
「親の終活について、そろそろ話しておいたほうがいいのかな」
50代になると、親の年齢や体の変化をきっかけに、そんなことを考えるようになります。
けれど、いざ話そうとすると、
「終活の話をしたら、嫌な顔をされそう」
「まだ元気なのに、と思われないかな」
「そもそも、何から話せばいいの?」
そんな迷いが出てきます。
私自身も、親に実家やお墓のこれからについて話そうとしたとき、思うように話が進まなかった経験があります。
親のためを思っているのに、なぜ話しにくいのでしょうか。
そして、親を傷つけずに話を始めるには、どうすればいいのでしょう。
この記事では、私自身の経験も交えながら、親の終活を切り出すときに知っておきたい考え方と、実際の会話のヒントを整理します。
「いつか話さなければ」と思っている方が、この記事を読み終えたときに、少しだけ気持ちが軽くなればうれしいです。
第1章 親の終活を切り出せないのは、あなたがおかしいからではありません

親の終活について考え始めたものの、「どう切り出せばいいのかわからない」と感じているなら、それは決して珍しいことではありません。親が元気で暮らしているほど、終活の話はかえって口にしづらいものです。
「まだそんな話をするのは早いかな」
「死ぬのを待っているように思われないかな」
「財産のことを聞いたら、お金目当てだと思われるかも……」
そんなふうに迷ってしまうのは、親を大切に思っているからこそではないでしょうか。
親に「終活の話をしたい」と思っても、なかなか言えない
親の終活を考え始めても、最初の一言が出てこないのは自然なことです。親が元気ならなおさら、「今、話す必要があるの?」というためらいが生まれます。
50代になると、親の年齢や体調の変化を以前より意識するようになります。実家に帰ったとき、以前より動くのが大変そうだったり、少しずつ年齢を感じる場面が増えたりすると、「この先のことも考えておいたほうがいいのかな」と思うことがあります。
けれど、その気持ちをそのまま、
「お母さん、終活について話したいんだけど」
と言葉にするのは、意外と難しいものです。
「まだ元気なのに」と思われるかもしれない。
「私が死ぬのを待っているの?」と受け取られたらどうしよう。
そう考えると、言おうとしていた言葉を飲み込んでしまいます。
私自身も、親の終活について考え始めたとき、実家やお墓をこの先どうするのか、自分が考えていることを親に伝えようとしたことがあります。
ところが、親から返ってきたのは、
「こちらでちゃんと考えているから、大丈夫だよ」
という言葉でした。
私は、親のためを思って話そうとしていたつもりでした。
でも、その一言を聞いたら、それ以上は何も言えなくなってしまったのです。
「ちゃんと考えている」と言う親に対して、「本当に大丈夫なの?」と続ければ、親の考えを否定することになってしまう気がしました。
そこで話は終わりました。
今振り返ると、親にとっては「自分のことは自分で考えている」という思いがあったのだと思います。
子どもに心配をかけたくなかったのかもしれませんし、まだ自分が元気なうちから、先のことを子どもにあれこれ言われたくなかったのかもしれません。
本当のところは、親に聞いてみなければわかりません。
ただ、この経験から私は、親の終活は、子どもが先回りして「こうしたほうがいい」と決めるものではなく、まず親自身がどう考えているのかを聞くことから始まるのではないかと感じました。
「実家はどうする?」
「お墓はどうする?」
「相続はどうする?」
と、こちらが考えていることを一気に伝えるのではなく、
「お母さんは、この先どうしたいと思っている?」
と、親の考えを聞く。
そのほうが、親にとっても「自分のことを決められる」のではなく、「自分の希望を聞いてもらえる」と感じやすいのではないでしょうか。
だからこそ、最初から「終活の話をしなければ」と構えなくても大丈夫です。
親の終活の切り出し方で大切なのは、正しい言葉を探すことより、親の気持ちを聞く準備をすること。
私は、そんなふうに考えるようになりました。
「死ぬ話」と思われそうで怖い
親の終活を切り出すときに、「死を意識させてしまうのでは」と心配になるのは当然です。ただ、終活は死後の準備だけを指すものではありません。
たとえば、
- これからどこで暮らしたいか
- 病気になったらどうしたいか
- 大切にしているものをどうしたいか
- 家をこの先どうしたいか
- どんな老後を過ごしたいか
こうした「これからの暮らし」について考えることも、親の終活につながります。
つまり、最初から「死」について話さなくてもいいのです。
むしろ50代の子世代が親と話し始めるなら、
「これから、どんなふうに暮らしたい?」
という問いのほうが、親にとって話しやすいかもしれません。
「終活」という言葉を聞いた瞬間に、人生の終わりを連想する親もいるでしょう。
だからこそ、言葉を少し柔らかくするだけで、会話の入口は変わります。
具体的な切り出し方については、この後の「親の終活を切り出すなら『終活』という言葉から始めなくていい」で詳しく紹介します。
財産目当てと思われたくない
親の終活で財産について確認しておくことは大切ですが、最初から「財産はいくらあるの?」と聞く必要はありません。
子どもとしては、相続のときに困らないよう、預貯金や不動産、保険などを把握しておきたいと思うことがあります。それは必ずしも「財産が欲しい」という気持ちからではなく、いざというときに手続きで困らないためでもあります。
一方で、親からすると、
「まだ元気なのに、もう財産の話?」
と感じるかもしれません。
特に、親子の間でまだ終活について話したことがない状態なら、なおさらです。
だからこそ、財産の確認は「親の希望を聞く」という会話が始まってから、必要な段階で考えるほうが自然です。
「何を持っているか」より先に、
「何を大切にしているのか」
「これからどうしたいのか」
を知る。
この順番なら、親の終活を「相続のための確認作業」にしてしまうことを避けられます。
財産や重要書類については、会話が始まった後に考えれば大丈夫です。この記事の後半でも、親に聞いておきたい項目として整理していきます。
親を傷つけたくない
「親のために話しておきたい」と思うほど、かえって言葉を選びすぎてしまいます。けれど、親を傷つけない完璧な切り出し方を探す必要はありません。
子どもからすれば、
「もしものことがあったら困るから」
という善意でも、親には「もう年なんだから」と言われたように聞こえることがあります。
反対に、
「お母さんの希望を聞いておきたい」
なら、少し印象が変わります。
ここには大きな違いがあります。
「親に何かをしてもらう」のではなく、「親の気持ちを知る」
という姿勢です。
私自身、親の希望より先に自分の考えが前に出てしまった経験から、このことを強く感じました。
親のために話しているつもりでも、いつの間にか「自分たちはどうしたいか」という話になってしまうことがあります。
だから、親の終活を切り出すときに大切なのは、完璧な言葉を見つけることではなく、
「私はあなたの人生を決めたいのではなく、あなたの希望を知りたい」
という気持ちを持っておくことなのだと思います。
この章のまとめ
親の終活を切り出せないのは、あなたがおかしいからではありません。
親が元気だからこそ、「まだ早いのでは」「傷つけたくない」と迷うのは自然なことです。
そして、私自身の経験からも、子どもが先に「どうするか」より、まず親本人が「どうしたいのか」を確認することが大切だと感じています。
終活という言葉を出すことに抵抗があるなら、最初から「終活をしよう」と言わなくても大丈夫です。
まずは、
「これから、どんなふうに暮らしたい?」
と聞くところからでもいい。
次の章では、なぜ親が終活の話を嫌がるのかを、親側の気持ちから考えてみます。
第2章 親が終活を嫌がる理由を知ると、切り出し方が変わる

親に終活の話をしようとして、「そんな話はまだ早い」「縁起でもない」と言われたら、どう感じるでしょうか。
「せっかく親のことを考えているのに……」と、少しがっかりするかもしれません。
でも、親が終活の話を嫌がるのには、それなりの理由があります。
親が頑固だから、話を聞いてくれないから――と決めつける前に、「なぜ嫌なのだろう」と親の側から考えてみると、切り出し方も変わってきます。
「まだ元気だから大丈夫」
親が「まだ元気だから大丈夫」と言うなら、今すぐ終活が必要だとは感じていないのかもしれません。
元気に生活している親にとって、終活はまだ先の話に見えるものです。
毎日の生活が普通にできているのに、
「もし介護が必要になったら?」
「亡くなった後はどうする?」
と聞かれれば、「そんな先のことまで考えなくてもいい」と思うのも無理はありません。
私たち子どもの側からすると、親が元気なうちに話しておきたいと思います。
でも、親からすれば、
「今は元気に暮らしているのだから、今を大切にしたい」
という気持ちなのかもしれません。
たとえば、こんなふうに言われたらどうでしょう。
「まだ何も困っていないんだから、そんな話はそのうちでいいよ」
ここで「でも、何かあってからでは遅いよ」と言い返すと、親子の会話は「終活をする・しない」の押し問答になってしまいます。
まずは「そうだよね。元気なのが一番だよね」と受け止める。
そして、終活の話を急いで進めるのではなく、別の機会に自然な話題から始める方法もあります。
親が元気であることと、終活について少しずつ話しておくことは、両立できます。
「縁起でもない」
「終活なんて縁起でもない」と言われたら、無理に納得してもらおうとしないほうがいいでしょう。
「終活」という言葉から、死や葬儀、相続などを連想してしまう人にとっては、その言葉自体が重く感じられることがあります。
たとえば、
「終活っていうほどじゃないんだけど、これからのことをちょっと聞いておきたい」
と言い換えるだけでも、会話の雰囲気は変わります。
「終活をするかどうか」を話し合うのではなく、
「これからどこで暮らしたい?」
「この家はどうしていきたい?」
「もし入院したら、誰に連絡すればいい?」
と、具体的な生活の話から入る方法もあります。
ここで大切なのは、「終活」という言葉を使わなければならないわけではないということです。
実際の切り出し方については、次の章で具体的な会話例とともに詳しく考えていきます。
「自分のことは自分で決めたい」
親が「自分のことだから、自分で決める」と考えている場合、子どもが先回りして決めようとすると、かえって距離が生まれることがあります。
親の人生なのだから、親自身が決めたいと思うのは当然のことです。
子どもからすると、
「こうしておいたほうがいいよ」
「家はこうしたほうがいいんじゃない?」
「お墓はどうするの?」
と、心配だからこそ口を出したくなります。
けれど、親からすると「自分の人生について、子どもに指図されている」と感じる可能性もあります。
特に50代になると、親も70代、80代、場合によっては90代。年齢だけを理由に「もう自分では決められない」と扱うのは適切ではありません。
だから、親の終活を切り出すときは、
「こうしたほうがいいと思う」
ではなく、
「お父さんはどうしたい?」
という問いから始める。
「決めてもらう」のではなく、親がすでに持っている希望を聞くという姿勢です。
