょう。対象工事や申請手順は、関連記事「介護保険の住宅改修とは?」で詳しく解説しています。
自治体・国の補助金|契約や着工の前に条件を確認する
自治体によっては、耐震改修、省エネ改修、バリアフリー化などに補助金や助成制度があります。 対象となる住宅や工事、申請できる人、受付期間は、制度ごとに異なります。親の住む自治体の公式サイトで、「住宅リフォーム 補助金」「耐震改修 助成」「省エネ改修 補助金」などを調べてみましょう。
国の制度の例が、「みらいエコ住宅2026事業」です。公式サイトによると、原則として平成28年12月31日以前に新築された住宅を対象に、省エネ改修などへの補助が行われています。交付申請の予約は遅くとも2026年11月16日まで、交付申請は遅くとも12月31日まで、いずれも予算上限に達した時点で終了します。
この制度では、補助金の申請や受け取りは、登録された「みらいエコ住宅事業者」が行い、消費者が直接申請することはできません。工事前の写真は必ず撮影する必要があり、撮影し忘れると補助を受けられません。登録のない事業者と契約した工事は補助の対象にならず、登録された建材・設備を使った工事が対象です。さらに工事着手前に工事請負契約を結ぶ必要があります。受付状況は、公式サイトで確認できます。
特に注意したいのは、契約や着工の前に、補助の対象になるかを確認することです。 「補助金が使えると思っていたのに、先に契約してしまった」という事態を避けるために、自治体の窓口や施工業者に、契約前に確認しておくと安心です。
税制優遇の対象になるか確認する
一定の条件を満たすリフォームでは、所得税の税額控除や、固定資産税の減額を受けられる場合があります。 ただし、親の家を子どもが費用負担して改修する場合は、誰でも受けられるわけではありません。国土交通省は、省エネ、バリアフリー、同居対応などの「リフォーム促進税制」を案内しています。制度ごとに、対象となる工事や、住宅の所有者・居住者などの要件が異なります。
たとえば、国税庁の「No.1220 バリアフリー改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)」(令和8年4月1日現在)では、自己が所有する家屋で工事をし、自己の居住の用に供していることなどが要件とされています。工事をする人も、50歳以上の人や、要介護・要支援の認定を受けている人など、一定の人に限られます。親の家に子ども自身が住んでおらず、所有もしていない場合は、この要件を満たさないと考えられます。なお、補助金を受けた場合は、その額を差し引いて計算されます。
税制優遇を調べるときは、工事内容に加えて、次の点も確認しましょう。
- 家の所有者は誰か
- 誰がその家に住んでいるか
- 工事費を誰が負担するか
- 対象となる工事や所得などの要件を満たしているか
判断に迷う場合は、税務署や税理士に相談しましょう。
見積もりを比べる前に|必要な工事を整理する
費用を抑えるには、複数の業者から見積もりを取るだけでなく、何のために工事をするのかを先に整理することも大切です。 目的が曖昧なまま見積もりを比べても、金額の違いが妥当なのか、判断しにくくなります。
たとえば、親の家の浴室が古くなっているとします。設備を新しくすることが目的なのか、出入りの段差を解消することが目的なのかによって、必要な工事は変わります。設備の古さだけでなく、毎日の動作で負担になっていることを、親と一緒に確認してみましょう。
見積もりを比べるときは、工事内容、材料費、施工費などの内訳が分かる形で依頼すると、業者ごとの違いを把握しやすくなります。介護保険の住宅改修では、国が見積もりの様式を示しており、「改修内容」「材料費」「施工費」「諸経費等」の内訳を示すことになっています。
最初から大規模なリフォームを決める必要はありません。必要な工事を整理し、利用できる制度を確認したうえで、予算に合った方法を探しましょう。
次の章では、50代の子世代が考えたい、親の家と自分の老後資金の関係を見ていきます。
第7章 50代の子世代が考えたい、親の家と自分の老後資金

親の家をリフォームするときは、親の暮らしを守ることと、自分の老後資金を守ることの両方を考える必要があります。 親のためにお金を使うことと、自分の将来を犠牲にすることは別です。
50代になると、親の住まいが気になり始める一方で、自分自身の老後やこれからの暮らし方も考える時期に入ります。親の家を直してあげたい。でも、自分の家計も心配。その間で迷うのは、決して身勝手なことではありません。
