
「私、もう東京に帰る」と妻は去った…1,500万円で“八ヶ岳・夢のリゾート別荘”を手に入れた65歳夫婦。3年で直面した「二拠点生活」の現実【FPが解説】
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ニュースのポイント…定年後に1,500万円で憧れの別荘を購入した夫婦が、わずか3年で維持費の重圧や身体的負担から二拠点生活を断念。
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なぜ起きた?…別荘暮らしは「旅行」ではなく「もう一つの生活の維持」であり、年齢とともに過酷な気候や慣れない家事、都会のコミュニティ喪失が重荷となったため。
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私たちの生活への影響…50代の今からセカンドライフの計画を立てる際、夫の夢への同調だけでなく、自身のつながりや将来の医療・介護費を見据えたリアルなシミュレーションが必要。
1.【ニュース概要】理想の裏側にあった「もう一つの日常」の重み
定年退職を機に、憧れの地でセカンドライフを始める――。そんな誰もが一度は思い描く夢の裏側にある現実を伝えたニュースに注目してみました。
東京都内の大手メーカーを定年退職した田中さん(仮名・69歳)は、退職金を元手に約1,500万円で長野県・八ヶ岳エリアの中古リゾートマンションを購入しました。当初は夏でも涼しい高原の生活を妻の洋子さん(仮名・67歳)と楽しんでいましたが、わずか3年後、洋子さんは「私、もう東京に帰る」と告げ、一人で戻ってしまったというのです。
この事例は、多くのシニア世代が憧れる「リゾート二拠点生活(都市と地方の2つの拠点を行き来する生活)」に潜む、移動の負担や維持管理の難しさ、そして夫婦間の思いのズレという厳しい現実を浮き彫りにしています。
2. 旅行気分では済まない「生活」のリアリティ
なぜ、念願だったはずの夢の生活がわずか3年で破綻してしまったのでしょうか。
最大の理由は、別荘暮らしが楽しい「旅行」ではなく、あくまで「もう一つの生活の維持」だったことにあります。
まずは身体的な負担です。標高の高いエリア特有の激しい寒暖差は、年齢を重ねるごとに体にこたえるようになります。さらに、買い物一つ行くのにも車が不可欠な環境は、体力が衰え始めると大きな重荷に変わります。
次に、「いつもの日常」が失われたことです。妻の洋子さんにとって、東京には長年通っている美容院や整体院、気心の知れた友人、そして信頼できるかかりつけの病院が揃っていました。豊かな自然に囲まれた静寂よりも、これら「都会の当たり前の日常」がもたらす安心感のほうが、年齢を重ねた女性の生活の質にとって重要だったのです。
さらに、滞在するたびに発生する湿気対策や片付け、冷蔵庫の管理など、家を2つ持つことで家事の負担が実質2倍になってしまったことも、女性側に負担が偏る原因となりました。
3. 二拠点生活を支える「コスト」と「健康寿命」の壁
この背景には、リゾート物件を所有することに伴う経済的・物理的なリスクがあります。
田中さんのケースでは、別荘の固定資産税や管理費、光熱費の基本料金といった固定費だけで年間約60万円、さらに交通費などを含めると年間90万円以上の出費が発生していました。
これは、その場所に「行っていなくても、持っているだけでお金がかかり続ける」という状態です。
また、日常生活を制限なく元気に過ごせる期間を指す「健康寿命」は、男性で約72歳(2022年データ)となっています。つまり、65歳から始めた夢の生活を全力で楽しめる時間は、決して無限ではないのです。
リゾート地の物件は、一般的な都市部の不動産に比べて買い手が見つかりにくく、手放したくても売れないというトラブルも少なくありません。今の時代、二拠点生活を始める段階で、将来「どうやってその家を処分するか」という出口の計画をセットで考えておくことが不可欠なのです。
4. 生活への影響
このニュースは、これからセカンドライフの設計を迎える私たち50代、特に女性の視点から見ると非常に身につまされる教訓を含んでいます。
50代の女性は、家庭だけでなく、友人関係や趣味、地域のつながりなど、多層的なコミュニティを大切にしている方が多いものです。夫の「定年後は静かな場所で暮らしたい」という夢に寄り添う形で拠点を移したとしても、移住先で自分自身の楽しみや役割を見つけられないと、ただ孤独感と慣れない家事負担だけが募る結果になりかねません。
また、家計の面でも注意が必要です。退職金というまとまったお金があるからと、勢いで不動産を購入してしまうと、将来本当に必要となるかもしれない医療費や介護費の資金を圧迫するリスクがあります。物件の購入費だけでなく、その後に続く「維持費」が一生涯の家計にどう影響するかを、今のうちからリアルに計算しておくことが大切です。
5. これからの二拠点生活は「所有」から「利用」へ
これからの時代、定年後の二拠点生活のスタイルは大きく変わっていくと予想されます。田中さんのように大金を投じて物件を「所有」するのではなく、必要なときだけ賃貸やサブスクリプション(定額制利用サービス)、レンタルを活用して、必要な期間だけ楽しむスタイルが主流になっていくでしょう。
地方の不動産は一度所有すると負の遺産(管理しきれないお荷物資産)になってしまうリスクがあるため、終活(人生の終盤に向けた整理)の観点からも、身軽に動ける仕組みを選ぶ人が増えています。リゾート地の過酷な草刈りや雪かき、建物のメンテナンスといった管理業務そのものを「趣味として徹底的に楽しめる人」でなければ、家を維持し続けるのは難しい時代になっているのです。
6. まとめ
「夢の別荘暮らし」という美しい言葉の裏には、日々の細かな家事や維持費、そして年齢に伴う体調の変化というリアルな日常が隠されています。
せっかくのセカンドライフを「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためには、今のうちからの準備が大切です。
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まずは「お試し」から…いきなり購入せず、まずは賃貸や長期滞在施設を利用して、現地の冬の厳しさや生活の不便さを体感してみる。
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「出口」を想定する…その物件は将来売れるのか、子ども世代に負担をかけないか、「終わり方」を考えておく。
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夫婦の「楽しみ」を共有する…どちらか一方が我慢する生活は長続きしません。お互いがその場所で何をしたいかを具体的に話し合う。
老後の夢を、重荷ではなく「本当の豊かさ」につなげるために。まずはノートを開いて、あなた自身がこれからどんな暮らしを送りたいか、大切にしたい「優先順位」を書き出すことから始めてみませんか?
一歩行動を起こすことで、未来の安心への道筋が見えてきます。