これは、親の意思を尊重しながら子どもが必要な情報を知るための、大切な一歩になります。
「子どもに迷惑をかけたくない」
「子どもに迷惑をかけたくないから、何も話さなくていい」と考える親もいます。
でも、親が「迷惑をかけたくない」と思う気持ちの中には、子どもを心配する気持ちが隠れていることもあります。
たとえば、
「私のことは私で何とかするから」
と言われたとき、子どもとしては「何かあったら困るのに」と思ってしまいます。
でも親からすると、
「子どもには子どもの生活がある」
「心配をかけたくない」
という思いなのかもしれません。
だから、
「私たちが困るから、ちゃんと決めておいて」
と伝えるより、
「何かあったときに、お父さんがどうしてほしいと思っているのか知っておきたい」
と伝えたほうが、親の気持ちにも寄り添いやすくなります。
「迷惑をかけないために終活をしてもらう」のではなく、
「親の希望を知っておくことで、親が望まないことをしなくて済む」
という考え方です。
この違いは、親との会話を続けるうえで意外と大きいものです。
「財産を狙われているようで嫌」
財産の話は、親の終活を切り出すときに特に慎重にしたいテーマです。
子どもには「いざというときに困らないため」という意図があっても、親からすると「もう財産のことを気にしているの?その一方で、親には「もう財産のことを気にしているの?」と受け取られる可能性があります。
たとえば、初めて終活の話をする場面で、
「預金はいくらあるの?」
「土地は誰の名義?」
「相続はどうするつもり?」
と質問されたら、親が警戒してしまっても不思議ではありません。
もちろん、相続や財産について確認しておくことは大切です。
ただ、親の終活の切り出し方として、最初から金額や分け方に入る必要はありません。
まずは、
「ところで、大事な書類って、どこに置いてある?」
「もし何かあったとき、どこを見ればわかる?」
というように、「困ったときに必要な情報」という角度から考えることもできます。
財産や相続については、親との信頼関係ができてから、必要な範囲で少しずつ話せばいいのです。
この記事でも後の章で、実際に話が始まった後に「何を聞いておけばいいのか」を整理します。
この章のまとめ
親が終活を嫌がるからといって、親が頑固だったり、何も考えていなかったりするとは限りません。
「まだ元気だから大丈夫」
「縁起でもない」
「自分のことは自分で決めたい」
「子どもに迷惑をかけたくない」
「財産のことを聞かれたくない」
その言葉の裏側には、親なりの考えや、子どもへの思いがある可能性があります。
だからこそ、親の終活を切り出すときは、「どうすれば親に終活をしてもらえるか」ではなく、
「親は、これからどうしたいと思っているのだろう?」
という視点を持つことが大切なのだと思います。
そして、ここで覚えておきたいのは、親が嫌がっているのは「終活」そのものではなく、「終活」という言葉や、子どもから何かを決められることなのかもしれないということです。
では、実際にはどんな言葉から始めればいいのでしょうか。
次の章では、「終活」という言葉を使わずに、親との会話を始める入口を具体的に見ていきます。
第3章 親の終活を切り出すなら「終活」という言葉から始めなくていい

親の終活を切り出すとき、最初から「終活」という言葉を使う必要はありません。
むしろ、親がその言葉に抵抗を感じそうなら、もっと身近な話題から会話を始めるほうが自然です。
「終活について話したい」と思うと、何か特別な話をしなければいけないように感じます。
でも、親子の会話は本来、もっと小さなところから始まるもの。
「最近どう?」
「これからどうしたい?」
「もし入院したらどうする?」
そんな何気ない一言が、親のこれからを知るきっかけになることがあります。
自分のことから話す
親に終活の話を切り出すなら、まず自分自身のことを話してみる方法があります。親に何かを求めるのではなく、自分の変化を伝えることで、親も話しやすくなるからです。
たとえば、
「私も最近、自分のこれからのことを考えるようになって」
「この先、どんな暮らしをしたいかなって考えることが増えたんだ」
こんなふうに、自分の話から始めます。
「お母さんも終活を考えたほうがいいよ」と言われると、親は「自分が何かをしなければいけない」と感じるかもしれません。
一方で、「私はこう考えるようになった」と伝えるだけなら、親が答えを求められているわけではありません。
そこから、
「お母さんは、これからどんなふうに暮らしたい?」
と話を広げることもできます。
50代になると、自分自身の老後も少しずつ現実味を帯びてきます。
親の終活をきっかけに、自分のこれからについて考え始める。
そんな順番なら、親にとっても「子どもから終活を迫られた」という印象が薄くなるのではないでしょうか。
健康・介護から話す
健康や介護は、終活よりも日常生活に近い話題です。「もしものとき、どうしてほしい?」という具体的な問いなら、親も話の意味をイメージしやすくなります。
たとえば、
「もし入院したら、どうしたらいいかだけ聞いておいてもいい?」
「何かあったとき、まず誰に連絡すればいい?」
と聞いてみる。
「終活をしよう」と言われるよりも、ずっと現実的な話に感じるのではないでしょうか。
特に親が一人暮らしをしている場合や、子どもが遠方に住んでいる場合には、いざというときの連絡先や希望を知っておくことが安心につながります。
ただし、ここでも一度に全部を聞く必要はありません。
「病院はどこに行っている?」
「緊急連絡先は誰にしている?」
そんな小さな確認からでも十分です。
医療や介護について親の希望を考えることは、人生の最終段階について話し合う「人生会議(ACP)」にもつながります。
ただ、難しい言葉を持ち出す必要はありません。
「もしものとき、どうしてほしい?」という一つの質問から始める。
それだけでも、親の希望を知る大切な一歩になります。
実家のことから話す
実家について話すときは、片付けや処分を急いで持ち出すのではなく、まず「親はこの家をどうしたいと思っているのか」を聞くことがポイントです。
たとえば、
「この家、この先どうしていきたい?」
「ずっとここで暮らしたい?」
「この家で、これからもやりたいことってある?」
と聞いてみます。
子どもの側からすると、実家の荷物や管理のことが気になっているかもしれません。
「そろそろ片付けたほうがいいんじゃない?」
「使っていないものは処分したら?」
と言いたくなることもあるでしょう。
でも、この段階では、まだそこまで踏み込まなくてもいいのです。
親にとって実家は、単なる不動産ではありません。
長年暮らしてきた場所であり、家族との思い出が残っている場所でもあります。
だからこそ、まず聞きたいのは、
「何を処分するか」ではなく、「この家をどうしたいか」。
実家じまいや片付けについては、親の希望が見えてから考えても遅くありません。
実家の今後について考えている方は、こちらの記事も参考になります。
→ 「終活・実家」に関する関連記事はこちら
葬儀や身近な人の話から話す
親との終活の話を始めるきっかけとして、身近な人の出来事を利用する方法もあります。自分たちの話として切り出すより、第三者の出来事から入ったほうが、親も自分のこととして考えやすくなる場合があります。
たとえば、
「この前、○○さんのお父さんの話を聞いてね……」
と話し始める。
その人の葬儀や入院、相続などをきっかけに、
「うちの場合はどうなんだろうね」
と話を広げられるかもしれません。
ただし、ここには一つ注意があります。
人の不幸を「終活のきっかけ」として利用するような言い方になると、親は嫌な気持ちになる可能性があります。
「○○さんみたいにならないように、うちも考えないとね」
より、
「こういう話を聞いて、私も少し考えるようになった」
くらいの距離感のほうが自然です。
第三者の出来事は、親を動かすための材料ではありません。
親子で「うちの場合はどうだろう」と考えるきっかけとして使う。
そのくらいに考えておくといいでしょう。
「これからどう暮らしたい?」から話す
親の終活を切り出すとき、私が特に大切だと思うのが、「これからどう暮らしたい?」という問いから始めることです。
終活というと、「何を残すか」「何を処分するか」「亡くなった後をどうするか」と考えがちです。
でも、その前に知りたいのは、親自身がこれからどんな人生を送りたいと思っているのかではないでしょうか。
たとえば、
「これからもこの家で暮らしたい?」
「どこか行ってみたいところはある?」
「これからも残しておきたいものってある?」
「誰と一緒に過ごしたい?」
「これからやってみたいことはある?」
答えは、すぐに出てこなくても構いません。
「そんなこと考えたことないよ」と笑われるかもしれません。
それでも、親が話す言葉の中には、これからの暮らしを考えるヒントがあります。
たとえば、
「できれば、この家にずっといたい」
という一言があれば、今後の住まいについて考えるきっかけになります。
「庭だけは自分で手入れしたい」
と言うなら、親にとって庭が大切なものなのかもしれません。
「子どもたちには迷惑をかけたくない」
と言うなら、そこには親なりの心配や希望が隠れている可能性があります。
このように考えると、終活は「死んだ後の準備」だけではありません。
親がこれからどう生きたいのかを知ることも、親の終活を考える大切な入口です。
そして、これは子どもが親の人生を決めるための質問ではありません。
「親はどうしたいのだろう」と知るための質問です。
私は、この違いがとても大切だと思っています。
この章のまとめ
親の終活の切り出し方に、決まった正解はありません。
「終活」という言葉を使うことに抵抗があるなら、
- 自分のこれから
- 健康や介護
- 実家
- 身近な人の出来事
- これからの暮らし
など、親が話しやすいところから始めればいいのです。
そして、この章で一番伝えたいのは、
「終活について話す」ことより、「親のこれからを聞く」ことから始めてもいい
ということです。
「何を準備しておけばいい?」ではなく、
「これから、どんなふうに暮らしたい?」
と聞いてみる。
その答えの中に、親が本当に大切にしているものが見えてくるかもしれません。
次の章では、同じ言葉でも「いつ話すか」によって受け取られ方が変わることについて考えていきます。親の終活を切り出すタイミングや、話しやすい場面・避けたい場面を整理します。
第4章 親の終活は「いつ話す?」タイミングと切り出しやすい場面

親の終活は、「何を話すか」だけでなく、「いつ話すか」も大切です。
同じ言葉でも、親がゆっくり話せるときに伝えるのと、疲れているときに突然切り出すのとでは、受け止め方が変わります。
「帰省したから、今しかない」と焦る必要はありません。
むしろ大切なのは、親が落ち着いていて、こちらも急いでいない時間を選ぶことです。
帰省・お盆・お正月など家族が集まるとき
帰省やお盆、お正月など、家族が集まるタイミングは、親の終活について話し始めるきっかけになります。普段より一緒に過ごす時間が長く、何気ない会話から話題を広げやすいからです。
たとえば、食事をしながら、
「この家、ずっと残していきたい?」
「最近、○○さんが実家を整理したんだって」
など、軽い話題から始めることができます。
ただし、久しぶりに帰省した途端、