家の使い勝手は、年齢や家族構成で変わる|私の住まいの場合
私は二世帯住宅で暮らしています。約10年前に夫の実家をリフォームし、生活を始めました。ただ、当時のリフォームで気にならなかった、洗濯機と干し場の距離が年月とともに負担に感じられるようになりました。子育て期には便利だった家も、家族構成や暮らし方が変われば、使いやすさの基準が変わります。
この変化に、今は大きな問題を感じていません。けれども、自分の体力が落ちたり、家族に体の変調が起こったりと状況が大きく変化する場合は何らかの対策をしたほうがいいと思っています。一度リフォームをしたからと言っても、年月が経てばまた見直しは必要です。
他にも生活する中で、気づいたことがあります。10年前の自宅の改修では、段差をなくし、1階に床暖房を設けました。ただ、生活する階によって暖房環境に違いがあり、1つの設備を新しくするだけでなく、家全体をどう使うかまで考える必要があったのです。
この経験から、親の家でも、設備の古さだけでなく、今の暮らしで何が負担になっているかを見ることが大切だと感じています。
親のためにお金を出すことと、無理をすることは違う
子どもが親の家のリフォーム費用を負担する場合は、自分の生活や老後資金を守れる範囲で考えることが大切です。 親を支えたい気持ちがあっても、無理をしてまで負担する必要はありません。
50代は、親の住まいだけでなく、自分の住宅ローンや教育費、老後の生活費も考えなければならない時期です。親の家にまとまったお金を使えば、自分たちの暮らしに影響することもあります。たとえば、親の浴室が古くなっている場合、子どもが全額を負担して全面改修する以外にも、親の資金と組み合わせる、危険な箇所から優先的に直す、といった方法があります。
考え方のコツは、先に「出せる上限」を決めることです。 「いくらかかるか」から考えるのではなく、「自分たちの暮らしを守りながら、出せるのはいくらまでか」を先に決め、その範囲で工事の範囲を考えます。決めた上限は、親やきょうだいとも共有しておくと、話し合いがしやすくなります。
自分の老後資金を確保することも、将来に向けた大切な備えです。
全面リフォームだけでなく、部分的な改修も考える
親の家のリフォームは、家全体を新しくすることだけが選択肢ではありません。 日常生活で困っている箇所を優先して直すことで、費用を抑えながら、暮らしやすさを改善できる場合があります。
| 気になっていること | 検討できる工事の例 |
|---|---|
| 玄関や廊下の段差 | 段差の解消、手すりの設置 |
| 浴室やトイレの使いにくさ | 手すりの設置、設備の見直し |
| 冬の寒さ | 窓の断熱改修、暖房環境の見直し |
| 給湯器などの老朽化 | 故障の状況や使用年数を踏まえた交換 |
段差の解消や手すりの設置は、第6章で説明した介護保険の住宅改修の対象になる場合があります。
もちろん、部分的な改修を繰り返すより、まとめて工事したほうが効率的な場合もあります。建物の状態や工事内容によって異なるため、施工業者や建築士などの専門家に相談しながら判断しましょう。工事の優先順位が明確になれば、見積もりを比べるときにも判断しやすくなります。
親が住まなくなった後のことも、少しだけ考えておく
親の家をリフォームするなら、今の暮らしだけでなく、将来その家をどうするのかも、少し考えておきましょう。 工事の規模を決めるときの参考になります。ただし、将来のことが決まっていないからといって、今必要な修繕まで先延ばしにする必要はありません。
親がこれからも長く住み続けたいと考えているなら、日々の安全性や快適さを優先することが大切です。一方、将来の住み替えや施設への入居を考える可能性があるなら、大規模なリフォームに多額の費用をかける前に、工事の必要性を整理しておくとよいでしょう。
親が住まなくなった後の家には、売却する、賃貸に出す、家族が住む、維持管理を続けるなど、いくつかの選択肢があります。ただし、実際に選べる方法は、建物の状態や立地、所有関係、家族の意向によって異なります。
今すぐ結論を出す必要はありません。まずは、親の希望を聞いてみることが、今後の方向性を考えるきっかけになります。
次の章では、親がリフォームやお金の話を嫌がるときの、話の切り出し方を見ていきます。
第8章 親がリフォームやお金の話を嫌がるときはどうする?