「今日はみんなで終活について話し合おう」
と切り出すのはおすすめできません。
親にとっては、せっかく子どもが帰ってきたのに、いきなり重い話をされることになります。
また、お正月などは家族全員が集まるため、「今ならきょうだいもいるから話せる」と思うかもしれません。
でも、親が人前では話したくないこともあります。
家族が集まることと、親が話しやすいことは別です。
みんなで話す前に、親と二人で話せる時間をつくるほうがよい場合もあります。
親や身近な人が入院・体調を崩したとき
親や身近な人の入院、体調の変化は、これからのことを考えるきっかけになります。ただし、親本人が弱っているときは、終活の話を急いで進める必要はありません。
たとえば、親が入院したことで、
「もし今後、入院することになったらどうしてほしい?」
「何かあったとき、誰に連絡すればいい?」
といった現実的な話が必要になることがあります。
普段なら「まだ先の話」と考えていたことが、急に身近な問題になるからです。
一方で、親が体調を崩している最中に、
「これを機会に終活について全部決めておこう」
と話を広げるのは負担になりかねません。
まずは治療や休養を優先する。
そして少し落ち着いたときに、
「この前のことで、私も少し考えるようになったんだけど……」
と話す方法があります。
「何か起きたから、すぐ終活」ではなく、「何かをきっかけに、これからを考えてみる」。
このくらいの距離感でも十分です。
友人や知人の終活・相続の話を聞いたとき
友人や知人の終活、相続、介護などの話を聞いたときも、親の終活を切り出すきっかけになります。第三者の出来事なら、自分たちの問題として突然突きつけるよりも自然に話せるからです。
たとえば、
「この前、知り合いから相続の話を聞いてね」
「○○さんのお母さん、施設に入ったんだって」
というところから、
「うちの場合はどうなんだろうね」
と話を広げてみる。
ここで大切なのは、他人の話を「親を説得する材料」にしないことです。
「○○さんの家は大変だったらしいよ。うちもちゃんとしないと」
と危機感をあおるより、
「そんなこともあるんだね。うちの場合はどうなんだろう」
くらいのほうが、親も自分のこととして考えやすくなります。
もし相続について話が広がったとしても、その場ですべて決める必要はありません。
「きょうだいで意見が違ったらどうしよう」と感じたら、まずは親の希望を確認することを優先するのも一つの方法です。
相続をきっかけにきょうだいの意見がぶつかることが心配な方は、こちらの記事も参考にしてください。
→ 「親の終活|きょうだいでもめないために」
実家の片付けや修繕をするとき
実家の片付けや修繕は、家の将来について話す自然なタイミングです。ただし、「片付ける=実家じまい」と決めつけず、まずは親の希望を聞くことが大切です。
たとえば、雨漏りの修理や庭の手入れ、使っていない部屋の整理などをしているとき、
「この家、これからどうしていきたい?」
「この先もここで暮らしたい?」
と聞いてみる。
普段はなかなか話題にならない「家のこれから」も、実際に家を見ながらなら話しやすくなることがあります。
ただし、
「もうこの家も古いし、売ったほうがいいんじゃない?」
と、いきなり処分や売却の話に進むのは避けたいところです。
親にとって実家は、子どもが考える以上に思い入れのある場所かもしれません。
「何を処分するか」より先に、「この家でどう暮らしたいか」を聞く。
その順番を意識するだけでも、会話の雰囲気は変わります。
→関連記事「実家をどうする?」はこちら
逆に避けたほうがいいタイミング
親の終活を切り出すなら、「話せる時間」だけでなく、「今は話さないほうがいい時間」を見極めることも大切です。
たとえば、次のような場面です。
- 親の体調が悪いとき
- 親が疲れているとき
- 夫婦げんかをした直後
- 来客中
- 親が明らかに話したくなさそうなとき
特に注意したいのが、「家族が集まっているから、今しかない」と考えてしまうことです。
せっかく子どもやきょうだいが全員そろっていると、「この機会を逃したら話せない」と焦るかもしれません。
でも、親が黙り込んでいたり、話題を変えようとしたりしているなら、その日は引いたほうがいい場合もあります。
終活の話は、一度で全部話し終えなくてもいいからです。
「今日はやめておこう。また今度、少し聞かせてね」
と言えるほうが、次の会話につながります。
また、親が疲れているときに無理に話を続けると、
「終活の話=嫌な時間」
という印象だけが残ってしまうかもしれません。
だから、「今日話せなかった=失敗」ではありません。
話さないという選択も、親との関係を守るための大切な判断です。
終活には時間がかかると考えて、できる時に少しずつ進める姿勢が大切です。
この章のまとめ
親の終活を切り出すタイミングは、「何歳になったら」という年齢だけで決まるものではありません。
帰省や家族が集まるとき、実家のことを話すとき、身近な人の出来事があったときなど、自然に「これから」を考えられる場面があります。
一方で、親が疲れているときや体調が悪いときなどは、無理に話を進めないことも大切です。
終活の話は、今日すべて決める必要はありません。
むしろ、
「今日は少し話せた。また次に話そう」
くらいで終わるほうが、親にとっては負担が少ないこともあります。
「何を話すか」だけでなく、「いつなら親が話しやすいか」。
そこまで考えてみると、親の終活の切り出し方は、少し身近なものになってくるのではないでしょうか。
次の章では、いよいよ「実際に何と言えばいい?」という疑問に答えます。50代の子世代が使いやすい、親への具体的な切り出し方を会話例とともに紹介します。
第5章 50代の子世代が使いやすい「親への切り出し方」5選

親の終活を切り出すときに大切なのは「何を言えば親が納得するか」ではなく、「親が話しやすい言葉を選ぶこと」です。
ここまで読んできたように、「終活」という言葉そのものに抵抗を感じる親もいます。
そこで、この章では、50代の子世代から実際に使いやすい5つの切り出し方を紹介します。
ポイントは、どの言葉にも親に答えを迫らない余白を残すこと。
そして、もし親から思っていたような返事が返ってこなくても、そこで会話を失敗にしないことです。
①「私も自分のことを考え始めたんだけど」
親の終活を切り出すなら、まず自分のことから話す方法が使いやすいでしょう。親に「終活を始めて」と求めるのではなく、自分の変化を伝えるからです。
たとえば、こんなふうに始めます。
「私も最近、自分のこれからのことを考えるようになったんだ」
「この先、どこで暮らしたいかなって考えることがあって」
「自分のことを整理しておいたほうがいいのかなって思って」
親からこんな返事があったら?
「まだそんなこと考えなくてもいいんじゃない?」
このとき、
「そうだよね。でも、ちょっと考えるようになったんだ」
くらいで大丈夫です。
親に「じゃあ、お母さんも考えて」と返さなくても構いません。
もし親のほうから、
「お母さんはまだ何も考えてないよ」
と言われたら、
「そっか。私もまだ何も決まってないよ」
と会話を閉じてもいいのです。
大切なのは、親に終活を始めさせることではなく、「こういう話もしていいんだ」と思ってもらうこと。
最初の会話は、それだけでも十分な一歩です。
②「もし入院したら、どうしたらいい?」
医療や介護の話から入ると、親の終活を比較的自然に切り出せます。「もしものときに、どうしてほしいか」を聞くことで、終活という言葉を使わずに親の希望を知ることができるからです。
たとえば、
「もし入院したら、私たちはどうしたらいい?」
「何かあったとき、まず誰に連絡したらいい?」
「病院のこととか、私たちが知っておいたほうがいいことってある?」
といった聞き方です。
親からこんな返事があったら?
「そんなこと、まだ考えなくていいよ」
と返されたら、
「そうだね。今すぐ必要ってわけじゃないんだけど、私が知らないと困るかなと思って」
くらいにとどめます。
反対に、
「そういえば、かかりつけ医は○○病院だよ」
と話が続いたら、そこから必要な情報を少しずつ聞いていけばいいでしょう。
ここでは、医療や介護について一度にすべて確認しようとしないことがポイントです。
「もしものとき、どうしてほしい?」という質問から、親の希望が少し見えてくることがあります。
より具体的に医療・介護の希望を整理したい場合は、エンディングノートについて書いた記事があります。そちらをご覧ください。
③「この家、この先どうしたい?」
実家のことが気になっているなら、「片付ける」「売る」といった結論ではなく、親がこの家をどうしたいのかを聞くところから始めます。
たとえば、
「この家、この先どうしたい?」
「これからもここで暮らしたい?」
「この家で、まだやりたいことってある?」
という聞き方です。
親からこんな返事があったら?
「ここは自分の家だから、ずっと住みたいよ」
そう言われたら、
「そうなんだね。ここが好きなんだね」
と、まず受け止める。
「でも、管理が大変になるよ」などと、すぐに現実的な問題を並べなくてもいいのです。
逆に、
「もう年だし、いずれはどうにかしないとね」
という返事なら、
「そう思ってるんだ。じゃあ、そのときはどうしたい?」
と、もう一歩聞くことができます。
ここで注意したいのは、子ども側が実家の将来を先に決めないこと。
実家の片付けや売却、活用など具体的な問題は、この後に親の希望を確認してから考えれば十分です。
実家の今後について具体的に考える段階になったら、「終活・実家をどうする?」の記事をご覧ください。
④「○○さんの話を聞いて、うちも少し話しておこうと思って」
第三者の出来事をきっかけにするのも、親の終活を切り出しやすい方法です。自分たちの問題として突然話すより、「こんなことがあった」という話から入ることで、会話のきっかけをつくりやすくなります。
たとえば、
「この前、○○さんのお父さんが入院したって聞いてね」
「○○さんのところ、相続でちょっと大変だったみたいで」
「それを聞いて、うちも少し話しておいたほうがいいのかなって思った」
という形です。
親からこんな返事があったら?
「うちは大丈夫よ」
と言われたら、
「そうだよね。今すぐ何かあるわけじゃないもんね」
と受け止めてもいいでしょう。
もし、
「何が大変だったの?」
と親が興味を示したら、そこから自然に話が広がります。
ここで避けたいのは、
「だから、お母さんもちゃんと考えておいて」
と結論を急ぐこと。
第三者の出来事は、親を説得するための材料ではありません。
「うちの場合はどうだろうね」と一緒に考える入口くらいに捉えておくと、会話が続きやすくなります。
⑤「お母さん・お父さんの希望を聞いておきたい」
5つの中でも、私が特に大切にしたいのが、「どうしてほしい?」ではなく「どうしたい?」を聞くことです。
親の終活を考えると、子どもの側はつい、
「こうしておいてほしい」
「これを決めておいてほしい」
と考えてしまいます。
でも、親の人生について話すのなら、まず親自身の希望を知ることが先ではないでしょうか。
たとえば、
「お母さんの希望を聞いておきたいんだけど、これからどんなふうに暮らしたい?」
「何かあったとき、どうしてほしい?」
「これだけは大切にしたいって思っていることはある?」
と聞いてみる。
親からこんな返事があったら?
「別に何もないよ」
そう言われたら、
「そっか。じゃあ、また思いついたら教えて」
くらいで終わっても構いません。
反対に、
「この家は残したい」
「できれば最後まで自宅にいたい」
「葬儀は簡単でいい」
など、親の希望が出てきたら、その言葉を大切にしておきます。
すぐに実現方法まで決める必要はありません。
「親がどうしたいのか」を知ること自体が、この会話の大きな意味だからです。
そして、親の希望を聞いていくと、財産や医療、実家、葬儀など、次に話しておきたいことも少しずつ見えてきます。
5つの切り出し方に共通する「もう一歩」の返し方
ここまで5つの例を紹介しましたが、実際の会話では、親が予定どおり答えてくれるとは限りません。
だからこそ、切り出しの言葉そのものよりも、親の返事を聞いた後に、会話を急いで結論へ持っていかないことが大切です。
たとえば、
| 親の返事 | 子どもの返し方 |
|---|---|
| 「まだ早いよ」 | 「そうだよね。今すぐじゃなくてもいいよね」 |
| 「何も考えてない」 | 「そっか。また気が向いたら聞かせて」 |
| 「自分でちゃんと考えてる」 | 「そうなんだ。じゃあ、希望だけでもいつか聞かせてね」 |
| 「そんな話したくない」 | 「わかった。今日はやめよう」 |
| 「何かあったらそのとき考えればいい」 | 「そうだね。でも私が知っておいたほうがいいことだけ、いつか教えてね」 |
すべてのケースで、親を納得させる必要はありません。
むしろ「この話をしても、子どもに決めつけられない」と思ってもらえることが、次の会話につながります。
この章のまとめ
親の終活の切り出し方に迷ったら、最初から「終活について話そう」と構えなくても大丈夫です。
今回紹介した5つの入口を振り返ると、
- 自分のことから話す
- 健康や入院のことから話す
- 実家のことから話す
- 身近な人の出来事から話す
- 親の希望を聞く
という方法があります。
そして、どの方法にも共通しているのは、親を動かすための言葉ではなく、親の気持ちを知るための言葉を選ぶことです。
もし一度で話が進まなくても、それは失敗ではありません。
「今日はここまで」と終えられたなら、それも親子で終活を話すための一歩です。
次の章では、反対に「こんな言い方をすると、親が怒ってしまうかもしれない」というNG例を取り上げます。良かれと思って言ってしまいがちな言葉と、なぜ逆効果になりやすいのかを見ていきましょう。
第6章 これは逆効果?親を怒らせやすい終活の切り出し方

親の終活を考えていると、良かれと思って言った言葉が、かえって親を怒らせてしまうことがあります。
子どもの側からすれば、「困らないように準備してほしい」「後で大変な思いをしたくない」という心配から出た言葉でしょう。
でも、親の立場からすると、
「自分の人生を、子どもに決められようとしている」
と感じてしまうこともあります。
ここでは、親の終活を切り出すときに避けたい言葉と、その理由を考えてみましょう。
「終活しないと困るよ」
「終活しないと困るよ」という言葉は、親にとっては脅されているように聞こえる可能性があります。
言っている側は、
「後で困らないように、今のうちに考えておこうよ」
というつもりでも、親からすれば、
「終活をしないと、あなたたちが困る」
と言われているように受け取るかもしれません。
特に、まだ元気に暮らしている親なら、
「自分はちゃんと生活できているのに、なぜそんなことを言われるの?」
と反発したくなることもあるでしょう。
もし実際に心配なことがあるなら、
「私、何かあったときにどうしたらいいのかわからなくて」
と、自分の不安として伝えるほうが会話につながりやすくなります。
「終活しないと困る」ではなく、「私は少し心配だから聞いておきたい」。
同じ「もしもの備え」でも、伝わり方は大きく変わります。
「もう年なんだから」
「もう年なんだから、そろそろ考えたほうがいい」という言い方も、親を傷つけやすい言葉です。
子どもにとっては事実を伝えているだけのつもりでも、親には「老いた自分を突きつけられた」ように感じられることがあります。
たとえば、
「もう80歳なんだから、終活くらいしておいたほうがいいよ」
と言われたら、どうでしょう。
年齢を重ねたことそのものを否定されたような気持ちになる人もいるはずです。
親にとって80年、90年という年月は、「もう年だから」の一言で片付けられるものではありません。
これまで仕事をしたり、子どもを育てたり、家族との時間を積み重ねたりしてきた人生があります。
だからこそ、年齢を理由に急かすのではなく、
「これからどんなふうに暮らしたい?」
と聞いてみる。
「もう年だから」ではなく、「これから」を見る。
この視点の違いが、親の終活の切り出し方では大切だと私は思います。
「財産はどれくらいあるの?」
親の財産について知っておくことは、相続を考えるうえで大切です。
ただし、初めての終活の会話で、いきなり財産の金額を聞くのは避けたほうがいいでしょう。
たとえば、
「預金、いくらあるの?」
「土地や家は誰の名義?」
「生命保険はどれくらい?」
と突然聞かれたら、親はどう感じるでしょうか。
「相続のために聞いているのかな」
「財産を当てにしているのかな」
と警戒される可能性があります。
もちろん、相続の準備として財産を整理しておくことには意味があります。
ただ、それは親子の信頼関係ができたうえで、必要な情報を少しずつ確認していく話です。
最初は、
「大事な書類がどこにあるかだけ、何かあったときのために教えてもらえる?」
くらいから始めてもいいでしょう。
財産整理や相続について具体的に考える段階になったら、この記事の後半で紹介する「親の終活で次に話しておきたいこと」や、財産整理・相続の記事へつなげていくと自然です。
よかったらこちらの記事も参考にしてみてください。
「私たちが困るから」
「私たちが困るから」という言葉も、親には少し寂しく聞こえることがあります。
子どもの側からすれば、
「親が亡くなった後に、何もわからなかったら困る」
という現実的な心配があります。
けれど、その言葉だけを伝えると、
「結局、自分のためなんだね」
と親に感じさせてしまうかもしれません。
特に終活は、親自身の人生に関わる話です。
「子どもが困らないため」だけを理由にすると、親の希望が置き去りになってしまいます。
そこで、
「私たちが困らないようにしてほしい」
ではなく、
「お母さんの希望を聞いておきたい」
と伝えてみる。
たとえば、
「何かあったときに、どうしてほしいと思っているのか聞いておきたいんだ」
という言葉なら、親の意思に目を向けています。
「親のため」と「子どもの安心」は、どちらか一方ではありません。
ただ、最初の会話では、親の希望を中心に置く。
それが、親子で終活を話すときの基本になるのではないでしょうか。
「エンディングノートを書いておいて」
エンディングノートは、親の希望や大切な情報を整理するきっかけになります。
ただし、「これを書いておいて」と一冊渡すだけでは、親にとって新しい宿題になってしまうことがあります。
たとえば、
「これ、終活ノートだから書いておいてね」
と言われても、
「どこから書けばいいの?」
「全部埋めないといけないの?」
「まだそんなものを書きたくない」
と思うかもしれません。
特に、「終活を始める=エンディングノートを完成させる」という順番にしてしまうと、親の負担が大きくなります。
もしエンディングノートを使うなら、
「これ、私も見てみようと思ってるんだけど、一緒に見てみる?」
くらいの誘い方でもいいでしょう。
親が興味を持ったら、必要なところだけ一緒に考える。
「書いておいて」ではなく、「一緒に見てみない?」。
この違いだけでも、親にかかる心理的な負担は変わります。
エンディングノートそのものについて詳しく知りたい方には、こちらの記事もおすすめです。
→ 「終活のエンディングノート、選び方・始め方は?」
なぜ、これらの言葉は逆効果になりやすいのか
ここまでの言葉に共通しているのは、親に「してほしいこと」を伝えている点です。
もちろん、子どもの側にも事情があります。
相続のこと、実家のこと、介護のこと……。
「今のうちに決めておかないと、後で自分たちが大変になる」と考えるのは、決しておかしなことではありません。
ただ、その気持ちが強くなりすぎると、
「終活して」
「財産を教えて」
「ノートを書いて」
「家をどうするか決めて」
と、親に求める言葉が増えていきます。
すると親から見れば、
「自分のことなのに、子どもに主導権を取られている」
と感じる可能性があります。
ここで、この記事全体を通して大切にしたい言葉があります。
「してほしい」ではなく、「聞かせてほしい」。
「何をしてほしいか」を考える前に、
「どうしたい?」
「何を大切にしたい?」
「どんなふうに暮らしたい?」
と聞いてみる。
これは、親の言うことをすべて子どもが受け入れなければならない、という意味ではありません。
親の希望を知ったうえで、現実的にできることを一緒に考える。
その順番が大切なのだと思います。
この章のまとめ
親の終活を切り出すときは、正しいことを言えば話が進むわけではありません。
「終活しないと困るよ」
「もう年なんだから」
「財産はどれくらいあるの?」
「私たちが困るから」
「エンディングノートを書いておいて」
どれも、子どもの側からすれば心配から出てくる言葉です。
でも、親にとっては「急かされている」「自分で決められない」と感じる可能性があります。
だからこそ、
してほしいことを伝える前に、親がどうしたいのかを聞く。
「終活をして」と言うより、
「これからどうしたい?」
「希望を聞かせて」
から始めてみる。
それだけでも、親子の会話は少し変わるかもしれません。
そして、もしそれでも親が「まだ話したくない」と言ったら――。
そこで、すべてを諦める必要はありません。
次の章では、親に断られたり、怒られたり、話題を変えられたりしたときに「その後、どうすればいいのか」を考えていきます。
第7章 親に断られたら、そこで終わりにしなくていい

親の終活を切り出してみたものの、「まだ早い」「そんな話はしたくない」と断られることがあります。
そんなとき、まず知っておきたいのは、「今日は話せなかった」ことと、「もう二度と話せない」ことは違うということです。
せっかく勇気を出して切り出したのに、親に拒否されると、
「やっぱり言わなければよかった」
「この先も何も話してくれないのでは?」
と、不安になるかもしれません。
でも、親が断ったのは、あなた自身を拒絶したからとは限りません。
終活という言葉に抵抗があったのかもしれませんし、その日の気分や体調の問題かもしれません。
だから、一度の会話だけで「失敗だった」と決めなくても大丈夫です。
「まだ早い」と言われたら
親から「まだ早いよ」と言われたら、まずはその言葉をそのまま受け止めて、いったん引くのがよいでしょう。
「でも、何かあってからでは遅いよ」
「だから今のうちに考えておいたほうがいいよ」
と説得を続けると、親はますます話したくなくなる可能性があります。
たとえば、
「そうだよね。まだ元気だもんね。また今度、話せそうなときに聞かせて」
くらいで終えても構いません。
親からすると、「話したくないと言ったら、子どもはちゃんと引いてくれる」とわかることも大切です。
それが、次に話すための安心感につながるかもしれません。
そして、時間がたってから、まったく別の話題の中で、
「そういえば、この前の話なんだけど……」
と再び触れることもできます。
「今はまだ早い」という親の気持ちを尊重することも、親の終活を考えるうえで大切な一歩です。
「縁起でもない」と怒られたら
「縁起でもない」と怒られたときは、その場で終活の必要性を説明しようとしないほうがよいでしょう。