親にリフォームを提案しても、親が乗り気でなかったり、お金の話を嫌がったりすることがあります。 そんなときは、いきなりリフォームや費用の話をせず、今の暮らしで困っていることを聞くところから始めてみましょう。
親にとって、長年暮らしてきた家は思い出の詰まった場所です。「老後のために直そう」と言われると、年を取ったことを突きつけられたように感じる場合もあります。
乗り気でない理由は、人によって違います。たとえば、次のようなことが考えられます。
- 子どもに負担をかけたくない
- 工事中の生活や、荷物の片づけが大変そう
- 思い出のある家を変えたくない
- お金の話をされたくない、不安がある
理由を想像してみると、話し方を変えやすくなります。
「老後のために」ではなく、今の暮らしの不便から話す
親にリフォームを提案するときは、老後への備えを強調するより、日々の暮らしで不便に感じていることから話します。
たとえば、「この段差は危ないから直したほうがいい」と伝える代わりに、「この段差、上り下りするときに不便じゃない?」と尋ねてみます。ほかにも、「冬、お風呂や脱衣所は寒くない?」「台所で使いにくいところはない?」といった聞き方があります。親自身が感じている困りごとを聞けば、必要な工事も考えやすくなります。
帰省したときに、一緒に家の中を歩きながら聞くと、話を切り出しやすいかもしれません。
最初から費用を決めず、親の希望を聞く
親の家のリフォーム費用を誰が払うかは、工事の必要性や親の希望を確認してから考えても、遅くありません。
「いくらかかるから、私が払おうか」と先に話を進めると、親が遠慮したり、自分の希望を言いにくくなったりすることがあります。まずは、どこを直したいのか、これからも今の家で暮らしたいのか、工事をするかどうかも含めて、親の意見を聞きましょう。
お金の話を嫌がる場合は、最初から預貯金の額を聞き出す必要はありません。家の希望を聞いたうえで、工事の内容が見えてきてから、「費用をどう分けるか、一緒に考えたい」と、子ども側の考えを先に話す方法もあります。
親が断ったときは、無理に説得せず、時間をおいてまた話してみましょう。決めるのは、その家で暮らす親自身です。
今日、親に聞くなら「これからも、この家でどんなふうに暮らしたい?」
今日、親に一つだけ聞くなら、こんな言葉はいかがでしょうか。
「これからも、この家でどんなふうに暮らしたい?」
家は、完成したときの使いやすさがずっと続くわけではありません。暮らし方や年齢によって、必要な形も変わります。だからこそ、設備の古さだけで判断せず、親がこれからどんな暮らしを望んでいるのかを知ることが大切です。
すぐにリフォームの話に進まなくても大丈夫です。親の希望を聞くことが、家族のこれからを考える最初の一歩になります。
次の章では、ここまでの内容を、よくある質問にまとめます。
第9章 親の家のリフォーム費用に関するよくある質問(FAQ)

親の家のリフォーム費用は、親と子のどちらが払うべきですか?
一律の正解はなく、親の経済状況、子どもの家計、工事の目的に応じて決めます。 親が払う方法、子どもが援助する方法、きょうだいで分担する方法があります。親の生活費と自分の老後資金の両方を守れる負担方法を考えましょう。
詳しくは、【第2章・親が払う?子が払う?費用負担の3つのパターン】をご覧ください。
親名義の家を子どもがリフォームすると贈与税がかかりますか?
かかる場合も、かからない場合もあり、一律には判断できません。 工事の内容(増築か、修繕・設備更新か)、家の所有関係、費用の負担方法などによって異なります。国税庁の事例は増築についてのもので、通常の修繕や設備交換にそのまま当てはめることはできません。また、「年110万円まで」「生活費の非課税」といった説明だけで判断するのも避けましょう。
詳しくは、【第3章・親名義の家を子どもがリフォームすると贈与税はかかる?】と、国税庁の質疑応答事例、No.4405をご覧ください。個別のケースは、工事の契約や支払いの前に、税理士や税務署に確認しましょう。
きょうだいがいる場合、費用は均等に分けるべきですか?
必ずしも均等に分ける必要はありません。 均等に分ける方法のほか、それぞれの家計に応じて金額を変える方法、親の家の対応や連絡といったお金以外の役割を分ける方法があります。後から認識の違いが生じないよう、負担額や取り決めは記録に残しておくと安心です。
詳しくは、【第4章・きょうだいで分担するときの注意点】をご覧ください。
リフォーム費用を出したら、将来の相続で有利になりますか?