親にとっては、終活の話そのものよりも、「死を考えさせられたこと」がつらかったのかもしれません。
たとえば、
「ごめんね。嫌な気持ちにさせるつもりじゃなかったよ」
と伝えて、そこで話を終えてもいいのです。
「終活は死ぬための準備じゃなくて……」と説明したくなるかもしれません。
もちろん、それは大切な考え方です。
ただ、この場面では正しさを説明するより、親が嫌だったという気持ちを受け止めることを優先するほうが、次の会話につながりやすくなります。
少し時間を置けば、親のほうから話題にすることもあります。
「この前はごめんね」と親から言われたら、そこから改めて話すこともできるでしょう。
話題を変えられたら
親が急に別の話を始めたり、テレビの話をしたり、食事の話に戻したりしたら、「今日はそこまで」というサインかもしれません。
そんなときは、無理に元の話へ戻さなくても大丈夫です。
たとえば、
「あ、そうだね。その話はまた今度にしよう」
と自然に話題を変えます。
「聞きたいことがあるのに……」と思うかもしれません。
でも、そこで何度も終活の話に戻そうとすると、親の中で「終活の話をすると逃げられない」という印象が強くなってしまうことがあります。
一度話題を変えたからといって、親が永遠に話したくないとは限りません。
むしろ、
「嫌だと言ったら、子どもは無理に聞いてこない」
という経験が、次の会話への土台になることがあります。
今日聞けなかったことは、次回聞けばいい。
そう考えておくと、子どもの側も少し気持ちが楽になります。
何度言っても拒否されたら
何度話しても親が終活を拒否する場合は、「終活」という大きなテーマをいったん手放して、一つのことだけに絞る方法があります。
「終活について全部話そう」とすると、親にとっては負担が大きく感じられるかもしれません。
そこで、
「終活の話じゃなくて、もし入院したときの連絡先だけ教えてもらっていい?」
あるいは、
「この家のことだけ、いつか聞かせてほしい」
というように、テーマを小さくします。
終活には、医療・介護、財産、実家、葬儀、お墓、デジタル情報など、さまざまなテーマがあります。
そのすべてを一度に話す必要はありません。
親が話しやすいものから一つだけ選ぶ。
それでも難しければ、さらに時間を置く。
「終活をするか、しないか」の二択にしないことが、会話を続けるポイントです。
一度距離を置いたほうがいい場合
親が強く拒否しているときは、あえて終活の話から距離を置いたほうがいい場合もあります。
特に、
- 親が精神的・身体的に疲れている
- 家族間で感情的になっている
- 財産の話が原因で険悪になっている
- きょうだい同士の意見が対立している
といった状況では、話し合いを続けることがかえって関係を悪くする可能性があります。
私たち子世代は、「今のうちに決めておかなければ」と焦ってしまいがちです。
けれど、焦りが強くなるほど、「親のために」という気持ちと「自分が困らないために」という気持ちが混ざってしまうことがあります。
そんなときはいったん離れて、自分自身の気持ちを整理する時間を持つことも大切です。
「私は何が心配なのだろう?」
「親に何を決めてほしいと思っているのだろう?」
「本当に今、話す必要があることは何だろう?」
と考えてみる。
親との会話を続けるためには、話すことだけでなく、いったん話さないことも選択肢に入れておく。
それくらいの余白があってもいいのだと思います。
この章のまとめ
親に終活の話を断られると、「もう話せないのでは」と不安になるかもしれません。
でも、
「今日は話せなかった」ことと、「もう二度と話せない」ことは違います。
「まだ早い」と言われたら引く。
「縁起でもない」と怒られたら説得しない。
話題を変えられたら、今日はそこまでにする。
何度も拒否されるなら、終活全体ではなく、一つのテーマに絞ってみる。
それでも難しいときは、いったん距離を置く。
大切なのは、一度の会話で親を変えることではありません。
親が「またこの話をしてもいいかな」と思える関係を残しておくことです。
そして、親の気持ちも、子どもの気持ちも、時間とともに変わっていきます。
終活は、一度ですべてを決めるものではありません。
次の章では、そのことをもう少し掘り下げて、「親の終活は一度で終わらなくていい」理由と、何度も話すからこそ見えてくる親の本当の希望について考えていきます。
第8章 親の終活は一度で終わらない|話し合いは少しずつでいい

親の終活は、一度の話し合いですべてを決める必要はありません。むしろ、親の気持ちや暮らしの変化に合わせて、少しずつ話していくほうが自然な場合もあります。
「親が元気なうちに、全部聞いておかなければ」
そう思うと、子どもの側にもプレッシャーがかかります。
特に、親と離れて暮らしている人はなおさらです。
帰省できるのは年に数回。電話やLINEで話すことはあっても、終活のような話をする機会は限られています。
だからこそ、
「次に会ったときに、全部聞いておこう」
と考えてしまうかもしれません。
でも、終活はテストではありません。
一回の帰省で、医療や介護、財産、実家、お墓、葬儀まで全部聞き出せなくても大丈夫です。
親の気持ちは変わっていい
親の希望は、今決めたことがずっと変わらないとは限りません。年齢や健康状態、家族との関係、暮らしている環境が変われば、考え方が変わることもあります。
たとえば、
「できるだけ今の家で暮らしたい」
と言っていた親が、数年後には、
「階段が大変になったから、便利なところに移りたい」
と思うかもしれません。
お墓についても同じです。
「先祖代々のお墓を守っていきたい」と思っていた人が、実際に管理する大変さを感じるようになれば、考えが変わることがあります。
だから、親が以前言っていたことと、今の希望が違っていても不思議ではありません。
大切なのは、「前はこう言っていたよね」と過去の言葉を固定することではなく、その時々の親の気持ちを聞き直せる関係をつくっておくことです。
「この前はこう言っていたけど、今はどう思ってる?」
そんな聞き方ができれば、親の気持ちの変化も自然に受け止められます。
一回で全部聞かなくていい
親の終活について話すときは、テーマを分けて、一つずつ話していけば十分です。
たとえば、
- 今回は医療や介護について
- 次の帰省では実家について
- その次はお墓について
- 財産や重要書類については、親が話しやすくなってから
というように、順番を決める方法があります。
一度の食事で、
「財産はどこにある?」
「お墓はどうする?」
「介護になったらどうしたい?」
「家は売るの?」
と質問が続けば、親も「面接されているみたい」と感じてしまうかもしれません。
それよりも、
「この前、入院したときのことを考えていたんだけど、もし私たちが何かあったときに困らないように、連絡先だけ聞いておいてもいい?」
くらいから始める。
そして、その日の話はそこで終わってもいいのです。
終活には、医療・介護、財産、実家、葬儀、お墓、デジタル遺品など、さまざまなテーマがあります。
全部を一度に終わらせようとせず、「今日は一つ話せた」で十分と考えると、親子の会話に余裕が生まれます。
遠方に住んでいるなら「一度の帰省で全部」を目標にしない
親と離れて暮らしている場合は、会える回数が少ないからこそ、「今聞いておかなければ」と焦ってしまいます。
でも、遠方にいるからといって、すべてを対面で話さなければならないわけではありません。
たとえば、帰省したときに大切な話をする一方で、普段は電話やLINEで、
「この前話していたこと、その後どう思った?」
と軽く確認することもできます。
財産や重要書類のように慎重に扱いたい内容なら、電話で無理に聞き出す必要はありません。
「次に帰ったときに、一緒に確認しようか」
と、次の機会につなげてもいいでしょう。
また、親がスマートフォンを使えるなら、話した内容を親自身がメモしておく方法もあります。
遠距離の親子にとって大切なのは、一回の帰省で終活を完成させることではなく、離れていても話を続けられる仕組みをつくることです。
「次に会ったときに話そう」と約束しておくだけでも、次の会話のきっかけになります。
エンディングノートは完成させなくていい
エンディングノートも、一冊すべてを書き終えなければ意味がないわけではありません。
むしろ、書き始めたことで、親子の会話が生まれることがあります。
たとえば、
「このページだけ一緒に見てみない?」
と開いてみる。
住所や連絡先だけ書いてもらう。
医療についての希望だけ話してみる。
そんな小さな始め方でも構いません。
エンディングノートは、親の希望を確認するための一つの道具です。
「全部書いておいてね」と親に宿題のように渡すより、
「私も自分のことを書いてみようかな。一緒に見てみない?」
と始めたほうが、会話のきっかけになることもあります。
そして、ノートに書かれていることだけが親の意思ではありません。
食事をしながら話したこと、電話で聞いたこと、ふとしたときに親が話していた希望。
そうした言葉も、親を知る大切な手がかりになります。
エンディングノートについて詳しく知りたい場合はこちらの記事もご覧ください。
人生会議も「繰り返し話す」もの
「人生会議」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
厚生労働省では、人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)を、もしものときに望む医療やケアについて、家族や大切な人、医療・介護の関係者などと前もって考え、繰り返し話し合い、共有する取り組みとしています。(厚生労働省)
ここで大切なのは、「一度決めたら、それを守り続ける」という考え方ではないことです。
厚生労働省の人生会議ポータルでも、気持ちや考えは変わることがあるため、その都度、何度でも繰り返し話し合うことが大切だとしています。(厚生労働省)
これは、親の終活について考えるときにも参考になる考え方です。
たとえば、今は、
「できるだけ自宅で暮らしたい」
と言っている親がいても、介護が必要になったときには、
「家族に負担をかけるくらいなら施設に入りたい」
と考えるかもしれません。
逆に、今は施設を嫌がっていても、実際に生活してみると「安心できる場所で暮らしたい」と考えが変わることもあるでしょう。
人の気持ちは、環境によって変わります。
だからこそ、親の終活でも「前に聞いたから大丈夫」と思い込まず、節目ごとにもう一度聞いてみることが大切です。
人生会議についても、改まった「会議」を開く必要はありません。厚生労働省は、日常の何気ない会話も人生会議の始まりになり得ると紹介しています。(厚生労働省)
たとえば、
「もし病院に入院したら、どんな治療を受けたい?」
という話だけでなく、
「これからも、この家で暮らしたい?」
「何歳になっても続けたいことってある?」
といった会話からでもいい。
終活という言葉を使わなくても、親の「これから」を知る会話は始められます。
そして、話した内容をメモしておけば、次に話すときのきっかけにもなります。
一度で答えを出すことより、「また話せること」のほうが大切です。
この章のまとめ
親の終活は、一度の話し合いで全部を決める必要はありません。
親の気持ちは変わっていい。
医療、実家、お墓、財産なども、一つずつ話せばいい。
エンディングノートも、すべて書き終える必要はありません。
そして、厚生労働省が紹介する「人生会議」も、何度も話し合い、考えを共有していくプロセスです。(厚生労働省)
遠方に住んでいて、親と会える機会が少ない人もいるでしょう。
だからこそ、「次の帰省で全部聞く」ではなく、次に会ったときに一つ話す、普段の電話で一つ聞くくらいの気持ちでいいのだと思います。
終活は、親の人生を一度に整理する作業ではありません。
親がこれからどう生きたいのかを、時間をかけて知っていく。
そんなふうに考えると、「終活」という言葉が少し違って見えてくるのではないでしょうか。
次の章では、実際に話が始まったあと、親の「これから」を考えるために、何を聞いておけばいいのかを具体的に整理していきます。
第9章 親の終活で、次に話しておきたい7つのこと

親との終活の話が少しずつできるようになったら、次に気になるのが「何を聞けばいいの?」ということではないでしょうか。
ただ、「財産は?」「お墓はどうする?」と順番に質問していくと、親にとっては質問攻めのように感じられるかもしれません。
ここで大切なのは、親の情報を集めることより、親がこれからどうしたいのかを知ることです。
全部を一度に聞く必要もありません。
「これは聞いておきたい」と思うものを一つ選び、親の話を聞くところから始めてみましょう。
① 医療・介護について
まず話しておきたいのは、もし病気や介護が必要になったとき、親がどのように過ごしたいと思っているかです。
たとえば、
「もし入院することになったら、誰に連絡してほしい?」
「介護が必要になったら、どんなふうに過ごしたい?」
といった質問から始められます。
「延命治療をどうする?」といきなり聞く必要はありません。
「できるだけ自宅で過ごしたい」
「家族に迷惑をかけるくらいなら施設に入りたい」
「できるなら最後まで好きなことを続けたい」
など、親が大切にしていることを知るだけでも、会話としては十分意味があります。
前章でもとりあげた厚生労働省がすすめる「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」も、もしものときに望む医療やケアについて、家族などと前もって考え、繰り返し話し合って共有する取り組みの大切さを説いています。気持ちは変わることもあるため、何度でも話し合うことが大切です。(厚生労働省)
一度聞いた答えを「親の最終決定」として固定する必要はありません。
「今はこう思っているんだね」と知っておく。
それだけでも、もしものときに家族が親の希望を考える手がかりになります。
医療や介護についてもう少し具体的に整理したい場合は、厚生労働省の「人生会議」の情報とあわせて、当ブログのエンディングノートの記事も参考にしてみてください。
② 緊急時の連絡先
次に確認しておきたいのが、いざというときの連絡先です。
これは財産のように踏み込んだ質問ではないため、終活の話を始めたばかりの親にも比較的聞きやすいテーマです。
たとえば、
「もし救急車で運ばれたら、誰に連絡したらいい?」
「かかりつけの病院ってどこだっけ?」
と聞いてみます。
確認しておきたいのは、
- 親本人の携帯電話番号
- 親しい親族の連絡先
- かかりつけ医・医療機関
- ケアマネジャーなど介護関係者
- 緊急時に頼りたい人
などです。
遠方に住んでいる場合は、特にこの情報が役立ちます。
実家で何かあったとき、近くにいるきょうだいや親族が対応することになるかもしれません。
「誰に連絡すればいいのかわからない」という状態を少しでも減らしておくことは、親のためだけでなく、家族の安心にもつながります。
ただし、連絡先を聞いたからといって、親の生活を管理する必要はありません。
「困ったときに連絡する人を一緒に確認しておく」くらいの気持ちで十分です。
③ 財産・重要書類
財産については、最初から「いくら持っているの?」と金額を聞く必要はありません。
まずは、通帳や保険、年金、不動産など、大切な情報がどこにあるのかを確認することから始めてもいいでしょう。
たとえば、
「もし何かあったときに探せないと困るから、大事な書類がどこにあるかだけ教えてもらえる?」
という聞き方です。
確認したいものには、
- 預貯金の通帳
- 保険証券
- 年金関係の書類
- 不動産に関する書類
- 借入金などの契約書
- その他の重要書類
などがあります。
ここで注意したいのは、「親の財産を把握すること」と「親の財産を管理すること」は別だということです。
親のお金について知りたい気持ちがあっても、親には親の財産を自分で管理する権利があります。
だからこそ、
「いくらあるの?」
よりも、
「大事なものがどこにあるかだけ、教えてもらえる?」
④ 保険
という入口のほうが、親にとっても話しやすいでしょう。
保険も、親が元気なうちは話題にする機会が少ないものの、いざというときに「何に加入しているのかわからない」と困りやすい情報の一つです。
そこで、保険の内容をすべて理解しようとするより、まずは加入している保険があるか、保険証券がどこにあるかを確認してみましょう。
たとえば、
「保険って何か入ってたよね?証券はどこに置いてある?」
くらいの聞き方なら、財産の話よりも切り出しやすいかもしれません。
確認しておきたいのは、
- 生命保険
- 医療保険
- 介護保険
- その他の保険
- 保険証券や契約書類の保管場所
などです。
ただし、「この保険は必要ないんじゃない?」と、その場で解約や見直しまで話を広げる必要はありません。
まずは、
「何に入っているのか、どこに書いてあるのかを知っておく」
ところまでで十分です。
保険の必要性や契約内容について判断するときは、保険会社や専門家など、適切な相談先に確認することも大切です。
⑤ 実家・不動産
実家については、「売る?」「片付ける?」と結論を急ぐのではなく、親がその家をこれからどうしたいと思っているのかを聞くところから始めます。
たとえば、
「この家、この先どうしていきたい?」
「できるだけここに住みたい?」
と聞いてみる。
親にとって実家は、単なる不動産ではありません。
長年暮らしてきた場所であり、思い出の詰まった家でもあります。
だから子どもが、
「もう古いから売ったほうがいい」
「誰も住まないなら処分しよう」
と先に結論を出してしまうと、親は自分の人生まで否定されたように感じるかもしれません。
ただ、国土交通省は一人暮らしの親が施設に入居したり、実家を相続したりすると、家族が住んでいた家が空き家になるきっかけの一つになると紹介しています。使用目的のない空き家は、平成15年の212万戸から令和5年には386万戸へと、20年間でおよそ2倍に増加したとのことです。
そのため、親が元気なうちから「この家をこれからどうしたい?」と話しておく必要があります。
すぐに売却や処分を決める必要はありませんが、親がどんな暮らしを望んでいるのか、家をどう残したいと思っているのかを知っておくことが、将来の選択肢を考える第一歩になります。
私自身は、実家について考える中で、「使わなくなったらどうするか」だけではなく、今ある土地や家を別の形で活用できないかと考えたことがあります。
その一つが、自分たちが使っていない実家の駐車スペースを貸し出す方法でした。我が家はアキッパというアプリを使って、駐車場貸出サービスをおこなっています。
「実家を残すか、手放すか」という二択だけではなく、住まなくなった後にも何らかの形で活用できる可能性がある。
そう考えると、実家について親子で話すときにも、選択肢を最初から一つに決めつけずに済みます。
もちろん、土地や建物の状況によって選択肢は変わります。
まずは、
「この家を、これからどうしたい?」
という親の希望を聞く。
その後で、売却、賃貸、活用、相続、実家じまいなどを考えていけばいいのです。
実家の整理や処分について詳しく考えたい場合は、当ブログの「実家についての終活」記事をご覧ください。
⑥ 葬儀・お墓
葬儀やお墓についても、親の希望を聞いておくと、いざというときに家族が迷いにくくなります。
ただし、
「葬儀はどうする?」
と突然聞くより、
「もしものとき、お葬式はどんな感じがいい?」
「お墓について、何か考えていることはある?」
くらいの聞き方から始めるほうが自然です。
確認したいのは、
- 葬儀の規模や形式
- 呼んでほしい人
- お墓をどうしたいか
- 墓じまいについての考え
- 宗教・宗派など、家族が知っておいたほうがよいこと
などです。
ここでも、「子どもが困らないように決めてもらう」という考え方だけではなく、
「親はどうしてほしいと思っているのか」
を知ることを優先します。
「家族葬がいい」
「今のお墓に入りたい」
「墓じまいを考えている」
など、親の希望を聞いておけば、その後に家族で検討することができます。
終活とお墓についての記事も参考にしてみてください。
⑦ デジタル遺品
最後に、50代の子世代だからこそ忘れたくないのが、スマートフォンやインターネット上の情報です。
親がスマートフォンを使っているなら、写真、SNS、ネット銀行、ネット通販、サブスクなど、本人しかわからない情報があるかもしれません。
たとえば、
「スマホの写真って、もしものときどうしてほしい?」
「使っているネットサービスって、何かある?」
と聞いてみるところから始められます。
確認したいものには、
- スマートフォンのロック解除方法
- SNSのアカウント
- ネット銀行などのオンラインサービス
- 定額制サービス(サブスク)
- 写真や動画などのデータ
- ネット上で契約しているサービス
などがあります。
ただし、パスワードなどの重要な情報は、家族だからといって安易に共有・保管すればいいわけではありません。
サービスごとの利用規約や手続き方法を確認しながら、親自身が「どうしてほしいか」を決めておくことが大切です。
デジタル遺品については、当ブログの「親のデジタル遺品」関連記事で、スマートフォンやSNS、ネット上の情報について詳しく整理しています。
「スマホの中まで終活?」と思うかもしれません。
でも、今の暮らしを考えれば、デジタル情報も親が残すものの一つです。
だからこそ、親が元気なうちに少しずつ話しておく価値があります。
この章のまとめ
親の終活で聞いておきたいことは、財産だけではありません。
医療・介護、緊急時の連絡先、財産・重要書類、保険、実家・不動産、葬儀・お墓、デジタル遺品。
こうして並べると多く感じますが、全部を一度に聞く必要はありません。
大切なのは、情報を集めることではなく、「親はこれからどうしたいのか」を知ることです。
「いくらあるの?」ではなく、
「大事な書類はどこにある?」
「この家をどうしたい?」
「もしものときは、どうしてほしい?」
と、親の希望を聞く質問から始めてみる。
そして、話した内容の中には、時間がたつと変わるものもあります。
だから、一度聞いたから終わりではありません。
親の言葉を聞きながら、そのときどきで一緒に考えていけばいいのです。
第10章 【50代だからこそ】親の終活を考えたら、自分のこれからも見えてくる

親の終活について考え始めると、いつの間にか「では、自分はどうしたいのだろう」と考えるようになることがあります。
親の老いを身近に感じる50代は、自分自身も人生の後半を意識し始める時期です。
「親のことだから」と考えていたはずなのに、ふと自分の暮らしや老後、子どもたちに残したいものまで気になってくる。
これは、決して不思議なことではありません。
親の終活は、親の人生を整理するためだけのものではなく、自分自身のこれからを考えるきっかけにもなるのです。
親の老いを見て、自分の老後を考える
親の終活を考えるとき、親だけを見ているようで、実は自分の将来も重ねて考えているのではないでしょうか。
50代になると、親の年齢だけでなく、自分自身も「いつまでも今のように元気でいられるとは限らない」と少しずつ感じるようになります。
たとえば、以前は何でもなかった階段の上り下りに親が苦労していたり、病院へ行く機会が増えていたり。
そんな姿を見ていると、
「私もいつか、こうなるのかな」
と考える瞬間があります。
もちろん、老い方やこれからの暮らし方は人それぞれです。
それでも、親の変化をきっかけに、自分の住まいや持ち物、医療や介護について考えてみることには意味があります。