費用を負担しただけで、将来の相続分が自動的に増えるわけではありません。 寄与分が問題になる場合もありますが、費用を出した事実だけで認められるとは限りません。相続での扱いが気になる場合は、費用を負担する前に、弁護士などの専門家に相談しましょう。
親がリフォームを嫌がる場合はどうすればよいですか?
無理に説得せず、今の暮らしで不便に感じていることを聞くところから始めましょう。 「老後のために直そう」ではなく、「この段差、上り下りするときに不便じゃない?」など、日常の話題から入る方法があります。まずは、親の希望を知ることが第一歩です。
親の判断能力が下がった場合、契約や費用はどうなりますか?
判断能力が低下すると、本人が契約や財産管理をすることが難しくなる場合があります。 ただし、診断の有無だけで決まるとは限らず、そのときの本人の状態や契約の内容に応じた確認が必要です。
備える方法として、成年後見制度があります。本人が十分な判断能力があるうちに、将来に備えて代理人を決めておく「任意後見」と、すでに判断能力が不十分になった場合に、家庭裁判所が援助者を選ぶ「法定後見」があります。家族信託なども、備えの選択肢の一つです。詳しくは別記事【親の終活 成年後見制度】、【親の終活で家族信託は必要?】をご覧ください。
まとめ|費用を決める前に、これからの暮らしを話そう

親の家のリフォーム費用を誰が払うかに、すべての家庭に当てはまる正解はありません。結論を急ぐ必要はなく、親の希望、家の名義、費用を負担する人、これからの暮らしを整理してから決めることが大切です。
子どもが費用を出す場合は、工事の内容や所有関係によって、贈与税などの確認が必要になることがあります。きょうだいで分担するときは、負担額や取り決めを記録に残しましょう。そして、親を支えるために、自分の老後資金を犠牲にする必要はありません。
今日できる一歩は、親の家の名義と暮らしの予定を確認すること
最初に確認したいのは、次の3つです。
- 親の家の名義を確認する。 土地と建物の所有者が同じとは限らないため、登記事項証明書などで確認します。
- これから誰が住み続けるのかを確認する。 親がどんな暮らしを望んでいるのか、子どもやきょうだいの考えも含めて話し合います。
- 工事内容と税務上の注意点を確認してから、費用の負担を決める。 親が払うのか、子どもが援助するのか、きょうだいで分担するのかは、家の状況やそれぞれの家計に合わせて考えます。
親の家を直すことは、単に古くなった家を新しくすることではありません。これからも安心して暮らすために、家族で未来を考える機会でもあります。
まずは親に、「これからも、この家でどんなふうに暮らしたい?」と聞いてみることから始めてみませんか。
参考資料
第3章
国税庁質疑応答事例「父所有の家屋に子が増築した場合の贈与税の課税関係」(令和7年8月1日現在)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/14/04.htm
第4章
京都家庭裁判所「遺産分割手続案内(調停を申し立てる方へ)」:https://www.courts.go.jp/kyoto/vc-files/kyoto/file/0304_isanbunkatsu_16.pdf
第5章
厚生労働省「介護保険における住宅改修」:https://www.mhlw.go.jp/general/seido/toukatsu/suishin/dl/07.pdf
みらいエコ住宅2026事業 公式サイト:
https://mirai-eco2026.mlit.go.jp/
国税庁 No.1220(令和8年4月1日現在):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1220.htm
国土交通省 リフォーム促進税制のリーフレット:
https://www.mlit.go.jp/content/001760813.pdf
第6章
厚生労働省「介護保険における住宅改修」:https://www.mhlw.go.jp/general/seido/toukatsu/suishin/dl/07.pdf
みらいエコ住宅2026事業 公式サイト:
https://mirai-eco2026.mlit.go.jp/
国税庁 No.1220(令和8年4月1日現在):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1220.htm
国土交通省 リフォーム促進税制のリーフレット:
https://www.mlit.go.jp/content/001760813.pdf
FAQ章
東京都福祉局「成年後見制度とは」:https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kiban/sodan/kouken/koken_seido
神戸法務局のパンフレット:
https://houmukyoku.moj.go.jp/kobe/content/001451072.pdf