私は、終活という言葉を親に向けるときには慎重になる一方で、自分自身のことなら、今から考えておいても早すぎることはないと思っています。
親の終活を考え始めた今だからこそ、「自分はどんなふうに年齢を重ねたいのか」を考える機会にしてみてもいいのではないでしょうか。
「子どもに同じ思いをさせたくない」と思う
親の終活について考えていると、「自分が子どもに同じ思いをさせたくない」と感じることもあります。
親のことで分からないことが多かったり、家族の間で話がまとまらなかったりすると、その大変さを次の世代には味わわせたくないと思うからです。
たとえば、
「大事な書類がどこにあるのか分からない」
「この家をどうしたいのか、親の希望を聞いていなかった」
「何かあったとき、誰に連絡すればいいのか分からない」
そんな状況は、残された家族に大きな負担をかける可能性があります。
だからといって、50代の今からすべてを完璧に決める必要はありません。
まずは、自分が親とのやり取りの中で「困ったこと」「分からなかったこと」を覚えておくこと。
そして、
「自分だったら、子どもに何を伝えておきたいだろう?」
と考えてみるだけでも、自分の終活の第一歩になります。
親の終活を考えることは、親を変えることだけが目的ではありません。
親との経験を、自分自身のこれからに生かす。
そんな視点を持つと、終活が少し違って見えてきます。
親子で「これから」を話す
親の終活を考えるとき、「人生の終わりについて話さなければ」と考えると、どうしても会話が重くなります。
だからこそ、「これからどんな暮らしをしたい?」というところから考えてみるのも一つの方法です。
たとえば、
「これからもこの家に住みたい?」
「旅行にはまだ行きたい?」
「できるだけ長く今の生活を続けたい?」
「何かやっておきたいことはある?」
こうした問いなら、「終活」という言葉を使わなくても、親の希望を聞くことができます。
そして、親の希望を聞いているうちに、自分自身についても考えたくなるかもしれません。
「私はどこで暮らしたい?」
「子どもが独立した後、どんな生活をしたい?」
「家や持ち物をどうしていきたい?」
「これから大切にしたいものは何だろう?」
終活というと、何かを「整理する」「処分する」「残す」といった作業を思い浮かべがちです。
けれど、その前にあるのは、自分や大切な人が、これからどう生きたいのかを考えることなのだと思います。
親の終活をきっかけに、親の希望を聞く。
そして、その会話をきっかけに、自分のこれからにも目を向けてみる。
それなら「終活を始めなければ」と身構える必要もありません。
親子それぞれの「これから」を少しずつ考えていくこと。それも、50代から始める終活の一つなのではないでしょうか。
この章のまとめ
親の終活を考え始めると、親の老いだけでなく、自分自身のこれからも気になってきます。
「子どもに同じ思いをさせたくない」と感じたなら、その経験を自分の準備にも生かしてみる。
親に「終活して」と伝えることだけが終活ではありません。
「これから、どんなふうに暮らしたい?」
そんな会話を親子で交わすことが、自分自身の人生を考えるきっかけにもなります。
親の終活を考えた今だからこそ、自分のこれからについても、一度立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。
第11章 きょうだいがいるなら、親に話す前に全部決めなくてもいい

親の終活を考え始めたとき、きょうだいがいると「まず兄弟姉妹で話をまとめてから親に話したほうがいいのでは?」と思うかもしれません。
でも、最初からきょうだい全員の意見を一致させる必要はありません。
むしろ、親の希望を聞く前に、きょうだいだけで「家をどうするか」「財産をどう分けるか」と決め始めると、話が複雑になることもあります。
大切なのは、きょうだいで結論を出すことより、親本人の希望を知ることです。
きょうだいの温度差があってもいい
親の終活への関心が、きょうだい全員同じでなくても不思議ではありません。
実家の近くに住んでいる人と、遠方で暮らしている人では、親の生活を目にする頻度も、感じている心配も違います。
たとえば、実家の近くにいるきょうだいは、
「そろそろ家のことを考えたほうがいい」
と思っているのに、遠方にいるきょうだいは、
「まだ元気なんだから、そんなに急がなくてもいいんじゃない?」
と考えることもあります。
どちらかが親を大切に思っていて、もう一方は無関心という単純な話ではありません。
それぞれが見ている親の姿や、置かれている生活環境が違うからです。
だから、きょうだいの間に温度差があっても、最初から「どうして分かってくれないの?」と考えなくても大丈夫。
まずは、「今、私はこう感じている」と情報を共有するところから始めてもいいのです。
一人だけが抱え込まない
親の近くに住んでいる人や、親との連絡を頻繁に取っている人ほど、終活のことを一人で抱え込みやすくなります。
「自分が長男だから」「自分が長女だから」と、いつの間にか自分だけの役割だと思っていないでしょうか。
病院への付き添いや実家の管理など、実際に近くにいる人でなければできないこともあります。
だからといって、すべてを一人で背負う必要はありません。
たとえば、
「この前、実家に行ったら少し気になることがあったよ」
「お母さんと、これからの家のことを少し話してみようと思っている」
と、きょうだいに伝えるだけでも、状況を共有できます。
遠方のきょうだいなら、帰省できなくても、電話やオンラインで話を聞くことはできます。
「何かあったらお願いね」と役割を押しつけるのではなく、まず同じ情報を持っておく。
それだけでも、一人で抱え込む状態から少し離れられます。
親の意思を中心にする
きょうだいで話し合うときに忘れたくないのが、「これは誰の人生についての話なのか」ということです。
親の住まいや財産、医療、葬儀などについて、子どもにはそれぞれの希望や事情があります。
「実家は売ったほうがいい」
「家は残してほしい」
「親の財産はこうするべき」
と、子ども側の意見が先に大きくなることもあるでしょう。
けれど、親の人生について決めるのは、まず親本人です。
もちろん、判断能力が低下した場合などには、家族だけでは対応できない問題もあります。そうした場合は、状況に応じて専門家や公的な相談窓口に相談する必要があります。
ここで言いたいのは、きょうだいの意見をまとめてから親に話すのではなく、まず親がどうしたいと思っているのかを聞くことが大切ということです。
「私たちはこうしたい」ではなく、
「お母さんは、これからどうしたい?」
と聞いてみる。
その答えを聞いてから、きょうだいで考えることがあっても遅くありません。
財産・相続は必要な段階で共有する
親の終活を考え始めたからといって、最初からきょうだい全員で財産の金額や相続方法まで決める必要はありません。
むしろ、親の希望を聞く前に財産の話ばかりになると、「誰がいくら受け取るのか」という話に変わってしまうことがあります。
最初の段階では、
「重要な書類がどこにあるか」
「何かあったときに誰に連絡するか」
「親は実家をどうしたいと思っているのか」
など、必要な情報を少しずつ共有する方法もあります。
ただし、財産や相続に関する問題は、実際に相続が発生したときに法的な手続きが必要になる場合があります。
「家族で話し合って決めれば大丈夫」と自己判断せず、必要になった段階で専門家に確認することも大切です。
親の終活は、きょうだいで競争するものでも、誰か一人が背負うものでもありません。
「親はどうしたいのか」を中心に置きながら、それぞれができる範囲で関わる。
そのくらいの距離感から始めてもいいのではないでしょうか。
親の終活をきっかけに、きょうだいとの役割や相続についてもっと詳しく考えたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
→「親の終活・きょうだいでもめない」記事へ
→「終活と相続は何から始める?」記事へ
この章のまとめ
きょうだいがいるからといって、親に終活の話をする前に、全員の意見を一つにまとめる必要はありません。
関心の強さや生活環境が違えば、考え方に温度差があるのは自然なことです。
まずは情報を共有し、親本人の希望を聞くことを優先する。
そして、一人だけが抱え込まないように、それぞれができる範囲で関わっていく。
それが、親の終活を家族の対立ではなく、これからの暮らしを考える時間にしていくための一歩になります。
第12章 今日からできる、親への最初の一言

ここまで読んで、「親の終活について話してみようかな」と思ったものの、「やっぱり、最初の一言が難しい」と感じている人もいるかもしれません。
でも、最初から終活についてすべて話す必要はありません。
大切なのは、親の考えを知るための小さな会話を始めることです。
今日、全部話さなくていい
親の終活について話すとき、一度にすべてを聞き出そうとしなくて大丈夫です。
医療や介護、実家、お墓、財産など、考えることはいくつもあります。だからこそ、一度の帰省ですべて確認しようとすると、親にとっても子どもにとっても負担になってしまいます。
たとえば、今日は実家のことだけ。
次に電話したときは、入院した場合のこと。
そんなふうに、少しずつ話していけばいいのです。
「今日は何も聞けなかった」と落ち込む必要もありません。
親との会話は、チェックリストを一つずつ埋める作業ではないからです。
最初の質問はひとつでいい
親の終活の切り出し方に迷ったら、まずは質問を一つだけ選んでみましょう。
たくさん質問を用意すると、「聞いておかなければ」という気持ちが強くなり、かえって会話が不自然になることがあります。
たとえば、実家で一緒にお茶を飲みながら、
「この家、この先どうしていきたい?」
と聞いてみる。
あるいは、病院や介護の話が出たときなら、
「もし何かあったとき、どうしてほしいかだけ聞いておいてもいい?」
と尋ねる方法もあります。
親が話し始めたら、すぐに次の質問を重ねなくても大丈夫です。
「そう思っているんだね」と聞くことだけでも、最初の一歩になります。
「希望を聞かせて」を入口にする
親の終活を切り出すとき、私が大切にしたいのは「してほしい」ではなく、「聞かせてほしい」という姿勢です。
「エンディングノートを書いておいて」「財産を整理しておいて」と言われれば、親は何かを要求されているように感じるかもしれません。
一方で、「どうしたいと思っている?」と聞かれれば、自分の考えを話すところから始められます。
親には親の人生があり、これからの暮らしについての希望もあります。
だから、子どもが答えを決めるのではなく、まず親の言葉を聞いてみる。
それだけでも、親の終活について話すための大切な入口になるのではないでしょうか。
たとえば、次に親と会ったとき、こんな一言から始めてみてもいいと思います。
「お母さん、この先どんなふうに暮らしたい?」
または、
「もし何かあったとき、どうしてほしいかだけ聞いておいてもいい?」
うまく話を広げられなくても、それで失敗ではありません。
今日できるのは、たった一つの質問かもしれない。
でも、その一言が、親のこれからを知るきっかけになることがあります。
この章のまとめ
親の終活の切り出し方に、決まった正解はありません。
今日すべてを話そうとせず、まずは一つの質問から。
「してほしい」ではなく「希望を聞かせて」という気持ちで向き合えば、親との会話は少しずつ始められます。
第13章 親の終活の切り出し方|よくある質問

ここまで読んでも、「実際に親に話すとなると、まだ少し迷う」という人もいるでしょう。
ここでは、親の終活を切り出すときに感じやすい、6つの疑問について整理します。
Q1 親に財産を聞いてもいい?
聞いても構いませんが、最初から金額を聞くのではなく、必要な情報を一緒に整理するところから始めるのがおすすめです。
「預金はいくらあるの?」と突然聞かれれば、親が「財産を狙われているのでは」と感じる可能性があります。
一方で、親が入院したり、介護が必要になったりしたときには、通帳や保険などの情報が必要になることがあります。
たとえば、
「もし入院したときに、どこに何があるかわからないと困るよね。大事な書類がどこにあるかだけ、教えてもらってもいい?」
という聞き方なら、金額そのものではなく「困らないための確認」として話しやすくなります。
財産の話は、親のプライバシーにも関わる大切な内容です。
必要な情報を知ることと、財産の中身をすべて把握することは同じではありません。
まずは「何がどこにあるか」を知ることから始める方法もあります。
財産や重要書類について詳しく整理したい場合は、こちらの記事も参考になります。
→【関連記事:終活の財産整理は何から始める?】
Q2 エンディングノートを渡してもいい?
渡しても大丈夫ですが、「書いておいて」と押しつけるより、「一緒に見てみる?」という形のほうが自然です。
エンディングノートには、医療や介護、葬儀、連絡先など、本人の希望を整理するための項目があります。
ただ、親にとっては「死ぬ準備をしなさい」と言われているように感じることもあるでしょう。
そこで、いきなりノートを渡すのではなく、
「こんなの見つけたんだけど、こういうのって書いておくと便利なのかな?」
と、自分が興味を持ったものとして見せる方法があります。
あるいは、
「私も自分のことを整理してみようと思って。お母さんも一緒に見てみる?」
という誘い方なら、親だけに準備を求める形になりません。
エンディングノートは、一度ですべてを書き終える必要もありません。
大切なのは、ノートを完成させることより、親が「これからどうしたいか」を話すきっかけになることです。
→【関連記事:終活のエンディングノート、選び方・始め方は?】
Q3 遠方に住んでいる場合はどうすればいい?
親と離れて暮らしていても、帰省のときだけが話す機会ではありません。電話やオンライン通話など、普段のやり取りから少しずつ話す方法もあります。
遠方に住んでいると、「次に会えるのは半年後」ということもあります。
その一度の帰省で、医療、介護、財産、実家、お墓まで全部聞こうとすると、親にとっても負担になってしまいます。
たとえば電話で、
「この前、入院した友達の話を聞いてね。もしお父さんが入院したら、誰に連絡したらいいのかな?」
と、一つだけ聞いてみる。
次の電話では、
「そういえば、この家ってこの先どうしたいと思ってる?」
と別の話題を出す。
そんなふうに、普段の会話に少しずつ混ぜていくこともできます。
LINEを使う場合も、いきなり長い質問を送るより、
「今度帰ったときに、実家のこと少し聞かせてね」
と予告しておく程度でもいいでしょう。
遠方にいるからこそ、「一度で聞き終える」より「離れていても話を続ける」ことを意識すると、親子の負担を減らせます。
Q4 親に話す前に、自分が準備しておくことはある?
親に何をしてもらうかを考える前に、「自分はなぜ話したいのか」を整理しておくと、会話がぶれにくくなります。
たとえば、
「実家をどうするのか知りたい」
「入院したときに困らないようにしたい」
「親がどんな医療や介護を望んでいるのか知りたい」
など、親の終活について気になっていることは人によって違います。
ここを自分の中で整理しないまま話し始めると、いつの間にか「こうしてほしい」という要求になってしまうことがあります。
私自身も、親に実家やお墓について話そうとしたとき、自分の考えを伝えることに意識が向きすぎていました。
その結果、親から「ちゃんと考えているから大丈夫」と言われ、それ以上話を進めることができませんでした。
今振り返ると、私が先に考えるべきだったのは、「親に何を決めてもらうか」ではなく、「親はどうしたいと思っているのかを聞くこと」だったのだと思います。
だから、話す前に完璧な質問リストを作る必要はありません。
「今日は一つだけ、親の希望を聞いてみよう」くらいの準備で十分です。
Q5 電話やLINEでも、親の終活の話をしていい?
直接会って話すのが理想とは限りません。親子の関係や距離に合わせて、電話やLINEから始めても構いません。
特に遠方に住んでいる場合、「会ったときに話そう」と思っているうちに、何年も経ってしまうことがあります。
電話なら声の調子を感じながら話せますし、LINEなら親が自分のペースで返事を考えられるという利点もあります。
ただし、財産や相続などのデリケートな話を、長い文章で一方的に送るのは避けたほうがいいでしょう。
たとえば、
「この前、終活の話を少し聞いて、うちも考えておいたほうがいいのかなと思ってる。今度電話したときに少し聞かせてね」
くらいの軽いメッセージから始める方法があります。
大切なのは、どの手段を使うかよりも、親が話しやすい状態をつくることです。
Q6 親が話してくれたことは、メモしておいたほうがいい?
親が話してくれた希望は、忘れないためにも簡単にメモしておくと役立ちます。
たとえば、
「病院は○○がいい」
「緊急時は○○さんに連絡してほしい」
「お墓は今のままにしたい」
など、話した内容をその場で記録しておけば、後から「あれ、どう言っていたっけ?」となるのを防げます。きょうだいがいる場合はLINEで情報共有すれば、あとで見直すこともできます。
ただし、親と実際に話すときに注意しておきたいことがあります。それは、親の言葉を記録することに夢中になりすぎないということです。記録が目的になってしまうと、会話が尋問のようになってしまいます。
「メモしていい?」と一言断ってから、必要なことだけ残すくらいで十分です。
また、時間が経てば親の考えが変わることもあります。
以前話していた内容と違っていても、「前はこう言っていたよ」と責めるのではなく、「今はどう思っている?」と確認すればいいのです。
話したことを残す方法の一つとして、エンディングノートを使うこともできます。
→【関連記事:終活のエンディングノート、選び方・始め方は?】
記録は親の言葉を縛るためではなく、親の希望を忘れないためのものです記録は親の言葉を縛るためではなく、親の希望を忘れないためのもの。
そう考えておくと、気負わずに続けられるのではないでしょうか。
この章のまとめ
親の終活について話すとき、「これでいいのかな」と迷うのは自然なことです。
財産のことを聞くときも、エンディングノートを渡すときも、遠方から話すときも、最初から完璧に進める必要はありません。
大切なのは、親の考えを知ろうとすること。
「何をしてほしいか」ではなく、「どうしたいと思っている?」と聞いてみることで、今まで知らなかった親の気持ちに気づくこともあります。
そして、今日聞けなかったことは、また次の機会に聞けばいい。
親の終活は、一度の会話で終わらせるものではなく、これからの親子の時間の中で少しずつ考えていくものなのだと思います。
まとめ|「終活」ではなく「これからどうしたい?」から始めてみませんか

親の終活の切り出し方に、たった一つの正解があるわけではありません。
「終活について話したい」と正面から伝える方法もあれば、自分のことや健康、実家、これからの暮らしについて話す中で、自然に会話を始める方法もあります。
大切なのは、親に終活を「してもらう」ことではなく、親がこれからどうしたいのかを知ることなのだと思います。
今日、すべてを話す必要はありません。
まずは一つ、親の希望を聞いてみる。
たとえば、
「お母さん、この先どんなふうに暮らしたい?」
でもいいでしょう。
あるいは、
「もし何かあったとき、どうしてほしいかだけ聞いておいてもいい?」
でも構いません。
もし親からすぐに答えが返ってこなくても、それで失敗ではありません。
「まだ早い」「縁起でもない」と言われることもあるでしょう。そんなときは、いったん話を終えても大丈夫です。
「今日は話せなかった」ことと、「もう二度と話せない」ことは違います。
親の気持ちも、暮らしの状況も変わっていきます。だからこそ、終活の話も一度で結論を出すのではなく、少しずつ続けていけばいいのです。
そして、会話が始まったら、次に考えたいことが見えてきます。
医療や介護について知りたいのか。
実家をこれからどうするのか。
お墓について希望があるのか。
財産や重要書類について、何を確認しておけばいいのか。
一つひとつ、親の希望を聞きながら進めていけばいいのです。
「親の終活を始める=すぐに終活を完成させる」ではありません。
一つの会話から、少しずつ準備していく。そのくらいのペースでも十分です。
そして、親の終活を考え始めたあなた自身も、一度立ち止まってみてください。
「私は、この先どんなふうに暮らしたいだろう?」
親のこれからを考えることは、自分自身のこれからを考えるきっかけにもなります。
「親にどう話せばいいのかわからない」と悩んでいる時点で、あなたはすでに親のことを考えています。
だから、うまく話せなくても大丈夫です。
うまく言葉にできなくても、大丈夫。
最初の一言は、完璧でなくていいのです。
まずは、今日できることを一つ
この記事を閉じる前に、親に聞いてみたいことを一つだけ決めてみませんか?
「これからどんな暮らしがしたい?」
「この家をどうしていきたい?」
「もしものときは、どうしてほしい?」
どれか一つで十分です。
そして、もし親の希望を聞くことができたら、そこから先はテーマごとに少しずつ考えていきましょう。
親の終活は、人生の終わりを急ぐためのものではありません。
大切な人の「これから」を知り、自分の「これから」も考えるための時間です。
その最初の一歩は、もしかすると、今日の何気ない一言から始まるのかもしれません。
親との会話が始まったら、次は何を聞けばいい?
医療・介護・実家・お墓・財産・デジタル遺品など、親が元気なうちに確認しておきたいことを整理しています。
→「親の終活は何から始める?」














